2009年12月31日木曜日

監督別

(33本)成瀬巳喜男
(26本)増村保造
(24本)神代辰巳
(18本)清水宏
(15本)中平康
(12本)丸山誠治、吉村公三郎
(11本)大島渚、豊田四郎、市川崑、
(10本)溝口健二、深作欣二、長谷部安春
(9本)川島雄三、中川信夫、中村登、中島貞夫
(8本)マキノ雅弘、五所平之助、新藤兼人、木下恵介
(7本)山本薩夫、篠田正浩、千葉泰樹、村川透、堀川弘通
(6本)伊藤大輔、岡本喜八、小林正樹、森崎東、木村恵吾
(5本)稲垣浩、久松静児、三隅研次、田中重雄、田中徳三、島耕二、澁谷實
(4本)今井正、今村昌平、恩地日出夫、市川準、青柳信雄、大庭秀雄、谷口千吉、勅使河原宏、内田吐夢、武智鉄二、野村芳太郎、鈴木清順
(3本)池広一夫、沢島忠、田中絹代、藤田敏八、崔洋一、伊藤俊也、衣笠貞之助、羽仁進、吉田喜重、降旗康男、山本嘉次郎、須川栄三、石井輝男

小津安二郎2本、黒沢明1本(苦笑)

全タイトル

1月 千葉泰樹監督『下町(ダウンタウン)(1)』デビッド・リーン監督『アラビアのロレンス(2)』黒沢直輔監督『ズームイン 暴行団地(3)』藤田敏八監督『横須賀男狩り 少女・悦楽(4)』東陽一監督『ラブレター(5)』ジョン・クローリー監督『BOY A(6)』森田芳光監督『ピンクカット 太く愛して深く愛して(7)』田中登監督『江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者(8)』廣木隆一監督『ヴァイブレータ(9)』亀井文夫監督『女ひとり大地を行く(10)』スティーブン・ウォーカー監督『ヤング@ハート(11)』マーチン・スコセッシ監督『シャイン・ア・ライト(12)』神代辰巳監督『壇の浦夜枕合戦記(13)』神代辰巳監督『壇の浦夜枕合戦記(13)』村川透監督『白い指の戯れ(14)』山城新伍監督『双子座の女(15)』荒木経惟監督『女高生偽日記(16)』神代辰巳監督『黒薔薇昇天(17)』曽根中生監督『実録白川和子 裸の履歴書(18)』長谷部安春監督『レイプ25時 暴姦(19)』石井隆監督『天使のはらわた 赤い眩暈(20)』崔洋一監督『性的犯罪(21)』神代辰巳監督『黒薔薇昇天(22)』中江裕司監督『四十歳問題(23)』新藤兼人監督『強虫女と弱虫男(24)』山村聡監督『蟹工船(25)』森崎東監督『喜劇・女は男のふるさとョ(26)』島耕二監督『グッドバイ〈女性操縦法〉(27)』木村恵吾監督『痴人の愛(28)』石井聰互監督『狂い咲きサンダーロード(29)』増村保造監督『妻二人(30)』増村保造監督『赤い天使(31)』岡本喜八監督『斬る(32)』岡本喜八監督『殺人狂時代(33)』スティーブン・ソダーバーグ監督『チェ 28歳の革命(34)』森崎東監督『生きてるうちが花なのよ死んだら終わりなのよ党宣言(35)』篠田正浩監督『無頼漢(36)』勅使河原宏監督『他人の顔(37)』須川栄三監督『野獣死すべし(38)』増村保造監督『千羽鶴(39)』増村保造監督『痴人の愛(40)』森崎東監督『高校さすらい派(41)』森崎東監督『藍より青く(42)』伊藤俊也監督『女囚さそり けもの部屋(43)』五社英雄監督『五匹の紳士(44)』五社英雄監督『五匹の紳士(44)』五社英雄監督『鬼龍院花子の生涯(45)』増村保造監督『大地の子守歌(46)』市川崑監督 『こころ(47)』中平康監督 『光る海(48)』増村保造監督『でんきくらげ(49)』増村保造監督『遊び(50)』マーク・フォースター監督『007 慰めの報酬(51)』堀川弘通監督『狙撃(52)』黒澤明監督『白痴(53)』西河克己監督『帰郷(54)』谷口千吉監督『カモとねぎ(55)』
2月今井和久監督『旅立ち~足寄より~(56)』堤幸彦監督『20世紀少年-第2章-最後の希望(57)』増村保造監督『盲獣(58)』中嶋莞爾監督『クローンは故郷をめざす(59)』川島雄三監督『女であること(60)』森崎東監督『喜劇・女売り出します(61)』森崎東監督『喜劇・男は愛嬌(62)』マキノ雅弘監督『離婚(63)』松本俊夫監督『修羅(64)』増村保造監督『積木の箱(65)』増村保造監督『セックス・チェック 第二の性(66)』キム・ギドク監督『悲夢(67)』谷口千吉監督『ジャコ万と鉄(68)』堀川弘通監督『娘と私(69)』谷口千吉監督『銀嶺の果て(70)』深作欣二監督『爆走パニック大激突(71)』新藤兼人監督『女の一生(72)』阿部豊監督『細雪(73)』千葉泰樹監督『生きている画像(74)』五所平之助監督『煙突の見える場所(75)』長谷部安春監督『野獣を消せ(76)』溝口健二監督『西鶴一代女(77)フィリダ・ロイド監督『マンマ・ミーア(78)』山本嘉次郎監督『綴方教室(79)』沢田幸弘監督『俺達に墓はない(80)』村川透監督『最も危険な遊戯(81)』成瀬巳喜男監督『銀座化粧(82)』久松静児監督『女の暦(83)』島耕二監督『銀座カンカン娘(84)』高橋伴明監督『禅 ZEN(85)』横山一洋監督『クジラ~極道の食卓(86)』イサベル・コイシェ監督『エレジー(87)』。村川透監督『野獣死すべし(88)』村川透監督『殺人遊戯(89)』内藤誠監督『番格ロック(90)』ジャック・ドゥミ監督『シェルブールの雨傘(91)』坂口拓監督『鎧 サムライゾンビ(92)』丸山誠治監督『悪魔の接吻(93)』丸山誠治監督『山と川のある町(94)』丸山誠治監督『朝霧(95)』丸山誠治監督『慕情の人(96)』崔洋一監督『友よ、静かに瞑れ(97)』内田誠監督『十代 恵子の場合(98)』丸山誠治監督『女ごころ(99)』丸山誠治監督『二人だけの橋(100)』マイケル・アリアス監督『ヘブンス・ドア(101)』阪本順次、井筒和幸、大森一樹、李相日、崔陽一監督『みんな、はじめはコドモだった(102)』吉村公三郎監督『千羽鶴(103)』アレクシ・タン監督『ブラッドブラザーズ(104)』草野陽花監督『悲しいボーイフレンド(105)』康宇政監督『小三治(106)』伊藤大輔監督『王将一代(107)』森田芳光監督『それから(108)村川透監督『処刑遊戯(109)』村川透監督『蘇える金狼(110)』長谷部安春監督『皮ジャン反抗族(111)』長谷部安春監督『化石の荒野(112)』根岸吉太郎監督『探偵物語(113)』根岸吉太郎監督『探偵物語(113)』チャン・リュル監督『キムチを売る女(115)』大島渚監督『東京战争戦後秘話~映画で遺書を残して死んだ男の物語~(116)』
3月是枝裕和監督『大丈夫であるようにーCocco 終らない旅ー(117)』瀬々敬久監督『感染列島(118)』成瀬巳喜男監督『お国と五平(119)』
成瀬巳喜男監督『旅役者(120)』今井正監督『青い山脈(121)』今井正監督『続青い山脈(122)』千葉誠治監督『戦国 伊賀の乱(123)』スティーブン・ソダーバーグ監督『チェ39歳 別れの手紙(125)』北川悦吏子監督『ハルフウェイ(126)』向井寛監督『色仕掛け女 極道 ブルーフィルムの女(127)山本晋也監督『特殊三角関係(128)』成瀬巳喜男監督『おかあさん(129)』筧正典、鈴木英夫、成瀬巳喜男監督『くちづけ(130)』筧正典監督『妻という名の女たち(131)』中川信夫監督『毒婦高橋お伝(132)』クロード・シャルブル監督『肉屋(133)』園子温監督『愛のむきだし(134)』筧正典監督『トイレット部長(135)』千葉泰樹監督『沈丁花(136)』千葉泰樹監督『狐と狸(137)』田坂具隆監督『はだかっ子(138)』
ケラリーノ・サンドロウ゛ィッチ監督『罪とか罰とか(139)』マキノ雅彦監督『旭川動物園物語(140)』三池崇史監督『ヤッターマン(141)』小津安二郎監督『宗方姉妹(142)』宮野雅之監督『ララピポ(143)』中川信夫監督『地獄(144)』松田定次監督『水戸黄門天下の副将軍(145)』河野寿一監督『風雲児 織田信長(146)』梅沢薫監督『濡れ牡丹 五悪人暴行編(147)』千葉泰樹監督『羽織の大将(148)』 58年東映京都河野寿一監督『浅間の暴れん坊(149)』田坂具隆監督『親鸞(150) 』増村保造監督『曽根崎心中(151)』篠田正浩監督『心中天網島(152)』島耕二監督『上海帰りのリル(153)』内田吐夢監督『浪花の恋の物語(154)』大和屋竺監督『荒野のダッチワイフ(155)』滝田洋二郎監督『痴漢電車 下着検札(156)』溝口健二監督『夜の女たち(157)』豊田四郎監督『新・夫婦善哉(158)』堀川弘通監督『女殺し油地獄(159)』溝口健二監督『残菊物語(160)』 宮藤官九郎監督『少年メリケンサック(161)』君塚良一監督『誰も守ってくれない(162)』溝口健二監督『赤線地帯(163)』
中村登監督『波の塔(164)』野村芳太郎監督『張り込み(165)』大庭秀雄監督『眼の壁(166)』鈴木清順監督『影なき声(167)』中村登監督『白い魔魚(168)』木村恵吾監督『おしどりの間(169)』堀川弘道監督『黒い画集 あるサラリーマンの証言(170)』木村恵吾監督『瘋癲老人日記(171)』市川準監督『トニー滝谷(172)』篠原悦子監督『マコの敵(173)』矢部真弓監督『月夜のバニー(174)』瀬田なつき監督『あとのまつり(175)』杉江敏男監督『忘れじの人(176)』伊藤大輔監督『春琴物語(177)』伊藤大輔監督『いとはん物語(178)』滝田洋二郎監督『コミック雑誌なんかいらない(179)』伊藤大輔監督『下郎の首(180)』田中重雄監督『帯をとく夏子(181)』成瀬巳喜男監督『山の音(182)』品川ヒロシ監督『ドロップ(183)』西村喜廣監督『東京残酷警察(184)』市川準監督『あしたの私のつくり方(185)』市川準監督『東京夜曲(186)』竹本直美監督『地蔵ノ辻(187)』長島良江監督『それを何と呼ぶ?(188)』別府裕美子監督『クシコスポスト(189)』増村保造監督『卍(190)』三隅研次監督『女系家族(191)』繰上和美監督『ゼラチンシルバーLOVE(192)』中田秀夫監督『ハリウッド監督学入門(193)』ユー・リクウァイ監督『プラスティック・シティ(194)増村保造監督『氾濫(195)』蔵原惟繕監督『愛の乾き(196)』増村保造監督『現代インチキ物語 騙し屋(198)』千葉泰樹監督『がめつい奴(199)』新藤兼人監督『石内尋常高等小学校 花は散れども(200)』木村威夫監督『夢のまにまに(201)』溝口健二監督『武蔵野夫人(202)』小栗康平監督『泥の河(203)』
4月野伏翔監督『初恋 夏の記憶(204)』寺内康太郎監督『デメキング(205)』内田英治監督『ビートロック☆ラブ(206)』溝口健二監督『雪夫人絵図(207)』有馬顕監督『やまないカーテンコール(208)』ナリオ監督『記憶という名のバスと真冬のリディム(209)』西條雅俊監督『土井さんの不幸(210)』山田光栄監督『ramily(211)』鎌田千香子監督『月照の歌(212)』河本隆志監督『アメリカ女(213)』酒井建宏監督『街の右側(214)』佐藤良祐監督『ライツオブリトルタウンズ(215)』ケラリーノ・サンドロヴィッチ監督『グミ・チョコレート・パイン(216)』藤田容介監督『全然大丈夫(217)』木下亮監督『肉体の学校(218)』大島渚監督『太陽の墓場(219)』今村昌平監督『「エロ事師たち」より 人類学入門(220)』内田吐夢監督『たそがれ酒場(221)』倉橋良介監督『忠臣蔵 暁の陣太鼓(222)』中村登監督『斑女(223)』山本薩夫監督『太陽のない街(224)』降旗康男監督『別れぬ理由(225)』
吉村公三郎監督『四十八歳の抵抗(226)』万田邦敏監督『接吻(227)』堀川弘通監督『猫と鰹節(228)』伊藤大輔監督『王将(229)』ヤウ・ナイホウ監督『天使の眼、野獣の街(230)』
大曽根辰保監督『修羅桜(231)』前田陽一監督『スチャラカ社員(232)』田中徳三監督『悪名(233)』熊坂出監督『パークアンドラブホテル(234)』横浜聡子監督『ジャーマン+雨(235)』
市川崑監督『鍵(236)』岩淵弘樹監督『遭難フリーター(237)』山本薩夫監督『白い巨塔(238)』チャン・フン監督『映画は映画だ(239)』ケニー・オルテガ監督『ハイスクール・ミュージカル・ザ・ムービー(240)』村上賢司監督『細菌列島(241)』チン・シウトン監督『エンプレス 運命の戦い(242)』清水宏監督『暁の合唱(243)』清水宏監督『簪(244)』スティーブン・ウォーカー監督『ヤング@ハート(245)』渋谷実監督『気違い部落(246)』56年大映市川崑監督『日本橋(247)』中平康監督『牛乳屋フランキー(248)』曽根中生監督『嗚呼!花の応援団(249)』石田民三監督『むかしの歌(250)』野村浩将監督『絹代の初恋(251)』清水浩監督『按摩と女(252)』今井正監督『にごりえ(253)』木村恵吾監督『歌麿をめぐる五人の女(254)』清水宏監督『有りがたうさん(255)』清水宏監督『花形選手(256)』清水宏監督『母のおもかげ(257)』真田敦監督『ホノカアボーイ(258)』真田敦監督『ホノカアボーイ(258)』成瀬巳喜男監督『妻として女として(260)』丹野雄二監督『ハレンチ学園(261)』成瀬巳喜男監督『はたらく一家(262)』五所平之助監督『花籠の歌(263)』成瀬巳喜男監督『秀子の車掌さん(264)』清水宏監督『小原庄助さん(265)』清水宏監督『蜂の巣の子供たち(266)』大曽根辰夫監督『花の生涯 彦根編・江戸編(267)』木村恵吾監督『世にも面白い男の一生 桂春団治(268)』紀里谷和明監督『GOEMON(269)』中平康監督『おんなの渦と渕と流れ(270)』豊田四郎監督『花のれん(271)』豊田四郎監督『東京夜話(272)』川島雄三監督『とんかつ大将(273)』中平康監督『夏の嵐(274)』
島津保次郎監督『隣の八重ちゃん(275)』成瀬巳喜男監督『稲妻(276)』島津保次郎監督『婚約三羽烏(277)』川島雄三監督『還って来た男(278)』中平康監督『地図のない町(279)』中平康監督『あした晴れるか(280)』
5月ジョン・ウー監督『レッドクリフⅡ(281)』中平康監督『月曜日のユカ(282)』野村芳太郎監督『モダン道中 その恋待ったなし(283)』鈴木清順監督『刺青一代(284)』野村孝監督『拳銃(コルト)は俺のパスポート(285)』丸根賛太郎監督『春秋一刀流(286)』中平康監督『誘惑(287)』須川栄三監督『日本人のへそ(288)』中島貞夫監督『まむしと青大将(289)』岡本喜八監督『暗黒街の決闘(290)』寺山修司監督『田園に死す(291)』山田洋次監督『吹けば飛ぶよな男だが(292)』山本薩夫監督『にっぽん泥棒物語(293)』
市川準監督『buy a suit スーツを買う(294)』降旗康男監督『非行少女ヨーコ(295)』あがた森魚監督『僕は天使ぢゃないよ(296)』衣笠貞之助監督『婦系図 湯島の白梅(297)』豊田四郎監督『濹東綺譚(298)』大庭秀雄監督『雪国(299)』藏原惟繕監督『この若さある限り(300)』中平康監督『当たりや大将(301)』成瀬巳喜男監督『三十三間堂通し矢物語(303)』佐々木康監督『血槍無双(304)』マキノ正博監督『続清水港(305)』中平康監督『現代悪党仁義(306)』中平康監督『若くて、悪くて、凄いこいつら(307)』森一生監督『日露戦争勝利の秘史 敵中横断三百里(308)』マキノ正博監督『男の花道(309)』中平康監督『その壁を砕け(310)』中平康監督『あいつと私(311)』市川崑監督『その木戸を通ってFUSA(312)』木下恵介監督『破戒(313)』野村芳太郎監督『伊豆の踊り子(314)』中平康監督『学生野郎と娘たち(315)』三隅研次監督『鬼の棲む館(316)』池広一夫監督『おんな極悪帖(317)』マキノ雅弘監督『日本侠客伝 斬り込み(318)』マキノ雅弘監督『日本侠客伝 関東編(319)』
6月三木聡監督『インスタント沼(320)』斎藤寅次郎監督『エノケンの法界坊(321)』衣笠貞之助監督『花咲爺(322)』池広一夫監督『雑兵物語(323)』清水祟、豊島圭介、川野浩司、山口雄大、オースミユーカ、深川栄洋、塚本連平監督『非女子図鑑(324)』金子功監督『ケータイ小説家の愛(325)』深作欣二監督『狼と豚と人間(326)』深作欣二監督『ジャコ萬と鉄(327)』ダニー・ボイル監督『スラムドッグ$ミリオネア(328)』村保造監督『刺青(329)』プラッチャヤー・ピンゲーオ監督『チョコレート・ファイター(330)』マキノ雅弘監督『昭和残侠伝 血染の唐獅子(331)』佐伯清監督『昭和残侠伝(332)』日高繁明監督『眠狂四郎無頼控 円月殺法(333)』稲垣浩監督『海賊船(334)』家城巳代治監督『ともしび(335)』熊澤尚人監督『おとなり(336)』横浜聡子監督『ウルトラミラクルラブストーリー(337)』 西冬彦監督『ハイキックガール(338)』中川信夫監督『思春の泉(337)』丸山誠治監督『地方記者(338)』五所平之助監督『わかれ雲(339)』山本薩夫監督『浮草日記(340)』クリス・ナオン監督『ラストブラッド(341)』杉江敏男監督『黒い画集 ある遭難(342)』中川信夫監督『青ヶ島の子供たち 女教師の記録(343)』山本薩夫監督『ペン偽らず 暴力の街(344)』羽住英一郎監督『おっぱいバレー(345)』神代辰巳監督『櫛の火(346)』神代辰巳監督『遠い明日(347)』兼重淳監督『腐女子彼女(348)』神代辰巳監督『恋人たちは濡れた(349)』神代辰巳監督『濡れた唇(350)』ピーター・チャン監督『ウォーロードー男たちの誓いー(351)』木村祐一監督『ニセ札(352)』三池崇史監督『クローズZEROⅡ(353)』山中貞雄監督『人情紙風船(354)』田中重雄監督『共犯者(355)』神代辰巳監督『赫い髪の女(356)』神代辰巳監督『宵待草(357)』入江悠監督『SRサイタマノラッパー(358)』神代辰巳監督『一条さゆり 濡れた欲情(359)』神代辰巳監督『地獄(360)』廣木隆一監督『余命一ヶ月の花嫁(361)』神代辰巳監督『噛む女(362)』神代辰巳監督『濡れた欲情 ひらけ!チューリップ(363)』丸山誠治監督『初恋物語(364)』吉村公三郎監督『偽れる盛装(365)』村山新治監督『旅路(366)』清水宏監督『何故彼女等はそうなったか(367)』清水宏監督『何故彼女等はそうなったか(367)』橋本忍監督『南の風と波(369)』成瀬巳喜男監督『あにいもうと(370)』神代辰巳監督『濡れた欲情 特出し21人(371)』神代辰巳監督『少女娼婦 けものみち(372)』吉村公三郎監督『婚期(373)』吉村公三郎監督『女の勲章(374)』
