2009年10月13日火曜日

美沙子と美沙子。

   先週からの咳が抜けず、夕方の会食延期してもらう。
神谷町の元会社で、一件打合せ。概ね意見は一致。早く具体的に動き出したいなあ。その後、ウロウロしていると、最近このブログで、博華で餃子とビールが無くて寂しいと指摘される。確かに週イチか十日イチと言う感じかもしれない。毎日でも行きたいのだが…。貧乏>暇なしと言う感じだろうか(苦笑)。

    池袋新文芸坐で、映画に輝く“天下の美女”山本富士子、最終日。
    62年東京映画豊田四郎監督『如何なる星の下に(586)』
   (山本NA)このへんも汚い水になった。20年前には白魚も棲んでいた。この先どうなることやら…。
  「みさちゃん、あんた貧乏籤引いたわね。私が但馬を紹介した手前、このままじゃ顔向け出来ないわ。その後連絡ある」と踊りの師匠花柳三登次(乙羽信子)。「四年経つけど一度も・・・。神戸の方で、女と一緒に二階借りしているのを見かけたと言う話を聞いたけど…。」美沙子(山本富士子)は、洋服仕立て職人の但馬(森繁久弥)と結婚したが、父親で元曲芸師の惣太郎(加東大介)と折り合いが悪く、四年前に女を作って関西に逃げられていた。「あっ、舟がでるわ。あー出ちゃった。で、みさちゃんは倉橋さんという人に会ってみて欲しいというけど、うじうじしていないで、好きなら早く決めちゃわないと・・・。」
   美沙子は、倉橋(池部良)の勤める広告会社エトワール社の事務所を覗いて見る。倉橋は留守だった。その頃、倉橋は、美沙子の下の妹雅子(大空真弓)がダンサーとして踊っているキャバレーの楽屋にいた。踊り子のサアちゃん(北あけみ)に「今日も?雅ちゃん、今踊っているわよ」と声を掛けられる。雅子がステージを降りてくる。倉橋は持っていた大きな箱をプレゼントだと渡す。「倉ちゃん!ありがとう!!!」「倉ちゃんじゃない!先生だよ」と雅子を窘めてから、歌手の大屋五郎(植木等)は「倉ちゃんは、モノ好きだなあ。小児科かい?」と言われていた。「そんなもんじゃないよ、小柳雅子の一ファンなんだ。」「まあ、どっちでもいいけど、愛子が一度会いたがっているの。会ってさっぱりしたがっていたよ。」雅子は、倉橋から貰った衣装を着てみる。ダンサー仲間から羨ましがられている雅子を見て、目を細める倉橋。倉橋は、まだ雅子が美沙子の妹だとは知らない。
   カフェ・ラパン、マダムの鮎子(淡路恵子)と五郎が話している。「あの人が、そんな小児科の趣味があったとは知らなかったわ。」「それが離婚の原因かい?」「いえ、あの人の生活力の問題よ。あの人は小説を書いても、ものにならなかった。結局、私の生活力が、あの人の生活力が上回ったのよ。」そこに倉橋がやってくる。「ということで、私たち一緒になるから。あんたのところのPR雑誌で、五郎ちゃん宣伝してくんない?売れるわよ!!」   
   美沙子の父、惣太郎は、戦傷で芸を披露出来なくなって、自堕落な生活を送っていた。妻のおまき(三益愛子)は、築地の裏町の一角の祖父以来住むこの家をおでんやにして、夫の名、惣太郎を店名にしていた。しかし、しっかりものの美沙子がこの店の切り盛りをしていた。美沙子が店に帰ると、次女の玲子(池内淳子)におまきが生活費を渡しているところだった。玲子はクラブ歌手だったが、仕事がなくなっていた。陰気な玲子と一緒にいては玄が悪いと言って、テレビの仕事が来るようになっていた夫の五郎は、家を出ていた。いつかあの人は私のところに帰ってくると言う玲子に、何でそう思うのかと尋ねる美沙子は、これだけ尽くしたんだものとの答えに、呆れてあんた馬鹿よ!!と言う。
  惣一郎は、売れない役者で、ドサ廻りでの貫一役ということでドサ貫と呼ばれる男(西村晃)と炬燵で酒を飲んでいる。「芝浦で大きな勝負がある。行きてえなあ。こんなおでんやじゃうだつがあがらねえや。」「勝負って麻雀ですか。師匠」玲子は、芸能プロダクションの松原プロの社長の松原(山茶花究)のところに来ている。「玲ちゃん。こういうプロダクションも短いらしいよ。東京にもうちみたいなところが300もあるが、お上は認可制にして、8%の紹介料でやって行けというんだから、1ステージ800円の仕事の8%で、どうやってやって行くんだ。」「私の仕事ないかしら?・・・。」「大屋五郎も、ウチのプロで扱っていたのに、売れた途端に、玲ちゃんを泣かせやがって・・・。」
  カウンターでドサ貫が飲んでいる。そこに倉橋から電話が掛かる。明らかに華やぐ美沙子の声を聞いて切なげな表情のドサ貫。倉橋は、自分のやっているPR誌のモデルになってほしいと言うのだ。翌日の撮影は、美沙子にとって本当に楽しいものだった。モデルになったということよりも、倉橋と半日一緒にいられるということが。渡し船に二人で乗っていると、橋の上から冷やかす口笛が聞こえる。「こうしていると、私たちどう思われるのかしら・・。」「そりゃあ、恋人同士だろ。」「いやだわ・・・」美沙子はデレデレだ。
  惣一郎が店の金を全て持ち出していた。おたかがやけ酒を飲もうとするのを、ドサ貫は「お酒を飲んじゃ駄目だ。酒乱だから。」と言ってコップ酒を取り上げ、自分で仕方なしに飲んでいると、ルンルンな美沙子が帰ってくる。「いらっしゃい、ドサ貫さん。ずいぶん早くからご機嫌ね。」あんたこんな速達が来ていたよとおふさ。美沙子の元夫、但馬からだ。東京に上京するので、会いたいという内容だ。美沙子の表情が曇る。


