ポレポレ東中野で、08年ドキュメンタリー『フツーの仕事がしたい(186)』土屋トカチ監督が、セメント輸送ドライバーの組合から依頼され撮影を始めた、あるドライバーの組合闘争の記録。アメリカ式グローバリズムと資本家からの要請でしかない規制緩和という題目と、大企業や官公庁の組合貴族への嫉妬と反発という日本人の土着的感情の挟み撃ちに、気がつくと日本の貧乏人は全てを失ってしまったが、アメリカの押し付けと反発する人たちのいる憲法が、基本的人権の実現のために、労働者の実力行使を労働基本権として与えてくれていたことを思い出させてくれる映画だ。マスメディアがジャーナリズムを放棄している日本の現実の前に、映画が、不正の告発の手段としての力を持つということも。そうした意味で評価されるべき作品。
阿佐ヶ谷ラピュタで71年松竹斎藤耕一監督『内海の輪(187)』。松本清張原作のサスペンス。松山の呉服屋の老主人(三國連太郎)は性的に不能であるが妻を夜毎弄んでいる。若妻(岩下志麻)は、前夫の弟(中尾彬)との、3ヶ月に一度の上京時の不倫関係を続けて三年が過ぎていた。男は助教授への出世のためにも後ろ盾になる父を持つ妻との離婚は考えていなかったが、女が妊娠をし、偽りの夫婦生活を捨てる決意で、夫に偽り旅行に出たことで、二人の人生は狂い始めた。岩下、中尾の濡れ場と、二人の愛憎の心理サスペンスが売りだろうが、正直、斎藤耕一監督の演出は、よく言えば、情感たっぷりだが、思わせぶりで冗長だ。松竹としては、松本清張作品として大作扱いだったようだが、中編の連作心理サスペンス。ロケ地増やしてみても、屋内のシーンとあまり変わり映えのしない曇天ばかりで、重苦しくジメッとした悪しき日本映画のトーンだ。終盤の岩下の狐が憑いたような顔が怖ろしい。ある意味そこが一番の見せ場かも(苦笑)
60年東宝川島雄三監督『接吻泥棒(188)』石原慎太郎原作松山善三脚本。職人川島雄三!素晴らしい!!日本ウェルター級チャンピオン高田明(宝田明(笑))は、プレイボーイ。彼の世界チャンピオン戦(チャンピオンのぶよぶよの腹は明かに減量の失敗か(笑))と、彼を取り巻くバーのマダム(新珠三千代)ファッションデザイナー(草笛光子)ダンサー(北あけみ)の三人に女子高生(団令子)を加えた4人の女性の恋のバトルのボクシングコメディ。テンポ良し、セット良し、原作者石原慎太郎の出演のさせ方!ウェルメイドなコメディを作れる日本では数少ない職人川島雄三、面目躍如。劇中で「アンパンの臍」と言われる位のボチャポチャの団令子、可愛いと言えるかは趣味の問題だが、後にあんなに垢抜けて美人になるなんてというのが個人的な感想。やっぱり新珠三千代ダントツにいいなあ。石原慎太郎、萩原 聖人似の好青年。ハニカミ気味の笑顔悪くないが、今じゃ都庁伏魔殿の主、あんな恥も知らない悪人顔になってしまった。切ない。 いい映画観ると、余韻に浸りたくなり、博華で餃子とビール。
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