7月木村大作監督『劔岳 点の記(375)』木下恵介監督『楢山節考(376)』増村保造監督『巨人と玩具(377)』神代辰巳監督『美加マドカ 指を濡らす女(378)』神代辰巳監督『アフリカの光(379)』蔵原惟繕監督『愛と死の記録(380)』黒木和雄監督『ルポルタージュ 炎(381)』若杉光夫監督『ガラスの中の少女(382)』増村保造監督『黒の報告書(383)』神代辰巳監督『棒の哀しみ(384)』神代辰巳監督『赤線玉の井 ぬけられます(385)』成瀬巳喜男監督『女の中にいる他人(386)』神代辰巳監督『嗚呼!おんなたち猥歌(387)』神代辰巳監督『快楽学園 禁じられた遊び(388)成瀬巳喜男監督『めし(389)』市川崑監督『娘道成寺(390)』市川崑監督『満員電車(391)』市川崑監督『野火(392)』内田吐夢監督『宮本武蔵一乗寺の決斗(393)』内田吐夢監督『宮本武蔵巌流島の決斗(394)』小林正樹監督『上意討ち 拝領妻始末(395)』小林正樹監督『切腹(396)』青柳信雄監督『落語天国紳士録(397)』成瀬巳喜男監督『お国と五平(398)』伊藤俊也監督『女囚701号 さそり(399)和田嘉訓監督『銭ゲバ(400)』山口和彦監督『サーキットの狼(401)』青柳信雄監督『サザエさん(402)』青柳信雄監督『サザエさん(402)』丸山誠治監督『B・G物語 二十才の設計(403)』山中貞雄監督『河内山宗俊(404)』成瀬巳喜男監督『妻の心(405)』成瀬巳喜男監督『女人哀愁(406)』成瀬巳喜男監督『放浪記(407)』鈴木清順監督『関東無宿(408)』深作欣二監督『解散式(409)』成瀬巳喜男監督『コタンの口笛(410)』池広一夫監督『脱獄者(411)』小林恒夫監督『点と線(412)』成瀬巳喜男監督『石中先生行状記(413)』大島渚監督『太陽の墓場(414)』大島渚監督『青春残酷物語(415)』成瀬巳喜男監督『まごころ(416)』篠田正浩監督『乾いた湖(417)』勅使河原宏監督『おとし穴(418)』羽仁進監督『不良少年(419)』坪田義史監督『美代子阿佐ヶ谷気分(420)』恩地日出夫監督『若い狼(421)』千葉泰樹監督『へそくり社長(422)』松林宗恵監督『社長太平記(423)』伊藤俊也監督『女囚さそり 第41雑居房(424) 』成瀬巳喜男監督『あらくれ(425)』成瀬巳喜男監督『妻(426)』成瀬巳喜男監督『乱れる(427)』中村登監督『顔役(428)』和田嘉訓監督『自動車泥棒(429)』堀川弘通監督『最後の審判(430)』恩地日出夫監督『女体(431)』マイケル・ベイ監督『トランスフォーマー リベンジ(432)』成瀬巳喜男監督『夫婦(433)』中村登監督『危険旅行(434)』岩本仁志監督『MW(435)』成瀬巳喜男監督『女が階段を上る時(437)』三隅研二監督『子連れ狼 三途の川の乳母車(438)』湯浅憲明監督『蛇娘と白髪魔(439)』内藤隆嗣監督『不灯港(440)』
8月ウリ・エデル監督『バーダー・マインホフ 理想の果てに(440)』SABU監督『蟹工船(441)』レオン・イチャン監督『エル・カンタンテ(442)』長谷部安春監督『女囚さそり 701号怨み節(443)』篠田正浩監督『異聞猿飛佐助(444)』勅使河原宏監督『砂の女(445)』竹中直人監督『山形スクリーム(446)』鈴木卓爾監督『私は猫ストーカー(447)』成瀬巳喜男監督『舞姫(448)』成瀬巳喜男監督『妻よ薔薇のやうに(449)』山本薩夫監督『真空地帯(450)』新藤兼人監督『原爆の子(451)』藤田敏八監督『修羅雪姫(452)』成瀬巳喜男監督『噂の娘(453)』デイビッド・イェーツ監督『ハリー・ポッターと謎のプリンス(454)』川島雄三監督『箱根山(455)』岡本喜八監督『肉弾(456)』岡本喜八監督『肉弾(456)』藤田敏八監督『修羅雪姫 怨み恋歌(458)』レニ・リーフェンシュタール監督『意志の勝利(459)』小林正樹監督『日本の青春(460)』
今村昌平監督『黒い雨(461)』稲垣浩監督『がらくた(462)』川島雄三監督『あした来る人(463)』平川雄一朗監督『ROOKIES-卒業-(464)』ジョー・マ監督『さそり(465)』武智鉄二監督『黒い雪(466)』成瀬巳喜男監督『ひき逃げ(467)』成瀬巳喜男監督『晩菊(468)』成瀬巳喜男監督『乱れ雲(469)』西村元男監督『君待船(470)』齋藤寅次郎監督『弥次㐂多道中(471)』小林正樹監督『人間の條件 第3部(472)』小林正樹監督『人間の條件 第4部(473)』武智鉄二監督『白日夢(474)』小林正樹監督『いのち・ぼうにふろう(475)』澁谷実監督『本日休診(476)』澁谷実監督『自由学校(477)』木下恵介監督『日本の悲劇(478)』丸山誠治監督『父子草(479)』澁谷實監督『勲章(480)』熊井啓監督『日本の熱い日々 謀殺・下山事件(481)』井啓監督『帝銀事件 死刑囚(482)』羽仁進監督『手をつなぐ子ら(483)』今村昌平監督『楢山節考(484)』
今村昌平監督『復讐するは我にあり(485)』中村登監督『集金旅行(486)』木下恵介監督『永遠の人(487)』木下恵介監督『喜びも悲しみも幾年月(488)』武智鉄二監督『源氏物語(489)』須川栄三監督『颱風とざくろ(490)』羽仁進監督『彼女と彼(491)』ダーネル・マーティン監督『キャデラック・レコード(492)』オリヴィエ・アサイヤス監督『クリーン(493)』谷口千吉監督『赤線基地(494)』五所平之助監督『雲がちぎれる時(495)』井上和男監督『ハイ・ティーン(496)』田口トモロヲ監督『色即ぜねれえしょん(497)』中川信夫監督『エノケンの頑張り戦術(498)』中川信夫監督『怪異談 生きてゐる小平次(499)』大島渚監督『愛と希望の街(500)』
大島渚監督『太陽の墓場(501)』
9月トム・リン監督『九月に降る風(502)』勅使河原宏監督『燃えつきた地図(503)』恩地日出夫監督『素晴らしい悪女(504)』弓削太郎監督『いそぎんちゃく(505)』中島貞夫監督『日本暗殺秘録(506)』
工藤栄一監督『十三人の刺客(507)』豊田四郎監督『千曲川絶唱(508)』篠田正浩監督『乾いた花(509)』村川透監督『哀愁のサーキット(510)』大島渚監督『無理心中日本の夏(511)』大島渚監督『白昼の通り魔(512)』武智鉄二監督『白日夢(513)』小沢茂弘監督『緋牡丹博徒 二代目襲名(514)』加藤泰監督『緋牡丹博徒 お竜参上(515)』中川信夫監督『若き日の啄木 雲は天才である(516)』豊田四郎監督『甘い汗(517)』堀内真直監督『四萬人の目撃者(518)』中川信夫監督『高原の駅よさようなら(519)』松直之/西村喜廣監督『吸血少女対少女フランケン(520)』沢島忠監督『人生劇場 飛車角(521)』沢島忠監督『人生劇場 続飛車角(522)』堀川弘通監督『悪の紋章(523)』中村登監督『いろはにほへと(524)』野村芳太郎監督『最後の切札(525)』吉田喜重監督『血は渇いてる(526)』沢島忠監督『いれずみ判官(527)』マキノ雅弘監督『次郎長三国志(528)』岡本喜八監督『戦国野郎(529)』中島貞夫監督『くノ一忍法(530)』マキノ雅弘監督『日本大侠客(531)』石井輝男監督『昭和侠客伝(532)』山崎貴監督『BALLAD 名もなき恋のうた(533)』青柳信雄監督『生きている小平次(534)』千葉泰樹監督『鬼火(535)』フェデリコ・フェリーニ監督『81/2(536)』井上梅次監督『東京シンデレラ娘(537)』定永方久監督『錆びた炎(538)』渡邊元嗣監督『好色くノ一忍法帖 ヴァージン・スナイパー美少女妖魔伝(539)』松江哲朗監督『あんにょん由美香(540)』神代辰巳監督『女地獄 森は濡れた(541)』石井輝男監督『やくざ刑罰史 私刑〈リンチ〉(542)』崔洋一監督『カムイ外伝(543) 』デレク・チウ(趙崇基)監督『孫文(544)』稲垣浩監督『柳生武芸帖 双龍秘剣(545)』トニー・スコット監督『サブウェイ123 激突(546)』堤幸彦監督『20世紀少年 最終章 ぼくらの旗(547)』 増村保造監督『音楽(548)』川崎徹広監督『風来忍法帖(549)』大森美香監督『プール(550)』川崎徹広監督『風来忍法帖 八方破れ(551)』長谷川安人監督『忍法忠臣蔵(552)』是枝裕和監督『空気人形(553)』蔵原惟二監督『不良少女 魔子(554)』長谷部安春監督『広域暴力 流血の縄張【しま】(555)』
森岡利行監督『女の子ものがたり(556)』
10月田中光敏監督『火天の城(557)』長谷部安春監督『鑑識・米沢守の事件簿(558)』長谷部安春監督『女番長 野良猫ロック(559)』中野裕之監督『TAJOMARU(560)』青柳信雄監督『制服の乙女たち(561)』ラモーナ・ディアス監督『イメルダ(562)』斎藤光正監督『伊賀忍法帖(563)』ナ・ホンジン監督『チェイサー(564)』クリント・イーストウッド監督『グラン・トリノ(565)』石田勝心監督『父ちゃんのポーが聞こえる(566)』関川秀雄監督『大いなる驀進(567)』福田純監督『コント55号 俺は忍者の孫の孫(568)』深作欣二監督『魔界転生(569)』船床定男監督『隠密剣士(570)』皆川隆之監督『くの一忍法 観音開き(571)』『キャデラックレコード(572)』増村保造監督『氷壁(573)』増村保造監督『美貌に罪あり(574)』増村保造監督『美貌に罪あり(574)』山田洋次監督『下町の太陽(576)』新藤兼人監督『銀[しろがね]心中(577)』吉村公三郎監督『夜の河(578)』島耕二監督『細雪(579)』津安二郎監督『彼岸花(580)』柳瀬観監督『北国の街(581)』木下恵介監督『遠い雲(582)』五所平之助監督『挽歌(583)』市川崑監督『黒い十人の女(584)』衣笠貞之助監督『白鷺(585)』豊田四郎監督『如何なる星の下に(586)』豊田四郎監督『憂愁平野(587)』長谷部安春監督『あらくれ(588)』長谷部安春監督『あらくれ(588)』倉田準二監督『十兵衛暗殺剣(590)』岡本喜八監督『結婚のすべて(591)』ヴォイテク・スマルフスキ監督『ダークハウス/暗い家(592)』御徒町凧監督『真幸あらば(593)』木清順監督『くたばれ愚連隊(594)』川島雄三監督『特急にっぽん(595)』三城真一監督『引き出しの中のラブレター(596)』井口昇監督『ロボ芸者(597)』大森寿美男監督『風が強く吹いている(598)』水谷俊之監督『ジャングルハウス3ガス/林家三平(599)』川島雄三監督『新東京行進曲(600)』恩地日出夫監督『めぐりあい(601)』増村保造監督『大悪党(602)』篠田正浩監督『あかね雲(603)』小沢啓一監督『関東破門状(604)』小沢啓一監督『関東破門状(604)』清水宏、溝口健二、マキノ正博、大曾根辰夫、高木孝一、田坂具隆、市川哲夫監督『必勝歌(606)』緒方明監督『のんちゃんのり弁(607)』
本多猪四郎監督『こだまは呼んでいる(608)』根岸吉太郎監督『ヴィヨンの妻  ~桜桃とタンポポ~ (609)』吉村公三郎監督『眠れる美女(610)』吉村公三郎演出補導/今泉善珠監督『村八分(611)』若松節朗監督『沈まぬ太陽(612)』竹藤佳世監督『あがた森魚 ややデラックス(613)』ポール・ジャストマン監督『永遠のモータウン(614)』増村保造監督『御用牙 かみそり半蔵地獄責め(615)』長谷川安人監督『集団奉行所破り(616)』舛田利雄監督『わが命の唄 艶歌(617)』出目昌伸監督『年ごろ(618)』出目昌伸監督『俺たちの荒野(619)』
11月深作欣二監督『仁義なき戦い(620)』深作欣二監督『狼と豚と人間(621)』冨永昌敬監督『パンドラの匣(622)』深作欣二監督『仁義なき戦い 広島死闘編(623)』深作欣二監督『仁義なき戦い 代理戦争(624)』ダニー・ボイル監督『スラムドッグ$ミリオネア(625)』ダーレン・アロノフスキー監督『レスラー(626)』澁谷實監督『悪女の季節(627)』澁谷實監督『霧ある情事(628)』並木鏡太郎監督『樋口一葉(629)』吉村公三郎監督『甘い秘密(630)』ケニー・オルテガ監督『THIS IS IT (631)』吉村公三郎監督『女の坂(632)』田中重雄監督『愛河(633)』篠田正浩監督『処刑の島(634)』市川崑監督『おとうと(635)』中村登監督『わが恋わが歌(636)』田四郎監督『台所太平記(637)』久松静児監督『雨情(638)』斎藤光正監督『斜陽のおもかげ(639)』深作欣二監督『火宅の人(640)』木下恵介監督『今年の恋(641)』大庭秀雄監督『女舞(642)』新藤兼人監督『人間(643)』西村昭五郎監督『やくざ番外地(644)』内出好吉監督『祇園の暗殺者(645)』大島渚監督『帰って来たヨッパライ(646)』アンヌ・フォンテーヌ監督『ココ・アヴァン・シャネル(647)』 クリスチャン・デュケイ監督『ココ・シャネル(648)』渡辺邦男監督『暴風圏(649)』吉田喜重監督『情炎(650)』大庭秀雄監督『帰郷(651)』舩橋淳監督『谷中暮色(652)』豊田四郎監督『珍品堂主人(653)』降旗康男監督『あ・うん(654)』沖田修一監督『南極料理人(655)』吉田喜重監督『水で書かれた物語(656)』田中重雄監督『永すぎた春(657)』久松靜児監督『月夜の傘(658)』稲垣浩監督『嵐(659)』大島渚監督『日本春歌考(660)』井土紀州監督『行旅死亡人(661)』阿部豊監督『色ざんげ(662)』阿部豊監督『色ざんげ(662)』吉村公三郎監督『足摺岬(663)』増村保造監督『偽大学生(664)』新藤兼人監督『鬼婆(665)』吉村公三郎監督『貴族の階段(666)』羽田澄子監督『嗚呼 満蒙開拓団(667)』羽田澄子監督『嗚呼 満蒙開拓団(667)』島耕二監督『総会屋錦城 勝負師とその娘(669)』山下耕作監督『竜馬を斬った男(670)』
12月中西健二監督『青い鳥(671)』金子修介監督『プライド(672)』鈴木則文監督『温泉スッポン芸者(673)』山本薩夫監督『スパイ(674)』富本壮吉監督『黒の暴走(675)』関本郁夫監督『札幌~横浜~名古屋~雄琴~博多 トルコ渡り鳥(676)』
山城新伍監督『本日またまた休診なり(677)』井上昭監督『勝負は夜つけろ(678)』増村保造監督『「女の小箱」より 夫が見た(679)』溝口健二監督『山椒大夫(680)』桜井秀雄監督『この空のある限り(681)』ポン・ジュノ監督『母なる証明(682)』井上梅次監督『わたしを深く埋めて(683)』田中徳三監督『脂のしたたり(684)』田中徳三監督『悪名(685)』田中徳三監督『続悪名(686)』石井輝男監督『ポルノ時代劇・亡八武士道(687)』溝口健二監督『噂の女(688)』木下恵介監督『二十四の瞳(689)』新藤兼人監督『裸の島(690)』成瀬巳喜男監督『浮雲(691)』川島雄三監督『洲崎パラダイス 赤信号(692)』久松静児監督『渡り鳥いつ帰る(693)』木村恵吾監督『痴人の愛(694)』今井正監督『不信のとき(695)』中川信夫監督『東海道四谷怪談(696)』 
家城巳代治監督『異母兄弟(697)』稲垣浩監督『太夫(こったい)さんより 女体は哀しく(698)』清水宏監督『有りがたうさん(699)』清水宏監督『風の中の子供(700)』森一生監督『薄桜記(701)』清水宏監督『信子(702)』清水宏監督『暁の合唱(703)三隅研次監督『斬る(704)』清水宏監督『泣き濡れた春の女よ(705)』田中重雄監督『誰よりも君を愛す(706)』清水宏監督『母のおもかげ(707)』清水宏監督『母の旅路(708)』五所平之助監督『黄色いからす(709)』溝口健二監督『新・平家物語(710)』森一生監督『新源氏物語(711)』市川崑監督『炎上(712)』増村保造監督『華岡青洲の妻(713)』田中絹代監督『恋文(714)』山本嘉次郎監督『馬(715)』中村登監督『三婆(716)』清水宏監督『サヨンの鐘(717)』清水宏監督『みかへりの塔(718)』関本郁夫監督『好色元禄(秘)物語(719)』久松静児監督『喜劇 駅前団地(720)』豊田四郎監督『喜劇 駅前旅館(721)』三隅研次監督『新撰組始末記(722)』田中徳三監督『赤い手裏剣(723)』伊藤大輔監督『切られ与三郎(724)』市川崑監督『ぼんち(725)』増村保造監督『好色一代男(726)』ジェームズ・マンゴールド監督『3時10分、決断のとき(727)』ベニー・チャン監督『コネクテッド(728)』田中絹代監督『流転の王妃(729)』中平康監督『光る海(730)』田中絹代監督『お吟さま(731)』クリスティン・ジェフズ監督『サンシャイン・クリーニング(732)』ガーボル・ロボニ監督『人生に乾杯!(733)』五所平之助監督『朝の波紋(734)』