   はっきり言って、90分位迄は苦痛だった。美しく一人で家族を支えるヒロインに押し寄せる不幸。馬鹿と言うより愚かな女がどんどん堕ちていく不幸のスパイラル。オメー自業自得だろと、心の中で毒づいていると、そこまでの不幸は序の口で、最後の30分で、不幸の二段底が抜ける。加東大介は卒中で倒れ半身不随で寝たきりになり、三益愛子はやけくそになって酒乱で止められていた酒を呷って大暴れ、そんな真っ最中に、松原プロは潰れて解散で馬鹿騒ぎ、救いの池部良が帰ろうとするのを美沙子は引き留め、ようやくシッポリするかと思うと、美沙子を想い続けたドサ寛(ドサ廻りの貫一役)としか呼ばれない西村晃が吐血してもう駄目だとなって一同意気消沈、何の救いも無しに終わってしまう。これは本当にやられた。清く貧しく美しい話でも、忍耐に忍耐を重ねた庶民に、誰かが印籠を出して救ってくれる話でもなかった。
  こんな乱暴なまとめ方ではなく、全編書き起こして、ヒロインの人生をもう一度味わいたい。傑作だ!!!

63年東京映画豊田四郎監督『憂愁平野(587)』。
   青山の屋敷で、美しい主婦納所亜紀(山本富士子)が、趣味の刺繍をしながら廊下を歩いている。ふと戸を開けると、真っ赤な色の葉(?)が一面に色付いている。その時突然、亜紀は心に不安を覚える。軽井沢で仲間とゴルフをしている筈の夫、納所賢行【かたゆき】(森繁久弥)が、自分の知らない女性と一緒にいるのではないかと言う不安を。
    亜紀は自家用車を運転して軽井沢に向かう。翌朝、フロントに声を掛け、いつもの部屋に賢行が泊まっていることを確認して入る。灰皿の吸い殻を調べ、カーテンを開ける。賢行は、ダブルのベッドに独りで眠っていた。もう8時半よと声を掛ける。随分早く来たなと賢行、実は夜の内に着いたけれど、他の宿に泊まっていたのと亜紀。あなたは今日何時に帰るのと尋ねる亜紀に、5時か6時には帰るつもりだと言う。安心した亜紀は、早々に帰ることにする。途中、事故を起こした車が停まっている。運転していた乙枝虎夫(長門裕之)が、下の派出所に声を掛けてくれないかと頼む。亜紀がお一人?と尋ねると、連れがいるのですが、運転が下手だと言って怒ってしまってと言う。そこに江能信子(大空真弓)が戻って来て、「おば様、私を高崎まで乗せて行って」と頼む。「いいの?」と亜紀が言うと「お願いします。言い出したら聞かないもんで…」と乙枝。
   その日、納所がラウンドしていると、激しい夕立だ。雷が苦手な納所は、キャディの娘(樫山文枝)と木の下に逃げ込む(こりゃ危ない!!)。娘が「お客さん、本当に雷が苦手なんですね。先日女性だけのパーティーが名古屋からいらした時も夕立で…。そういえば、あの方達が今晩いらして、明日ラウンドされると伺いました」「えっ、あの名古屋のご婦人たちが…」
   翌朝、朝霧の中、納所が白樺林を歩いていると、時津美沙子(新珠三千代)がいる。「あなたに会えると思って、軽井沢で会えた。」と不思議ちゃんぽい。こっちの美沙子は、納所の親友の妹で、恵那の没落した旧家の娘だった。納所は、美沙子と夕食の約束をするが、すっぽかされる。

節子(浪花千栄子)巽魚次郎(仲代達矢)大黒さん(乙羽信子)女中朋子(久里千春)ホテルボーイ(若宮忠三郎)会社の女事務員(桜井浩子)木次茂夫(中谷一郎)

ある人に、ノンアルコールビールで焼酎を割って飲むと悪くないと聞いて、試してみたらこれは“んまいっ!!”ホッピーよりも好きかもしれない。

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