2009年10月29日木曜日

流行歌と時代劇と黒沢明とロスプリモス。

  大手町の成人病クリニック、午前中は先日のCTの結果を消化器科の先生から、膵臓は特に異常はないが、内臓脂肪はかなり多いと言われる。眼鏡美人の女医さんにたしなめられると、マゾ心が燃える(笑)。昼からは糖尿病の経過観察。そんな日の前夜遅くに呑んだ挙げ句に、ホープ軒でラーメンと言う自制心の欠如した私(苦笑)。

   ラピュタ阿佐ヶ谷で、俳優 佐藤慶

   73年勝プロダクション増村保造監督『御用牙 かみそり半蔵地獄責め(615)』
   北町奉行所隠密廻り同心かみそり半蔵こと板見半蔵(勝新太郎)は、自分を見て逃げ出した二人組を追っていた。連れているのは小者の鬼火(草野大伍)とマムシ(蟹江敬三)。二人とも自分がお縄にした小悪党だった。勘八(北野拓也)と小三郎(宮下有三)を橋に追い詰めたが、運悪く、勘定奉行大久保山城守(小松方正)の行列が通りかかる。共先を乱した二人組を斬り捨てようとする山城守の家中の者たちの間に割って入る半蔵。山城守の側近の本多麟太郎(岸田森)は、町方風情の不浄役人が、奉行の列に飛び込むとはと、山城守の剣術指南役兼用心棒御子柴十内(黒沢年男)に半蔵を斬れと命ずる。しかし十内、自分は藩に雇われているのではなく、山城守に個人的に雇われているのであって、大久保家から指図は受けないと答える。駕籠から顔を覗かせた山城守は、御子柴の実力を見てみたいといって立ち会いを許すが、引き分けた。
   2人連れの持ち物を調べると若い娘の着物が。追い剥ぎかと問い詰めると、水車小屋に死んでいた娘から盗ったと自供。死体を改めると、堕胎の後、死んだことが分かる。近くを調べると巫女(小柳圭子)が堕胎を請け負っていた。女の死体を棺桶に入れて、鬼火マムシに運ばせ、巫女に迫ると、駿河屋の娘お町だと知れた。駿河屋六佐衛門(稲葉義男)とお甲(近江輝子)の元に行くと、お町は、男を知っているなどはありえない娘で、外出も近くの尼寺海山寺にお茶、お花に習いに行くことしかなかったと言った。
  勿論、神社仏閣は、寺社奉行の管轄。お構い無しに乗り込むと、嗜虐趣味のある大店の主人たちを相手にいかがわしい商売をしていることが分かる。さっそく尼僧の如海尼(相川圭子)を攫って、自慢の男の武器で吐かせると、裏に山城守が関わっていることが判明する。
   そんな時に北町奉行と筆頭与力大西から呼び出しがあり、勘定奉行の行列への無礼を咎められ、しかし今江戸で暗躍する極悪非道な浜島正兵衛(佐藤慶)の一味を捕まえろという命が下った。次に金座を狙うという情報を得て、金座を女だてらに取り仕切る若後家の陸(稲野和子)を訪ねる。主のりきの寝所の押入れで見晴らせろと言い出して驚かす。
   それどころか、後家の操を守る陸に正兵衛に陵辱されるのかと言ってモノにしてしまう(苦笑)。心の落ち着きを取り戻した陸を山城守が訪ね、小判の改鋳を行い、金の含有率を半分に落とし更に一部を自らの懐に入れよと指示する。勿論押入の中で半蔵は聞いていた。更に筆頭与力大西が現れ、警護をするかわりに袖の下を要求、半蔵に追い返される。
    最後に火盗改めが泊まり込みで警護をすると申し入れ、陸に受け入れるよう指示をした。果たして火盗改めは浜島正兵衛の一味だった。まず、陸を陵辱しようと寝所にやってきた正兵衛が、布団を剥ぐと中には半蔵が。一人一人斬り捨てる半蔵。大勢の捕り方に包囲され、追い詰められた正兵衛は、少女を人質に。半蔵の命と引き換えに解放するとの話に半蔵は棺桶を背負い刀を捨て一味のもとに。しかし卑劣な正兵衛は、少女に襲いかかった。それを見て半蔵は棺桶に仕込んだ武器で一味を倒す。引き立てられていく正兵衛たち。北町奉行矢部常陸守(大森義男)と山城守から褒美を取らすとの言葉に、山城守の首だと答える。驚く皆に、山城守の悪行を暴露する。
   山城守は、大目付、老中たちによる詮議により、蟄居、領地召上げとなった。橋を渡ろうとする半蔵、鬼火、マムシの前に、御子柴十内が現れる。山城守の失脚により、再び素浪人になったと言う十内は、勝負しろと言う。立会いの結果、十内は負けた。橋の上で、切腹して果てる十内。

