角川シネマ新宿で、増村保造 性と愛。70年大映『でんきくらげ(49)』。由美(渥美まり)が寝ていると、二間しかないもう一部屋では、母のトミ(根岸明美)が情夫の吉村(玉川良一)に抱いてくれとせがんでいる。吉村は迷惑がっているが、トミはしつこく迫る。由美はなんとか眠ろうと寝返りを打つ。
翌朝、由美は、母たちの朝ごはんを作り、洋裁学校へと向かう。授業が終わって、クラスメイトから遊びに行こうと誘われるが、断る由美。帰宅すると、酒を飲みながら競馬新聞を見ている吉村。吉村は保険の外交員をしているが、全く働かずトミのヒモである。ミシンを踏む由美の太股にねちっこい視線をやる吉村。ポーカーをやろうと誘われる。賭け事だけは、母親譲りで、強く好きな由美。急に由美に襲いかかる吉村。殴られて気絶した由美にのしかかる吉村。一方、トミは、昔のホステス仲間(中原早苗)がママのバータッチで働いている。年増のトミはいつもお茶を引いているが、若い娘の客にたかっていて、店では鼻つまみもので、ママとの温情で働かせてもらっているようなものだ。同じホステスだったのに、こんなに差がついたと自嘲的なトミに、ママは、惚れっぽくて人がよくて男に弱いからだと言う。今の吉村で8人目らしい。
今晩も若い娘の客にたかって、鮨屋について行き、お土産を作らせた上に、タクシーで送らせて帰宅するトミ。吉村と明美の様子がおかしい。問い詰めると明美は、吉村に乱暴され、もう私は生娘ではないと言う。吉村を問い詰めると、お前の弛んだ体では満足できるわけないだろうと開き直る。出て行けと言うトミに、由美を連れて出て行こうとする吉村。由美は拒絶するが、トミは逆上して吉村を刺す。警察を呼んでくれと由美に頼むトミ。
警察を出てくるトミとママ。吉村が娘の由美を暴行したことまで自供したので、保釈されたのだ。弁護士費用や、保釈金などを出してくれたママ。しかし、由美を含めて食事をしている時に、刑務所に入った後は由美の面倒をみると言ったママが、由美を自分の店で働かせようとしていることを聞いて、あんな色キチガイの店で娘を働かせないと言って、ママと喧嘩になるトミ。2年の実刑判決を受けて栃木の刑務所に入った。
結局、由美は、バー・タッチで働き始める。彼女の元に通い詰める一流企業のサラリーマン風間(木村元)が結婚しようと言う。こんなところで働かせたくないと言うのだ。栃木にいる母の許しを貰わなければという由美に、ドライブを兼ねて栃木まで行こうという風間。しかし、刑務所に案内し、自分の母親は、自分を守るために人を殺して服役中だと聞いて、急に怖気づく風間。風間を残し、刑務所の母親に、面会する由美。自らタッチで働くことを決めたのだと聞いて、毒づくトミ。
戻ってきた由美に、土廻りのヤクザの田島(青山良彦)が声を掛ける。田島はタッチにみかじめ料を受け取りに来た時に由美に目をつけたのだ。自分の店に連れこんで、乱暴しようとする田島を騙し、警察を呼ぶ由美。身を守ることは出来たが、タッチにやってきて落し前を要求する田島たち。そこに、野沢(川津祐介)が現れ、田島に5万円を渡し帰らせる。ママにも、このまま由美を置いておいても営業が難しいだろうと言う野沢。野沢は、銀座の高級クラブのマネージャーで移籍金を支払うと提案した。その日のうちに、野沢は、由美を連れ出し、クラブ桐のママの衣子(真山知子)の住む高級マンションに連れて行き、銀座の店に相応しいように磨き上げてくれと頼む。衣子と野沢の恋人だった。
野沢のスカウトの目は確かだった。垢抜け一躍売れっ子になる由美。その日、店のオーナーの加田(西村晃)が店にやってくる。そこに田島が現れる。加田は、どこの組だと聞いて、北江組であれば、組長は親しくさせていただいているので、直接話をしようと言って、田島を帰させる。店を出た由美を野沢が待っていた。野沢の家に連れて行ってくれと頼む由美。野沢は、かって弁護士だった。不祥事を起こし弁護士会を除名されて廃業したのだ。かっての事務所に寝泊まりしている。由美は、トミに面会しに行く。すっかり垢抜けた由美に、自分は22年水商売をしたが、銀座には全く縁がなかったと娘を誇らしげだ。
