2009年6月28日日曜日

昭和の映画4本

    神保町シアターで、川本三郎編 昭和映画紀行 観光バスの行かない町
    56年新東宝清水宏監督『何故彼女等はそうなったか(367)』
    愛媛県丸亀市の丸亀城に、終戦後の混乱の中で生まれた非行少女たちの更生施設がある。午前中は、勉強、午後は手内職をしている。今日も逃亡癖のある畑弘子(中村雅子)がやって来た。園長(高橋豊子)と小田先生(香川京子)は、ウチの子たちは、片親か両親ともにいない家庭がほとんどだけど、あなたはご両親がいて、家計も豊かなようなのに、何で家が嫌なの?と聞くが弘子は何も答えない。小田は教室に連れて行き、皆に紹介する。長谷川米子(三重明子)たちと同室だと言って、荷物を運んで上げてと頼む。それ運んでと女中扱いに米子はムッとする。部屋の押入に荷物を入れ、小田が目を離した隙に、弘子と米子は取っ組み合いの喧嘩だ。小田や他の生徒たちが駆け付けて引き離す。
   その夜、寝静まった廊下を忍び足で進む米子の姿がある。米子は小田の部屋に入ってくる。驚いて起きた小田に、先生のことが好きになったので布団に入っていいかと尋ねる。実は私は妾の子で、実母が生きているかどうかさえ教えて貰えないのだと告白した。小田は優しく抱き締めてやり、自分の部屋に帰りなさいと諭す。頷いて小田の部屋を出て行く弘子。弘子のパジャマのポケットから落ちたらしい煙草(光)を見つける小田。翌日城址の外れまで、弘子を連れて行く君子(三ツ矢歌子?)。昨晩部屋を抜け出したことを黙っていて欲しければ、煙草を寄越せと言う。持っていないと言うとあんたの手のヤニ焼けを見ればすぐ分かると言い、服の縫い目や折り返しを改める君子。パジャマのポケットに入っているから上げると言う弘子。

   54年エイトプロ五所平之助監督『大阪の宿(368)』
   大阪キタのおでんや蛸政に、三田喬一(佐野周二)と住友(十朱久雄)がやってくる。三田は東京で重役を殴って大阪支社に左遷されてきた。まだ、下宿が決まらず、会社の宿直室に寝泊まりしているのだ。保証金など高いし、なかなか手頃な下宿と言ってもと蛸政の主人(中村是好)が言う。酔いつぶれていた年寄り(藤原釜足)が、いいところがあると言う。土佐濠にある旅館酔月に行けと言う。
    さっそく翌日、三田は酔月に下宿する。沢山の本を持って転がり込んだ三田を、女中たちは学校の先生だと思っていたらしい。失業中のコックの夫を持つおりか(水戸光子)、夫が戦死、息子と別れ働くおつぎ(川崎弘子)、会社の重役をしている長逗留の客野呂(多々良純)と関係しているらしいアプレガールのお米(左)、死んだ夫から残された旅館の格式を守るといいながら、欲深で、人使いの荒い女将(三好栄子)、昨夜、酔月を勧めた酔っ払いは、女将の兄だが、小遣いを貰う代わりに雑用すべてやらされているおっさんだった。
   三田が出勤する。途中ポストに病身の母親に手紙を出そうとするととても美人な娘と出会い見とれる三田。会社に出ると支店長(田中春男)が寄ってくる。支店長はどうも東京から社員が来るのは好きではないらしい。

   61年東宝橋本忍監督『南の風と波(369)』
   高知県足摺岬の先端に近い漁村、バスがやってくる。ここから折り返して戻って行くのだ。バスから孫娘を背負った井上たつ(賀原夏子)が降りてくる。歯がいたくなって、町まで出たが痛くなくなったと話している。バス停前の雑貨屋の圭吉(浜村純)は、たつの兄だ。そこにやってきた組合長の川島(松本染升)と、今日戻ってくる筈の太平丸の話をしている。浜では、地曳網を曳いている。老人の駒治(藤原釜足)が、夕飯の菜にするくらいのカマスを分けてくれと寄ってくる。網元は、昔と違って捕れる魚の量も少ないので駄目だと言う。網を曳いていた美しい娘加代(星由里子)が、私が働いて貰った分から分けてあげると申し出た。
   沖に、太平丸が現れたと話す。機関長をしている井上峰男(小池朝雄)の妻道子(富士栄喜代子)が埠頭まで走ってやってくる。顔は日焼けして真っ黒だ。船長の竹内栄吉(西村晃)、甲板員の原順平(夏木陽介)と?の若者二人は大阪から運んできた荷を降ろす。炭の荷捌きの指示は、峰男の弟の英次(田中邦衛)が

   池袋新文芸坐で、「グランプリ女優」と呼ばれた、大映の大輪 京マチ子のすべて
   53年大映成瀬巳喜男監督『あにいもうと(370)』
   多摩川の河原で川砂利をダンプに積む作業をする男たちの中に老人夫喜三(宮嶋健一)の姿がある。そこにかっては七艘の川船と70人の人夫を束ねる川師の親分だった赤座(山本礼三郎)が現れ、声を掛ける。喜三!上がったら酒を飲もうと誘う赤座。ふらふらと歩く赤座が、アイスキャンデー屋の前を通り過ぎる。中からりき(浦辺粂子)が出て来て、お父さんと声を掛けるが、気がつかない。
バスが辻屋前と言う停留所に止まり、赤座の娘の‘さん'(久我美子)が降りてくる。バス停前にある辻屋製麺所の鯛一(堀雄二)に声を掛けると、さんの姉のもんが4,5日前に帰って来たと言う。しかし、鯛一の養母とき子(本間文子)は、鯛一とさんが話をするのを快く思っていないようだ。男をからかって姉さんの二の舞になると酷いことを言うとき子。
    さんが歩いていると石屋の親方が、さんちゃん休みか?伊之吉に彫らせたい石があるが、金を貰うと仕事サボってしまうので、用があると伊之に伝えてくれと頼まれる。さんは、河原の店に顔を出し、もんのことを聞く。突然、奉公先のお寺から暇を取って帰って来たと言う。さんは竹張りの下駄を買ってきていた。喜ぶりき。
    その頃家では気怠そうに裏庭の井戸水で体を拭くもん(京マチ子)の姿がある。浴衣に着替え、横になるもん。そこに伊之吉(森雅之)が帰ってくる。もんが寝ていることに気がつき、こんなふしだらな妹が家にいると迷惑だ。どこの相手か判らないガキを孕んで帰ってきて、犬だか猫だかが出てくる前に早く始末しやがれと毒づく。子供の時から可愛がっていた妹が妊娠して帰って来たことを、どう受け入れればよいのか分からず乱暴な罵りを吐いてしまう伊之吉なのだ。もんが涙を流し、荷物をまとめていると、りきとさんが戻ってくる。引き止めようとするが、お袋が甘いからこんな自堕落な女になったんだと言う伊之吉。
    赤座は、今でもツケが唯一きく安居酒屋で、喜三を相手に呑んでくだを巻いている。堤防がコンクリートで固められるまで、赤座の組の天下だった。県の進める近代土木の前にすっかり出る幕はなくなってしまったのだ。



もん(京マチ子)伊之吉(森雅之)さん(久我美子)鯛一(堀雄二)小畑(船越英二)赤座(山本礼三郎)りき(浦辺粂子)貫一(潮万太郎)喜三(宮嶋健一)坊さん(河原侃二)豊五郎(山田禅二)とき子婆さん(本間文子)

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