京橋フィルムセンターで、特集・逝ける映画人を偲んで2007-2008。
53年東宝谷口千吉監督『赤線基地(494)』
富士山がバスの車窓から見えている。満州から引き揚げて来た河那辺浩一(三國連太郎)が懐かしそうに富士を眺めている。乗ってきた美しい女(根岸明美)、高額紙幣を出し、お釣りがと言う車掌に、回数券を頂戴、二冊でもいいわよと答える女。バスが揺れ、女は浩一の上に倒れ掛かる。大きな荷物をどかし、女を座らせる。「満州から?」「10年ぶりに帰れました」「ご苦労様です。復員した兄は、浴衣で畳に寝転がりたかったと言っていました」「僕はお袋の作った海苔巻きを腹一杯食べたいですね。山中湖までいらっしゃるのですか。」「違いますけど、どうして?」「学生時分、テニスの練習に行くと、あなたのようなお嬢さんが別荘に来ているのを随分見掛けましたから…」女は笑い出し、他の乗客は冷笑する。
浩一は、?のバス停で降りる。変わらない原っぱや雑木林を歩いて行くと、大きな欅の木が見えてきた。あそこに我が家があるのだ。ようやく帰ってきた実感に涙を浮かべる浩一の目の前に、鉄条網が張り巡らされた進駐軍のさくらキャンプがある。ケヤキは塀の中側だ。街に出ると、米兵相手の土産物屋と飲食店と、パンパンで溢れ返っている。米軍キャンプになっている辺りに5軒ほどあった農家の中の川辺という一家がどこに行ったか知らないかて尋ね歩くが、キャンプが出来てから越して来た人間ばかりだ。一軒の店に入って出て来た、黒人の赤ん坊を抱いた男は、前からある建物は、一軒しかない、役場だと言う。
平泉村役場を訪ねる浩一。中は、とても混み合っている。混血児の赤ん坊をおぶった初老の男に、役場の男(金子信雄)が、「つまり、あんたの娘が産んだその子の父親が誰だか判らないので、あんたの5女として届けたいと言うことだね。何とかしてやるが、もう少し早く来てくれれば良かったのに」と話している。ようやく孝一の番だ。「米軍のキャンプになってしまったケヤキの木の辺りにあった農家のの行き先?判るかもしれない。で、あんたの名前は?」「河那辺浩一」「えっ?」「河那辺…」「浩一兄さん!!僕だよ、弟の杉男だよ。」「杉男」「電報打ってくれれば良かったのに」「みんなを驚かそうと思ったんだ。で親父は元気か?」「最後の手紙は届かなかったんだね。」
杉男が、下新田の池内時子と結婚したんだと言う。浩一と相思相愛だった池内ハルエと従姉妹じゃないかと尋ねると、よくは知らないんだとお茶を濁す杉男。
そこに、男が慌てて入って来て、子供たちに何度注意しても米軍の演習場に入って屑鉄を拾って来るが、今日拾って来て、ガンガン叩いていたら、米軍の不発弾らしいので、リヤカーで運んで来たのだと言う。役所に貼ってある不発弾の見分け方で、砲弾だと指を指すので、みんなパニックだ。外に出てみると、男の子供が、まだガンガン叩いているので、大混乱だ。浩一が冷静に、これはガスボンベだよと言って、みなあの親父は慌て者だからなと胸を撫で下ろすと、またリヤカーが着く、売春宿の女将(賀原夏子)が、ヒロポンで廃人になった娼婦を連れて来たのだ。民生委員として、早く病院に入れてくれと厄介払いをしに来たのだ。金儲けのために、こき使って、死にかけたら役所に連れてくるなんて駄目だと言う?。ヒロポンを配っているのは、じゃあ誰なんだいと笑う女将に、口ごもる杉男。
浩一は、杉男に簡単な地図を書いて貰って、家に帰る。場所は移っていたが、建物は昔のまんまだ。母親のお徳(英百合子)は、前の家が接収されてかなり補償金を貰ったが、お祖父さんが移築するのだと聞かなくて、新築よりお金が掛かったと言う。浩一が、自分の部屋だった離れに荷物を運ぼうとすると、孝一が帰るまでと言う約束で、人に貸していると言う母。母親にも、ハナエのことを尋ねる。お父さんを亡くして苦労して、直ぐに横浜の方に引っ越して音信不通だと答える。浩一が帰ってくるのを影から見ていた三男の健吉(日恵野晃)が、隠れて部屋の仏間に入り、天井裏に隠していたヒロポンの箱を取り出し、スクーターで逃走する。
浩一は、家族に会いに出掛ける。まずは、弟杉男の嫁で、米兵相手の土産物屋で働いてい時子(広瀬嘉子)を訪ねる。酔っ払った米兵が女店員に、朝鮮戦争が休戦になったので、みんな帰国が決まったと言う。女たちが慌てて、店長に伝えると、他の日本人には言うなと口止めし、店内の商品をいち早く処分すると言う。商品を片付け始めると、米兵は酔っ払っての冗談だと言って出て行く。
義妹の時子に声を掛ける浩一。従姉妹のハナエについて、横須賀にいるらしいと言ってから、急に言葉を濁す時子。
