56年大映東京溝口健二監督『赤線地帯(163)』。
吉原のサロン夢の里、巡査の宮崎に今国会で揉めている売春防止法のことで愚痴る女将の辰子(沢村貞子)。うちは吉原で四代300年になるが、戦後は素人の婦人への防波堤になれと言われ、立て直したら、借金返さないうちに商売止めろとはあんまりじゃないかと文句を言っていると、チンピラの栄公(菅原賢二)が耳打ちする。悪いことしてないだろうなと言う巡査に、ポンもスケも手を切りましたよと答える栄公。店の裏で、女将にスケのことを相談をしている。巡査が女郎たちに、売春防止法をどう思うかと尋ねる。賛成!と手を挙げた頼江(町田博子)に、頼ちゃんみたいにいい人がいりゃいいけど、アタシャ干上がっちまうねと言う。お上は仕事と住むところを世話するのだと言う巡査。鉄筋のいいアパートに入れてくれるのなら大賛成だねと言う年増女郎の夢子(三益愛子)。
ちょうど店の主人田谷倉造(進藤栄太郎)が組合の寄合に出掛けるところだ。女将に今日はあまり、派手に客を引かないようにうちの子たちに言っておけと言う。布団屋のニコニコ堂の主人塩見(十朱行雄)が打ち直した布団を届けに来る。ちょうど二階から店のナンバーワンの安美(若尾文子)が降りてくる。ニコニコ堂は安美の馴染みだ。安美が、今日は入院した兄の見舞いだから会えないと言うと、今集金した金を渡して何か買ってやれと渡すニコニコ堂。安美は二階の自分の部屋に戻ると、やはり馴染みで泊まっていたメリヤス問屋の支配人の青木(春本不二夫)が、結婚の約束いつウチに来てくれるかと言う。自分には店に15万の借金があると答えると、それだけあれば、結婚できるんだねと言う青木。仕入れの日だからと帰ろうとする青木を蒲団に引っ張り込む安美。夢子が声を掛ける。化粧品が切れたので、20円貸してくれと言う夢子。
所帯疲れの花枝(木暮実千代)が遅刻をして現れる。花枝は結核で失業中の夫と乳呑み児を抱えている。栄公が神戸の三ノ宮でズベ公をしていた ミッキー(京マチ子)を連れてくる。明るく、スタイルのいい彼女を女将は直ぐに気に入った。その夜、夢の里に田舎から夢子の息子の修一(入江洋佑)が訪ねてくる。厚化粧に派手な着物姿が恥ずかしく夢子は居留守を使うが、帰ったと聞いて、今まで以上に仕送りをしたい夢子が客を引く姿を影から見てしまい、母親の姿に耐えがたい修一。
頼子の馴染客で、大阪から毎月来ている男ヒーさん(小川虎之助)がやってくる。関西出身同士盛り上がるミッキー。頼子は焼餅を焼いて自分の部屋に無理やり連れていく。夜が更け、花枝の帰り道、赤ん坊を背負った男が待っている。まだ食事をしていないという夫を近くの中華そば屋に連れていく。子供にミルクを与えながら、夫を励ますが、鬱屈した夫は後ろ向きなことしか口にしない。
翌日、国会から戻ってきた田谷が、婆やのおたね(浦辺粂子)に女郎たちを集めさせ、お前らのことを考えているのは自分たち女郎屋だけだ、お上に変わって慈善事業をやっているのだ、売春防止法が通ったら、たちまち食えなくなって困るのはお前らだと一席ぶつ。ヒーさんが昼間ミッキーの客として上がった。ここの掟は仲間の客を取らないことだと怒鳴り込む頼子。私を買ったのは客だというミッキーと、古い魚と新しい魚、誰が考えても新しい魚を買うだろうと言うヒーさん。頼子は泣いて不貞寝をする。
その夜、花枝、夢子、頼子の三人はお茶っぴきだ。もうほとほと女郎が嫌になったという頼子に、女郎の前借金は無効だという判決が出たので、辞めたければ辞めれるんだという花枝。頼子は、ゲタ職人の男との結婚を夢見て台所用具を風呂敷いっぱい集めていた。頼子がゲタ職人のところに行くことになった。花枝のアパートで送別会を開く。花枝の夫は、頼子の手を握り、よかった、あんなところにいつまでもいちゃいけない、人間のクズばかりだと、無神経に言う。つらそうな表情の花枝。安美からは餞別を入れた預金通帳、夢子からは夫婦茶碗、花枝からは目覚まし時計、ミッキーからは帰りたくなった時ように、交通公社のクーポン券だ。
