朝一番で中央線に乗ると、トロトロ走った上、高円寺で停止。通勤時間にはやはり相変わらず遅延多いのだなあ。
大手町で、糖尿病経過観察で眼底検査。赤坂に出てメンタルクリニック。どうも瞳孔開く目薬のせいで、世の中が眩しい。神保町で人に会い、
神保町シアターで小津安二郎の世界
33年松竹蒲田小津安二郎監督『出来ごころ(146)』
夏の寄席、浪曲師浪花亭松若の高座。団扇で扇ぐ男女の中に、ビール工場の職工、喜八(坂本武)がいる。せっかくの真打ちなのに、息子の富夫(突貫小僧)は眠っている。ある男が足元にがま口が落ちているのに気付く。足で手繰り寄せ中を覗くが空だ。後ろに投げ捨てると、後ろの男も同じことを繰り返す。次は喜八の番だ。喜八は自分のがま口より、そのがま口の方が大きいので、中身の小銭を入れ替え、自分のがま口を放り投げる。先ほどとは逆の順にがま口は、最初の男の元に戻る。男が投げ捨てると、最前列に座っていた床屋の親方(谷麗光)が、自分の袂に戻した。しかし、暫くすると、体を書き始める。蚤か虱が付いていたのだろうか、周りの人間も立ち上がって、体を掻きながら調べる。もう浪花節どころではない。しかし最後には満場の大拍手。床屋の親方の拍手が、どうやら剃刀を革で研ぐ手つきなのに大受けな喜八たち。
高座が捌けて、富夫を背負った喜八が、職工仲間の次郎(大日方伝)と寄席を出ようとすると、入り口に若い娘(伏見信子)がバスケットを下げ佇んでいる。不安そうに立つ娘が気になって声を掛ける喜八。親切心でもあるが、勿論娘は美しい。係わり合いにならない方がよいと次郎は言うが、気のいい喜八は、千住の製糸工場を首になり、今晩泊まるところもないと聞いて、自分の家に来いと誘う。幸い馴染みの居酒屋の女将とめ(飯田蝶子)が、住み込みで働けと言ってくれた。
35年松竹蒲田小津安二郎監督『東京の宿(147)』
トボトボと歩く親子の姿がある。喜八(坂本武)、善公(突貫小僧)正公(末松孝行)砂埃にまみれ薄汚れた父親の後を歩く善公は風呂敷包みを背負い、正公は五号瓶を紐でぶら下げている。「じゃあお前たちここで待ってろ」五号瓶の水を交互に飲み、空腹を誤魔化す子供たち。喜八、工場の門に行き門番に「仕事ありませんか?旋盤では熟練工なんですか…」「無いな…」「はるばるやって来たんですが…」「気の毒だが…」
とぼとぼ子供たちのもとに戻る。善公「どうだったい?」俯いた父親の姿を見て正公「ちゃんは、どうして駄目なんだらう。工場は沢山あるんだけどね」その場に座り込む三人。善公がふと目を上げると、授業中の遠足だろうか同じ年頃の小学生の男児が教師に連れられ行進している。喜八「お前たち腹減らないか?」健気に首を横に振る兄弟。しかし、正公はお腹をさすりながらペソをかき始める。「どうした?腹痛いのか?」「ほんとは腹減った。」善公が顔を上げ「ちゃん!40銭!」野良犬が通り過ぎるのを見て追い掛ける。喜八も正公を背負い走り出す。近くの電信柱に警察の「犬を捕まえて下さい。子犬10銭、成犬40銭」という貼り紙がある。
木賃宿、勿論大部屋に沢山の人間がいる。チンチロリンをする男たち。不抜けたように壁に寄りかかり座る喜八を気遣う息子たち。善公の前に、制帽が転がって来る。手に取ろうとすると、同じ年頃の男児が駆け寄ってきて奪い取る。ベーっと舌を出されてやり返す善公と正公。正公「兄ちゃん、いい帽子だね。あした犬を見つけたら買おうか?」善公「犬は飯だよ」喜八「お前らいくら持ってる?」善公「六銭」正公「一銭…」善公「明日はどっちの方に行くんだい?砂町の方に行ってみたらどうだい」
酒と美人に滅法弱い喜八。何だか他人に思えないなあ。
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