2009年4月17日金曜日

清水宏監督3本立て。

    神保町シアターで、昭和の原風景
    36年松竹蒲田清水宏監督『有りがたうさん(255)』
    伊豆の天城街道を走る乗合バスの運転手(上原謙)は、人や馬車を追い抜く時に、有りがとうと声を掛けるので、有りがとうさんと街道の人々の人気者だ。上りの始発の茶店で、母(二葉かほる)と娘(築地まゆみ)が茶店の婆さん(高松栄子)が話している。17才の娘は東京の遊廓に売られていくのだ。初めて村を出る娘に汽車に乗るまで見送ると母は言う。婆さんは、同情し、峠を2つも越える長旅だと、車中で食べろと羊羹を渡す。バスを出す時間が来る。有りがたうさんさんの直ぐ後ろには、流れ者の酌婦(桑野通子)が、本当はひとつ前のバスだったが、次が有りがたうさんだと聞いたので遅らせたのだと言う。有りがたうさんは、一番後ろに座った母と娘に、前の席の方が揺れませんよと声を掛けるが、付け髭の男(石山高嗣)が座ってしまう。バスが出発すると、居眠りをしていた老人(青野清)が、茶店の婆さんにバスに乗るんじゃなかったの?と言われ慌てて追い掛ける。
   舗装されていない山道を走る乗合バスの中では、色々な出来事が起こる。

   母親は茶店で貰った羊羹を行商人たちに配る。酌婦が荷物から洋酒の小瓶を出し……

   隣村の祝言に出席する夫婦(桂木志郎/水上清子)が乗ってくると次の停留所で、やはり紋付き袴の男(県秀介)が乗ってくる同じ祝言かと尋ねると通夜だと聞いて、縁起が悪いと言って夫婦は降り、通夜の男も悪いことをしたと下車してしまった………
     終点の河津駅が近づいて来た。酌婦は、涙を流す娘をチラチラ見ている有りがたうさんに、脇目はやめておくれと言いながら、村から出て帰ってきた娘はいないんだろう。シボレーのセコハンを買うぐらいで、この娘が、一山いくらの女にならずにすむと耳元で囁く。翌日の天城街道はピー干だ。乗合バスを運転する有りがたうさんの後ろには、17才の娘が母親と座っている。娘は、あの姉さんにお礼の手紙を出したいと言う。有りがたうさんは、渡り鳥なら、また会えるが…と言う。

    何か起きそうで、日常のことしか起きない清水宏監督作品の尋常ではないカメラワークに、やられまくりだ。今日の3本も、奥深いなあ。

     37年松竹大船清水宏監督『花形選手(256)』
いつも森(日守新一)や木村(近衛敏明)と校庭で昼寝ばかりしている関(佐野周二)と、真面目な谷(笠智衆)は大学の同級生で、競走部の花形選手。勝てばいいと言いながら、いいライバルだ。軍事教練の行軍演習に出掛ける。隊長(大山健二)の後を行進しながら、敵は幾万という軍歌をコール&レスポンスで、「敵は幾万ありとても~♪」「敵は幾万ありとても~♪♪」と歌っていると、近所の子供たちが後を付いてくる。しばらく行くと、今度は10人ほどの女学生が歩いている。追い抜きながら、気持ちが高ぶる。女学生たちは、後ろからやってきたトラックの荷台に乗って追い越していく。しばらく先で待っているのを見て、抜刀し駆け足になる。更に河に出て突撃する。
   昼休みになり、いつものように、森、木村と一緒に昼寝をしている関に、谷が声を掛けてくる。勝てばいいと挑発してくるので、相撲を取って勝とうと立ち上がると、集合との声が掛かる。午後の行軍中に、木村は腹が痛くなる。隊長は、森に付き添うように命じた。太った木村をおぶって歩いているうちに、森もへばってくる。そこに、運よく空の荷馬車が通りかかり、乗せて貰って、昼寝だ。ゴールに近づき、関に二人を迎えに行ってくれと貧乏くじを引く関。来た道を歩いて行っても二人の姿は見当たらない。娘の芸人と男女の子供が歩いて来るのに出会う。二人ずれの学生を見なかったかと聞いたが見ていないと言う。しかし、少し先で荷馬車で気持ちよさそうに眠っている森と木村を見つける。自分も後ろに腰掛ける関。娘芸人と一緒の女の子を一緒に乗せてやり、お姉さんかいと聞くと違うと答える子供、おばさんかいと聞いても違うと答える。どういう関係かと尋ねると分からないと答える子供。荷馬車の上にあった柿を子供にやる関。
   夜は、近くの村に分宿する。関のグループが泊った家の主人が学生たちに酒を注ぐ。このうちの息子は、身体が弱く、大学にまで進学したが、去年亡くなってしまったのだという主人。隣家に泊るグループが勝てばいいと騒いでいるので文句を言いに行く関。谷たちかと思うと、森たちだった。谷は、もう一軒先で、浪速節の上手い学生が唸るのを聞いていた。外を歩いていると、娘芸人と一緒だった男の子に出会う。女の子が具合が悪くなり、医者を迎えに行くと言う。自分が柿を食べさせたせいかと責任を感じた関は、娘芸人が泊る商人宿に同行する。