今年を振返って。

   去年の400本(4/1~12/31)のペースが加速して、734本。800本には、流石に遠い。昭和20年代から30年代の邦画が、都内で豊富に上映され、日本映画黄金時代を痛感。そうした映画を見れば見るほど、今の邦画、テレビドラマに一言言いたくなってしまう。脚本、演出、役者どこを取っても悲しいほど歴然とした差が存在する。

   ということで、脚本と役者がいらないドキュメンタリーのほうがいい。
  『小三治』を見たことで、久し振りに落語熱が復活し、談志、小三治らの落語会やら寄席に出向く。
  『あんにょん由美香』松江哲朗監督このところ外れがない。『あがた森魚 ややデラックス』は、あがたさん、竹藤佳世監督どちらにも思い入れあるので、少し点が甘いかも(苦笑)
   羽田澄子監督の『嗚呼 満蒙開拓団』は流石。想田和弘監督『精神』魅力的な出演者たち。

   中2男子のまま、51のオッサンになってしまったので、青春ものにはとことん甘い。
ケラリーノ・サンドロヴィッチ監督の『グミ・チョコレート・パイン』田口トモロヲ監督の『色即ぜねれえしょん』
   『SRサイタマノラッパー』『パンドラの匣』『ハイスクール・ミュージカル・ザ・ムービー』『風が強く吹いている』『青い鳥』『美代子阿佐ヶ谷気分』・・・。
   時代も、年齢も様々なんだが・・・。岩淵弘樹監督の『遭難フリーター』は、出口の見えない現代の青春像。他人事ではなかったりする。

  長谷部安春監督『鑑識・米沢守の事件簿』は、ドラマの映画化の中では、テレビ屋のコンプレックスの裏返しのような貧乏臭い成金感がなく、スピンオフのB級としてプログラムピクチャーの平均点映画にしていてさすが東映。
  長谷部監督への追悼の気持ちもないわけでないが、六角精児がストリートで高田渡を歌うなど楽しめちゃうんだなあ。

   昭和の日本映画を見続けたので、外国映画はめっきり減った気がする。
『レスラー』『母なる証明』は、本当に素晴らしかった。こういうクオリティの映画が、かっていくらでも日本にあったのにと思う。

女優は、是枝裕和監督『空気人形』のペ・ドゥナが圧倒的な存在感。
女優で気になったのは、
麻生久美子(『インスタント沼』『おとなり』『ウルトラミラクルラブストーリー』)
仲里依紗、川上未映子(『パンドラの匣』)
黒川芽以(『グミ・チョコレート・パイン』)
臼田あけ美(『色即ぜねれえしょん』)
チョン・ジヒョン(『ラストブラッド』)
木村多江(『沈まぬ太陽』『ゼロの焦点』)

51歳734本順不同、1月1日~12月31日鑑賞(*)ドキュメンタリ作品

2009年邦画
小三治(*)』康宇政監督
グミ・チョコレート・パイン』ケラリーノ・サンドロウ゛ィッチ監督
buy a suit スーツを買う』市川準監督
SRサイタマノラッパー』入江悠監督
色即ぜねれえしょん』田口トモロヲ監督
あんにょん由美香(*)』松江哲朗監督
空気人形』是枝裕和監督
風が強く吹いている』大森寿美男監督
あがた森魚 ややデラックス(*)』竹藤佳世監督
嗚呼 満蒙開拓団(*)』羽田澄子監督
精神(*)』想田和弘監督
青い鳥』中西健二監督

邦画次点
石内尋常高等小学校 花は散れども』新藤兼人監督
鑑識・米沢守の事件簿』長谷部安春監督
ロボ芸者』井口昇監督
パンドラの匣』冨永昌敬監督
南極料理人』沖田修一監督
美代子阿佐ヶ谷気分』坪田義史監督
愛のむきだし』園子温監督
沈まぬ太陽』若松節朗監督
大丈夫であるようにーCocco 終らない旅ー(*)』是枝裕和監督
谷中暮色』舩橋淳監督
遭難フリーター(*)』岩淵弘樹監督
ゼロの焦点』犬童一心監督

2009年洋画
エレジー』イサベル・コイシェ監督
キムチを売る女』チャン・リュル監督
ハイスクール・ミュージカル・ザ・ムービー』ケニー・オルテガ監督
チョコレート・ファイター』プラッチャヤー・ピンゲーオ監督
バーダー・マインホフ 理想の果てに』ウリ・エデル監督
キャデラック・レコード』ダーネル・マーティン監督
九月に降る風』トム・リン監督
チェイサー』ナ・ホンジン監督
グラン・トリノ』クリント・イーストウッド監督
レスラー』ダーレン・アロノフスキー監督
母なる証明』ポン・ジュノ監督
3時10分、決断のとき』ジェームズ・マンゴールド監督
サンシャイン・クリーニング』クリスティン・ジェフズ監督
人生に乾杯!』ガーボル・ロボニ監督
スラムドッグ$ミリオネア』ダニー・ボイル監督
洋画次点
天使の眼、野獣の街』ヤウ・ナイホウ監督
THIS IS IT(*)』ケニー・オルテガ監督

金返せ。
四十歳問題(*)』中江裕司監督
ホノカアボーイ』真田敦監督
GOEMON』紀里谷和明監督
MW』岩本仁志監督
蟹工船』SABU監督
カムイ外伝』崔洋一監督
TAJOMARU』中野裕之監督
悲しいボーイフレンド』草野陽花監督
初恋 夏の記憶』野伏翔監督
ケータイ小説家の愛』金子功監督
腐女子彼女』兼重淳監督
女の子ものがたり』森岡利行監督

2009年12月28日月曜日

アンヴィル間に合わず。

夕方から元会社で打合せ。その後、渋谷で2月に予定のイベントの打合せ。生徒と食事をしながら反省会。吉祥寺でアンヴィル間に合わず。

2009年12月27日日曜日

大掃除

 まあ、普段の怠惰がいけないのだが、窓ガラスと浴室を集中的に。カーテンも洗う。

2009年12月26日土曜日

映画三昧

   京橋フィルムセンターで、生誕百年 映画女優 田中絹代
   62年文芸プロダクション/にんじんくらぶ田中絹代監督『お吟さま(731)』
   秀吉は、薩摩の島津を討つ前に、筑前竹田の?に駒を進めた。その陣中、石田三成(南原宏治)と前田玄以(千秋実)と比叡山の高僧?が話している。「これで太閤殿下による天下統一がなり、後の問題は吉利支丹、伴天連だけになりましたな」「この度の九州平定に、高山右近ら吉利支丹大名が参加していないことで、太閤殿下のお心も決まったと言うものだ。」
三成が、浜辺に出ると、千利休(中村鴈治郎)が茶を立てている。「朝の一服はさぞやのものであろう。利休どの茶を所望したいのだが…」「ところで、利休殿の娘のお吟さま、松永禅正殿の忘れ形見と伺っているが、ちょっと縁談がありましてな。養い親として可愛がってお育てのお吟殿、さぞや手放したくらないと思うが、ぜひにとの方から相談を受けましてな」
    堺の利休の屋敷。淀川沿いの船着き場に、小舟が着く。下女宇乃(富士真奈美)が吟(有馬稲子)の部屋に駆け込んで来る。「右近さまが、お見えになりました。」吟の顔が喜びに輝く。「まだ、お支度をされていないのですね。早くお支度下さいませ。」唇に紅を引く吟。高山右近(仲代達矢)を出迎える母りき(高峰三枝子)と弟の予吉郎(田村正和)

   池袋新文芸坐で、シネマカーテンコール2009
    クリスティン・ジェフズ監督『サンシャイン・クリーニング(732)』
   停めた車の運転席で、神経質そうに口臭スプレーを使う男がいる。ダッシュボードから銃弾を取り出し、ワイシャツの胸ポケットに入れる。大きく広いアウトドアショップに入る男。店員に「20口径のショットガンをくれ。強力なやつがいいな」「12口径?20口径?」「20口径」「これどうですか?」男に手渡す店員。銃弾を込め、自分の下顎にあて、引鉄を引く男。現場検証をしている警察関係者。 
   ピンク色のボロシャツの制服を着て、部屋を掃除しているローズ・ロウコスキー(エイミー・アダムス)。父親のジョー(アラン・アーキン)がノラ(エミリー・ブラント)に「店から電話だ。早く起きなさい!」やっと起きてレストランに行くものの、お盆をひっくり返して、フライドポテトを豪快に床にぶちまける。女主人は、遅刻してきた上に全く使えないノラに堪忍袋の緒が切れてクビだと叫ぶ。

    ガーボル・ロボニ監督『人生に乾杯!(733)』


   うーむ、いいなあ、81才と70才の老夫婦。

    神保町シアターで、女優・高峰秀子
    52年スタヂオ・エイトプロ五所平之助監督『朝の波紋(734)』
    有楽町から銀座方向に進み、日劇手前を左折するカメラ。
    アメリカ銀行、米人のマネージャーに流暢な英語で商談をする瀧本篤子(高峰秀子)。三光商事に戻ってきた篤子に、「やっぱり駄目だったか」と営業部長の久富(斎藤達雄)。 「OKしてくれました」「三光商事の信用ですよ」「しかし僕や久富くんが何度通っても駄目だったんだから瀧本くんの腕だよ」と社長の向井(清水将夫)。「来週のアメリカ出張の書類纏めておいてくれよ」「出来ています。」篤子は三光商事の社長秘書だが、小さい会社なので、直接商談することも多い。古株の社員(加藤嘉)が「瀧本くんも、アメリカ出張に行くのか?!」と同僚に尋ね「そんな訳ないじゃないですか、社長だけですよ」と言われている。
篤子が帰り支度をしていると、同僚の梶五郎(岡田英次)が「アコちゃん!もう帰るのかい?」「梶さんのとこ大変そうね」「アメリカへの電報一本だけお願いしてもいいかい」「お安い御用よ」
   篤子が六本木のバス停から歩いている。まだ焼け野原で、広々としている六本木。焼け残ったらしい家、瀧本篤三と表札が掛かった門をくぐると、門の脇に雑種のペケが繋がれていて、頭から毛布を被った男が、しきりと「ううーっ!お化けだぞう」とうなり声を上げている。ペケはキョトンとして尻尾を振っている。「健一!出て来いよ」と毛布を被った男。健一(岡本克政)が出て来て篤子に気付き「お姉さん!お帰りなさい」「健ちゃんただいま!どうしたの?」「」ペケが全然吠えないので、いのさんに脅かして貰っていたんだ」
そこに犬を背負った篤子の母綾子(瀧花久子)が帰って来た。毛布を被っていた男(池部良)は、「二つともお宅の犬ですか」「ペケは僕の犬なんだ」と健一。「ペケ散歩に行こう」と男が連れて行くのを見て、綾子「あの方は?」「健ちゃんの親友ですって」
   毛布の男、いのさんこと伊能田二平太「なあ、健ちゃん!あの人君の姉さんか?」「親戚だよ。僕のお父さんは戦死して、お母さんは、箱根の旅館で事務の仕事をやっているんだ。今の家には居候なんだ」

2009年12月25日金曜日

赤坂昔話

  朝一番で、大門の睡眠クリニック。昨日の成人病クリニックといい、中高年が集まる病院は、凄い人だ。予約制だし、ほとんど待たない病院だが、今日ばかりは通常の倍以上かかる。
  そして、元同僚と年内で閉店だと言う赤坂の成都酒家に。11時半についたが、既に殆ど席が埋まっていて、座っているお客さんに料理は全く出ていない。何とか、11時45分に着席し、料理が出てくるまでに45分。五目焼きそばを食べる。旨いなあ。
   成都酒家は、元会社が赤坂にあり、そこに新卒で入社した翌年の83年のことだろう(82年中は、研修と称して、当時その会社が作ったばかりの渋谷のライブハウスでウエイターをしていたので)。自分にとって、赤坂の四川料理というのはここだった。ランチの担担麺か夜の水餃子。生ビールサーバーが導入されるまで、ビールが小瓶しかなかったので、若造には夜の敷居は少し高かった。暫くして、領収書をきれるようになってから、アーティストやメディアの人間との会食で、ちょっといい竹コースの場合だったろうか。80年代から90年代初頭の赤坂は、バブルでもあり、サラリーマンが会社の金で飲む松の店か、自分の小遣いで飲む梅の店の両極しかなく、竹の店は少なかったなあ。今や梅か、番外の店ばっかりだ(苦笑)。いつも財布は空っぽだったが、カード可の梅~竹の店は本当に少なく、困った時の成都酒家だったかもしれない。まあ、そんな店が年内で閉店。11月末にその話を聞いて、何人かの元同僚と忘年会をやろうと言っていたが、夜の予約はもう一杯だと言われてしまっていた。80年代後半バブルによる地上げによってかなりの店が閉店し、バブルが弾けて松クラスの店がなくなり、この頃は経営者の高齢化によって閉店していく。20代の頃から行っていた店は、あと4、5軒になった。

2009年12月24日木曜日

病院行脚

   天気も良さそうなので、早起きしてゴミ出しし、洗濯をした後は、赤坂のメンタルクリニック、大門の歯医者、丸の内の糖尿病経過観察と、年内最後の病院行脚。

   京橋フィルムセンターで、生誕百年 映画女優 田中絹代(2)

   60年大映東京田中絹代監督『流転の王妃(729)』
   昭和32年12月天城山、セーラー服を着た女子学生の遺体と学生帽が落ちている。娘の遺体に毛布を掛けてやる龍子(京マチ子)。
    時代は遡る。黄色くなったイチョウ並木。軍人の隊列越しに、菅原龍子の姿がある。皇族菅原家の屋敷。龍子の母和子(沢村貞子)「龍子はまだ帰りませんか」「木下先生にお電話したところ、おひいさまは、午後早くお帰りになったそうです。」「まあ、困ったわねえ」「和子さん!」祖母の直(東山千栄子)が呼ぶ声に、襖を開ける和子。「お母様、和子さんに今日のことをお話しになりました」「では、龍子には今日のお見合いのことは話していないのですぬ」「はい、取り敢えずお会いしたいと言うことでしたので…」「私は、こういう話しは、あくまでも本人次第だと思いますよ」女中が「朝吹閣下がお見えです。御前さまがお呼びでございます」「まあ、朝吹閣下が…、一体全体何でしょう」
   龍子が帰宅する。「龍や、龍や」「ばばさま、私とっても素敵なことがございましてよ」「まあ、何でしょう」「木下先生が油絵を描いてもいいとお許しが出たんですの。木下先生は洋画界の第一人者ですもの。私一生懸命描いて、来春の春雷展に出品いたしますわ」「まあ、まあ木下先生をお勧めしたのは、ばば様ですよ」置き時計は3時を指している。「まあ、こんな時間、龍子早くお支度をしないと、お芝居に遅れますよ」
    朝吹(三津田健)が「では、宜しくお願いいたしますよ」と念を押して車に乗り込む。沈痛な表情の父親菅原秀郷(南部彰三)と和子。和子が龍子に「お芝居どころではならなくなりました。大変なことが起きてしまったわ。龍子さんいらっしゃい」応接間に、龍子と龍子の父母、祖母、叔母夫婦が集まっている。「満州皇帝の弟君の嫁に決まったと言うのだ。」「誰が皇帝の弟君の嫁にというんです」いきり立つ祖母。「ですから龍子がです。」

