2009年6月20日土曜日

やっぱり、映画で70年代を過ごした人間には、神代辰巳は特別な監督だ。

    晴天と聞いて、洗濯し、近所で食材を購入。

    川崎市民ミョージアムで、生誕100年松本清張 第3弾
    58年大映田中重雄監督『共犯者(355)』
    福岡市内、10ヶ月払い信用第一、丸掘と看板が掛かっている家具屋。店内の社長室は無人で、3時福岡ホテルとメモがある。婚約披露パーティーらしい。来賓の商工会議所所長の挨拶、内堀彦介(根上淳)と吉沢雅恵(叶順子)さんおめでとうと言って、一介の外交員をしていた内堀が一代で店を興し、僅か4、5年で九州で知らないもののいないデパートにしたと誉めている。
    内堀の回想になる。大きく重いジュラルミンのスーツケースを下げて、温泉町の店に食器を卸している堀内。その日は、温泉宿に泊まりだ。風呂に入ると顔馴染みの同業者の町田武治(高松英郎)に会う。これからのことを考えると憂鬱だと言う内堀に、戦後8年この仕事をし続けてきた自分は、先のことなど考えなくなったと言う。高崎の家を出た途端何もかも忘れることにしているのだ。まだこの仕事を始め4年の自分はとてもそんな心境にはなれない、ボロい儲け話はないもんですかねと内堀が言うと、簡単にあると答える町田。
    その夜、浴衣姿の二人、そろそろバスの時間だ。出掛けようと声を掛ける町田。山陰銀行平野支店、覆面をした町田が宿直の行員に金庫を開けさせている。行員の妻が縛られ気を失っている。金庫が開くなり内堀に袋に詰めさせ、逃げようとした行員を刺し殺す町田。近くの草原で、金を改める。やはり田舎銀行だ、番号が揃っていない、五百万がお前の取り分だ、今日限りお互い顔も名前も知らないことにしよう、3年位は鳴かず飛ばずで静かにしていろよと言って去る町田。金の入った袋を下げ茫然としている内堀。
     博多湾を臨む海岸に雅恵と内堀がいる。何を考えているの?お仕事のことでしょうと雅恵。いやあなたのことを考えていたんですと内堀。先ほどの婚約披露パーティーでの、卓見と誠実、高邁な性格ってホントにそうだわと雅恵。からかわないで下さい、でも私の知る限り、あなたが一番誠実だったので結婚を決意させたの、あなたは僕の性格で決めたのですか、いえ女は愛しているだけではなく、やはり尊敬できる相手でなければ、結婚しないわ。しかし、結婚前に一つだけお願いがある。お互い隠し事のない夫婦になりたい、それだけ約束してくれと雅恵。
     雅恵の実家、父親(宮口精二)は博多人形師だ。男手で育ててきたせいど、とんだ跳ね返り娘になってしまった。しかし、雅恵を幸せにしてやってくれと頭を下げる父親。銀行強盗の過去が頭を占めて、表情が冴えない内堀。政江との結婚式までに、町田が現れ、自分の今を壊されることだけは防ごうと町田の近況を探ることにする。電話局に高崎の町田武治を尋ねると、漆器屋を営んでいることが判る。
     次に群馬の新聞に広告を出す内堀。高崎の農家でスギ(町田博子)が、夫の竹岡良一(船越英二)の失業で実家に帰ってきた娘の悦子(八潮悠子)に声を掛ける。良一さんは今日も釣りかい?悦子は健気にミシンを踏み、洋裁の仕事を受け生計を支えているのだ。良一宛てに福岡から手紙が届いていると言われ、大喜びの悦子、そこに良一が帰ってくる。福岡の商工特報社の高崎通信員として、二万円の月給を貰えることになったのだ。嬉し泣きの悦子。仕事は高崎の数軒の中小企業の経営状態や、経営者の公私を定期的に報告するものだ。
     その中の一軒、町田漆器店を、窺う竹岡。中では、社長の町田と女店員の夏子(若松和子)と番頭の大森(星ひかる)と売上の確かめをしている。町田と夏子は出来ているようだ。その時、店の電話が鳴る。町田の妻からだ。とにかく直ぐ帰宅しろと言う。月末で締めだから忙しいと言っても、大事な子供の学校のことだからと折れない妻。強引に電話を切る町田。上州名物のかかあ天下ですなと大森。
    町田の商売は順調で、家庭もうまく行っていると言う竹岡からの報告は満足出来るものだった。しかし、4回レポートをさせて貰っているが、一度福岡の本社に出張させてもらい、ご挨拶をした上で、今後の取材方針について打合せをしたいと書いて来られて困る内堀。内堀は、竹岡とのやりとりを、郵便局の私書箱を通じて行っている。街にいると、会社の田口(多々良純)が車に同乗させてくれと声を掛けられる。田口は、小倉と熊本にいい物件があるので、どんどん出店しましょうと調子がいい。内堀の自宅には陰気な女中キク(倉田マユミ)がいる。キクは、政江の家で3年働いていたのだ。