桐で月100万以上使う上得意の高崎(永井智雄)が、由美に目をつけた。一晩由美と付き合いたいので、話をつけてくれないかと野沢に頼む高崎。その晩、野沢は、由美をアパートまで送る。抱いてくれと言う由美に、由美のことは好きだが、自分はクラブのマネージャーなので、どんなに好きなでも、大事な商品には手をつけないと言う野沢。由美は、高崎と寝るが、安売りはしないと言う。普通、桐のホステスが客と寝る場合は、一晩3万円が相場だが、由美は、高崎とポーカーの勝負をし、由美が勝ったら3万円貰い、高崎が勝ったら一緒に寝るという提案をする。盛り上がる高崎。結局15万を巻き上げ高崎の相手をする由美。しかし、情の深い由美に、高崎は大満足し、その後、度々ポーカーの相手をする。
由美のポーカーは直ぐに噂になり、面白がる男たちが次々に手を上げた。馴染客を取られたホステスたちは、ママの衣子に文句を言う。衣子は、野沢に自分が連れて来たのだから何とかポーカーを止めさせてほしいと頼む。ある中小企業の社長(早川雄三)も、ポーカーに挑んだが、4回負けて諦めた。帰りに野沢が待っている。由美は奢るのでゴーゴー喫茶に踊りに行こうと誘う。年寄りばかり相手にしているのでストレスが溜まってキチガイになりそうだと言って踊り狂う。店の隅で、ホステスの1人が2人を見張っている。
野沢は由美に、ポーカーは店ではもう出来なくなったので、ホテルでやれと言う。さっそくホテルの一室で、野沢を立会人に客とポーカーをする由美。そこに刑事が踏み込み、ポーカー賭博の現行犯として逮捕される。店の女の誰かが密告したのだ。しかし、置いてあった金は売春の代金で、客とポーカーをして遊んでいただけだと、野沢のアドバイス通り言い張る由美。取り調べ中、人殺しの娘だからと言う刑事に母親の悪口は許さないと言う由美。結局証拠不十分で釈放される由美。母親が出所するまで金を沢山稼ぐのだと言う由美に、野沢は社長のもとに連れて行く。とても率直な物言いと、母思いの由美を以前から気に入っていた社長は、月百万で自分の妾にならないかと言う。野沢に相談してから決めると、マンションの屋上に野沢を連れて行く由美。由美の問いに、社長には、弁護士の時に株に狂って、社長の金を横領し、弁護士の資格を失った自分に手をさしのべてくれた社長には恩があり、由美のことをどんなに好きでも、妾になれと言う野沢。私にビルの屋上から飛び降りて死ねということだと野沢に言って、社長の妾となる。着物姿でトミに面会する由美。妾になったと聞いて怒るトミ。
贅沢をするでもなく、下手なりに炊事、洗濯、掃除をし、昼夜尽くす由美。しかしある日風呂で、社長は死ぬ。由美は桐にいる野沢に電話をする。野沢は由美が社長の妾にして以来考え事をすることが多くなりミスばかりしている。衣子は、そんなに由美が気になるのかと言って、千五百万のパトロンを見つけたので、野沢と別れ、自分の店を出すと言う。葬式の真っ最中にも社長が1人で築いた財産にハイエナのようにたかる親戚たち。妾にはびた一文払う気持ちなどない。野沢は元顧問弁護士として、遺産の計算をし4億5千80万円だと明らかにした。野沢は由美に子供を妊娠していれば、その胎児が全額相続するのだがと話す。金のことしか頭にない親類たちを残して2人はモーテルに行き朝まで回転ベッドの上で愛し合う。数ヶ月後、再び親類が集まり、相続確定の会議が行われた。何故か岩田帯を巻いた和装の由美がいる。遺産内訳などを読み上げた野沢が何か意見があるかと尋ねると、由美が一通の封筒を出す。その中には妊娠証明書が入っている。社長の子供であれば、全額その胎児が相続することになる。親類たちは予期せぬことに大騒ぎだ。裁判に訴えると言う者、狂ったように由美に殴る蹴るの暴行を働く女(村田扶美子)。
野沢は裁判となれば十年以上かかって、負けた場合は、裁判費用だけ持ち出しになることなどを説明し、自分に任せて由美と和解した方が得策でないかと提案する。今すぐ大金を手に入れるつもりだった親類たちは、結局示談で、2億を今すぐ受け取ることを選んだ。由美と野沢は、栃木のトミを訪ねる。トミは由美が大金を手に入れ、野沢から求婚されていると聞いて感心することしきりだ。もう刑務所暮らしにも飽きたので、うまいことやって出してくれと野沢に相談するトミ。