   63年日活中平康監督『光る海(730)』
   城南大学の卒業式、英文科は、女子33人に対して、男子7人。野坂孝雄(浜田光夫)向井達夫(山内賢)浅沼一郎(和田浩治)木村健五(杉山俊夫)倉橋守(木下雅弘)長沢三津雄(市村博)川田千太郎(亀山靖博)という男子学生は、七人の侍と呼ばれている。学生服姿の彼らは、教室の前で、クラスメイトの女子たちを出迎えている。クラス一の成績の葉山和子(十朱幸代)は艶やかな振袖姿で、対照的に、二番目で小説家志望の石田美枝子(吉永小百合)は、黒いスーツに黒い縁の眼鏡の姿で、愛犬のコッカスパニエルのベベを連れている。式の最中、卒業証書を受けた取った美枝子が転ぶ、そこをクラスメイトの野坂孝雄が受け止める。
  式が終わり、足を挫いた美枝子に、肩を貸す野坂。そこに、美枝子の母、雪子(高峰三枝子)が声を掛ける。若く美しい雪子が着ている上質な着物や帯などを説明するが、今日は自分の頼みで化粧をしていないのだと野坂には言い、母には、これから茶話会があるので、ベベを連れて帰ってと頼む美枝子。雪子は、5歳の時に離婚、銀座でバーをやりながら、美枝子を育ててきた。美枝子は、自分の母親が水商売をしていることを恥じてはいないが、何か屈折があり、母を困らせるために化粧をしないでと言ったのだと告白する。
  教室での茶話会は、担任で心理学の渡部教授(浜村純)を中心に盛り上がる。女子学生の中に7人の男子学生がいるということは大学にとっても実験だったと言い、4年間の感想を告白させる渡部。教室を片付けている和子と孝雄。美枝子がハンドバックを忘れている。野坂が届けることになる。また会いましょうと握手をする二人。
   美枝子の家に、野坂がいる。卒業式では、黒いスーツ姿だった美枝子が振袖に着替えていて、野坂を驚かす。小説家志望で人間観察が趣味の美枝子にかかっては、親切に忘れ物を届けた野坂も感謝されているというよりも貶されにやってきたようだ。ホテルオークラで、父親と会うので車を運転して送ってくれと頼む美枝子。
   ホテルのレストランで会食をする。美枝子の父、田島清二(宮口精二)は、美しく成長した娘の姿に目を細める。何で離婚したのだと、野坂から率直に問われた田島は、幼い時に夫を亡くした母親安子(原泉)が息子である自分の成長に全てを掛けたため、あまりに母との関係が深すぎ、結婚した後も、雪子に干渉しすぎて、諍いが絶えず、自分が母親にも妻に対しても何もできなかったからだと言う。すると、美枝子は、直接的な原因は自分だったと言いだす。幼稚園のころ、自分は祖母にも母にもいい顔をしていたが、ある日帰宅すると二人が激しく言い争いをしており、それを止めようと物差しで祖母を叩き「ママを苛めないで」と自分が言うと、祖母も、母も自分のせいだと謝罪をし、そのことは、二人は一緒に暮らさない方がいいと思わせてしまったのだ。幼いときの自分のせいだという美枝子の話に、田島も野坂も、美枝子が5歳から背負ってしまったものを思って涙ぐむ。
   帰り車を運転し、美枝子の家に向かいながら、聖者の行進を歌う二人。玄関の前での別れ際、美枝子を抱きしめたくなる衝動を抑える野坂。美枝子は、恋愛とか結婚という気持ちと別に若者は口づけをすることはあるという。口づけをする二人。
   三か月がたつ。葉山和子は、ある大企業の庶務課に勤めるBGとなっている。実は、この会社の社長は、叔父の矢崎庄二郎(森雅之)だが、社内でその関係を知る者はほとんどいない。秘書課でもなんでも推薦してやると言ったのに、何で庶務課なのだと尋ねる矢崎に、とても働き甲斐のある職場だと言う和子。実は、和子の推薦で、浅沼一郎(和田浩治)が入社しているが、英語力を矢崎は認めており、秋にはアメリカ出張させることが内定していると言う。浅沼とすれ違った時におめでとうと囁く和子。ちょっと相談があるという浅沼に、野坂を誘い三人で会おうと言う和子。浅沼は、実は大学時代から1年下の女子学生木村栄子(松尾嘉代)という同棲相手がいて、妊娠した栄子は産みたいといっているが、会社には独身として入社したので、どうしようという衝撃的な話だった。野坂は自分の実家の医院で出産し、費用は出世払いにしてもらうように親に頼んでやるといい、和子も、会社のほうへの根回しは自分がやってあげると言う。二人は、浅沼のアパートを訪ねる。和子は、浅沼と野坂を部屋の外に出し、栄子の腹を触らせてもらう。胎動に感激する和子。
   浅沼の家を出た和子は、野坂を自宅に誘う。葉山家を訪れると両親は親類の家に外出しており、高校生の妹久美子(和泉雅子)が出迎える。和子が着替える間、久美子が相手をするが、少し前、内気で暗かった印象の久美子は、一変しており、野坂を驚かす。姉の和子と今結婚しても、安月給では、生活が苦しい、その分、今の自分と交際をして自分の大学卒業の時に結婚すれば、給料も上がっているだろうから、幸福な新婚生活を送れるだろう。だから姉ではなく自分と交際しないかと言うのだ。かって自分が陰気だったのは、下半身に発毛が無く悩んでいたからだと言う。そしてその悩みが解消され、母親や姉とも一緒に入浴できるようになり、姉の和子と入浴した際には、自分より姉の方がそこは豊かだと言って、姉に叩かれたことがあるとまで話す。和子が現れ、何の話をしていたのかと尋ねられ、経済学や生理学やら・・・と野坂はごまかすが、最近浴室で久美子を叩いたことがあるかいと尋ねる。何の話だか思い出した和子は赤面する。そこに、親類の建て前の祝に出かけていた和子の両親(下條正巳、小夜福子)が帰宅する。父親は大変ご機嫌に酔っている。家の前まで、野坂を見送る和子。
  出版社に就職した向井達夫(山内賢)が美枝子を訪ねてくる。今度新人文芸コンクールがあり、若手編集者に一人ずつ作家を発掘するよう指示があったので、美枝子を推薦しようと言うのだ。原稿を取りに、自宅に戻ると婆や(飯田蝶子)が雪子が実印を忘れたので店に届けてほしいという伝言を伝える。美枝子は向井を連れて、銀座の雪子の店きこりを訪ねる。美枝子は雪子に交際する男性がいるかと尋ねる。姑との確執で家を出た自分は、水商売をしているだけに、美枝子のためにも自分を律してきてしまったと言う。逆に雪子があなたはどう思っていたかと美枝子に尋ねる。そうしたそぶりも見せない母親を疑い、耐えられなかったが、いてもおかしくないし、居る筈だろうと思って、母親が幸せならどちらでもいいと思っていると言う。母娘の会話に感動する向井。雪子は、信頼するボーイフレンドと新橋で食事をするので、あなたたちもいらっしゃいと言う。
   料理屋に現れたのは、和子の叔父の矢崎だった。店の客で、妻も何度か店を同行させ、雪子に好感を持っていると言う。何か、複雑な思いを抱かせないように、雪子は美枝子に、矢崎は和子に、自分たちが友人だと告げてこなかったと言う。紳士的でダンディな矢崎に好感を持つ美枝子。若い二人を帰したのち、矢崎は、妻のことで相談があると言う。胃潰瘍の手術を受けた妻の信子(田中絹代)は、痩せてきており、医者は問題ないというが気鬱で身体を壊さないか心配しているのだ。雪子は、信子から夫の矢崎には内緒で一度、出来れば美枝子も伴ってもらって、会いたいと言う手紙を貰っていると告白する。信子が二人の仲を邪推するような女性でないことは、二人とも分かっているが真意は不明だ。女同士の会話で信子の気も晴れるだろうから、会ってやってくれないかと言う。
    教会で、普段着のまま、牧師の前に並ぶ浅沼と栄子の姿がある。栄子は臨月を迎え苦しそうである。しかし、牧師は何故か(島田登里子(ミヤコ蝶々)で、牧師の弟の代理である。誓いが終わり、安いエンゲージリングを栄子の指に嵌めたところで、栄子は倒れる。救急車で野坂の実家の医院に運ばれる。野坂の父親淳平(清水将夫)も長い産婦人科医生活でこんな大きな声をだす妊婦は初めてだというくらいの悲鳴が、院内に響き渡っている。居間に集まっている野坂や、母里子(高野由美)、弟の次郎(太田博之)、浅沼、和子、久美子、美枝子たち。疲れた顔で父親が現れ、あまりの悲鳴の大きさで入院患者も何事かと大騒ぎになったが、無事に男の子が生まれたと浅沼に伝える。浅沼が病室に駆けつけると新生児を抱いた看護婦(奈良岡朋子)が、小声で、自分の看護婦生活であんな大きな悲鳴を上げた妊婦は初めてだと言い、さぞや閨での声も大きいのでしょうねと囁く。赤面する浅沼。
   美枝子、和子、野坂たちは、浅沼抜きで出産祝いを兼ねて、やはり同級生だった木村が、ステージで歌う銀座のクラブに出かけた。
   0数日後、雪子は、美枝子を伴い軽井沢の矢崎の別荘に信子を訪ねる。美枝子が馬に乗って出かけている間に、雪子は、自分が胃癌であり、みんなが自分のために悲嘆しながらその日まで迎えることを嫌い、夫や子供たちには内緒にするよう医師に口止めしていることを告白する。その上で、自分が心残りなのは、夫の矢崎のことだけであり、世間に大々的な披露をしないことと、遺産の相続を受けないことを条件に、自分の死後のことを雪子に託したいと言う。
   気持ちは判るが、雪子も矢崎も独立した人格なので、一緒になれと言われても困ると言う雪子に、極めて冷静に信子は、この願いを雪子に伝えることで自分は救われるのだと言う。カレンダーを指す信子。8月のカレンダーには1日毎に赤鉛筆で×が付けられている。これが自分の生きている証なのだ。来月の風景の写真を自分は大変気に入っており、何日その写真を見ることが出来るだろうかと言い、今日は大事な用事も済んだので、印を付けてほしいと雪子に頼む。泣きながら赤鉛筆を取る雪子。
    馬に乗った美枝子がやってくる。明るい美枝子に会い喜ぶ信子。疲れている信子を気遣いハラハラしている雪子だが、元気な若い佐知子と話すことが何よりも嬉しいと言う信子の夕食の誘いを受ける。美枝子宛ての電話が掛かってくる。美枝子の書いたものが評判なので、コンクールの選考に残ることになったという知らせだ。ラジオをつけてツイストを踊り出す美枝子。戸惑う雪子と嬉しそうに手拍子を打つ信子。
    9月中旬になり、東京の矢崎の家に、和子と美枝子が呼ばれる。美枝子の母と矢崎が親しかったと聞いて驚いたと言う和子。今には信子に呼び出された息子高雄(木浦佑三)と娘麻子(南寿美子)文子(天路圭子)もいる。信子が、自分が胃癌で後数週間の命であること、家族には知らせないよう医師に口止めしていたことを告白する。驚き疑う家族たちに、自分は皆に悲嘆に暮れながらその日を迎えたくなかったのだという。美枝子は、ある哲学者の言葉を思い出した。自分がうまく伝えられない気持ちを代弁してくれた美枝子に感謝する信子。しかし、自分の死後、遺産相続を受けずに夫の矢崎と生活を共にしてくれる女性を求めているのだと言い出したことに矢崎も子供たちもそれはあんまりだと言うのだ。そのとき美枝子は、私が呼ばれた訳は、信子が思い抱いているのが自分の母の雪子だからではないのかと言う。信子にどう思うかと尋ねられて、多分母親を取られて悲しい思いをすると思うが、反対はしないと言った。数週間後、信子は静かにこの世を去った。
   和子の家で両親が相談ごとをしている。久美子が現れて、二人は話を止める。久美子は、日本の家庭では、親は子供に内緒ごとをできないので、教えてほしいと言う。戸惑う両親に、クラスで、いつ両親の秘め事を知ったかとアンケートをとるとほとんど幼いときから両親が閨を共にしていることを知っていたと言う。久美子も、本当に小さかった時、夜中に目が覚めると母親が布団におらず、父親の布団に入っていることに気がついて、母親はお化けが出て怖いので、父親と一緒に寝ているのだと思ったという話を披露する両親の困惑は一層高まり、和子の縁談のことだと打ち明ける。久美子は、姉の和子は野坂に好意を持っており、野坂もそうであるが、それ以上は進展していないと言う。野坂であれば、人柄も家柄も文句なしだが、猫に鈴を誰がつけようかという話になり、久美子は、野坂の弟の次郎と二人で実行すると言う。
  翌日、学校帰りに次郎と会って、その話を持ちかける。美しい和子が義姉になることは次郎も賛成だ。翌日、野坂を勤め先の放送局に訪ね、姉が最近恋わずらいして、寝言で野坂の名を呼んでいると嘘をつく。次郎も、和子を会社に訪ね、兄のことを話す。
  羽田空港に、矢崎家の人々と和子、雪子、美枝子が集まっている。結局、矢崎と雪子は、信子の希望通り、入籍はしないが、同居することになり、神社で内輪だけの式を挙げ、今日から5日ほど北海道への新婚旅行にでかけることになったのだ。美枝子は雪子に、自分は小説家の卵として、矢崎と愛し合った日には○をそうでない日は×を書いた絵葉書を出してほしいと頼む。雪子は呆れながらも仕方なしに、承諾する。
   見送りのあと、和子はボーリング場で、野坂と待ち合わせている。お互いがやつれていないことで、弟と妹に騙されたことに気がつく。しかし、和子は、野坂に二人に乗せられたことにしましょうと言い、結婚しようということになった。野坂は、美枝子に電話をする。感のいい美枝子は、野坂が和子と結婚の約束をし、報告の電話でないかと言って、野坂を驚かす。しかし、祝福の言葉を言って電話を切ってから、美枝子は泣いた。彼女も、野坂に対して憎からず思っていたからだ。さらに、新婚旅行先の雪子から電話がある。とてもいいホテルで。寝室にはとても大きなダブルベッドと、赤い薔薇の花で埋め尽くされていると言う言葉に、電話を切り、激しく泣き出す美枝子。急に孤独を強く感じたのだ。婆やが、美枝子を慰め、涙を拭いてあげる。
    ホテルの一室で、美枝子の新人女流文学賞の受賞パーティが行われている。恩師の渡部を始め、赤ん坊を抱いた浅沼と栄子も含め、大学時代の友人たちもみんな顔を合わせている。スピーチを終えた美枝子は、突然、婚約を決めた友人を祝福したいと思うと言って、野坂と和子を呼ぶ。驚く二人。美枝子は結婚行進曲を原語で歌い始める。友人たちも歌い始め、会場中が歌声にあふれていく・・・。

2009年12月23日水曜日

男がしくじる全ての原因は、やっぱり女だなあ(苦笑)

   角川シネマ新宿で、大雷蔵祭

   60年大映京都伊藤大輔監督『切られ与三郎(724)』
   歌舞伎小屋中村座、三味線を弾く与三郎。「上方きっての人気役者だか何だか知らねえがあんな大根、俺は嫌だぜ。明日からは誰か立てくれ」「そんな!!」吐き捨てるように?の芝居を切って捨てた与三郎に、一人の女形が「お師匠さまに何て言い草だ!囃子方風情が!」といきり立った。小屋の者は「相手が悪い。あいつは将軍家御用達の蝋燭問屋伊豆与の若旦那で、道楽三昧で、金も貰わずやってるんだ」となだめようとする、小屋を出て行こうとした与三郎に小刀を持った女形が襲いかかるが、はねのける与三郎。鶴ヶ左仕吉の札が裏返しになり、赤字となる。
   婆や(浦辺粂子)に、「だから俺のことを買い被っているんだ、婆やは。」「私は若旦那のことは何でも分かっているんです。大旦那さまが、若旦那を惣領養子とした後に、ご新造さんとの間に、お嬢様とお坊ちゃまがお生まれになったものだから、優しい大旦那さまが勘当しやすいように放蕩三昧してらっしゃるんですから…。」

お源(浦辺粂子)13才~16才お金(富士真奈美)伊豆屋与左衛門(香川良介)お菅(村田知栄子)山城屋多左衛門(小沢栄太郎)10才のお金(浅野寿々子)お富(淡路恵子)ちさ(高野道子)源右衛門(潮万太郎)女歌舞伎芝村あやめ一座かつら(中村玉緒)あやめ(大和七海路)大貸元・佐々良三八(寺島貢)市場鶴(小堀阿吉雄)権九郎(嵐三右衛門)亥太郎(山路義人)蝙蝠ノ安五郎(多々良純)
留公(尾上栄五郎)十返九十郎(天野一郎)松五郎(水原浩一)若芝(高倉一郎)佐野川杜若(五代千太郎)藤八(浅尾奥山)飯沼左仲(原聖四郎)丈助(横山文彦)己之(大丸智太郎)辰吉(三木譲)お里(小松みどり)お吉(種井信子)勘十(清水明)

   60年大映京都市川崑監督『ぼんち(725)』
   春団子はるだんご(中村鴈治郎)が船場の街を歩いていると、後ろから来たトラックの運転手が「こら!おっさん、気いつけさらせ!!ひき殺してしまうで!!」と怒鳴りつける。呆然とふらふらあるき、河内屋の古びた屋敷に入っていく。中に2番目の子の太郎(林成年)と1番目の子の久次郎がいる。「どちらさんも、お初にお目にかかります。私は、旦さんには随分とご贔屓にしただいておりました。御新造さんが亡くなられたと伺って参りました。」太郎「お父はん、ご祝儀のようなもん、お金ようありましたな。兄さん、もう会社へお帰り」春団子「仏はんは。こちらのお母はんだすか?」「いや、ウチと兄さんの母とも違うんでっせ。お父はんいうたら、何人の女がいたのかようわからんですのわ。」
  喜久治(市川雷蔵)が呼ぶ「おときは何しとんのや。おとき!おとき!お茶やで」おとき(倉田マユミ)が現れる。春団子「あの方は?」「あれは、ただの上女中頭でっせ」「上女中頭・・・。へえ、御隠居はん。さすがに五代続く船場の老舗だすな・・。」
  時代は遡る。若い喜久治の身体に天花粉をはたくおとき。全裸で仁王立ちし、下帯から全て着せてもらいながら、喜久治は「しかし、船場の伝統やら面倒くさいもんやな。1日と15日には、着ている服全てさらのモンに着替える。そのために、何人かのお張り子が毎日ずっと縫っているんやで、勿体ないもんや。
四代続く船場の足袋問屋河内屋
ぽん太(若尾文子)お福(京マチ子)弘子(中村玉緒)勢似(山田五十鈴)幾子(草笛光子)きの(毛利菊枝)比沙子(越路吹雪)喜兵衛(船越英二)春団子(二代目中村がん治郎)太郎(林成年)