   うーん。テアトル新宿の勝新若山特集で、見ていたな(苦笑)。しかし、前回見た時は、劇画的に、男の刀を鍛える方法を勝新が大真面目にやっているのに失笑して、もう一つの印象だったが、今回はそれなりに楽しめた。特に黒沢年男に感じいったがよかった。若い頃の、まあぶっちゃけ大根ワンパターンの演技が、いい具合に枯れて渋い味を出していた。最後の勝VS黒沢はスケールの大きな殺陣ではないけれどいいなあ。

   64年東映京都長谷川安人監督『集団奉行所破り(616)』
   (NA)江戸は武士の街、大阪は商人の街。大阪の口が堂島の米市場なら、胃袋は天満のやっちゃ場、頭は東町奉行所でしょうか。
  天満宮で、一心に祈る男の懐から財布を擦る掏摺のエテキチこと捨吉(神戸瓢介)。気がつかれて逃げ出す。ダマシチこと為七(市川小金吾)の懐に財布を押し込んで、捕まってから、さあ探せ!!と下帯ひとつで、地面に転がる捨吉。
  為七は、懐の財布を調べ、下町までやってくる。少し誤魔化そうとするが、為七は、財布が軽くなったと言われ、銭を返す。溜まり場の飯屋萬兵衛に入り、捨吉に酒をたかろうとした時に、三人の浪人者(島田秀雄、大城泰、有島竜司?)が店に入ってくる。女郎屋の親父が金を払ってくれと付いてきている。どうやら踏み倒そうとしているのだ。騒がしさに、奥の小上がりで寝ていた悪源太こと田村源太(大友柳太朗)が、五月蝿いと文句を言い、表に出ろと言うことになった。
  為七は、捨吉にニセ町医者の法眼の道伯(内田良平)の下に走らせ、自分は浪人者たちに、もし亡くなった場合には、懐中の銭を自分にくれるよう約束をして断られる。勝負は一瞬にして決まり、三人の浪人者は鼻を切られていた。もんどり打って転がる三人を為七は堂白のもとに連れて行く。道伯は、痔の薬を鼻に塗り、為七は、1両2分の有り金全てを治療費だと言って巻上げる。源太が追い掛けてきたと脅すと、大慌てで逃げて行く浪人者たち。
  すけこましの業平こと丹次郎(里見浩太朗)が、商家の若旦那風の格好で、天神さんの人混みで娘に声を掛けながら歩いている。ふと一人の娘(嘉手納清美)に目を止める。「君みたいなお嬢さんは、こんな処を独りで歩いていると危ないよ。」と声を掛けると、 お糸という名の娘は、「本当にそうみたいね。」ちんぴらの三人組(島田秀雄、大城泰、有島竜司?)が、取り囲み、付き合ってくれねえかと声を掛けてくる。丹次郎は、色男金と力はなかりけりを地で行くので、なかなか割って入れない。調子に乗った男たちは、お糸を攫おうとする。そこに、東町奉行所の同心竹内金次郎(佐藤慶)がやってきて、男たちをボコボコにする。「お父さん止めて!!死んじゃうわ。」お糸は、同心の娘だったのだ。お糸は「行きましょう!」と丹次郎を誘って、竹内を置いて行く。「腕の振るいどころをなくしちゃったわね。」お糸は、どうも父親に屈託があるらしい。そこに、すぼけの吉蔵(田中春男)が、「兄貴、勘助の親方が呼んでいまっせ。」と声を掛ける。「お前、若旦那と言え」「若旦那って、おまえさん業平やろ・・。」「ちょっと、店に戻らなけばならなくなったみたいだ。」
   商人宿碇屋の主人勘助(金子信雄)は、7年前まで海賊の頭領だった。


佐吉の妹お駒(桜町弘子)お光(御影京子)松平右近将監(原田甲子郎)、長坂又右衛門(戸上城太郎)逸見軍十郎(楠本健二)、宇部甚八(佐藤洋)、大沢小太夫(藤木錦之助)万兵衛(市川祐二)、彦助(佐々木松之丞)お松(牧淳子)おしげ(園千雅子)万作(鶴田淳一)甚兵衛(源八郎)久兵衛(中村錦司)浪速屋庄右衛門(水野浩)堺屋五兵衛(有馬宏治)和泉屋安次郎(熊谷武)茨木屋藤四郎(矢奈木邦二郎)