    渋谷に戻り散髪。

    シネマヴェーラ渋谷で、神代辰巳レトロスペクティブ
     79年日活神代辰巳監督『赫い髪の女(356)』
     トンネルの向こうから赤い髪の女(宮下順子)が歩いて来る。千葉勝浦の港湾現場に向かうダンプカーとすれ違う。作業現場で、土方の男に大型特殊の運転を教えてやれと孝男(阿藤海)に言う土屋光造(石橋蓮じ)。そこに社長の娘の和子(亜湖)がやってくる。女子高生の和子は光造と孝男にやられたのだ。初めにやった孝男が気に入ったようだ。雨が降り、作業は休みだ。飯を喰おうとダンプを走らせる光造と孝男。休みのドライブインの軒下で雨宿りしながら、カップ麺を食べている赤い髪をした女を孝男が見つける。少し自信がついた孝男は、声を掛けようと言う。女は直ぐに乗り込んで来たが、途中急に降ろしてくれと言う。二人の下心が気付かれたのかと思うと、生理が始まったので、シートを汚してしまうと言うのだ。
    光造のボロアパートに、赤い髪の女と光造がいる。トイレから出て来て、ビニール袋か何かないかと言うが、見当たらないので、サランラップで、生理用品を包む女。

     74年日活神代辰巳監督『宵待草(357)』
     遊廓だろうか、突然男(高岡健二)が飛び起きて今何時だと女(あべ聖)に尋ねる。5時5分よと答える女に4時に起こしてくれと言っただろと言って慌てて着替えを始める男。あんたは、始めようとすると激しく頭痛がして出来なくなるし、変な人ねと言う女。男は朝靄の中を駆けていく。アナキスト仲間たちに合流し、憲兵隊の詰所を襲撃して、拳銃を奪おうとしているのだ。二人しかいない筈の詰所には、沢山の憲兵たちがいて、1丁の拳銃を奪うものの追跡されやっとのこと逃走するアナキストたち。男は、谷川国彦といい、東京商工会の会頭の父親(仲谷昇)を持っていたが、浅草六区にある活動小屋の帝都館を根城にするアナキストたちの一員となっていた。首魁は、花形弁士の黒木大次郎(青木義郎)や平田玄二(夏八木勲)、小川

 


   更にユーロスペースで入江悠監督『SRサイタマノラッパー(358)』
    埼玉県福谷市、国道17号線を夜車で流しながらラップを歌っているグループがいる。溜まり場の倉庫で、IKKU(駒木根隆介)がリリックを作っている。TEC(TEC)が、釣竿とクーラーボックスを持ってやって来る。今日はアマゴ、ヤマメなど大漁らしい。SHO-GUNとして初ライブをやろうと話だけ盛り上がるが、明日の釣り大会が早いからとTECが、仕事があるからとKEN(益成竜也)たち先輩たちは帰ってしまう。といいながら、ガスト行こうぜと話している。残ったのは、IKKUとMIGHTY(奥野瑛太)とトム(水澤紳吾)だけだ。よし来月にはライブだと言うが曲など一曲も出来上がっていないのだ。
    翌朝、普通の家庭、IKKUがコタツで眠っている。父親が、郁美こんな所で寝ているんじゃないと叱る。両親はそれぞれ仕事に出掛け、妹が、お兄ちゃん朝ご飯食べるの?鍵ちゃんと締めて行ってねと口うるさく言って学校に出掛けた。IKKUは、まずMIGHTYの所へ出掛ける。彼は農家の息子で畑を手伝っている。中国人研修生のリーさん(杉山彦々)が働いている。ライブの打合せをしたいと言って、方向性を決めたいんだけど、方向性って?西海岸系か東海岸系かってことだと言うと、埼玉には海がないじゃんと返ってくる。最近プロで儲かっている。ブラザーかと思ったら、ブロッコリーのことだ。
     忙しそうなので、おっぱいパブ舞子でバイトしているトムの所に出掛ける。駐車場の掃除をしているトムも忘年会シーズンなので忙しいと言う。公務員や警察やら学校の先生やら連日予約が入っていると言う。とりあえず、竹田先輩(上鈴木伯周)に曲を作って貰おうと言うことになった。福谷市伝説のトラックメーカーの竹田先輩TKDは身体を壊して自宅療養中だ。しかし、緊張しながらIKKUが頼むと作ってくれると言う。殆ど聞き取れないような小さな声で話し、虚ろな表情のTKDが本当に作ってくれるのかが心配だ。
    IKKUが地元のマルシンの書籍売り場で、バイトでも探そうと求人ジャーナルを買おうとレジに行くと、レジの女が、「あれ、加賀谷郁美じゃねえ?西工にいた加賀谷だよね」と声を掛けてきて驚くIKKU。小暮千夏(みひろ)だ。彼女は、中学高校と同級で、高校2年で中退して東京に出て、IKKU達が3年の時にAVデビューしたのだ。あまりの驚きに、求人ジャーナルを持ったまま、走って逃げ出すIKKU。千夏が追い掛けてくる。彼女の捕まえてという声に、駐車場で取り押さえられ、事務所に連れて行かれるIKKU。
    もの凄い上から目線で千夏は、「万引きなんてしてんじゃねえよ、てか、何その格好?西工の加賀谷がダンサーデビュー、デブダンサー」「ダンサーじゃねえよ、ラッパーだよ」「ああ?デブラッパー(笑)」「お前HIPHOP馬鹿にしてんじゃねえよ」「その格好何年やってんだよ、2年?マジ痛いよ、おまえは、何も変わってねえよ」
   とぼとぼと歩くIKKU。

   男子の青春の哀しさ。ワンシーンワンカットの弛緩したようなテンポが、最初少し気になったが、田舎のメリハリのない毎日を送る、駄目で情けない男子の日常を表現のテンポと重なってきた。終演後のトークショーで監督自身が言っていたが、狙いとして成功している。みひろ、美人でもないんだが、よかった。

  帰宅して、夕刊を広げると、長谷部安春監督の死去の報が・・。

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