   61年大映京都増村保造監督『好色一代男(726)』

  池袋新文芸坐で、シネマカーテンコール2009

   ジェームズ・マンゴールド監督『3時10分、決断のとき(727)』
   黒く鍔の小さな帽子を被ったベン・ウェイド(ラッセル・クロウ)が、枯れ木に止まる鷹の絵を描いている。
   アリゾナにあるダン・エヴァンス(クリスチャン・ベイル)の小さな農場。ある夜、大地主ホランダーに命じられたタッカーに、厩に放火をされる。ここを出て行かないと、次は家を焼くぞと言うのだった。ダンは、14歳の長男ウイリアム(ローガン・ラーマン)と必死で馬を逃がすが、飼葉を含めて小屋は焼け落ちた。もともと乾燥した土地は、旱魃が続き、ホランダーは、ダンに嫌がらせをして川を堰き止め流れを変えたため、水を買うにも金が掛かり、借金が膨らむばかりだ。そんな不甲斐ない父親にウィリアムは不信感を持っていた。
   翌日、騒ぎで逃げ出した牛を探しながら、ビズビーの町に出てホランダーと交渉しようと、ダンは、ウィリアムとマークを連れて出掛ける。1台の駅馬車が爆走している。装甲され、ガトリング機関銃で厳重に武装されたその馬車は、サザン・パシフィック鉄道の依頼で、ビズビーの町に多額の金を運ぶ途中だった。ベン・ウェイドをボスとする強盗団は、その馬車を狙っていた。一番の子分チャーリー・プリンス(ベン・フォスター)たちと高台から走る駅馬車を眺めているウエイド。

  男の映画。護送する側とされる側に結ばれる友情のようなものと、父親への不信感を持つ息子の葛藤。うーむ。いいなあ。

  ベニー・チャン監督『コネクテッド(728)』
  グレイス・チャン(バービー・スー)は、遅くまでロボットの設計の仕事をしていたので、机で眠ってしまっていた。会社の部下でデザイナーの?から今日のプレゼンの時間確認の電話で目が覚める。グレイスは、6歳の一人娘、ティンティンを車に乗せ、小学校に送って行く。夫を亡くしてから、母娘の暮らしだったが充実していた。娘を学校で下ろし、会社に向かう車。突然右側の道路からRV車が突っ込んで来た。事故かと思うと、バックして再び突っ込んで来る車。車内には黒い服にサングラスを掛けた男たちが乗っている。グレイスは気を失う。
   アボン(ルイス・クー)は仕事場に途中、姉から電話を受ける。今日は一人息子のギットが海外に留学に出掛ける日だったが、仕事に追われ、息子との約束を破り続けるアボンに、見かねた姉は自分が空港に連れて行くが、必ず空港まで見送りに来るよう伝える。アボンはギットに必ず空港に行くと約束した。
  グレイスは廃屋に連れ込まれ、隠したものを出せと言われる。全く心辺りはないが、教えないと命の保証はしないと言われる。廃屋にあった古い電話を粉々に壊し、男たちはグレイスを閉じ込めて出て行った。
   グレイスは、何とか壊れた電話の部品を繋ぎ合わせる。壊れたダイアルの変わりに回線を接触させると「この番号は現在使われておりません」とアナウンスが聞こえる。何とか復活したのだ。何度かトライすると偶然アボンの携帯電話に繋がった。

   ちょっと散漫気味なことも含めて、久し振りに香港映画らしい映画だ。公道でのカースタントの出鱈目さも、バトルアクションのテンポも見所は充分だ。

A HARD DAY'S NIGHT

中目黒で、元会社の百周年企画の打合せ。家を出る前に少しゴタゴタし、若干遅刻。しかし打合せ自体は収穫多数。N氏と打合せがてら遅昼食。
新丸ビルのコンセプトスナックで、浅草の歌姫ライブイベント。現場仕事を教え子にアゴ足のみで、やらせようと頼んでいたのだが、こっちの魂胆を見破られたと見え、ドタキャンされ、結局自分で、久しぶりに現場仕事やることに…。エレピ運び、セッティングし、サウンドチェックし、二年位前でも平気だった筈のことが、体が動かない。息が切れ、足腰に来る。やっぱり、40代と50代ではこんなに違うのか!!あまりに切ない(苦笑)。今までは、自分が動けば人件費タダだった筈なのに、今では、自分は完全に戦力外だ(笑)。ライブ終演後、打ち上げするが、ビール飲んだだけで、今晩は凄くよく眠れそうだ。ただ、明日起きれるんだろうか(苦笑)。
更に東京駅発の中央線に乗ったら、超満員の上、事故で遅れ、更に新宿で警報ボタンが押されたりして、西荻窪まで、1時間半。座っていても疲れる。眠れるんだろうか(苦笑)。

2009年12月21日月曜日

昭和2本江戸2本

    銀座シネパトスで、「日本映画レトロスペクティブーPART.6ー」~喜劇 みんなで笑い初め!~。
    61年東京映画久松静児監督『喜劇 駅前団地(720)』
     東京駅丸の内~中央線と山手線~新宿駅西口~小田急線~多摩川を渡った先に、団地が出来ている。洗濯屋の九作(坂本九)が自転車に乗って警報機が鳴っている踏切を渡る。太った山上巡査(千葉信男)が笛を吹いて九作を叱る。

    野呂仙吉(立岡光)戸倉金太郎(森繁久彌)戸倉銀之助(左卜全)戸倉桂一(二木まこと)権田孫作(伴淳三郎)権田かめ(森光子)権田一郎(久保賢)権田正夫(岩城亨)権田つる子(佐藤まき子)桜井平太(フランキー堺)小松原玉代(淡島千景)小松原克子(吉川満子)九作(坂本九)桃子(黛ひかる→黛光)豆子(小桜京子)怜子(麻生鮎子)みどり(渋沢詩子)君江(淡路恵子)荒岩虎吉(松本染升)魚清(織田政雄)根岸トミ(川内まり子)付添看護婦(塚田美子)明子(山崎明子)荒岩組運転手(中原成男)一郎の友人(佐藤紘、秋山由紀雄、富田友重、加藤三好、小沢直好)土地ブローカー(田辺元)地主(サトウ・サブロー)

   58年東宝豊田四郎監督『喜劇 駅前旅館(721)』
   上野駅前の旅館の朝は戦場のようだ。万年大学生なので万年と呼ばれている?(フランキー堺)は、修学旅行の男子高校生をはとバスに載せる。一人の学生が靴が盗まれたと騒いでいる。1500円も出して買ったばかりだと言うのだ。


   柊元旅館番頭生野次平(森繁久彌)柊元旅館女将お浜(草笛光子)主人三治(森川信)中番(藤木悠)添乗員小山欣一(フランキー堺)女中お京(三井美奈)お松(都家かつ江)紡績所長山田(谷晃)於菊(淡路恵子)水無瀬ホテル番頭高沢(伴淳三郎)春木屋番頭(多々良純)杉田屋番頭(若宮忠三郎)辰巳屋女将(淡島千景)辰巳屋小女(小桜京子)四国男子高校広見先生(藤村有弘)東北女高(若水ヤエ子)カッパのボス株(山茶花究)カッパたち(大村千吉、西条悦朗、堺左千夫、水島直哉)
関西女子高校相田先生(左卜全)山田紡績保健の先生(浪花千栄子)芸者(三田照子)

   角川シネマ新宿で、大雷蔵祭
   63年大映京都三隅研次監督『新撰組始末記(722)』
  京都三条橋下の河原に晒し首がある。「町人にも関わらず、奸賊として斬った」と新撰組の名前の立て看が添えられている。橋の上の野次馬たちの中に、毛利志満(藤村志保)の姿がある。
   志満は想い人の山崎蒸(市川雷蔵)が新撰組に入隊すると言うので、問い掛ける。「わかりません。あなたが新撰組に入ろうと言うお気持ちが…。街の人々は、壬生狼!壬生狼!と餓えた狼のように呼ぶ人殺し集団です。あなたは、人を殺したいのですか?」「いや私を殺さないためだ…。」
     二人の侍が斬り合っていた。一人は新撰組のようだ。勤皇志士(堀北幸夫)を倒したものの自分も深手を負った隊士の森平八(浜田雄史)に、助からないだろうから介錯しようかと申し出た山崎を前に、見苦しく、死にたくないと泣き喚いて這いずり周った。武士の情けと介錯する山崎。
   島原の遊廓に、新撰組の幹部たちが集まっていた。酔った局長の芹澤鴨(田崎潤)は、深雪太夫(近藤美恵子)を階段から突き落とした。抜刀しかねない芹澤を止め頭を下げる副局長の近藤勇(城健三郎→若山富三郎)「貴様!!どん百姓の出の癖に局長の芹澤に意見するのか!?」既に新撰組は、新見錦(須賀不二男)平山五郎(千葉敏郎)ら水戸藩脱藩組の芹澤派と土方歳三(天知茂)沖田総司(松本錦四郎)らの近藤勇のグループに分かれていた。その陰湿なやりとりを目撃してしまった山崎は、芹澤に隊士の森平八の最期に立ち会い、局長に遺髪を渡してくれと預かったと申し出るが、酔った芹澤は取り合わなかった。
   しかし、近藤は、山崎の労を労い、局長の言う通り、自分は武州の百姓の出で、侍になりたいばかりに、天然理心流の道場で、剣術で身を立てようと夢中になったのだと言う。森平八の最期は武士だったかと尋ねる近藤、武士として立派な最期だったと嘘を言う山崎に、近藤は、百姓上がりだからこそ、自分は武士らしくということに拘りすぎるきらいがある、森はそんなに立派な武士ではなかったが、そんな森を庇ってくれてありがとうと言う。山崎は、腑抜けが立派に死ぬこともある、百姓が武士らしく死ぬこともあるようにと答える。近藤は豪快に笑い、これは私のお株を取られた、いつも私は言っているのだ、武士は形ではない、心意気だと。この幕末で武士として生きる意義を苦悩していた山崎は、近藤を好きになった。
   山崎は志満に言う。「武士とは心意気だと、近藤さんは言った。俺は、あのように澄んだ目を初めて見た。このままでは俺は駄目だ。志満さんは女ながら医術という人の命を救う仕事がある。生きる道がある。俺には剣しかないんだ」「捨てて欲しゅうございます・・・」

   谷三十郎(小林勝彦)楠小十郎(成田純一郎)大津彦平(高見国一)山南敬助(伊達三郎)原田左之助(堂本寛)広沢富次郎(香川良介)正木道順(荒木忍)宮部鼎蔵(石黒達也)永倉新八(木村玄)大石鍬次郎(薮内武司)佐伯鞆彦(大林一夫)松原忠司(志賀明)北添佶麿(舟木洋一)吉由稔麿(水原浩一)内田正次郎(南条新太郎)古高俊太郎(島田竜三)岡本久蔵(丹羽又三郎)杉山松助(中村豊)佐伯亦三郎(矢島陽太郎)池田屋惣兵衛(寺島雄作)会津隊長(嵐三右衛門)浪人(岩田正、沖時男、越川一、小南明)居酒屋幸助(石原須磨男)角屋徳衛門(玉置一恵)写真師(山岡鋭二郎)藤堂平助(千石泰三)お梅(勝原礼子)桔梗屋小栄(毛利郁子)相撲取り(谷口昇)六部(佐山竜一郎)絵草紙屋の娘(高森チズ子)茶屋の女中(三星富美子)柏屋の女中(小柳圭子)婆や(小松みどり)

   なぜかゴマ和えが作りたくなり、東急ハンズで、擂り粉木を買い、角川シネマ新宿に戻り、
   65年大映京都田中徳三監督『赤い手裏剣(723)』

   伊吹新之介(市川木村玄雷蔵)瀬戸物屋の親爺(西川ヒノデ)お雪(小林千登勢)馬方(福井隆次)千波(春川ますみ)北風の政(南原宏治)絹屋源兵衛(須賀不二男)絹屋の女房(谷口和子)九兵樹(水原浩一)文造(伊達三郎)炭屋松次郎(吉田義夫)仏の勘造(山形勲)佐助(木村玄)常五郎(南条新太郎)
喜三郎(尾上栄五郎)ドブ天(堀北幸夫)権六(越川一)カッパ松(沖時男)お春(若杉曜子)仏一家の中盆(志賀明)三太(小南明)ムク八(山岡鋭二郎)梅吉(西岡弘善)竹(花村秀樹)「月の井」の若い衆(伊東義高)住民A(藤川準)

2009年12月20日日曜日

ひし美ゆり子全力疾走。

   午前中は宅急便やら、新聞の集金やら、出汁を取り、洗濯をしたり、昼寝したり、いい天気の週末を満喫。午後になり、

   池袋新文芸坐で、名匠・清水宏
   43年松竹下加茂清水宏監督『サヨンの鐘(717)』
   常夏の華麗島台湾…。椰子の木、水牛、農村風景、日の丸の掲揚、山岳地帯、段々畑、高砂族の部落“蕃社”の風景、民族衣装を着て、素足で山を駆ける部落民たち。そこに駐在する日本人巡査は、時に医師となり、時に教師であり、軍事教練の教官であり、土木監督である。
   美しい娘サヨンハヨン(李香蘭)が高い声で飼っている黒豚を呼んでいる。集まってくる豚。柵の中に追い込んで戸を閉めるが、見ると一匹足らない。サヨンが何度呼んでも戻って来ない仔豚は、ナミナ(三村秀子)たち米を搗く娘たちの近くにいた。「ほら、サヨンが呼んでいるから早く行きなさい」「いくら呼んでも帰ってこない!!こらっ!!」逃げ出す仔豚。サヨン「待て~!!」逃げ出す仔豚。「みんな~!!私の仔豚を捕まえて~!!」ガキ大将のサヨンが呼ぶと、部落の子供たちが全員やってくる。追い掛け廻すが、逃げ回る仔豚。すばしっこい仔豚は山に逃げていく。子守りをしていたターヤは騒ぎに、子供を背負ったまま、山に駆け出す。途中、面倒になったターヤ(中村実)は、赤ん坊を木にくくりつけて、追い掛けた。ターヤが、弓を取り出して仔豚を討とうとしたのをサヨンが、体を張って制止した。仔豚は、大きくなるまで育てて売るのだ。 
    捕まえた仔豚を引き連れて部落に戻る途中、ターヤがサヨンに謝罪する。高砂族の言葉で謝るターヤに、サヨンは「もう一回!!」と命ずる。日本語で、「サヨン、僕が悪かった」と言うターヤに「国語をちゃんと使わないと駄目だ」とサヨン。子供たちに「今日は何曜日?」「今日は何日?」と日本語の問い掛けをするサヨン。子供たちの中には、名前を日本名に変えたものもいる。「そうか、太郎に変えたんだ。立派だね」と誉める。
突然、ターヤが「忘れた!!」と叫んで走り出す。「どうしたの?ターヤ」赤ん坊を木にくくりつけたままだったのだ。「みんな一緒に探してあげて!!」しかし、ターヤがくくりつけた木に、赤ん坊の姿は影も形もない。困るターヤ。
    その頃、村井部長(大山健二)のもとに拾われた赤ん坊が届けられていた。武田正樹(近衛敏明)に「道端に落ちていたと言うんだが、どこの子だろう?」と尋ねる村井。「いや蕃族には、随分赤ん坊がいますからね…」「そうだ、お前心あたりはないか?蕃族の赤ん坊はほとんど、お前が取り上げているからな」と妻(若水絹子)に尋ね、「ターヤのうちじゃないかしら」「そういえば、似ている気がするな」仔豚ではなく、母豚を売る日がやって来た。子供たちは母豚を売ったお金で、野球道具を買って欲しいが、サヨンは、山羊を買って、その乳を赤ん坊たちに飲ませようと考えていた。しかし、実際に豚買い(水原弘)が連れて行く日、別れが辛くて泣き出すサヨン。部落の外れまで、母豚を送って行くサヨンと子供たち。
   蕃社で一人内地の学校に進学していたサブロ(島崎徹)が、卒業して、戻って来ることになった。サヨンは子供たちを連れて部落の外れの吊り橋まで、サブロを迎えに行く。

武田正樹(近衛敏明)サブロ(島崎徹)モーナ(中川健二)ナミナ(三村秀子)ターヤ(中村実)豚買い(水原弘)

    41年松竹大船清水宏監督『みかへりの塔(718)』
     大阪市を遠く離れた山あいに白亜の塔が立っている。修徳学院である。
     草間先生(笠智衆)が見学の父母たちに学院の説明をしながら、案内している。「200余名定員の特異児童を収容するこの学院は、教職員を含め300名以上が4万坪の広大な敷地内で全ての生活を行い、一つの社会を営むのです。10数名ずつに分かれ、家庭と呼ばれる16の家で暮らします。各家庭には、教師と保母が付きます。この二人は原則的に夫婦であります。女子の家庭には保母が一人ずち付きます。保母はお母さんと呼ばれ、本当の母親のように生徒の面倒をみるのです。学院での起床は朝5時の鐘と共に始まります。自分で布団を上げ、寝小便をした生徒は自ら干すのです。素行の悪い児童には寝小便の癖が多いのです。昨年は、全児童で、2315件報告されています。朝の炊事も、交代で行います。新婚の奥様方より、手際よいと思われます。毎朝体操をし、掃除を致します。全生徒が集合し、礼拝を中央講堂で行います。誓司を唱えるのです。その後、授業が行われますが、学年は能力別に分けられ、16歳でも、尋常小学校3年の授業を受けたり、また逆の場合もございます。学科は、午前中4時限のみで、午後は職業訓練を行います。木工では、自分たちが使う机、本棚、戸棚などは自分たちで作っております。時々見学にお見えになったから注文を受け作らせて頂くこともあります。洋裁はミシンを使って、殆どのものは作れます。実は私が今着ております背広も生徒が作ったものです。
畑仕事も、完全に時給とは言えませんが、殆どの野菜は園内でまかなわれます。特に南瓜は味がいいと評判であります。」