   68年日活舛田利雄監督『わが命の唄 艶歌(617)』
   夜の海が見えるホテルSEA。そこの一部屋に津上卓也(渡哲也)が佇んでいる。森亜矢子(牧紀子)と抱き合う。津上は、ルピエ化粧品宣伝部の臨時雇いのコピーライターだった。自分のコピーに自信が持てない津上。同じ宣伝部のイラストレーターの亞矢子のみが、自分のコピーを認めてくれた。そんな亞矢子は津上のプロポーズを受け入れてくれ、今日は初めて身体の関係を持った。翌朝、亞矢子は「津上くんにはサムシングエルスがある」と言い残して津上の前から姿を消した。
   その日、亞矢子の車は、近くの港の海中から発見された。結婚の約束をした亞矢子が何故死んだのか、全く見当もつかず、氷雨降る港で、立ち尽くす津上に、宣伝部長の黒沢正信(佐藤慶)は、気持ちの整理がついたら俺のところへ来いと声を掛けてくれた。
   暫く津上は亞矢子の死を受け入れられず、食事もろくに取らず部屋に籠もっている。下宿の管理人夫婦の娘京子(水前寺清子)が心配してうどんを持ってくるが、布団から出て来ない。
   突然黒沢が下宿を訪ねて来て、無理矢理津上を会社に連れて行く。亞矢子の席に座らせ、マンツーマンで、コピーを書かせ始める。しかし津上は自信を持てないままだった。ある日、テレビCM用の長いコピーを命じられたが、徹夜をしても書けずにいると黒沢が、パンと牛乳を届けてくれたが、「何故、黒沢さんは僕なんかに優しくしてくれるんですか…。僕は亞矢子が死んだ日にラジオから流れていたジャズのメロディーがいつも僕の頭の中で聞こえているのだ」と告白する。黒沢は、そのメロディーに歌詞を付けてみろと言う。そのCMは社長にも誉められた。しかし、報告しようとした黒沢は退社し、東洋テレビに引き抜かれたと言う。
   数日後、津上は黒沢に東洋テレビに呼び出され、今の化粧品会社を辞めて、大手広告代理店弘電社に入ってCM音楽をやれと言って、CM制作部長の西条を紹介された。更にスーツを買えとまとまった金まで貰う。グリークラブ時代の友人で、東洋テレビの制作にいる露木隆一(藤竜也)を訪ねる。黒沢は経営の立て直しの為に大鉈を振るい、台風の目となっていると言う。長く続いていたルポルタージュと言う硬派のドキュメンタリー番組を打ち切り、交響楽団も解散させたと言う。その夜、二人は痛飲する。偶然入った民謡酒場で、京子に再会する。サントリーのダルマを頼む。黒沢から貰った金を一晩で使ってしまいたかったのだ。酔っ払って、夜の街を、露木、京子と歩きながら、最初は外国の歌を、途中から日本の歌を高らかに歌う。
   CM音楽のディレクターとして成功していた津上を、三年振りに誘いにやってきた黒沢。レコード会社の役員としてミリオンレコードに、親会社のミリオン電機から一人送り込まれた黒沢は、今のレコード業界をぶち壊すために、津山が必要なのだ。即答を避ける津山。
   津山は、黒沢に連れられ、ミリオンレコードの歌謡ショーを見に行く。「黒沢明とロス・プリモス」(そうか、黒沢明だったんだなあ)「青山ミチ」「美川憲一」・・・。古臭いワンパターンの歌詞とメロディー、音程の悪い歌手。鳥肌がたつほど嫌悪した津山は、逆に、ミリオンレコードに興味を持つ。再び、東洋テレビの露木のところに行き、ミリオンレコードの看板ディレクターの高円寺隆三の話を聞く。露木は「狐と狸とアヒルとドブネズミがいるような」流行歌の世界と言いながら、自分がかって演出したルポルタージュという番組の「艶歌の竜 ~艶歌に命を賭けたある男の人生~」を見せてくれる。
   (テレビ番組)ステージで、一節太郎が「浪曲子守唄」を歌っている・・・。高円寺隆三は、今年52歳。会社が創立10周年の年に、上野の音楽学校を卒業して、入社した。青臭い音楽理論を話す鼻持ちならない若造だった高円寺は、意志に反して、地方セールスに配属された。北は函館、南は博多、全国のレコード屋の注文取りの仕事は、高円寺をくさらせた。
