2009年8月27日木曜日

びっくり続きの一日だ。

   阿佐ヶ谷ラピュタで、昭和の銀幕に輝くヒロイン【第48弾】星由里子
   67年東宝須川栄三監督『颱風とざくろ(490)』
    桑田英子(星由里子)が、更衣室で着替えていると、坂本一雄(中山仁)が入ってくる。坂本くん!!と言ってラケットで一雄の頭をぶつ英子。とある大学のテニスサークルの女子部員5名は、コーチに卒業生で製薬会社に勤める一夫に依頼していた。1メートル80センチの身長の精悍な肉体と整った顔立ちに、皆魅力を感じていたからだ。練習後、女子部員たちがシャワー室を占拠しているので、一雄は離れたシャワーを使いに行こうとする。女子たちは、やましい気持ちがないなら一緒に浴びないかと声を掛けからかった
  意外にも僕の父親は産婦人科医だから女性に対して免疫はあるのだと言って、シャワー室に入ってくる。女子部員永瀬やす子(菱見百合子)島村秋子(桜井浩子)柴山和子(藤あきみ)野口弘子(佐川亜梨)に英子は、悲鳴を上げる。みな、一雄の裸身を見なかったと言うが、英子が、ギリシャの彫像と同じで、男性の印は、案外無邪気で可愛らしいと思ったと感想を述べると、結局みんな見ていたことが分かる。
  秋になって、英子は、坂本家に招かれた。一雄の父で産科医の坂本信太郎(清水将夫)母房子(高峰三枝子)弟の二郎(黒沢年男)けい子(いしだあゆみ)のとても仲のいい家族だ。二郎が、兄貴はもてていますか?と尋ねる。英子は、二郎さんは割と鈍いのね、テニス部の女子部員たちは、一雄さんにコーチを頼む時点で、分かるでしょうと答える。ちくしょう、工学部にいるので、女子はいないから、さっぱりもてないと愚痴を言う二郎。房子が、英子さんのご実家はどういうご商売をしていらっしゃるの?と聞くと、葬儀屋ですと答える。城西葬儀社という会社をやっていますというと、産婦人科と葬儀屋という取り合わせは面白いなとみな笑う。英子さんの弟さんがお迎えに見えていますと女中が言う。あら夕方に迎えに来てと言っておいたのに随分早いわと英子。家族みな玄関に出てみると、英子の弟の貞三(田村亮)が霊柩車に乗って待っていた。びっくりする一雄たち。貞三を紹介する英子。けい子と貞三は、お互い気に入ったようだ。

   恋人を亡くし、肉体関係を持たなかったことを後悔する主人公、今の恋愛観とは、掛け離れているが、その頃には既に建前ではなく本音として女性にもSEXが受け身なものではない。まあ、平安時代の源氏物語でさえ、女にも恋愛をする権利がある(笑)があったし、もっと後にも男主導だったにしても夜這いなど庶民の間では日常的だったのだから、男女7歳にして席を同じゅうせずという明治時代の官製の道徳教育によるものだろう。しかし、この頃の星由里子は本当に美しい。ショートなボブが似合ってため息が出る。しかし、いきなりトップバストを出したのはびっくりして、得した気分に(苦笑)