夢子は、息子の修一に会いたくなり、田舎に帰ることにする。寝たきりの舅(高堂国典)と姑(三好栄子)しかおらず、修一はおもちゃ工場に勤めるために上京したと言われる夢子。吉原に戻り、修一の工場に電話をする夢子。夜遅く花枝が帰宅すると、夫が首を吊ろうとしていた。生きていくために淫売に身を落としたんじゃないか、淫売やっても食っていけないで、何が文化国家だと言う。
組合長の宮崎(加東大介)がニコニコ堂が夜逃げしたと言ってやって来た。安美は探しに出かけるが勿論見つからない。食堂で、馴染客の亀田(多々良純)が妻子と食事をしているところに、出くわす。亀田の妻は綺麗な人ねどちらの方?と尋ねる。役所のタイピストだと答える亀田。納得しない妻は、安美に、いつも主人がお世話になっていますと挨拶をする。青木に会う安美。いつ僕の家に来てくれるんだいという青木に、実は腎臓を悪くして一昨日退院したばかりで、また借金を作ってしまい、更に10万が必要になったのだと言う。
近くの日用品店で、粉ミルクを買う花枝。ミッキーは化粧品を沢山選んで、掛けで頼むわと言って帰る。店の近くに痩せ衰えた頼子がいる。嫁いだ先は、人手が欲しかっただけで、毎日、げた作りを手伝わされ、その上、炊事、洗濯、掃除など寝る暇もないほどこき使われ、それだけ働いても酷い貧乏で、耐えられなくなって逃げて来たのだと言う。普通の主婦でそういうものよと言いながら、一緒に女将さんに謝ってあげると言う花枝。部屋で、金を数えている安美。ひとの気配がして隠すと、おたねだ。出入りの店への金を取り立てに行って来たのだ。駄賃を貰い、みんなあんたのことを女貫一と言っているよと言う。父親が役所の疑獄事件で小菅に入った時に、保釈金20万が工面できずに、どんな思いをしたか、私は金しか信用しないと言う安美。
ミッキーの所に、神戸で貿易商をしている父親が訪ねてきた。去年の春母親が死んだと言う。泣くミッキー。三宮でズベ公やっているくらいならともかく、吉原で女郎をやっている噂で、みんな迷惑をしている。妹に縁談話もある、兄も成績はいいのだが、役所に勤められず自分の会社で働いている、母親は最後までお前が気がかりだといいながら死んでいったという。そんなにお母さんが可哀そうなら、何でお母さんを大事にしなかったのだ、私の極道は、お父ちゃんの極道を継いだだけやというミッキー。帰っていく父親。夢子は、何度電話をしても出なかった息子が会って話したいことがあると言う。うきうきと出かけると、女郎をしている母親のお蔭で迷惑をしているという。電話をしないでくれ、もう二度と会わないと言い、駆け寄る夢子を汚いと突き飛ばして去る修一。息子が成長し、一緒に暮らすことだけを楽しみにしていた夢子は、ショックのあまり気が触れた。また、安美は、青木がやってきて約束通り結婚してくれと言う出来ないと答えると、最初の15万も10万も店の金で、金を返すか、一緒に逃げてくれと言いだす青木。断る安美を殺そうと首を絞め、逃走する。なんとか一命を取り留めたものの、商売どころではなく、今日はもう店を閉めようと言う。主人夫婦。
ニコニコ堂新装開店。安美が買い取ったのだ。夢の里にやってきて、夢子の布団の打直しを受ける。花枝たちにも、開店祝いのタオルを配る。二人も女郎がいなくなったので、九州から出たきたばかりの少女静子(川上安子)が店に上がることになる。静子は、静かに黙っていたが、店の玄関に出て、客に手招きをする・・・。
