2010年2月5日金曜日

62年の映画は圧倒的だが、70年代にもいい映画はある。

    ラピュタ阿佐ヶ谷で、昭和の銀幕に輝くヒロイン【第51弾】若尾文子
     62年大映東京木村恵吾監督『やっちゃ場の女(40)』
    築地青果市場、通称やっちゃ場。小田ゆき子(若尾文子)は、「精ちゃん!リンゴとネーブル頼んだわよ!」井上精一(藤巻潤)「ネーブルは手が出ないですよ」「どうしても欲しいのよ」「女将さんに怒られますよ」「大丈夫よ!頼んだわよ!私は夏柑…」夏蜜柑の競りに参加し、競り落とすゆき子。仲買人たちに「小田新さん、そんなに仕入れてどうするの?」「冷凍して、後で外人に売るのよ」「しっかりしてんなあ」
    店の使用人の三吉(吉葉司郎)春夫(飛田喜佐夫)らに「三ちゃん!ボーっとしないで!荷を店に運んで!あら精ちゃん!どうだった?」「リンゴは仕入れましたが、ネーブルは手が出ませんでした。ダメね精ちゃん、あんたは案外臆病なんだから…」
     この小田新は、大根河岸の時代から続く青果仲買、ゆき子は5代目だ。女将はゆき子の母のくめ(清川玉枝)だが、血圧が高く今日は休んでいる。
     ゆき子は家に電話をする「ああおきよ!?一郎はどうしてます。駄目よ、あの子はすぐ学校サボるんだから」一番古い女中のおきよ(小笠原まりこ)「坊ちゃまは、今お食事中です。女将さんは、休んでおられます、あっ今起きられました」くめ「ああ大丈夫だよ。ちょっと目眩がしただけなのに、あんたたちが騒ぐから。どっちにしても、今から支度をして店に行くよ。一郎ご飯食べているよ。あたしが甘やかすから学校に行かないって、はいはい分かりました。えっ?早苗に20円の小遣い?わかったよ。あんたの方が甘やかしているじゃないか」一郎は、拳闘好き、いきなりおきよの腹にパンチを入れる。息が詰まって、悲鳴を上げ座り込むおきよ。
    次女の早苗(叶順子)が降りてくる。早苗は丸の内の商事会社のBGだ。くめが「あんた、間に合うのかい?」「全然平気よ。あたし課長さん全く怖くないの…朝食はいらないわ」とリンゴだけとる早苗に「体に毒だろ」とくめが言うが、「あたし少し痩せないと」と言われ「あたしも少し減量したほうがいいかね」と自分の腹をさする。「そうそうゆき子から、あんたにお小遣いをと言われてたわ」と財布を出すが、40円の筈が、百円札2枚取られてしまう。そこに、精一が配達の途中、家用の果物を持って来た。早苗は方向が違うと言う精一に、強引に会社まで送るよう頼む。三陽商事の前に、小田新の小型トラックが停まる。下車した早苗に、先輩BGの市田(穂高ねり子)が声を掛ける。「あら、今運転していた人イカすじゃない?」
    出勤した早苗に課長の伊達(根上淳)が声を掛ける「君ひどいじゃないか、昨日の晩、僕は8時過ぎまで待ったんだぜ」「私は伺えませんとお断りした筈です」「いや、誤解して欲しくないんだが、僕は変な意味ではなく、部下の女子社員を理解するために、たまに食事に誘うんだ」「失礼します」
    くめが店先で客に怒っている。「小田新は、大根河岸の時代から、ツケなしの現金商売でやってきたんだ。その代わり、品物はやっちゃ場一だ!!高いだなんだ言うなら他の店に行っておくれ!!」ゆき子に「お母さん、血圧高いんだから怒っちゃだめよ」と窘められる。くめは、ゆき子の目を盗み、戸棚から一升瓶を出し、コップ酒を美味そうに飲み干す。精一が「女将さんいけませんよ」「ゆき子には内緒だよ」「そうじゃなくて、体を心配しているんですよ」しかし、鳴った電話を取ろうとしたくめは、ふらっと倒れてしまう。ゆき子も店の者たちも慌てて駆け寄る。
    小田家の前にタクシーが停まり、早苗が 慌てて降りて来る。玄関先で早苗が「お母さんは?」と声を掛けると、女中のおときとおまつは泣き出した。くめの布団の横に、医者と看護婦、ゆき子らが座っていた。ゆき子が「お母さん死んじゃったわ。さっきまで、鼾をかいて眠っていたのに、それっきり」と淡々と言うのを聞いて早苗は母の亡骸にしがみついて号泣した。「一郎は、また今日も学校サボって…。学校に電話をしても今日は休みだと言われたし」とゆき子。探しに出る精一。組合長が、ゆき子の肩を叩いて、席を外す。「直ぐ、こんなことを言うのは何だが、葬儀の方は、組合で手伝わせて貰うが、どうする?親父さん、声を掛けた方がいいだろう」赤坂の叔母萩源たけ(村田知栄子)が私が言おうかと言うが、「あんな人お父さんでも何でもないわ…」と言いかけて、「私が話に行きます」と気丈に言う。
   父の源三(信欣三)は、病気の時の付添婦の時子(水戸光子)と駆け落ちし、佃島で暮らしていた。源三が間借りしている家のおかみさん(村田扶実子)「誰?おしまさん?」「築地の小田でございますが…」「あらまあ」おかみは慌てて「ちょっとお待ちを」と言って二階に駆け上がる。二階で浴衣を縫っているお時に「小田新のお嬢さまだよ。お父さまいるかって!?」