産婦人科の手術台に昇る由美。青ざめた顔で、野沢もとに現れる。今中絶してきたと聞いて驚く野沢。自分の子供なのに相談もなくどうしてと詰め寄る。由美は、社長の妾になれと言われた屋上で、野沢を愛していた自分は死んだのだと言う。自分にとって大事なのは自分を育ててくれた母親だけだと言って、呆然と立つ野沢を残し去る。うーむ。
71年大映『遊び(50)』。中学を卒業し電機の組立工場に、16歳になったばかりの少女(関根恵子)がいる。来る日も来る日もベルトコンベアを流れる部品のネジを締めるだけの仕事。一部屋4人押し込められた独身寮も、酷い食事だ。勤務中に母親が現れ、金を出せと言う。給料の三分の二を仕送りしているのに、あるわけないというと、前借りをしろと言い毒づく母。少女の父親(内田朝雄)は、トラックの運転手をしていたが、酒を飲まなければ何も言えないような小心者で、飲酒運転で人身事故を起こしたことで、更に酒浸りになり借金の山だけ作って死亡した。母親(杉山とく子)も、大した収入にもならない内職仕事を細々と自宅でやっている。更に姉(小峰美栄子)は脊髄カリエスで寝たきりだ。その生活が16の少女の肩に覆いかぶさっているのだ。
ある日、独身寮に、会社を辞めてキャバレーのホステスをしているヨシ子(甲斐弘子)がやってくる。務めるキャバレー丸玉のマネージャー(仲村隆)を連れてやってくる。月8万から15万稼げると聞いて寮の女子工員たちは穏やかではない。給料日になって、みな遊びに出かけるが、仕送りして小遣いもない少女は一人留守番だ。門限を破って深夜帰宅した同室の寮生たちは、全身キスマークを付けていたり、遊びまくって帰って来ている。帰り道、学生たちに輪姦された少女がぼろぼろになって帰ってきて大騒ぎになる。
ある休日の日、少女は街に出て、公衆電話の横で、電話帳をめくっていると少年(大門正明)が声を掛けてくる。少女は、ヨシ子に電話をしようとしていたのだが、ヨシ子の電話番号は分からなかった。キャバレー丸玉にいるらしいと聞いて、少年は、営業時間になったら連れて行ってやるので、それまで一緒に付き合わないかと言う。喫茶店に行く二人。仕事を聞かれた少年は兄貴の店を手伝っていると答える。少年は自分が好きだと言うヤクザ映画に連れていく。少女は、男性と映画館に来たのは初めてだといって感動している。ゴーゴー喫茶に行くと、フーテン娘(松坂慶子)が少年に寄ってくる。嫉妬心を感じる少女。
18歳の少年は、おでんの屋台をやっている、酒飲みで男にだらしない母親(根岸明美)に育てられた。母親が男を連れ込む度に、家の外で過ごす。ぐれて、チンピラの兄貴(蟹江敬三)の子分になっている。兄貴たちは、スケこましをシノギにしている。女を騙し、暴行されている写真を撮って脅して、トルコやキャバレーに売っている。その手伝いをさせられているのだ。いつも兄貴に言われているとおり連れ込みホテルの、ことぶき荘に少女を連れていく。女将(村田扶美子)にラーメンの出前を頼む。
しかし、初めてひっかけた少女のことを好きになっていた少年は、兄貴たちの毒牙にかけることが苦しくなっていく。ことぶき荘の主人(小山内淳)をビール瓶で殴り、逃げ出す。タクシーに乗り、海が見える景色のいい高級な旅館に連れて行ってくれと頼む少年。花月荘という宿は、二人にとっては夢のような所だった。洋式のトイレにきれいな浴室、豪華な食事。ふかふかの布団。少女は、あなたに会うために今まで生きてきた気がすると言う。その夜、二人は結ばれる。二人とも初めての経験だった。朝起きるとシーツに赤い染みが二つ残っていた。
朝近くを散歩している二人、二人は全財産を使い果たしていた。湖の船が浮かんでいる。二人とも泳げない。服を脱ぎ、船を出す。つかまりながら泳ぐ。水が浸水し、徐々に船は沈み始めるが、二人は泳ぎ続ける。空にはまぶしい太陽がある。
野坂昭如「心中弁天島」が原作。関根恵子と大門正明の初々しさが珠玉のような映画だ。
新宿ピカデリーで、マーク・フォースター監督『007 慰めの報酬(51)』。
007のシリーズという感覚はあまりない。エンディングになって改めてシリーズの一環だと思いだされる感じ。シリーズ好きな人には違和感あるかもしれないな。
2009年1月30日金曜日
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