    院長(奈良真養)のもとに、保母の夏村(三宅邦子)が呼ばれた。脳波検査などの結果を見ていた院長は「また、新入生をお願いします。」
    別室に、多美子(有為子)が父親(坂本武)と話している。「とても面白い機械が沢山あったわ。科学博覧会みたいね。私、夜遊びがいけなかったわね」「お小遣いも使い過ぎたね」
    院長が「保母の夏村です」と紹介する。「坂田多美子です」と自己紹介する多美子。「では、夏村先生お任せします。」夏村と多美子を送り出した院長は父親に向かい「多美子さんは、今までの女中さんに囲まれ我が儘放題の生活は出来なくなります。厄介払いが出来たと思わないで下さい。これからが大事なのです。お忙しくても出来るだけこちらにお越し下さい。また出来るだけ手紙を出して下さい。」「分かりました」
   多美子をこれから暮らす家に案内する夏村。「ここには12人の女の子が生活しています。あなたも早く慣れて下さいね。」夏村に話し掛ける直子「お母さん!!みっちゃんが私の簡単服を勝手に着ているんです。みっちゃん自分の服が乾かないものだから…。あの洗い方を見ていて、そうじゃないかと思ったわ。全然絞らないんですもの」夏村、直子を連れ美枝子?のもとへ行く。「みっちゃん、その服直ちゃんのもの?」「告げ口したのね。いいわよ。返せばいいでしょ」着ていた服を脱ぎ捨てる「ちゃんと洗濯して返して頂戴。」「あなた今着たばかりでしょ」「直ちゃん、小汚いんですもの。お風呂に入っていても、ちゃんと石鹸で体を洗っているの見たことないんですもの」「うるさいわね。洗って返せばいいんでしょ」


草間先生(笠智衆)保母(森川まさみ)喜雄(横山準)信一(古谷輝雄)岡本(緒方喬)朝田先生(日守新一)保母(忍節子)正雄(大塚紀男)川辺先生(西村青児)保母(岡村文子)春男(津田晴彦)河野先生(河原けん一)保母(雲井つる子)水野先生(近衛敏明)保母(草香田鶴子)鈴木先生(大山健二)保母(出雲八重子)功司(末松孝行)津村先生(仲英之助)保母(高松栄子)夏村保母(三宅邦子)多美子(野村有為子)多美子の父(坂本武)信一の母(吉川満子)正雄の母(若水絹子)

    銀座シネパトスで、魅惑の女優列伝Part1 ひし美ゆり子
    75年東映京都関本郁夫監督『好色元禄(秘)物語(719)』
     竹林を呉服屋の丹波屋の若旦那世之介(中林章)と西念寺住職の愛妾お夏(ひし美ゆり子)が逢い引きをしている。「若旦那はん、若旦那はん、どこにいてます?」「えらく待たせるやないか」「イケズ!これでも住職さんの目を盗んで来たんでっせ」胸に手を入れ揉みしだく与之助。「お夏の体が燃えている」「跡をつけたらあきまへんえ。和尚はんに見つかったら、またむごい折檻受けなあきまへんえ」「お夏っ」「不義の現場を見つけられたらどないことになりますのえ」
   西念寺本堂では、住職清海(汐路章)が読経中だ。竹林を追いかけっこをする二人。「ねえ、若旦はん、約束しておくれ、うち、あんさんの嫁にしておくれ」「わかった。この櫛は、死んだお袋の形見だ。これをやろう」「嬉しいわあ」
    夕暮れ、小坊主金鶏(山田政直)が、鐘をつく。風呂場で、住職の体を洗うお夏。「お前も裸におなり」「本堂の片付けが済んでおへん」「そんなもん、金鶏にやらせたらええやないか。わしのあそこもこんなんなっておる」突然吐くお夏。「今まで、何度もしゃぶったり、くわえたもんやないか」「そないこと言っても、わてややこが出来ましたんえ」「えっやや子が!」
   数日後、門前、「ワシかてお夏を手放しとうはない。ただ寺で産むとなったら、檀家もウルサいやさかい。里に帰って、丈夫なやや子を産んでやってや」「これは少ないけど、やや子の着物でも買うてやって…。ところで、気になっとんのやが、そのやや子は、本当にわての子か?」お夏、寺に戻って行こうとする。「おまえどこ行くんか」「そんな疑うんやったら、やっぱりこちらで産みます」「おいおい、それは勘弁してや」
   荷物を持った金鶏を伴ってお夏は、実家に帰る。「何や、えらい臭いですな」「元々古い沼を埋めた場所だが、蛭やら鼠やらしかいない最低のところだす。他の住人はみんな逃げ出して、あてとこしか住んでいないんよ」
   家の戸を開けると、父親の棺桶職人の弥市(北村英三)が顔を上げ「どないしたんや今時分。」「見たら分るやろ。お寺を出て来たんや」「夏!お前孕んどるんか?」「あんな生臭坊主のやや子なんか誰が孕むもんか。あー暑い、暑い」着物を脱ぎ始めると、お腹に籠が結わえられている。「あんた見たんか」金鶏が覗いていた。「お前、和尚に言うんか。」「いえそんなことあらしません。仏とあてだけが見ていたんどす」弥市「西念寺さんとは、随分お世話になってるんや。今作ってる棺桶だってあっこの仕事やで」「大丈夫や、そんなヘマはせんよ。あらお七、久松はどないしてはるん」妹のお七(橘麻紀)「商いにでてます」「小間物屋の歩き商いをまだやっとるんか」「小さくてええので、お店を持ちたいと思ってます」「そんなん持てる訳あらしませんで・・・」お七は、久松(川谷拓三)を婿として迎え、この家で暮らしていた。
   薬種問屋の店先にお夏の姿がある。若旦那喜兵衛(名和宏)が驚いている。「店に来たらあかんと言うとるやないか」喜兵衛に抱かれるお夏。「あんたとの浮気がばれて、寺を出されてしまったんよ。町で暮らすと銭もかかって・・・」財布から少なくない金を出して渡す喜兵衛。翌朝、井戸端でお七が洗濯をしていると、お夏が起きてきて、洗い桶に腰巻を投げ込む。「でも姉さん、呉服屋の丹波屋の若旦はん世之介はんと薬種問屋の若旦はん、どっちと結婚しはるの?」「結婚なんてせんよ」「?」そこに、酔っ払った弥市がご機嫌で帰ってくる。「お父はん、こんな時分から酔ってはるの?ええ御身分や」「ただ酒や。祝言があって振る舞い酒やで」「どこで祝言あったん?」「丹波屋はんや、丹波屋はんの若旦はんが嫁を取るんや」「えっ!そんな阿呆なことあるか?」走るお夏。
  丹波屋の前で、店のものたちと押し問答をするお夏。「これから祝言なんや。お前誰や?」「若旦はん!若旦はんに逢わして!!」無理矢理中に入り、世之介に「若旦はん、わてだす。夫婦にしてくれはるという約束は嘘だったんどすか。これ頂いたお母はんの形見の櫛だす。」世之介の父の大旦那忠兵衛(坂本長利)が「もう花嫁御寮が来よるで。何やこのきちがい女」「わて知りしません。狂った女が入って来たんどす」「追い出してしまえ!!」店の者たちがお夏を取り囲み、河原まで運んで放り出す。「一思いに殺せ!殺せ!!」「殺したろやないかい。」顔色が変わった男たちから逃げようとするお夏。「死んだろやないか」川に自ら飛び込むお夏。川に浮かぶ小舟に、金鶏とお夏の姿がある。「あんた何で助けたんや。」「仏の御心だす」
  世之介が新婦のお新(三井マリア)との初夜を迎えている。「未通女(おぼこ)いなあ。お前、こんな男と女のこと知っとるんか?」恥ずかしそうに「枕絵を見ました」満足そうに愛撫する世之介。「ここはもう濡れてるやおへんか」感じ始めるお新。「指1本、指2本・・・わしのものを入れたる・・・。」よがり始めるお新。1匹の蛇が二人の布団に入って行く。突然激しくよがりはじめたお新。ふと我に返った世之介が、布団の中を覗くと、1匹の蛇がお新のホトに入り込んでいる。驚いて飛び起きる世之介。お新も自分の身体に入って来ているのが蛇だと知り、逃げ回る。一度は腰を抜かした世之介、部屋から逃げ出す。
「ああ、おもろかった。かなへびが新婦の中に入って行ってよがっとるんでっせ。」お夏、「勝手なことするな。あてが何時仇を討ってくれといいましたんや。するときは自分でしますどえ」
  喜兵衛がおせん(窪園千枝子)の股間を広げている。京随一の枕絵の画家栄斉(笑福亭鶴光)に描かせているのだ。おせんは当代一の名器を持っているのだ。おせんを抱きながら、栄斉に一斗樽を持ってきてくれという。栄斉が不審に思いながら、奥から盥を借りてくると、おせんは潮を吹く。激しく噴き上げる愛液を番傘を差しながら「これがほんまの春雨じゃ」と言う喜兵衛。
  誰との逢引か、出会い茶屋を出ようとしたお夏は、妹のお七に会う。「あんた、ここがどんなところか知ってるの?」「ウチの人にこの簪をお客さんに届けるよう言われたんどす」「おなごに買ってやろうという男でもいるんかな。先に帰っているで」「では、姉さん。」しかし、お七を待っていた客(室田日出男)は、10両を放り投げ、簪だけでなくお七も買ったんだと言う。夫のある身ですと抗っても、その夫が持ちかけた話よと男。抵抗空しく、凌辱されるお七。
  お夏が家に帰ると、久松は昼間から酒を飲んでいた。「あんた、お七を売ったね」と久松を問い詰めるお夏。
  


西鶏→西鶴(山田政直)手代(唐沢民賢)出合い茶屋の船子(志賀勝、岩尾正隆)船饅頭(丸平峰子)手代(奈辺悟)お七の客(片桐竜次)

   田中陽造脚本だが未見だった。傑作だ!!!
どうも東映ピンクはB級感で見ていたので、日活ロマンポルノよりも下に見ていたが、こんな掘り出し物もあったんだな。

2009年12月19日土曜日

飲んで飲んで呑まれて飲んで

    早起きをして、同居人と築地市場に出掛け、場内で寿司を食いながら、朝からお銚子を3本空けて、鰹節やら海苔を買い、コーヒーを飲む。予想はしていたが、土曜の築地は場内、場外ともに凄い人出だ。

  京橋フィルムセンターで、生誕百年 映画女優 田中絹代(2)
     53年新東宝田中絹代監督『恋文(714)』

    タクシーが停まる。真弓洋(道三重三)が降りる。女(関千恵子)に送って貰ったようだ。話をしたそうな?だったが、タクシーは急発進し、女はシートに転がり、顔をしかめる。洋は、自分の下宿に歩きながら、近所の主婦たちに「おはよう」「おはようございます」と明るく声を掛ける。「まあ、朝帰り?」「いえ、仕事の途中ですよ」
   下宿の表札には、「真弓洋」と並んで「真弓礼吉」と書かれている。
   「兄さんただいま」兄の礼吉(森雅之)が部屋の中に洗濯物を干している。「少し寝るかい?」「いや、またすぐ出掛けるよ。兄さん随分洗ったね。僕のシャツなんか洗濯屋に出すから良かったのに。それに、外に干せばいいのに」「いいんだよ、こうするとパリみたいだろ。」「どうして、兄さんは結婚しないんだい?兄さんほどの語学力があれば、受験講義録の添削なんてつまらない仕事でなくていくらでもあるだろう。」「コーヒーでも入れるか?」「もう時間がないからいいよ。兄さんが駅でぼーっと立っているのを見たことがあるよ。そうそう、これが兄さんの原稿と、原稿料3000円です。」慌しく着替え、髭を剃って洋は出かけていく。一人残った礼吉、財布からセーラー服姿の女学生(久我美子)の写真を取り出して、見つめる。
  銀座交差点、行き交う人々を目で追う礼吉の姿がある。渋谷ハチ公前に礼吉の姿がある。「真弓!!」突然声を掛けられる。「ああ山路か!!」兵学校時代の友人山路直人(宇野重吉)だ。「心配したぞ。」「会いたかったよ。お袋が死んで、弟と東京に出て来たんだ。」「四日市から出て来たのか。弟はどうしている?」「古本屋を回って、安く買って高く売っている。日に1000円稼ぐんだ。」「逞しいな。真弓!俺の仕事を手伝わないか? 英語フランス語は俺よりもお前の方ができるからな。」
  すずらん通りの自分の店に、礼吉を連れていく山路。「先生!!先生が帰って来たよ。」待っていたオンリーの女(?)の姿がある。女の米兵の恋人へのラブレターの代筆をしているのだ。近くの古本屋の看板娘保子(香川京子)が客の相手をしている。オンリーの女がアメリカのファッション誌を売りに来ている。「550円ね」「やっちゃん!これ、最新号よ」「もうあるわ」「あんた顔に似合わず、しっかりしているわね。」洋「これ下さい。」「えーと○○と○○と・・・1550円です。」保子の母親(沢村貞子)「1700円だろ、しっかりしておくれよ!!」洋「ここは随分アメリカの新しい雑誌がありますね。どこから売りに来るんですか?立川の女たちが売りに来るのさ。普通は一カ月だけど、飛行機で羽田にもってきた男が女に渡すけど、みんなパラパラ見たら売りに来るんだよ。」何事か思いついた風の洋。すずらん横丁のとんかつ屋の外壁を突然測り始める。通行人は洋が何をしているのかと興味津津だ。
   とんかつ屋の中に入り、女主人(花井蘭子)に「そこの壁を貸して欲しいんです」と声を掛ける。「あんなところ何に使うの?」「商売をしたいんです。月々1万円お支払いします」「えっ???」洋の申し出を理解できない女主人。


     神保町シアターで、女優 高峰秀子
    41年東宝/映画科学研究所山本嘉次郎監督『(715)』
    岩手県の馬市、大層賑わっている。競りが行われている。人混みの中から一人の少女が出てくる。小野田イネ(高峰秀子)だ。最前列で見ていると、同じ村の佐久間善蔵(小杉義男)の馬は、軍馬御用に選ばれ、450円の高値がついた。陸軍の軍馬購買官(真木順、大崎時一郎)は、最もいい場所で馬を選んでいるのだ。
   日も暮れて、小野田家、父の甚次郎(藤原鶏太→釜足)母さく(竹久千恵子)祖母えい(二葉かほる)長男豊一(平田武)次男金次郎(細井俊夫)妹つる(市川せつ子)たちが夕餉を囲んでいると、イネが帰って来た。さくは叱る「どこさ行ってただ」「馬市見に」「あんだ、おどちゃんもおがちゃも、1日働いて手足が棒みでになってるに、おめひとりかってにあそんでばがり …」「かっちゃ、腹減っだよ」「おめにぐわすもんはねっ!!」祖母のえいが「イネ、こっちゃ来う、こっちゃ来う」と声を掛けてくれるが、さくが「ありゃ、雨っこ降ってぎたべ。みんな手伝え。」甚次郎初め皆慌てて外に干してあった笊や筵を運び込む。「イネ、筵さ、厩さ入れろ。」空いた厩を見て、イネ再び「ごのあだりで、馬っこいねのはうぢだげだべ。」さく「ごの間、馬っこ死んだのを忘れてけつかる。馬っこ飼って得したひとは聞いだごどねっ!」「今日は農林大臣賞さ選ばれた馬っこは1200円、善蔵の家の馬っこは、軍馬御用で450円にもなっただ!!」「いいたって、金がねば馬っこ買えねえだ。」さくとイネの親子喧嘩が終わらないので、甚次郎は、豊一に「とよがず、おめ何やってるだ。暗い中でそっただことやってると、めえ悪くすっぞ。」「バスマッドだあ。学校のせんせえに言われで、県の品評会に出品するんだ。」「早よ、寝れ。」
   そこに、善蔵が一升瓶を下げてやってくる。「おばんでがす」「おばんでがす」「おっがちゃん、酒っこ買ってきたぞ」「善さん、軍馬御用で450円で売れたってな。」「んだっす」「あんだ、450円とはたいしたものだっすな。」「この佐久間善蔵の育てた馬に外れはねえのっす。さあ、飲んでけろ。飲んでけろっちゃ」甚次郎「いんや、おらあ、夜なべ仕事さあるがら・・。」「そっか、そっか、ぢゃ、おがっちゃん呑むか?」「でば、いだだぐっす。」「イネおめものむが?」「バガ言うでね。わらしっこに酒飲ましたら駄目だっぺ」と笑うさく。「おがっちゃ、さっぎ、馬っこ飼って得したひとなんかいねっていったでねえか、おがしいよ」イネは膨れっ面だ。
   翌日、学校の庭で、豊一たちは、藁細工を作っている。山下先生(丸山定夫)がそれぞれの作ったものを見て「オメの作っだ藁靴はでかいな。これじゃ、?さんの仁王さんが履くものだか?」みな笑う。「豊一、おめの作ってるのは、バスマットか。ほう、?の紋様を組みこんだのか、こりゃいい出来だ。」そこに、馬を連れた娘が通りかかる。山下「いい馬っこだなや」「花風って名前だで」「あんれ、お腹さ大きいでねが。サラブレットかい?」「いんや、アングロノルマンだべ」「ノルマンは足腰が強いので軍用にも向いとるからなあ」「冬の間面倒見てくれる人を探しとるだ。」豊一「うちで預からせてもらえねえべか?」
   甚次郎は、組合長に呼ばれる。冬の間花風の面倒をみてくれというのだった。甚次郎は前飼った馬を死なせているので躊躇するが、産まれた仔馬をくれるというので、預かることになった。さく「やっぱ、おら、馬っこ好かねえな・・・。」
   甚次郎が、春風に荷馬車を曳かせていると、向こうから花嫁行列がやってくる。この地方では、馬の上に俵を二つのせ、そこに花嫁を乗せて行くのだ。付き添いの村の衆が、甚次郎を見つけて走り寄る。「甚次郎さ、酒っこ呑め!」「目出度い日だ!飲んでけれ!飲んでけれ!」逃げるが、囲まれて皆からどんどん注がれて飲まされる甚次郎。
   家で甚次郎が寝込んでいる。無理矢理飲まされて酔っ払った甚次郎は後ずさりした花風に下敷きになったのだ。しきりと寒気を訴える甚次郎に布団を何枚も掛けるさく。幼い金次郎とつるは心配そうに見つめる。「だから言っだごどでね。あの馬は疫病神だ!」「おがっちゃ、花は何も悪ぐねっ、おどっちゃが、酒っこ飲まされで、酔っ払ったからいけねえのさ」医者を呼ぶ金がないので、祖母のえいが呼んできた拝み屋が「生霊がついとる。4つ足の生き物だ」「やっぱり馬っこだ・・・。だから、おらは嫌な気がしたんだ」と納得するさく。
  しかし、医師が来て甚次郎を見て、すぐに手術をすることになった。弟や妹を連れて外にいろと言われイネが遊んでいると、盥いっぱい血が出たという。しばらく寝ていれば良くなると医者は言ったが、なかなか甚次郎は起き上がれなかった。
  正月が近付いたが、医者代もかかり、借金が膨らみ小野田家は、正月の準備も出来ない。寝ている甚次郎とさくが困ったと話していると、郵便やが為替を届けに来る。借金の督促状じゃないかと怯える両親に、豊一は判こを貸してくれという。東京の駒澤民芸館というところからの封書を開けると、展示していたバスマットが評判になり、買いたいという注文が殺到し、3月1日までに100枚送ってほしいというのだ。手付け金として30円の為替が入っている。郵便為替など初めてみた一家は大喜びだ。正月を迎えられることになったのだ。