   武満徹の映画音楽
   63年岩波映画製作所羽仁進監督『彼女と彼(491)』
   百合ヶ丘の近くに大きな団地が出来た。石川直子(左幸子)は、役所(農林水産省)に勤める夫の栄一(岡田英次)とそこで暮らしている。画一的なコンクリート造りの2DKでの生活だが、子供のない二人の生活は、Wベッドが象徴する甘いものだった。ある日の夜中、直子は、団地に隣接するバタヤ部落のバラックが燃えていることに気がつく。激しく燃え盛り逃げ惑うバタヤ部落の住人たちの姿が見える。
   栄一を起こすが、ここは耐火構造だし、風向きが反対なので、大丈夫だろうと言う。見に行くという直子に、危ないから止めなさいと止める栄一。尚もサイレンが鳴らないので、110番に電話をしに行くと言う直子に、僕が行くよ、それに消防は119番だよと言って服を着はじめる栄一。そこにサイレンが聞こえ、ほらと言って、興奮する直子をなだめ、ベッドに戻る栄一。
   翌日、火事の後に行ってみる直子。廃材やトタンで出来ているバラックは跡形もなく焼け落ちていた。直子は、焼け跡で物を拾っている盲目の少女花子(五十嵐まりこ)に出会う。バタヤ部落の子供なのだろうか、空き地に落ちている玩具を拾って、思い当たる中村と言う団地の家に持っていく。ブザーを押そうとすると、子供が眠っているので、ブザーは押さないでくださいという札に気が付き、ドアをノックする。玩具を渡すと、子供がズック靴を履いていたのに、焼け跡で遊んでいて、釘を踏み抜いて怪我をしたのだと聞かされる。団地内で、森永乳業の宣伝カーが来て子供たちに風船を配っている。直子は、宣伝員(蜷川幸雄)に、今子供が病気で寝ているので、離れた所に行ってくれと言う。動きはじめた宣伝カーに、私にも風船をくださいと声を掛ける。風船を貰った直子は嬉しそうだ。
   団地の住人たちには、バタヤ部落は目障りだ。団地にあるゴミ捨て場に勝手に入り、空き缶などの金に換わる屑鉄や、段ボールなどを、勝手に持って行って生活をしているのだ。美しい日常に入り込んでくる、汚く貧乏な闖入者だ。間にある広い空き地では、部落の子供たちと団地の子供たちが、大人数で戦争ごっこをやっている。土だらけになっているだけではなく、ぶったり殴ったりしているので、直子は間に入って、危ないわよ、ルール通りにやりましょうと叫ぶ。じゃあおばさん審判やってよと頼まれるが、直子自身ももみくちゃだ。
   直子は、満州から苦労をして引揚げてきた記憶がある。団地の主婦たちの噂話でも、直子は大陸からの引揚げ者で、苦労をしてきただけに、挨拶がしっかりして、腰も低いと好感をもたれているが、特に親しい人がいるわけではない。インテリで将来を嘱望される夫の、快適な家庭の番人だけの日常、夫を愛する故、もっと夫と生活を共有して、もっと話をしたいが忙しい夫が出勤すると、代わり映えのせず、独りの日常が待っているだけだ。ある時、バタ屋の男に見覚えがあることに気が付く。その男は、かって夫の栄一が学生時代の社会活動をしていた時の、大学の同級生の伊古奈(山下菊二)だった。
   熱意に溢れた活動家だった伊古奈が、どういう経緯で社会から落ちこぼれて、バタヤとなり、盲人の少女にお父ちゃんと呼ばれ、大きな黒い犬のクマと暮すようになったのかは、直子にも栄一にもわからない。しかし、直子は澄んだ目をした伊古奈が気になってしょうがない。夫の旧友として、団地の部屋に上げる。しかし、伊古奈は、夫が役所のゴルフ大会で貰った優勝カップを盗み、売ってしまう。激怒する栄一と、当惑する直子。しかし、伊古奈は、盗んでいないとあくまで言い張るのだ。道端でも、団地の部屋の中にある物は全て落ちている物だという認識なのかもしれない。
   直子は、栄一に、旧友なら、伊古奈の就職を世話してやってくれないかと頼む。新妻の気まぐれだと思った栄一は、生返事ながらも、水道協会の仕事を見つけてくる。休日に、二人でバタヤ部落を訪ねて、伊古奈に話すが、頑なに拒絶し、自分の今の仕事を取り上げないでくれと逃げていく。
   栄一は、もう伊古奈に係わるのは止めようと言い、直子も頷くが、何もない昼間に、窓から、外を見ていて、クマを連れた伊古奈の姿を見つけると、手を振り、部屋に上げてしまうのだ。バタヤ部落は、不法占拠なので、団地の管理組合や行政は、取り壊そうと考えている。手始めに、その敷地に塀を作り、出入りを出来ないようにする。しかし、子供たちは、塀の下をくぐって出入りをしていたが、徐々に両者の生活は分断されていく。いつしか、団地で、彼らに声を掛けるのは直子一人になる。


  クリーニング屋の店員白石浩二(長谷川明男)盲目の少女花子佐々木さんの奥さん(木村俊恵)
 
  この時代、まさに自分は武蔵野市にある団地に住む5歳児だった。当時の公団住宅の住人は、庶民の中でも、給与生活をしている、その後の中流家庭になっていく核家族だった。既に、団地内の各家庭には、白黒だがテレビがあり、冷蔵庫と、洗濯機と、ステレオと扇風機があった。徐々にマイカーを持つ家が出始め、家族で旅行に出掛けたりするような生活だ。しかし、高度成長の中で、取り残されていく人々や彼らが住む住居も、そこここに存在していた。大人たちは、眉を顰めるが、子供たちは意外に何の違和感もなく一緒に遊んでいた。
  しかし、どこかの親が、あそこの子達とは出来るだけ遊ばないようにしなさいと言い、映画のように実際の塀ではないが、その一角との間に社会の塀のようなものを作り始めると、野球のグローブや、ローラースケートや、子供用自転車など買ってもらえる子と買ってもらえない子を区別というより、差別する遊びが流行り始め、みんなあれを持っている、買って貰っていると所有物の量が、幸不幸を決める一つの秤になってしまった。そうして育てられた自分たちの世代は、子供たちに、塾やスイミングスクール漬けの毎日を与えて、遊び場も家の中で服が汚れもしなくなった。お父さんは外で家族のために働き、お母さんは、家で家事をして、少ない子供を育てる近代家父長制が、全てを壊し始めた時代の記録となる映画だ。

  その後、新宿ジュンク堂で本を買い、神谷町の元の会社へ、映画作品の提案。かなり面白いし、別に高い訳でもないので早く決めて欲しいなあ。

   本当は、それから銀座シネパトスで、小林正樹の「東京裁判」を観に行く筈だったが、4時間半の長さにメゲて、虎ノ門で酒飲もうと無理矢理後輩Mを誘い出し、一昨日のM畏兄から聞いていた生ビール一杯百円の店に行く。社用で使っても別に恥ずかしくなさげな中華料理屋で、本当に百円だった。厳しい世の中だと痛感する。後輩Kが途中参加したので、二軒目に、神谷町の立ち飲み屋に。いい感じで酔っ払っていたら、一服した後輩Kが、急に具合が悪くなる。水を飲ませ、少し休ませたら、顔色にも赤みが戻って、落ち着いたので帰宅したが、心配した。かなり酔っていたので、心配して声を掛けているというより、体調の悪い後輩に絡んでいるようだったなと反省する。帰宅して、携帯に電話をしたら、無事帰宅したようなので、安心する。

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