    学校、今年度最後。2年生はこれが最終日なので、自分の講義の感想を書かせる。概ねホロリとさせる。巧いなあ。評価大甘になりそうだ。一年のイベント実習は佳境。集客大丈夫だろうか?心配だなあ(苦笑)


    シネマヴェーラ渋谷で、70年代の青春 鬱屈と混沌と
   76年松竹/バーニングフロダクション山根成之監督『さらば夏の光よ(41)』
   夜の無人の街を空き缶を蹴りながら走る宏(郷ひろみ)。前をみると車が停まっている。助手席のドアが開き、女が外に出ようとする。「嫌よ!わたし帰る」「いいじゃないか…」車のボンネットを叩き「開けろよ!降りろよ!馬鹿野郎!!へえ、いい女じゃねえか?…学生だろ!!女も車もお前には勿体無いって言ってるんだよ」車を降りた男と殴り合う。


   78年日活藤田敏八監督『帰らざる日々(42)』
   1978年夏、窓から西新宿の高層ビルが見えるアパート。野崎辰雄(永島敏之)と西螢子(根岸とし江)「ねえ、どうして急に国に帰るなんて言うのよ」「だから電報が来たって言っただろ」「何て書いてあったのよお」「電報を食っちまったと言っただろ」「里帰り、いいわね。6年振りの帰郷。あー帰る田舎がある人はいいわね。どうして私を連れてってくれないの?」「仕事まずいだろ」「ホステスだから?」「ホステスとボーイが付き合っているのがバレたらマズいだろ!!」「そんな法律ないわよ」「就業規則があるだろ。どうせ直ぐ帰ってくるよ」「あんたが帰った時には、私はいないかも。転がりこんで、いなくなる、簡単なものね…」うんざりした表情の辰雄。
    翌日、新宿駅、中央本線飯田行き急行こまがね一号のホームに螢子が現れ、辰雄を見つけ駆け寄る。「誰かと一緒じゃないかと思って確かめに来たな…。店の明美ちゃんとか美沙子とか…」週刊誌と缶ジュースを買って、窓越しに辰雄に渡す螢子。
   発車し、しばらくすると熟睡する松男。列車は甲府に着く。突然、「野崎!野崎じゃないか!?長姫の建築科で一緒だった田岡だよ」自衛隊の制服をきた田岡(丹波義隆)は若い女(加山麗子)を連れている。「僕は防衛庁にいるんだ。こちらは婚約者の村瀬喜代美さん。彼は高校のクラスメート野崎。国語だけは、どうしても勝てなかった」「結婚かあ」「彼女の父親が空幕で…、縁あってこうなったんだ…、懐かしいなあ、あの夏はいろんなことがあったなあ、駒ヶ岳のライフル乱射の立てこもり事件や、あの首吊り事件や…」勝手に喋り続ける田岡。
   辰雄の脳裏に、高3の夏が思い出される。
   1972年7月、飯田の喫茶店BONに、辰雄と級友の八郎(阿部敏郎)相沢(高品正広)赤点(深見博)が座っている。辰雄はウェイトレスの竹村真紀子(浅野真弓)を好きなのだ。辰雄たちの隣の席の怪しい中年男(小松方正)が「お姉ちゃん、ジンフィス」と真紀子に声を掛ける「うちは喫茶店なんですけど」と答える真紀子。しかし、チンピラのような若い男が店に入って来て、真紀子に親しげに声を掛ける。指を3本立て、真紀子が財布を出すと、そこから札を持って行くヒモのような男(江藤潤)。誰かが「あいつ、学校で見たことがある」と言いだす。
   数日後、校内マラソン大会が行われる。辰雄の仲間たちは、直ぐにバテバテだ。しかし、折り返し地点で辰雄は、あの喫茶店のマドンナ真紀子のヒモが走っているので、俄然やる気がでる。男を抜かし、挑発する辰雄。男もダッシュし始めるが、転んでしまい、辰雄の圧倒的な勝ちかと思われたが、男は、斜面をショートカットして走り始めた。圧倒的な勝ちを確信した辰雄が悠々と走っていると、目の前に男がいる。目を疑う辰雄。ダッシュして抜こうとするが限界だ。コースの脇で、黄色い胃液を吐く辰雄。
  辰雄の母親の野崎加代(朝丘雪路)が電話で言い争いをしている。別居中の夫、野崎文雄(草薙幸二郎)が家を出て若い女と同棲しているので揉めているのだ。そこに辰雄が帰ってくる。酔相手を察して、辰雄が黙っていると、「今からお店に出なければならないけど、御飯どうする?」と加代。「気持ちが悪いんでいらないよ」と辰雄。
