午前中は、池尻にあるIさんの事務所。
シネマヴェーラ渋谷で、70年代の青春 鬱屈と混沌と。
75年東宝映画小谷承靖監督『はつ恋(38)』
冬の湘南の海岸、由木原一彦(井上純一)が手持ちの16mmカメラを自分に向けている。
半年前の夏の日の朝、同じ海岸を、犬を連れた一彦が、友人の守(塩崎三樹男)と自転車に乗っている。地元の漁師に金を渡し、一隻の古い小舟を買う。
一彦と守は、舟を白いペンキで塗る。「名前どうする?」「カレン…」「カーペンターズかあ、あの娘、腰が太いからな…」「ミレイ。M・I・REY…」「ミレイユ・マティスかあ、まだネンネだぞ」「ビッキー、リンダ、ダイアナ…」「何で女の名前ばっかなんだ?」「船の名前は女の名前だろ」「舟には、女と猫は不吉だろ」
翌日、一彦が、舟に積もうと無線や水や食料を持って来ると、守の姿がない。替わりに、舟の陰から、白いサマードレスを着た若い美人(仁科明子)が立ち上がり、「海辺って不便ね」と笑うと、白いパラソルを開いて歩いて行く。一彦が女のいた辺りを見ると、小便をした跡がある。バケツに海水を組み、その辺りに掛ける一彦。しかし、女の後ろ姿を見つめる一彦は笑顔だ。
しばらくして、やって来た守は、一彦が日除け兼用の帆を広げていても浮かない顔だ。「お前にこの舟やるよ!」「えっ、もう飽きたのか?本代を貯めてやっと買ったんだぞ!」「俺だけここに残りたいって親に言ったんだけど…。親父が神戸に転勤なんだ…。田舎だったら、受験に不利だとか言えたかもしれないけれど、神戸じゃな…」
東京高裁の廊下を、報道陣に囲まれ判事の由木原直彦(二谷英明)が歩いている。「私は学者ではない。裁判官として、私は良心に従って判決を出した」その模様を放送するテレビの前で、一彦が手にしている新聞には、「東京高裁で、公務員のスト理由による解雇は違憲。憲法の新解釈」と言う大きな見出しが踊っている。判事として父親の写真が乗っており、誇らしげな一彦。
窓の外が賑やかだ。昨日の白いサマードレスの女と4人の男たちが、荷物を運び込んでいる。空き家だった隣の家に引っ越して来たようだ。昨日の美人が隣人になることで、嬉しくなった一彦が、隣の家を覗きに行く。玄関先で、女はビール瓶を開け、自分が飲んでから男に渡す。男たちは、女が口を付けたビール瓶を喜んでラッパ飲みをしている。一彦は、外人の男に見つかり「レイディを、そんな見方しちゃ駄目よ!」と注意をし、ピーピングトムと言う。慌てて家に逃げる一彦。
その日の夕食、久しぶりに道彦の早い帰宅に母親の雅代(南風洋子)も華やいでいる。祖母のきく(原ひさ子)は虫眼鏡を使って、鯛の骨を取っている。「おばあちゃん、骨取ってあげようか」と一彦。道彦に「今日の判決どうだったの?」と声を掛けると、「お父様がせっかく帰っていらっしゃったのに、そんなお仕事のお話するんじゃありません」とたしなめられる。しかし、そんな母も「隣に画家の未亡人と言う方と娘さんが引っ越して来て挨拶にいらっしゃいました。でも、変な方で、相続のことで揉めているので、判事さんにご相談しようかしらと言うので、ウチの主人は、そんなつまらないことやりませんって言ってやりましたわ。きっとお妾に違いないわ」と言って、道彦に「そんな言い方するんじゃない」と窘められた。母親は、女中のはつ(笠井うらら)に八つ当たりする。
翌日、一彦が自転車で出掛けようと隣家を通りかかると、門の前で女が目を瞑って微睡んでいる。一彦が近づくと、女は突然目を開け、街まで行くなら乗せていってと荷台に座った。「私の名前は、松宮るお、変な名前でしょ。お父さんが付けだの…」「画家だったんでしょ、聞きました」「私は率直な言い方が好きなので聞くけど、私はあなたの顔好きだけど、あなたは私をどう思う?」「…」「若いんだから、はっきり言いなさい!」「あなたは、綺麗です!」後ろのるおの腕が自分にしがみついていることに、とても嬉しい一彦。ブティックで白いドレスを値引きして、食料品と、マーガレット(?)の花束を買った一彦とるおが帰って来ると、由木原家のシェパード太郎が吠えかかる。道彦が散歩させようと出て来たところだった。ここでと遠慮するるお、ちゃんとお送りしなさい一彦に命じてと、軽快に太郎を伴って走り出す道彦。見送るるお。