川崎市民フォーラムシアターで、生誕100年記念 松本清張 第1弾。
60年松竹中村登監督『波の塔(164)』
輪香子(桑野みゆき)が下諏訪駅に降り立つ。プライベートの旅行だったが、長野の役人たちが出迎え案内して回ると言う。輪香子の父親の田沢隆義(二本柳寛)は高級官僚だ。輪香子は、殿村遺跡に出かける。竪穴式住居の中に入って見ると、中で寝ている男を見つけ、驚いて悲鳴を上げる。男の名は小野木(津川雅彦)。原始人が好きで一晩泊っていたのだと言う。
58年松竹大船野村芳太郎監督『張り込み(165)』。
柚木(大木実)は先輩刑事の下岡(宮口精二)の妻(菅井きん)から銭湯の娘(川口のぶ)との縁談を持ち込まれている。実は高倉弓子(高千穂ひずる)と交際しているが、彼女は両親と妹の家計を支えていて、刑事の安月給で生活していく自信がない。今岡の家にいると、連絡があり、深川の質屋三川屋の強盗殺人だ。主犯の山田庄吉(内田良平)は数日後、山谷で捕まる。共犯の石井(田村高弘)の行方が掴めない。本籍地の山口か、3年前石井が上京する前の女の嫁ぎ先かどちらかに立ち寄る可能性があり、出張することになる。
柚木は島崎と佐賀に向かうが、東京駅に新聞記者がいて、省電で横浜まで行き、鹿児島行き急行に飛び乗る。満員で座る場所もなく、夜とはいえ、真夏の暑い車両に乗り続け、佐賀に向かう。やっとの思いで、佐賀駅に着き、佐賀署に挨拶し、かって石井の恋人だった貞子(高峰秀子)の嫁ぎ先の真正面にある旅館に耕作機械の会社で営業をしていると言う。その日から貞子を見張り続ける下岡と柚木。年が離れ、3人の子持ちで、吝嗇で口五月蝿い銀行員の横川仙太郎(松本克平)に後妻として入った貞子は、毎朝家計費を百円を貰って家事一切合切をしている、年齢より老けて見える地味な女だ。
ちょうど店の主人田谷倉造(進藤栄太郎)
所帯疲れの花枝(木暮実千代)が遅刻をして現れる。
頼子の馴染客で、大阪から毎月来ている男ヒーさん(小川虎之助)がやってくる。関西出身同士盛り上がるミッキー。頼子は焼餅を焼いて自分の部屋に無理やり連れていく。夜が更け、花枝の帰り道、赤ん坊を背負った男が待っている。まだ食事をしていないという夫を近くの中華そば屋に連れていく。子供にミルクを与えながら、夫を励ますが、鬱屈した夫は後ろ向きなことしか口にしない。
翌日、国会から戻ってきた田谷が、婆やのおたね(浦辺粂子)に女郎たちを集めさせ、お前らのことを考えているのは自分たち女郎屋だけだ、お上に変わって慈善事業をやっているのだ、売春防止法が通ったら、たちまち食えなくなって困るのはお前らだと一席ぶつ。ヒーさんが昼間ミッキーの客として上がった。ここの掟は仲間の客を取らないことだと怒鳴り込む頼子。私を買ったのは客だというミッキーと、古い魚と新しい魚、誰が考えても新しい魚を買うだろうと言うヒーさん。頼子は泣いて不貞寝をする。
その夜、花枝、夢子、頼子の三人はお茶っぴきだ。もうほとほと女郎が嫌になったという頼子に、女郎の前借金は無効だという判決が出たので、辞めたければ辞めれるんだという花枝。頼子は、ゲタ職人の男との結婚を夢見て台所用具を風呂敷いっぱい集めていた。頼子がゲタ職人のところに行くことになった。花枝のアパートで送別会を開く。花枝の夫は、頼子の手を握り、よかった、あんなところにいつまでもいちゃいけない、人間のクズばかりだと、無神経に言う。つらそうな表情の花枝。安美からは餞別を入れた預金通帳、夢子からは夫婦茶碗、花枝からは目覚まし時計、ミッキーからは帰りたくなった時ように、交通公社のクーポン券だ。