次に、平泉小学校に行く。かってハナエはここの教諭だったのだ。小使いの老人は、調べてみたが分からないし、先生方も2交代制なので知っている方はいませんでしたと言う。浩一は、幼馴染で同級生の大西(小林桂樹)に声を掛けられる。大西は、ここで教員をしていた。ハナエからは連絡はないと言う。教室を見ていかないかと声を掛ける。小学校の前は、歓楽街で、米兵とパンパンが愛を語り合っている。校庭では、子供たちが沢山遊んでいるにも関わらず・・・。学校のまん前にこんなものを作るなんてと嘆く浩一に、大西は、そんなことは誰も考えていなかったさ、結局、小学校が引っ越すことになったよと言う。ハナエさんを探しているのか・・。全く消息は知れないが、美しいものは思い出にしておけと大西。
教室を覗いて行かないかと言って、教室に入る。演習が始まり、迫撃砲の音で、話はできない。大西は、算数の予定だったが、演習が始まったので図画に変更すると言う。適応力のある子供たちは、平然とスケッチブックと開くのだ。みな、花瓶の花や自分の好きなものを描いている。一人、教室の窓に座って鼻くそをほじりながら絵を描いている男の子(伊東隆)がいる。大西が「敏男!何を描いているんだ?」と尋ねると、指を指す先は、米兵とパンパンが愛を語り合っている姿だ。好きなものを描けばいいが、花瓶でも描こうと言う大西。「敏男は覚えているか?お前の兄ちゃんの浩一だよ」「知っている!!」浩一が出征してから敏男は生まれたのだ。「写真で見ている」と言って嬉しそうな敏男。大西は、鼻くそをいつも穿っていて、お前の子供の頃にそっくりだと言う。
浩一と敏男は、爺さんの重作(高堂国典)が畑を耕しているところに出かける。嬉し泣きをする重作の畑は、米軍のブルトーザーが走り回る真ん中にある。浩一が「すべて変わってしまったな」というと、この裾野は、昔は、日本軍の演習地だった、今はアメリカだが、次はどこの兵隊がくるやら・・・、何も変わっていないのだと言って笑う。
急に敏男は、走ってきた米軍のバスを止める。乗り込むと米軍キャンプで働いている日本人が乗っている。そこに妹の靜子(河合玉枝)が乗っている。男の労働者が、女は体一つで儲かって羨ましいと絡みはじめ、女たちと激しい言い合いになったので、浩一、静子、敏男はバスを降りる。歩いていると、後ろから米兵が日本人の娘を乗せて追い越していく。次女の文子(青山京子)だ。大丈夫なのかと浩一が心配すると、あの米兵はボブさんと言って、とても紳士的な人なので心配ないと言う。スクーターが戻ってきて、文子を降ろす。ボブは朝鮮戦争の休戦でようやく国に帰れると喜んでいる。兄弟4人で、歌を歌って帰る。
帰宅し、浩一が杉男を連れて、裏の井戸で足を洗おうとすると、離れに、日本人の女のところに米兵が来ている。日本人の女はオンリーのジュリーだ。女の顔を見て浩一は驚く、先程バスで乗り合わせた女だったのだ。男とベタベタしているジュリーを憎悪の眼差しで睨む浩一。
由岐子(根岸明美)
神保町シアターで、男優・佐田啓二。
61年松竹京都五所平之助監督『雲がちぎれる時(495)』
高知県足摺岬国定公園を清水から中村迄走るバスに、運転手の三崎(佐田啓二)と車掌の加江子が乗務している。伊豆田峠は、狭く断崖を蛇行して走る難所だ。もう直ぐ伊豆田トンネルが開通すれば、楽になるのだ。途中、窪津(伊藤雄之助)が運転するバスと擦れ違う。5時20分に、中村に到着する。顔を洗っていた三崎に手拭いを差し出す加江子。濡れた両手で加江子の顔を挟む。驚く加江子に冷たいだろうと笑う三崎。今度お母さんに会ってねと言う加江子に、大きく頷く三崎。バスに冷却用の水をバケツから注ぐのは車掌の仕事だ。5時40分に、土佐清水に向けてバスは発車する。
59年松竹大船井上和男監督『ハイ・ティーン(496)』
朝のプール、スラリと伸びた足をした娘(桑野みゆき)が、飛び込み台からダイブする。係員二人、お前また勝手に潜り込んで、どこから入りやがったと怒っている。娘はセーラー服に着替え、学校に向かう。
南ヶ丘高校に、若手教師の寺崎伸一(佐田啓二)が赴任してきた。前の学校では、熱意のあまり一度だけ、生徒に手を上げたことがあるらしい。校長の立石(東野英治郎)は、暴力は弱い人間のすることだ、二度と生徒に手を上げないことを約束させ、3年?組の担任を命ずる。教頭の渋川(下元勉)は、丘田早苗やラグビー部員たち、あんな問題児ばかりのクラスは若い先生には荷が重いのではと心配するが、寺崎は承諾する。校庭では、ラグビー部のメンバーが練習をしている。メンバーの一人が誰かの弁当を食べている。今日は二つ盗んでやったぜ、ともう一つを投げるっ、ラグビーボールのように奪い合う部員たち。サイレンが鳴る。そういえば、新任の教師が4時限目からやって来るらしいな、ちょっと揉んでやろうかと、教室に戻る部員たち。
高田馬場にあるライブハウス四谷天窓で、実籾の歌姫小笠原愛のライブを久しぶりに。何だか、いい具合に力が抜けて、お客さんと一緒に楽しもうという感じでよかった。
53年東宝谷口千吉監督『赤線基地(494)』
浩一は、?