るおの荷物を抱えて一彦が隣家に行くと、るおの母、道子(根岸明美)が、るおに「あんた、何時まで遊び歩いて、私を飢えさせる気かい?何だい!その服!あんたウチにいくら金があるんだい!?」と噛みつく。るおが「お母さんの好きな?も買ってきたよ」と答える。食料品の紙袋をるおから取り上げ、袋の仲の物を確かめる道子。
見てはいけないものを見た気がして、帰ろうとする一彦を追い掛け、今晩、東京の友達が集まってパーティをやるので、参加してと誘うるお。
その夜、スーツにネクタイをした一彦は、居間を通ろうとすると、雅代が道彦と話している。「松田画伯は、自分が京都にいた時に事件を扱ったことがあった。自分は次席判事だったが、確か認知訴訟だったな」と言う道彦に、「いやね。やっぱりお妾さんだったんだわ。近所付合いを、どうしようかと悩んでいたけど、お付き合いしないことに決めたわ。あら、一彦どうしたの?」「友達の家でパーティがあるんだ」「あなた、ひょっとしてお隣のウチね。近所付き合いをお断りすることにしたわ」道彦が「もう、一彦は子供じゃないんだ」「子供です」結局部屋に戻る一彦。暫くすると道彦がやってくる。手には一彦の靴をぶら下げている。「あんまり、遅くならないうちに帰って来いよ。」
木村(岸田森)阿川(内田勝正)沢田(富川激夫) フレデリック(ジャクソン・スミス)昌夫(中村健介)
75年松竹/サンミュージック広瀬襄監督『スプーン一杯の幸せ(39)』
梅村乃里子(桜田淳子)古賀昌子(沢田亜矢子)田所由美(石原亜希子)林泉(長谷川コッペ)鮎川光江(百々玲子)ら光明女子高バトミントン部員が、晴れ着で野立てに参加している。澄ましていても、直ぐに足が痺れ、モジモジし始め、苦痛に顔がゆがむ。庭園に男(黒沢年男)が現れ、望遠レンズをつけたカメラで撮影をし始める。乃里子は、自分たちの醜態が撮られていることに気が付き、男を捕まえようと立ち上がるが、足が痺れて、転び引っ繰り返る。せっかくの晴れ着も破けて散々だ。とっ捕まえようと思った男は、やってきた美人(早乙女愛)と親しそうに話しながら去って行った。
とある下町にある小料理梅村、女将の梅村千恵(浜木綿子)に口を開けさせ、「きれいな歯ですね。まさに明眸皓歯だ」と歯科医。そこに丸山耕作(坂上二郎)東々亭豊楽(三遊亭小円遊)が現れ、抜け駆けはいけませんよと言う。みな千恵の大ファンで、自称「千恵の純潔を守る会の会員」なのだ。そこに晴れ着の乃里子が帰って来る。晴着の乃里子をみな褒めそやすが、乃里子はプリプリ怒って、二階の自分の部屋に上がって行った。千恵が上がって来て「どうしたの?」と声を掛ける。「お母さ~ん」甘えるように、野立てでの事件を語る乃里子。「あら、あなた、足が痺れて転んだから、破いちゃったんじゃないの?」千恵には、全てお見通しだ。「そうそう、乃里子宛てに、届いていたわよ」差出人が書かれていない郵便物を手渡し、店に戻って行った。包を解いて、中に入っていたブローチを嬉しそうに見つめる乃里子。
数日後の朝、セーラー服姿の光明女子高バトミントン部員たちは、通学途中「レディたちの春」という記事が載った週刊誌を見て、口々にこんな写真出されたらお嫁に行けなくなっちゃうと怒っている。先日の野立てでの姿が載っているのだ。小さい文字で、カメラ福島清彦というのを見つけ、週刊誌の編集部に電話をして抗議しましょうと言っていると、目の前に、先日のカメラマンが歩いている。跡をつけると、光明女子高の構内に入って行く。
朝礼で、神近校長(葦原邦子)から、新任の先生として紹介され登壇したのは、福島だ。
松田徹(坂上大樹)丸山良夫(佐藤佑介)山下剛(加藤和夫)宇田川正(橋達也)若林辰平(中村一司)(黒沢年男)ひとみ(早乙女愛)松本喜代子(清水理絵)島岡大介(沖正夫)大古茂一(山本伸二)松田徹海(山田禅二)ゴルフ場の指導員(小松政夫)谷本医師(穂積隆信)女学生(西川洋子)
夜は、5月に行われる失速バンドというイベントのキックオフ飲み会。久し振りの方々と飲み盛り上がる。
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