2009年3月2日月曜日

パンデミック(笑)

   
    赤坂メンタルクリニックに行き、シネマート六本木でメンズデー。
   是枝裕和監督『大丈夫であるようにーCocco 終らない旅ー(117)』
   2007年11月21日Zepp NAGOYAからスタートしたコンサートツアー“きらきら”を追いかけつつ、沖縄、神戸(阪神淡路大震災)青森六ヶ所村、広島と、生きることのテーマに迫っていく彼女の生き方、考え方を描くドキュメンタリー。幾つか印象に残った発言、①小学校6年生の時の夢(1)アジアからの留学生向けの下宿を作る(2)排気ガスの出ない車を発明する(3)バレエでジゼルを踊る。②六ヶ所村の存在を知らせる手紙をくれたファンを、女の子でもファンの子でもなく、青森の女と呼ぶ。ファンレターの殆どは、助けて下さいと言うメッセージばかりだが、彼女は違った。③沖縄と六ヶ所村について、世の中には飴と鞭がある。それを受け入れないと生活出来ないから、受け入れると諦めると言う気持ちだ。沖縄の新聞の主語は沖縄は、だったので、沖縄の現実を何とかして欲しいばかりだったけど、デビューして色んなところに行くと、沖縄が日本中の基地を押し付けられているように、日本中の核燃料のゴミを押し付けられている六ヶ所村があることを知った。④是枝監督が、彼女が物を食べるのを見たのは、黒砂糖のかけらだけだ。最後に彼女が拒食症の治療を受けるために入院すると言うテロップが入る。
     最後に、彼女が砂浜に穴を掘り、ファンから貰った手紙を全て燃やす場面がある。自分の髪もどんどん切って火にくべていく。「髪の毛って、死んだ人の臭いがする」。燃える火に照らされている彼女の横顔は、本当に美しい。
     音声もう少しクオリティ高かったらと思ってしまうが、ドキュメンタリーとして、素晴らしい。

     瀬々敬久監督『感染列島(118)』。
    東京都いずみの市市営病院のER部門の医師、松岡剛(妻夫木聡)は、風邪の患者真鍋秀俊を診る。インフルエンザの検査は陰性だったので、数日安静にしていれば大丈夫だと帰宅させる。しかし、翌日搬送されてきた真鍋は、高熱を発し、致命的な症状で、吐血し、その血を、安藤医師(佐藤浩一)は顔面に浴びることになる。真鍋の妻、麻美(池脇千鶴)も、発熱しているが、夫が亡くなったことで、松岡の診断を責める。徐々に重篤な患者が運び込まれる。市内の神倉養鶏場に鶏インフルエンザが発症する。市内で発症した患者の原因が判明しないため、鶏インフルエンザではないかとの憶測が生まれ神倉(光石研)は悪戯電話を受けるようになった。神倉の娘の中学生、茜(夏緒)は、学校でいじめられる。ボーイフレンドの本橋研一(太賀)が唯一の味方だ。
   最初に病気が判明したいずみの市営病院は、WHOのメディカル・オフィサー小林栄子(壇れい)をリーダーとする医療チームが派遣され、隔離病院となる。病院の院内感染主任の高山(金田明夫)らは、その高圧的な態度で反発する。栄子は、実はかって松岡が医学生時代に大学助手で、交際していたが、栄子が海外に留学し別れた過去があった・・・・。
   うーん、CGで廃墟になった日本の各都市と、いずみの市営病院との温度差がある。一時、病人が殺到し、病院の周囲は大混乱になるが、一瞬のことで、その後ストーリーに関係のあるキャストが訪れるだけだ。病院内も戦場だと言う割には、隔離病棟だけのことで、そこから出ると、大混乱していたこともあったが、すぐに平穏を取り戻している。銀座や渋谷、大阪、広島、各都市は、暴動が起きた後、あっというまに、廃墟になり、無人になる。まるで日本に人間が、出演者以外いなくなってしまったように(苦笑)。その割には、いずみの市営病院は、院内だけでなく、外の看板までちゃんと灯りが付いているし、政府機関の人間は、ちゃんと機能してスーツ、ネクタイ姿だ。
   ストーリーも、一病院の医師である妻夫木と、WHOのメディカルオフィサーの壇れいのラブストーリーにしてしまっているので、日本を救うのは二人しかいないのかという感じだ。軍人が完全防備で感染者を収容している横で、二人は、マスクもつけず、普通の姿で歩いている。飛沫感染なのに、大丈夫かよと心配するまでもない。大混乱の中、妻夫木はウィルス感染源を特定しに、海外渡航してしまう。それも、国交のない国に。
   妻夫木、壇れいのラブストーリーでなく、群像劇にしなければいけなかっただろう。しかし、群像劇は、脚本と演出によほど力量がないと、構成できないだろう。話題作りに、テレビお茶の間キャスティングで、脇役に芸人とかを出演させてしまうので、更に薄っぺらくなってしまう。テレビ特番でもおかしくない作り方だな。ウィルス感染の啓蒙だったら、テレビドラマを最初に作ればよかっただろうに・・・。海外セールスでは、去年のカンヌで、映像も何もない段階で、オファーが何十社もあったというが、パニック映画だからな。買ってしまった担当者は出来上がったものを見て、ウィルスパニック映画かゾンビ映画といったベタなジャケットを作ってビデオストレートな感じ(苦笑)。カンニング竹山や爆笑問題の田中は、日本では人気のコメディアンのカメオ出演(苦笑)。ソフトバンクのホワイト家族のお兄ちゃんに至っては、誰にもわからないだろうな(更に苦笑)。
   おくりびとで邦画この世の春に浮かれるマスコミと、この映画が表すあまりに悲しい現実に、疲れて、国立劇場の落語研究会に振られた元同僚と飲むことに。劇映画が駄目で、ドキュメンタリーはいいということは、ストーリーを作ることと、ストーリーを理解することに関して、邦画界にあまりに人材がいないと言うことなんだろう。自棄酒、自棄喰いだっ。

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