   ある時、北国の漁師宿に泊まり、痛飲した。もう辞めようと思った高円寺の寝室に、その夜女中が入ってきて、高円寺を慰めた。一晩中海鳴りがする宿の年増の女中は暖かだった。少し気持ちが軽くなった高円寺は、2年目で制作部でサブディレクターとなった。「海鳴りの宿」が初めてのヒット曲となった。そのレコードを持って北国の漁師宿に出かけるが、とうに女中はおらず、行方も知れなかった。日本海に向かって、そのレコードを投げ泣いた。
  その後、召集。入隊した部隊は、226事件で蜂起した。そのため、鎮圧後、満州の前線に送られた。現地で病気になり、除隊。ミリオンレコードに戻ってきた。会社は当時、軍歌を量産していた。それに反発し、流行歌のディレクターとなった。演歌とは、怨みの歌だ。泣く代わりに、人々は歌うのだ・・・。
   「貧乏人にとっちゃ、暗い青春しかない。そんな貧しい日本の歌を変えてやる。」そう決意して、黒沢を訪ねる津山。そこで、黒沢の秘書をしている森亞矢子の妹、美矢子(松原智恵子)に会う。美矢子は姉を殺した津山を憎んでいた。自分も亞矢子の死の理由は分からないのだと伝えようとしても美矢子は一切聞く耳を持たない。ミリオンレコードは、この数年新しいヒット曲を出せずにいた。社長の野川(清水将夫)と専務の高根(山内明)の権力争いもあるようだ。高根は、「コマソンの人か、2,3年きっちり詩の勉強をして、ヒット曲を作ってくれたまえ」と言う。黒沢は、この会社は2,3年待って居られませんよと露骨に告げて、高根を鼻白ませる。
  黒沢は、津山を、社内のスタジオに連れてゆく。高円寺の現場だ。ミキシングルームには、随分と沢山の人で溢れていたが、肝心の高円寺はいない。競輪に行っている高円寺を待っているのだ。やっと最終レースが終わり、高円寺がやってくるが、ソファーに横になり競輪の新聞を頭から被っている。笹みどりのレコーディングがスタートした。流し上がりの作曲家の雨宮(青木義朗)が歌わせていくが、歌い終わっても高円寺は動かない。何度歌っても高円寺は、同じままだ。焦る雨宮やミキサーたち。歌い終わった時に、津山は黒沢に「今度は駄目だ。音程が狂った。」と耳打ちする。しかし、意外にも高円寺は置き上がり、「これで行こう!」と言う。
  ホッとした空気が流れるが、雨宮が津山に詰め寄る。「てめえ、先生に失礼だろ!!コマソン野郎にイチャモンをつけられたくねえ。嘗めるなよ小僧!!」高円寺は、割って入り、「君の率直な感想を聞かせてくれ。」という。「古臭く、ワンパターンの歌詞とメロディ、音程も悪い。」「そうか、コマソン屋さんとは違う作り方をしているようだな。俺たちは流行歌に命を掛けているからな。」その後、津山は、グループサウンズの制作部を希望するかという黒沢に、高円寺の下につけてくれと頼む。
  居酒屋で、高円寺、雨宮、津山が飲んでいる。雨宮が「いや、初めておめえに会ったときは、気に喰わなかったが、先生のところを希望するなんざ見上げたもんだ。気に入ったぜ。」と言い、津山に酒を注ぐ。高円寺が隣で歌っている流しを連れて来いと言う。飛びだしていく雨宮。高円寺、「あいつは、流しあがりの作曲家で単純は奴だが、悪い奴じゃない。」「はい。」「歌は世につれ、世は歌に連れという言葉があるが、あれは嘘だ。歌は世に連れるが、世は歌に連れないんだ。」「そんなことはないと思います。僕は強烈な歌で、世の中を変えたいんです。」そこに、雨宮が二人組の流し(杉山俊夫、野呂圭介)を連れてくる。今日は喉の調子が悪くて、民謡酒場で見つけた女の子に歌っているんですという流し達。高円寺は、雨宮に君は何年俺と仕事をしているんだ、その女の子を直ぐに呼んで来いと言う。
   連れられて来たのだ京子だった。高円寺に言われ、「いっぽんどっこの歌」を歌う京子。「こりゃ本物だ。掘り出し物だ」と言う高円寺。京子は、お金がいると言う。父親が若い女に入れあげて会社の金を横領して、一年の実刑を食らったと言う。途端に母親気が抜けて、寝たきりになり、弟と妹の面倒もみなければならなくなったのだ。

   テレビで放送されたのを、2度ほど見て、観た気になっていたが、全然違う印象だ。

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