夢子は、息子の修一に会いたくなり、田舎に帰ることにする。寝たきりの舅(高堂国典)と姑(三好栄子)しかおらず、修一はおもちゃ工場に勤めるために上京したと言われる夢子。吉原に戻り、修一の工場に電話をする夢子。夜遅く花枝が帰宅すると、夫が首を吊ろうとしていた。生きていくために淫売に身を落としたんじゃないか、淫売やっても食っていけないで、何が文化国家だと言う。
組合長の宮崎(加東大介)がニコニコ堂が夜逃げしたと言ってやって来た。安美は探しに出かけるが勿論見つからない。食堂で、馴染客の亀田(多々良純)が妻子と食事をしているところに、出くわす。亀田の妻は綺麗な人ねどちらの方?と尋ねる。役所のタイピストだと答える亀田。納得しない妻は、安美に、いつも主人がお世話になっていますと挨拶をする。青木に会う安美。いつ僕の家に来てくれるんだいという青木に、実は腎臓を悪くして一昨日退院したばかりで、また借金を作ってしまい、更に10万が必要になったのだと言う。
近くの日用品店で、粉ミルクを買う花枝。ミッキーは化粧品を沢山選んで、掛けで頼むわと言って帰る。店の近くに痩せ衰えた頼子がいる。嫁いだ先は、人手が欲しかっただけで、毎日、げた作りを手伝わされ、その上、炊事、洗濯、掃除など寝る暇もないほどこき使われ、それだけ働いても酷い貧乏で、耐えられなくなって逃げて来たのだと言う。普通の主婦でそういうものよと言いながら、一緒に女将さんに謝ってあげると言う花枝。部屋で、金を数えている安美。ひとの気配がして隠すと、おたねだ。出入りの店への金を取り立てに行って来たのだ。駄賃を貰い、みんなあんたのことを女貫一と言っているよと言う。父親が役所の疑獄事件で小菅に入った時に、保釈金20万が工面できずに、どんな思いをしたか、私は金しか信用しないと言う安美。
ミッキーの所に、神戸で貿易商をしている父親が訪ねてきた。去年の春母親が死んだと言う。泣くミッキー。三宮でズベ公やっているくらいならともかく、吉原で女郎をやっている噂で、みんな迷惑をしている。妹に縁談話もある、兄も成績はいいのだが、役所に勤められず自分の会社で働いている、母親は最後までお前が気がかりだといいながら死んでいったという。そんなにお母さんが可哀そうなら、何でお母さんを大事にしなかったのだ、私の極道は、お父ちゃんの極道を継いだだけやというミッキー。帰っていく父親。夢子は、何度電話をしても出なかった息子が会って話したいことがあると言う。うきうきと出かけると、女郎をしている母親のお蔭で迷惑をしているという。電話をしないでくれ、もう二度と会わないと言い、駆け寄る夢子を汚いと突き飛ばして去る修一。息子が成長し、一緒に暮らすことだけを楽しみにしていた夢子は、ショックのあまり気が触れた。また、安美は、青木がやってきて約束通り結婚してくれと言う出来ないと答えると、最初の15万も10万も店の金で、金を返すか、一緒に逃げてくれと言いだす青木。断る安美を殺そうと首を絞め、逃走する。なんとか一命を取り留めたものの、商売どころではなく、今日はもう店を閉めようと言う。主人夫婦。
ニコニコ堂新装開店。安美が買い取ったのだ。夢の里にやってきて、夢子の布団の打直しを受ける。花枝たちにも、開店祝いのタオルを配る。二人も女郎がいなくなったので、九州から出たきたばかりの少女静子(川上安子)が店に上がることになる。静子は、静かに黙っていたが、店の玄関に出て、客に手招きをする・・・。
川崎市民フォーラムシアターで、生誕100年記念 松本清張 第1弾。
60年松竹中村登監督『波の塔(164)』
輪香子(桑野みゆき)が下諏訪駅に降り立つ。プライベートの旅行だったが、
58年松竹大船野村芳太郎監督『張り込み(165)』。
柚木(
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