     池袋新文芸坐で、芸能生活70年 淡島千景の歩み
     59年大映清水宏監督『母のおもかげ(257)
    隅田川の水上バスの運転手の瀬川定夫(根上淳)は、半年前に妻を亡くし、息子の道夫(毛利光宏)と二人暮らし。向かいに住み、豆腐屋を営む叔父の大木恭介(見明凡太郎)と、ふで(村田知栄子)夫婦と娘でファッションモデルの慶子(南左斗子)に炊事洗濯掃除などやってもらっている。叔父は、定夫の後妻を、仲人30件目にしたいと張り切り、病院の炊事婦の高田園子(が、コブ付きだが、器量も性格もいいのでなんとか纏めたいと、無理矢理その日の夕方に見合いをセッティングする。
    仕方なしに会うだけだと言いながらも、定夫も床屋に行き、園子も一旦帰宅し着替えて喫茶店にやってくる。叔父は、二人でざっくばらんに話せと帰ってしまう。最初は気まずかったものの、おでんやで酒を飲み、寄席で、林家三平の落語を聞くうちに、お互い憎からず思うようになる。園子の家まで送る定夫。病院の調理場で世話になっているお藤夫婦(清川玉枝、南方伸夫)の二階に間借りしているのだ。園子の娘のエミ子(安本幸代)は既に眠っていたが、その寝顔を見て定夫の気持ちは固まる。
   問題は、息子の道夫の気持ちだ。道夫は、亡くなった母ちゃんの写真と、母ちゃんが買ってくれた伝書鳩をとても大事にしている。慶子は、両親から話を聞いて、子供同士の見合いをしたらどうだろうと提案する。自分が出演する最新モードのファッションショーが開かれるデパートに、道夫とエミ子を呼んで、お好み焼屋で食事をする慶子。

吉沢専務(大川健二)巡査(酒井三郎)

  子役がいい。映画を見ながら思ったのは、この59年製作の映画に出ている子役と、50年後の2009年の子役は全く違う。何だか、今の子役は、子供の役者だ。子供というよりも、物凄く若い役者という方がいいかもしれない。演技が達者な子供というより、何だか、役者としてうまい下手かどうかみたいな早熟を感じる。子供自体が変わったんだろうな。この映画のような子役は、梨園の3歳とかの子供が初舞台とかでないと見ることができないのかもしれない。昔の一生だった50年間での、人間の老成のスピードの早さを思った。

  高田馬場の四谷天窓で、実籾の歌姫・小笠原愛のライブ。そこから渋谷の立ち飲みバーで、元上司と久し振りに。

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