  天才子役高峰秀子が女優に生まれかわる瞬間のような作品だ。昨日観た「華岡青洲の妻」といい凄い女優だ。

  銀座で、N氏と1時間ほど打合せをして、
  京橋フィルムセンターに戻り、
  74年東京映画中村登監督『三婆(716)』
  昭和38年初夏、北沢にある武市家の屋敷、早朝に電話が鳴る。武市松子(三益愛子)起きて電話を取る「もしもし武市でございます。まあ、重助さん!!何です、こんな早く。えっ!!旦那さまが倒れた?どこで?ご不浄ですか」お手伝いの花子(小鹿ミキ)寝ぼけ眼でトイレに入ろうとしていたが騒ぎに振り返る。
  武市の妹のおタキ(田中絹代)「えっ兄さんが?北沢の家じゃなくて、あの妾のうちなの?」
  武市の遺体の前で、妾の富田駒代(木暮実千代)が泣いている。葬儀屋(細井利雄)が運び込んで来る祭壇などを押し止める瀬戸重肋(有島一郎)「こちらの奥様が、祭壇は松にと仰ったものですから…」「とにかく帰ってくれ!!」駒代に「世間の常識ってものがありますから…」「ああた、世間の常識って言っても、私は旦那さまとは、30年間お仕えして。月の半分はこちらにいらしていたんですよ。」
   社員が重助に「専務!!ご本宅の奥様がいらっしゃいました」突然君代立ち上がり?を出迎え「まあまあ奥様。この度は私が付いていながら…」「この度は、色々お世話になって、主人に変わってお礼を申し上げますわ。旦那さまは?」「こちらです。いえね、重助さんが慌てて葬儀屋さんに呼んでしまいまして…。私はご本宅でご葬儀を上げるのが、世間の常識だと、何度も申し上げたんですがね…。」唖然として、口をパクパクする重助。仏前でおタキが泣いている。「おタキさん!!」「お姉さん!お風呂に入る前に冷たいビールを飲んだのがいけなかったんですって!」「お風呂場で倒れたの?ご不浄じゃなかったの?重助さん!!」睨まれた重助肩をすぼめる。再び社員が「専務!!大変です」「あとにしなさい!!」「今事務所から電話で、社長が亡くなれば、会社は潰れるだろうから、今のうちにちゃんとしてくれと、債権者が押し掛けて大騒ぎになっているそうです」
   駒代「キミさん!!キミさん!!着替え手伝っておくれ」「喪服ですか」「喪服は通夜の時でいいわよ。奥さん、こんな時にあんないいお召し物着ていらして!!」
   武市の写真に向かって重助「社長!!ずっとお仕えして参りましたが、エラい時に亡くなりましたね。私お恨み申し上げます。あのお三方をどうしたらいいのか、見当もつきません…」
   3ヶ月後の夏。武市の屋敷、
   「本当に重助さんには、ずっとお世話になりっばなしで…」「結構なお庭でございますね。社長の唯一のご趣味でございましたから…」「もう一つありましたわ…」「はあ…」「しかし、渋谷と神楽坂と縁切り出来て、本当にスッキリしたわ。あの人が死んで1ヶ月。私1貫目も太ってしまったの。これから命の洗濯に温泉にでも行って、ゆっくりしながら、これからの自分の人生考えようと思うの」華やいでいる?に呆れながら、「私は、今日の夜行で鳥取に帰らせていただこうと思います。」「ああ娘さんがいたわね」「のんびり余生を過ごそうと思っております」

  邦画低迷期の作品だが、三益愛子、田中絹代、木暮実千代の三婆女優凄いなあ。唸るほど嫌みたっぷりの老醜を楽しんで演じているのは、気持ちがいいほどだ。ゲテモノのような大御所の怪演に、テレビドラマ風の清涼感を出しているのが小鹿ミキだ。原作は当時読んだが、50を過ぎてようやくフラットに笑えるようになった。実際の3人の晩年は三者三様のようだが、本人にとってどうだったかは、天国にいる三人にしか分らないだろう。老人がどこかに収容され集められるのでなく、こうして一緒に暮らす生活はいいなあ。人との口喧嘩も活力だろうし・・・。ただ、自分は我儘放題の三婆に仕える有島一郎的な役割しかできないだろうが(苦笑)

   その後、阿佐ヶ谷で、日本フリーランスクラブの忘年会。よく考えてみると、クラブの会費を払う訳でもなく、見本市に出展する訳でもない。よく言えば客分、まあ普通に言えば、ただ飲み会のみに参加して、人一倍飲む迷惑な奴だ。若いクリエイティブ系の人の名刺は、文字が小さくて本当に読めない。聞いた名前も、すぐ忘れてしまうので、本当に悲しい。もう一軒顔を出すつもりだったが、気がついたら家の近く。酒に溺れる初老のオヤジでしかないんだな(苦笑)

2009年12月18日金曜日

雷蔵4連発。

   角川シネマ新宿で、大雷蔵祭
   55年大映京都溝口健二監督『新・平家物語(710)』
   800年前、平安朝末期、一部の貴族や寺院に租税免除の領地、すなわち荘園を認めたことで、国の収入は減り、世は乱れた。正そうとした白河上皇は、そうした領地を召し上げようとしたが、貴族や寺院はまだ幼い帝を突き上げて、自分たちの利権を守ろうとしたため、権力は、帝と上皇の二重構造となった。保延六年、1137年京の都が舞台である。市が立っている。今日も米の値が上がり、女たちは、以前の値段で売ってくれと頼むが商人たちは聞く訳もない。戦が始まると刀や武具を売る者、ここの者はみな不安を感じているのだ。「西方征伐から、平家が帰ってきたぞ!!」と叫ぶ者があり、人の流れが変わった。西方で荒らし回っていた海賊を治めに行っていた平?の軍勢の行列だ。道の反対から、比叡山の僧兵たちの行列がやってくる。桓武以来の帝を安置し、また祈祷をする叡山はかなりの僧兵を組織し、権勢を欲しいままにしていた。当時、武士は地下人であり、公家、寺院の番犬と蔑まれていた。

   溝口らしからぬスペクタクルなモブシーンの数々。大作映画の醍醐味は、やはり大映にあったのか。決して歴史に残る傑作とは言えないかもしれないが、日本映画のスケールを認識する上で、凄い規模の作品だ。

   61年大映京都森一生監督『新源氏物語(711)』
   帝のお使いが出たと女御たちが騒いでいる。今宵の相手を呼びに行くのだ。「半年もお召しがない…。」「今宵も、藤壺の君だわ」「帝にあれだけ申し上げたのに…。」「あの女も女じゃ」「身分の卑しいくせに、わきまえもせず。」
   藤壺(寿美花代)が女御に伴われ、帝の寝所に出向く途中、異様に臭い部屋に閉じ込められる。腐った魚の油が撒かれた部屋で滑った藤壺は着物を汚す。心無い女たちからのイジメに泣く藤壺。
   それでも、藤壺への帝の寵愛は続き、帝の子を身ごもった。訪ねてきた母親に、こんな恐ろしいところで御子を産みたくないと泣いてら実家に帰る藤壺。珠のように美しい男子光の君を産んだ。帝は、光の君に、源氏と言う姓を与え臣下とした。しかし、産後の日立ち悪く藤壺は、光の君の行く末を案じなら亡くなった。
   宮中に、美しく成長した光源氏(市川雷蔵)の姿がある。女官、女御たちは、うっとりとその姿を見つめる。しかし、光源氏は、美しく女性の姿に目を奪われる。帝は、藤壺への想いを断ち切れず、藤壺に生き写しの桐壺の君(寿美花代)を寵愛していると言う。母の藤壺の生き写しと聞いて、桐壺に強い憧れを覚える光源氏。


   58年大映京都市川崑監督『炎上(712)』
   京都府警の取調室、「溝口吾一、21才、古谷大3年、京都市下京区究円寺。それなら、修閣寺の大事さわかっとるやろ。近くの裏山で、睡眠薬を飲み倒れているところを発見され病院で胃洗浄され、また胸に二カ所の刺し傷があったと…。究円寺の徒弟なら、国宝の驟閣を焼くことの大変さは分る筈だな。」何も喋らない溝口。「お前な、今日は、検事さんも刑事部長もいらっしゃるんだから、すっきりしてしまえ」検事(水原浩一)「黙秘権か?憲法が変わってからの制度だが、初犯なのに、どうして知っているんだ。誰かに聞いたのか?」
   数年前まだ戦中のこと、詰め襟を着た溝口が、究円寺の巨大な山門の前にやって来る。食事の支度をしていた典座(大崎四郎)が、出てくると手紙を渡す溝口。そこに副司(信欣二)が帰ってくる。典座「老師宛てのお客さんだっせ」副司は、その手紙を受け取り、老師さまには私から話をしようと言う。田山道詮老師(中村鴈治郎)は、化粧水を顔に塗り鏡を見ている。そこに、徒弟が食事を運んでくる。化粧用具一式を隠す道詮。その後、副司がやって来る。「この手紙が届きました」鋏で封筒を切り手紙を読む老師。「この者は?」「すぐそこに待たせてあります」「直ぐに呼びなさい」「そうか、溝口の息子か…。君のお父さんとは、修行を一緒にしたのだ。そうか…亡くなったとは知らなかった。胸の病か?」頷く溝口吾一。「この手紙が遺書になってしまったのか…。分かった。心配しなくてよい。君のこれからは私が責任を持つ。お父さんの願い通り、徒弟として、ここにいればよい。」深々と頭を下げる吾一。
   副司が吾一に「いつまでここにいるんだ。控えなさい」と退けた後、老師に詰め寄りまくし立てる。「この寺の細々したことは、本寺から私に任されていることではありませんか
。例え徒弟とはいえ、私に相談もなく、今の若者を取るとは、如何なものですか!!今日?に赤紙が来て、子供以外どんどんいなくなるこの寺の後継を考えなくてはなりません。先日私の倅を徒弟にとお話した時に老師は了解しなかった。それなのに父親が同拝と言うだけで決断されるとは納得が行きません!!」「確かにこのご時世、この寺は年寄りと子供だけになっている。しかし、知り合いの子供だからと言って後継になどと私は考えたこともない。適任者がいなければ、ご本山にお返しするだけです」副司落ち着いて、「お見苦しいところをお見せしました。こんなことで興奮する私は、人物が出来ていないのです。申し訳ありません。」

   67年大映京都増村保造監督『華岡青洲の妻(713)』
   加恵が初めて、於継(高峰秀子)の姿を見たのは8歳のことだった。乳母のたみ(浪花千栄子)と一緒だった。華岡家の嫁の於継は、美しいだけでなく世にも賢い女やとみな褒め称えていた。ところが、於継の夫で外科医の華岡直道(伊藤雄之助)は身だしなみに拘らず、腕はいいが変人だと思われていた。しかし、加恵の隠居した祖父(南部彰三)は、直道の法螺話を喜んできいていた。「ほんまにあんたと於継さんは月とすっぽんやな。」と祖父が言うと、直道は笑いながら「随分前からワシは於継に目をつけていたが、大地主の箱入り娘、貧乏医師のわしが貰える訳もなかった。しかし、あれが16の時、重い皮膚病になり、あらゆる医師に見せたが直すことはできなかった。そこでワシは紀ノ川を渡ったんや。もし、この病を治したら嫁にくれと言って乗り込んだ。もちろん、自分には大阪で学んだ南蛮医術を使えば治すことができると思っていた。自分の腕で、ワシはあれを手に入れたんだ。」豪快に笑う直道。「お前さんの自慢話を聞いているのが、私の体に一番いいようだ。」しかし、祖父は暫くして亡くなった。脳溢血だった。
   その祖父の葬式で私は再び於継を見た。焼香に現れた於継に見とれる加恵。じっと見ていると、眼が合ってしまい、眼を反らす加恵。
   それから、3年後の晩春、於継が、加恵の家を訪ねてきた。地侍を束ね、大庄屋を務める妹背さまとしては、身分違いだと思われるかもしれませんが、こちらの加恵様をうちの雲平の嫁に頂きたくお邪魔させていただきました。

紀伊国近郷地頭頭、大庄屋妹背佐次兵衛(内藤武敏)妻(丹阿弥谷津子)加恵(若尾文子)乳母(浪花千栄子)嫁雲平(市川雷蔵)妹於勝(原知佐子)