  ある夜、学校前の林で、辰雄が一人佇んでいると、あの男がやってきた。「俺は黒岩隆三、土木だ。この間の校内マラソンで、お前がつっかかって来た訳が分かったぜ」偉そうな言い方に辰雄がむかついていると、「これだろ」喫茶店ボンの真紀子の写真を出し、「やるよ!これでセンズリでもかけよ」頭に来た辰雄は、隆三に飛びかかり、喧嘩だ。殴り合い、揉み合っていると、辰雄は、上から下がった足に抱き付く。見上げて、それが首吊り死体であることを知った辰雄は腰を抜かした。首を吊っている男は、以前喫茶BONでジントニックを何杯もも頼んでいた中年男だ。逃げようとすると、隆三が、自殺した男の鞄を改め始める。茶封筒に10万程の金が入っているのを見つけると、「この金は残しておいても誰にもいいことないんだ」と呟くと、辰雄のポケットに無理矢理3万程突っ込み、残りを自分のものにした。
    脂汗をかきながら帰宅する辰雄に、「野崎くんでしょ」と声を掛けたのは中学の同級生だった平井由美(竹田かほり)だ。名古屋に行っていたが、飯田に帰って来て、水商売をやっているという由美に生返事で帰宅する辰雄。
    翌日、学校は大騒ぎだった。使い込みをした小役人の杉本双一郎と言う男が、東京から逃げてきて学校の前の林で自殺したのだ。クラスの誰かが「男は戦時中飯田に疎開していたらしい」と言う。
    どうも引っ掛かった気持ちのまま浮かない表情の辰雄。授業中に、校庭で体操をする女生徒のブルマーを眺めていると、安西がエロ本を見ているのを見つかる。「これは何だ!?」「エロ本です」引きちぎる教師。直ぐにチャイムがなり、教師は出て行ったが、級長の田岡が注意をし、安西と喧嘩になる。取っ組み合いの2人に防火バケツの水を掛ける辰雄。
    隆三が試験勉強をしている。ふと手を休め、机の引き出しを開けると、隆三が貯めた金が入っている。その中には勿論首吊り中年から盗んだ金も入っている。引き出しの奥から、日本競輪学校の案内書を取り出し、ウットリ眺める隆三。窓が開き、真紀子が「感心ね。勉強しているのね。お母さんがおはぎを持っていってやれって」「そんな筈はないよ」「相変わらずひねくれているのね。だから友達が一人も出来ないのよ」「いや、一人いる…」「へえ…ホント?」疑わしそうな真紀子。「うるせえな。」
   真紀子は、隆三が住む離れに上がって来て「お茶入れてあげるわ」「酒がいいな。母屋から持ってきてくれよ」「そんなこと出来る訳ないじゃないの」近くのヤカンを取る真紀子に、突然抱き付き「やらせろよ」「あたしたちいとこなのよ」「いいじゃねえか」必死に抵抗し、最後に隆三の腕に噛み付いて逃げる真紀子。「油断も隙もあったもんじゃない」浴衣を身繕いし、しかし、お茶をいれて上げる真紀子。お茶を飲みながら「本当に友達出来たの?」「同じ学校で、よくマキの店に来ている奴…」「野崎さん?」
     一人辰雄が試験勉強をしていると、父親(草薙幸二郎)から電話が入る、「母さんが離婚届にハンコを押さないんだ。お前からも説得してくれないか…。」辰雄は歓楽街に出る。自分の母親の店?だ。サングラスを掛けカウンターに座る。コーラを出そうとする母親。横に座っていた着流しの男(中村敦夫)が、飲めとビールを注いだ。「戸川さん」と母親は止めようとするが、いいだろと戸川。戸川が別の店に連れて行ってくれた。突然カウンターの中にいた平井由美が「野崎くん!」と声を掛ける。店のママで由美の母親の平井ふさ(吉行和子)は、ヤクザの戸川佐吉の情婦らしい。ふさが戸川に電話を渡すと、突然怒鳴りつける。由美によれば、この店の権利のことで揉めているらしい。
  

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