平泉村役場を訪ねる浩一。中は、とても混み合っている。
杉男が、下新田の池内時子と結婚したんだと言う。浩一と相思相愛だった池内ハルエ
そこに、男が慌てて入って来て、
浩一は、杉男に簡単な地図を書いて貰って、
浩一は、
義妹の時子に声を掛ける浩一。従姉妹のハナエについて、
次に、平泉小学校に行く。かってハナエはここの教諭だったのだ。小使いの老人は、調べてみたが分からないし、先生方も2交代制なので知っている方はいませんでしたと言う。浩一は、幼馴染で同級生の大西(小林桂樹)に声を掛けられる。大西は、ここで教員をしていた。ハナエからは連絡はないと言う。教室を見ていかないかと声を掛ける。小学校の前は、歓楽街で、米兵とパンパンが愛を語り合っている。校庭では、子供たちが沢山遊んでいるにも関わらず・・・。学校のまん前にこんなものを作るなんてと嘆く浩一に、大西は、そんなことは誰も考えていなかったさ、結局、小学校が引っ越すことになったよと言う。ハナエさんを探しているのか・・。全く消息は知れないが、美しいものは思い出にしておけと大西。
教室を覗いて行かないかと言って、教室に入る。演習が始まり、迫撃砲の音で、話はできない。大西は、算数の予定だったが、演習が始まったので図画に変更すると言う。適応力のある子供たちは、平然とスケッチブックと開くのだ。みな、花瓶の花や自分の好きなものを描いている。一人、教室の窓に座って鼻くそをほじりながら絵を描いている男の子(伊東隆)がいる。大西が「敏男!何を描いているんだ?」と尋ねると、指を指す先は、米兵とパンパンが愛を語り合っている姿だ。好きなものを描けばいいが、花瓶でも描こうと言う大西。「敏男は覚えているか?お前の兄ちゃんの浩一だよ」「知っている!!」浩一が出征してから敏男は生まれたのだ。「写真で見ている」と言って嬉しそうな敏男。大西は、鼻くそをいつも穿っていて、お前の子供の頃にそっくりだと言う。
浩一と敏男は、爺さんの重作(高堂国典)が畑を耕しているところに出かける。嬉し泣きをする重作の畑は、米軍のブルトーザーが走り回る真ん中にある。浩一が「すべて変わってしまったな」というと、この裾野は、昔は、日本軍の演習地だった、今はアメリカだが、次はどこの兵隊がくるやら・・・、何も変わっていないのだと言って笑う。
急に敏男は、走ってきた米軍のバスを止める。乗り込むと米軍キャンプで働いている日本人が乗っている。そこに妹の靜子(河合玉枝)が乗っている。男の労働者が、女は体一つで儲かって羨ましいと絡みはじめ、女たちと激しい言い合いになったので、浩一、静子、敏男はバスを降りる。歩いていると、後ろから米兵が日本人の娘を乗せて追い越していく。次女の文子(青山京子)だ。大丈夫なのかと浩一が心配すると、あの米兵はボブさんと言って、とても紳士的な人なので心配ないと言う。スクーターが戻ってきて、文子を降ろす。ボブは朝鮮戦争の休戦でようやく国に帰れると喜んでいる。兄弟4人で、歌を歌って帰る。
帰宅し、浩一が杉男を連れて、裏の井戸で足を洗おうとすると、離れに、日本人の女のところに米兵が来ている。日本人の女はオンリーのジュリーだ。女の顔を見て浩一は驚く、先程バスで乗り合わせた女だったのだ。男とベタベタしているジュリーを憎悪の眼差しで睨む浩一。
由岐子(根岸明美)
神保町シアターで、男優・佐田啓二。
61年松竹京都五所平之助監督『雲がちぎれる時(495)』
高知県足摺岬国定公園を清水から中村迄走るバスに、
59年松竹大船井上和男監督『ハイ・ティーン(496)』
南ヶ丘高校に、若手教師の寺崎伸一(佐田啓二)が赴任してきた。
高田馬場にあるライブハウス四谷天窓で、
0 件のコメント:
コメントを投稿