   夜は元会社の同僚たちと忘年会で、新宿手羽先。

2009年12月17日木曜日

子供は難しいなあ。

    ラピュタ阿佐ヶ谷で、昭和の銀幕に輝くヒロイン【第50弾】叶順子
    60年大映東京田中重雄監督『誰よりも君を愛す(706)』
    共立テレビKTVの本社前に局のハイヤーが停まり、ディレクターの半沢明人(本郷功次郎)が降りてくる。編成局では騒動が持ち上がっている。制作部員たち(早川雄三、杉田康)が騒いでいる。「野郎が盲腸で、番組飛ばすってのは聞いたことはないが、女はよくあるよな。下手すりゃ、盲腸なのに産婦人科に何度も入るのまでいるからな…。弱ったもんだ。半沢はまだ来ていないか?安藤!!」番組プロデューサーの安藤雄三(菅原謙二)「あっ今来ましたよ!!半沢!!江崎美恵子が盲腸で入院だ。」「えっ、盲腸なら薬で散らして…」「無駄だよ。」「あと、本番まで3時間半か。弱ったなあ」そこに、番組スポンサーの志摩化粧品の社長令嬢の志摩美加子(野添ひとみ)がやって来る。「今日のゲストの江崎美恵子が来なくなったんでしょ、局長から聞いたわよ。どう?ピンチヒッターとして私?局長さんにはOK貰ったわよ。」「いくらスポンサーの娘でも…」と半沢。「ねえ!!安藤くん、プロデューサーとして口を聞いてよ!!」既に半沢には心当たりがあるのか、受話器を取り「もしもし、羽田航空事務所?」
    羽田空港、スチュワーデスの森砂江子(叶順子)が同僚の木南優子(江波杏子)と、飛行機を降りてくると、半沢が「森砂江子さんですよね。今から一緒に来てくれませんか?」と突然声を掛ける。砂江子は驚いて「何でしょう?」「あなたはどなた」と優子に尋ねられ名刺を出す半沢。「テレビ局の人ね」「今からテレビの生放送に出て欲しいんです。勿論、会社の了解は貰っています。」「えっ私困るわ。」優子は「何だか知らないけど、行ってらっしゃい。面白そうじゃない。悪いことするような人には見えないし…。」と言って、砂江子の背中を押す。慌てて、砂江子を局のバイヤーに押し込み、局に向かう。「番組は、お色気禅問答というもので…」と説明を始める半沢。「お色気とか困ったわ。わたくし恋愛の経験もないし、そういうのとっても苦手なんです…」半沢、運転手(三角八郎)に「急いでくれよ!!」と声を掛けると、「半沢さんは美人と道行きだからいいけど、私は一人ですからね」と答える運転手。
   「お色気禅問答」の生放送中。スチュワーデスの制服姿の砂江子に西光和尚(左卜全)はご機嫌だ。「近頃イカスなんて言葉が流行っているが、色気とセックスアッピールとはちょっと違う。」「女だけではなく、男の方にも色気と言うのはありますか?」「2枚目と言うのとは少し違うな。では、私のように容姿の悪い年寄りでも、あなたには求愛できると言うことかな」「でも、私古い考え方かもしれませんが、結婚に繋がらない恋愛なんて意味がないと思ってしまうんです。だから、私にとって、恋愛は人生で一回限りです。もし、私の恋愛が破れた時には、一生恋愛とは関係のない生活を送ると思いますわ…。」安藤が「いいじゃないか!!」と独り言を言うと、隣に座っていた美加子が、安藤の腿をつねる。
   喫茶店、砂江子「本当に成功だったのかしら」半沢「お世辞抜きで、太鼓判を押しますよ。僕の目に狂いはなかった。」「そこまで言っていただければ、安心しました。でも、半沢さんは私のこと、どうしてご存知なんですか?」「僕を覚えていませんか?これでも三回お会いしていますよ。」「えっ、お客様だったんですか。」「ひどいなあ」「私、全然覚えてなくて、ごめんなさい。」「上着にコーヒーをこぼしてしまったら、一生懸命拭いて下さったんです。」「覚えていませんわ」「それが、二度目で、一回目からきれいな方だと思っていました。それから仕事で飛行機に乗る度に、あなたに会えないかと思っていました。」
   中村不動産、かね(沢村貞子)、正面のガラス戸に貼ってある物件の案内を張り替えている。砂江子「ただいま。」「遅いわね、さっきまで、進藤さんあんたを待っていたんだよ。」「仕事の後、お友達と銀座に行ったの。はい、お土産。」二階の自分の部屋に上がり、鼻歌を歌いながら、ラジオのスイッチを点ける。「誰よりも君を愛す」のメロディーが流れる。「うっふっふっふ」思い出し笑いをする砂江子。「コーヒーを上着に零して…」半沢の言葉を思い出して「おかしい人、うふふっ。」
   昼間のホテルの一室。進藤恭次郎(川崎敬三)と片桐のり子(左幸子)がベッドの中にいる。「いつまでも、こうしていたいわ」「親父にバレるとヤバいぜ」中村不動産に電話をし「では、今晩。必ず砂江子さんを連れてきて下さいよ」と話すのを聞いてのり子「砂江子さんって誰?」「スチュワーデスさ」「美人そうね」「スペシャル美人さ」服を着始めるのを見てのり子「ねえ、帰るの?」「君だって会社に帰らなきゃならないだろ。昼休みは終わったぜ。君に付いていられちゃ、俺の計画はパアだ。泣いてくれよ」札を放り投げ、「これでおしまいだ。じゃあな」
    進藤、長谷川宝石店に入る。マダムの池令子(角梨枝子)「この頃ちっとも来てくれないじゃないの」「マダムも体を持て余しているみたいだな」と体を弄る進藤。女店員たち、顔をしかめる。「お店の示しがつかないじゃないの」「もうバレちまったんだからいいじゃないか」と声を掛け抱き寄せ、キスをする進藤。令子を抱いている隙に、店に飾ってあった大振りのダイヤの指輪を自分のポケットに入れる進藤。
   ナイトクラブに、半沢が局長の遠山(北原義郎)に連れられやって来る。「君にとって悪い話ではないじゃないか。志摩化粧品の一人娘。君の前途は約束されたようなもんだ。結婚相手は大事だぞ。私なんか、つまらない恋愛で結婚してしまったから・・・。」別のテーブルに西光和尚がいて大勢のホステスに囲まれてご満悦だ。遠山は「ちょっと、ご機嫌伺いに行ってくる。」
   他のテーブルには進藤とかねがいる。かねは、テーブルの下で、靴を脱ぎ捨て、足が痒いのか、左右をこすりあわせている。「下田に鉄道が走るのは決まっていますから、値上がり確実な物件なんですよ…。」「砂江子さんは本当に来るんでしょうね。」「そりゃ勿論ですとも、勿論ですとも!」「で、幾ら必要なんです。」「5万6千坪ありますので、四千万を、お父様にご融資いただけますと…。」そこに砂江子がやってくる。「砂江子、遅かったじゃないか。いえ、この子は恥ずかしがっているだけですよ」進藤、いきなり指輪を出して、「君のために作らせたんです。」「いえ、こんな高いものいただけませんわ。」「あらあ、これはダイヤモンドじゃございませんですこと。素晴らしいわ!」自分の指に嵌め、うっとり眺めながら、「砂江子、頂戴しておきなさい。」「貰って下さい」「いただけません!」「では、あたくしが代わりに頂きますわ。いっいえ、あたくしがお預かりしておきますわ。」進藤は、強引に冴子をダンスに誘う。「僕はあなたを愛している。だから結婚して欲しい。」
   抱き寄せようとする進藤と必死に抵抗する砂江子。二人が踊る姿を見て、気が気でなかった半沢は「失敬じゃないか」と声を掛ける。「まあ」地獄に仏の砂江子、「失礼します。」と進藤に言って店を出て行ってしまう。砂江子を追って出ていく進藤と、不安になって後を追う半沢。車の行き交う道を渡る砂江子を追って車道に出る進藤。車に撥ねられそうになり、「危ない!!」と叫んだ半沢は、進藤を止めて歩道に転ぶ。「邪魔しやがって!」と忌ま忌ましそうに吐き棄て、進藤は去った。
  すると、砂江子が現れる。半沢「いたんですか?」「すいません、あたしのために・・・。」「君が誤ることないんです。」「あら血が・・」平気ですという半沢の怪我をした手に、ハンドバックから取り出した白いハンカチを捲く砂江子。「わたくし、感動しているんです。それなのに、あの人ったら助けていただいたのに、お礼も言わないで・・・。」「いいんです。それよりも歩きませんか?」一人取り残されたかねは帰ろうとするが、靴が見当たらない。ボーイに「私の靴がないんですよ。私の靴が」当惑するボーイ。
  スタジアムの裏のようなところで、「静かね。」「僕はここが好きで、仕事でむしゃくしゃするとここに来るんです。」「とても素敵なところね。」「僕は、学生の頃から人とうまく交流ができなくて孤独でした。“堅物”とあだ名をつけられた程です。同じ大学だった進藤は何かと僕を目の敵にしてからかうんです。」「人とうまく交流できないのは私も一緒ですわ」「そんなこと。」「両親を亡くして、叔母に育てられた私は、友達もいませんでした。いじめた同級生を見返してやろうと思って、スチュワーデスになったんです。私たち、似た者同士ですわね。」「あんな奴にあなたを渡せるものか!!! つい無理なことを言って、失敬しました」「いえ、私うれしいんです。」見つめあい、キスを交わす二人。
  自分の部屋で、砂江子がうっとり昨晩のことを考えていると、かねが上がってくる。「砂江ちゃん、進藤さんからまた届けものがあったよ、いい加減了解してあげなよ」「叔母さん、お金儲けのために、私を結婚させようというんでしょ」「違うよ、あんたの幸せを思って」「なら、お断りして。」「何を言うんだいこの子は。こんな高価なダイアモンドをくださったんだよ」「こんなものいりません」と投げる砂江子。「何をするんだい。ああもったいない」
そこに下から不動産屋の事務員が声を掛ける「お嬢さん!電話ですよ」「はーい。砂江子です。まあ半沢さん!!結構ですわ、私今日お休みなんです」「じゃあ、6時に例の喫茶店で」
電話を置いた半沢に、安藤が「女ってのはな・・」半沢「何度も聞かされていますよ、奥さんにプロポーズした時に、OKしてくれなければ、何をするかわからないっていったんでしょ」爆笑していると制作部員(杉田康)が「おい半沢!局長が呼んでいるぞ!」と声を掛ける。
  局長室「今、志摩さんから電話があって、お嬢さんの誕生日にパーティーがあるので、ぜひお前を招待したいと言ってるんだ」「いつですか?」「今夜だ。仕事なら他の奴に代わってもらって、今夜ののところは、とにかく行ってくれよ、俺の立場もあるし・・」と押し切られる。
  待ち合わせの時間を過ぎても現れない半沢に砂江子が不安になり始めると、ウエイトレスが声を掛ける「森砂江子さまですね。先ほど半沢さまからお電話があって、急用が出来てこれなくなったとのことです」その頃、志摩家を訪ねた半沢。屋敷には美加子しかいない。「パーティじゃなかったんですか?」「パパはお妾さんと箱根の別荘、お母さまも・・・。お客様はあなただけです」ステレオを流し、部屋の灯りを暗くする美加子。
   寂しく喫茶店を出て砂江子が街を歩いていると、「砂江子さ~ん」と呼ぶ声がする。振り返ると、オープンカーに乗った進藤だ。「お乗りになりませんか」「いいえ結構です。「お送りしますよ。半沢のことでお聞かせしたいことがあるんです。」半沢と聞いて、動揺した砂江子を無理やり助手席に乗せる進藤。「今日、半沢は来なかったでしょう。半沢は僕の従妹に呼ばれているんです。恋愛関係にあって、近々婚約することになるでしょう。そんないい加減な奴なんです半沢は!」ショックで呆然自失の砂江子が我に返って「どこを走っているんですか?道が違うわ。降ろしてください!!」「面白いところへご案内しますよ。すぐ近くです。僕の友人たち、怒れる若者たちではなく、イカレタ若者たちですよ。」
  とある屋敷の地下室のようなところに、楽器を演奏する者、ダンスを踊る者、壁にへんてこな絵を描く者など、男女が入り乱れて騒いでいる。進藤が「諸君!!スチュワーデスの森砂江子さん。どうぞ、こちらへ。」ヒューヒューと囃し立てる若者たち。「お酒でもお飲みになりませんか?」「いえ、私は飲めませんの・・」「じゃあ、ジュースでも」「ええ」進藤は、砂江子のコップのコーラに睡眠薬を混ぜて、渡す。若者たちはゲームをしている。「負けた人間は質問に本当のことを答えなければならないんです・・・・。」馴れない雰囲気に飲まれている砂江子。ゲームに負けた娘が真ん中に立っている。「あなたはバージンですか?」「いいえ」「失ったのはいつでしたか?」「16歳の時でした」囃し立てる若者たち。「相手は誰ですか?」「ママの知り合いの学生でした。」「どうでしたか、ママがとても怒って、私を寄宿舎にいれたので、その学生とはそれきりでした。」「次の相手は誰ですか?」「物理の先生です・・」呆れて声も出ない砂江子は、喉が渇きジュースを飲む。その姿を見て、ニヤリとする進藤。
  同じころ、半沢は、美加子に「好き!!」と抱きつかれていた。抵抗しながらも、スポンサーのお嬢さんに「今夜は泊って行って!!女の私に、ここまで言わせて平気なの」とまで言われて動揺する半沢に無理矢理キスをする美加子。すると突然灯りが点き、進藤と仲間たちが、歓声を上げて入ってくる。半沢は、その中に、砂江子の姿を見つけて愕然とする。進藤に「こんな茶番を考えたのは君だろう馬鹿にするな!!!」と怒鳴って家を出て行く。その時、既に砂江子は、進藤に飲まされた睡眠薬が効いてフラフラだった。怒りに燃えた半沢は気がつかなかった。気を失った砂江子を寝室に運び、鍵を閉める進藤。ベッドには、砂江子の着ていた服が散乱している。
  翌日、羽田の更衣室、鏡の前に立つ砂江子の顔色は青白く、苦悩に満ちている。外から入ってきた優子が「あんたの彼氏来てるわよ。どうしたの何かあったの?」会いたくはなかったが、半沢の前に立つ砂江子。「心配で、僕は眠れなかったよ。どうして君はあの場所にいたんだ。納得できるような話を聞きたいんだ。」「納得できるお話ができなくなってしまったの・・・。」泣く砂江子。「どうしたんだ。何があったんだ。」泣く砂江子を尚も問い詰める半沢。「わたし、喫茶店であなたの伝言を聞いたわ・・・。帰ろうとして歩いていたら、進藤さんに声を掛けられて・・・。そのあとは、何が何だか自分でもわからないの・・・」「それじゃ納得できないよ」「納得してもらえないわ。私には、あなたにあげられるものが何もなくなってしまったわ・・・」泣き崩れる砂江子。「後の祭りさ、いうことは何もないよ」半沢帰って行く。
  進藤コンツエルンの会長室、進藤が来ている。会長秘書ののり子が入ってくる。「久し振りだな」「妊娠したのよ、私」「本当か!!」「びっくりするのね、あなたでも」「冗談はやめろよ」「本当よ、今度は・・・」「じゃあ、これでいいだろ」とポケットから金を出し放り投げる。「今度は、私下ろさないわ、この4千円が父親の責任って訳?」「父親なんてそんなもんだろ」その時会長の進藤竜太(武田正憲)が入ってくる。「また小遣いのおねだりか」机に放り投げてあった金を慌てて隠す進藤。「いつまでもブラブラしていないで、ちゃんと働きなさい」「パパ、今日はいい話を持って来たんだ。今度、伊豆に鉄道が通る別荘地があるんだ・・・」
   酔った半沢を連れて例のクラブに連れてくる安藤。「彼女がそんな人だとは思えないけどなあ。」ホステス「何だか、こちら荒れてるわね。」「この店のサービスが悪いって文句を言っていたんだ。」「あらまあ、こっちにとばっちり?そうそうニューフェイスを紹介するわ。こちらのり子さん」「よろしくお願いします。」会長秘書だったのり子だった。
  タクシーが止まり、隅田川に駆け寄って苦しい息をする半沢。駆け寄ってきて「気分が悪いの?大丈夫」と背中をさするのり子。「帰れよ!」「心配だわ。」「臭い川だな。私の向島の出身なの。大川の臭い、懐かしいわ・・・。あなたの気持ち、私、判るわ・・・。私、進藤に捨てられたの・・・。子供が出来たからよ。進藤はそんな男、砂江子さんの体だけが目当てよ。傷つく砂江子さんかわいそうだわ。」「砂江子と進藤の話はやめてくれ」「私帰るわね。わたし・・・これでも元はタイピストよ、落ちたものね・・・」
   進藤が令子の宝石店に入ってくる。「駄目よ、駄目、お店じゃいけないわ」店内であからさまに令子を抱きながら進藤は「あーあ。この顔見飽きた。その点、砂江子は新鮮でいい・・・」と考えている。令子「ねえ今夜会えない?」「忙しいんだ。」真珠のネックレスをポケットに入れようとする進藤。「駄目よ、お店の品物よ。この間、大きなダイヤの指輪持って行ったでしょう。大変だったんだから。でも、そのネックレスをいいわ、あげるわ」「なんで?」「インビテーション!!」「何だ偽物か・・・。」

  池袋新文芸坐で、名匠清水宏
  59年大映東京清水宏監督『母のおもかげ(707)』
  隅田川沿いの公園。子供たち。鳩を飛ばす少年がいる。少年は走って家に戻る。家の向かいの大木豆腐店で豆腐を作っている細君ふで(村田知栄子)が、娘の慶子(南左斗子)に、もうご飯できているんだろ声を掛けな!という。そうねと向かい住む瀬川定夫(根上淳)の部屋を覗くと、定夫が掃除をしている。「私がするわよ。」「天下のファッションモデルにそんなことやらせられないよ。」「いつものことじゃない。ご飯出来てるわよ。お父ちゃんの話どうなの?4お兄さんを決めると30件目だと張り切っているわよ。」「うーん」「道夫ちゃん、早くしないと学校遅れるわよ!」豆腐屋で朝食をとる。定夫と道夫。一足先に済ませた定夫に、「お父ちゃん、待ってよ!!」橋を渡る定夫に追いつく道夫。「お前、お母ちゃん欲しいか?」「僕のお母ちゃんはいるじゃないか・・・」

  隅田川の水上バスの運転手の瀬川定夫(根上淳)は、半年前に妻を亡くし、息子の道夫(毛利光宏)と二人暮らし。向かいに住み、豆腐屋を営む叔父の大木恭介(見明凡太郎)と、ふで(村田知栄子)夫婦と娘でファッションモデルの慶子(南左斗子)に炊事洗濯掃除などやってもらっている。叔父は、定夫の後妻を、仲人30件目にしたいと張り切り、病院の炊事婦の高田園子(が、コブ付きだが、器量も性格もいいのでなんとか纏めたいと、無理矢理その日の夕方に見合いをセッティングする。
    仕方なしに会うだけだと言いながらも、定夫も床屋に行き、園子も一旦帰宅し着替えて喫茶店にやってくる。叔父は、二人でざっくばらんに話せと帰ってしまう。最初は気まずかったものの、おでんやで酒を飲み、寄席で、林家三平の落語を聞くうちに、お互い憎からず思うようになる。園子の家まで送る定夫。病院の調理場で世話になっているお藤夫婦(清川玉枝、南方伸夫)の二階に間借りしているのだ。園子の娘のエミ子(安本幸代)は既に眠っていたが、その寝顔を見て定夫の気持ちは固まる。
   問題は、息子の道夫の気持ちだ。道夫は、亡くなった母ちゃんの写真と、母ちゃんが買ってくれた伝書鳩をとても大事にしている。慶子は、両親から話を聞いて、子供同士の見合いをしたらどうだろうと提案する。自分が出演する最新モードのファッションショーが開かれるデパートに、道夫とエミ子を呼んで、お好み焼屋で食事をする慶子。

  58年大映東京清水宏監督『母の旅路(708)』
   タイガーサーカスのテント。楽隊が街に宣伝しに出掛けて行く。笹井京子(三益愛子)、「しっかりやって来ておくれよ!!」と声を掛ける。京子は、紅梅と言う名前で空中ブランコ乗りだった。娘の泰子(仁木多鶴子)がユリ(紺野ユカ)と空中ブランコをしている。有原清(伊沢一郎)が「やっぱり血は争えないな「父ちゃんいない?」京子「また、神経痛が痛むってさ。」
   考え事をしている晋吾(佐野周二)、京子の夫で、サーカスの団長である。京子「どうしたんだい?」「箱根を越えるのは初めてだ。明日が親父の命日だから、泰子を連れて墓参りをして来ようと思うんだ。」「そりゃいいよ。死に目にも会えなかったんだ。」
    笹井家の墓に行く。晋吾と泰子。「お線香を上げるのは父さんくらいしかいない筈なんだ。」しかし、花が手向けられ、きれいになっている。案内してきた老人は「ああ、命日の度に、伊吹さんの奥さんがいつもいらしています。」と説明する。驚きながらも「泰子、花を供えなさい」と晋吾。寺の本堂で、読経する住職の後ろに、伊吹和子(藤間紫)がいる。やって来た晋吾は和子に軽く会釈をする。
   伊吹邸、和子が晋吾に話している。「お父様が亡くなられてから、随分探したんですが、見つからなかったので、遺言に基づいて、わたくしが今までお預かりしてきましたが、やはり晋吾さんにお返ししなければならないと思うんです。」「いえ、私は放蕩の末、勘当された身の上ですから、今更…。」「しかし、そのことも、元はと言えば、わたくしが悪いのです。」「そんな昔のこと」「私は荒れて、満州の奥で病気になって死にかけていた時に今のサーカスの団長に助けられ、その後、団長の娘と結婚したんです。だから今更…」賑やかな声が聞こえてきて晋吾が隣室を覗くと、和子の娘の光代(金田一敦子)が弾くピアノの合わせて泰子が皿回しをして、光代の弟の春夫(鈴木義広)に見せている。思わず「泰子、止めなさい!」という晋吾。
  


三郎(柴田吾郎)国男(浜口喜博)信男(伊藤直保)かおる(南左斗子)佐吉老人(伊達正)里見(花布辰男)松木(大山健二)山村夫人(平井岐代子)田島夫人(耕田久鯉子)瀬長夫人(岡村文子)森田先生(丸山修)谷野先生(穂高のり子)令子(千早景以子)葉子(田中三津子)晶子(水木麗子)町子(三宅川和子)圭子(真中陽子)しげ(町田博子)きよ(本山雅子)みよ(小笠原まり子)来賓客(宮島城司、河原けん二)蕎麦屋のオヤジ(小杉光史)村のお偉方(酒井三郎、杉森麟、佐々木正時)サーカスの女(千歳恵美、西川紀久子)


   京橋フィルムセンターで、生誕百年 映画女優 田中絹代(2)
    57年歌舞伎座五所平之助監督『黄色いからす(709)』
    鎌倉鶴丘八幡宮~鎌倉の大仏。小学生たちが大仏を写生している。担任の芦原靖子(久我美子)が、吉田清(設楽幸嗣)の描く絵を見て、「あら、吉田くんよく見てご覧なさい。黒と黄色だけでなく、もっと他の色もあるでしょう」清から反応がないので考え直し「いいのよ、いいのよ、何でも自分の思い通りに自由に描いて。」
   生徒のいない教室で、芦原が同僚の村上(沼田曜一)に相談をしている。「どうでしょうか」「確かに変わっているね」「以前は、随分明るい色の絵を描いていたんですが…。」「児童心理学では、父親がいないとか、家庭に問題がある児童が、こうした絵を描く傾向があると書いてあるのを読んだことがあるよ」「でも、吉田清くんは二親が揃っていてそんなことはないんです。昨年お父さん中国から帰って来たんです。」「引き揚げ者か大変だなあ…。」
   前の年のこと、夫が乗った中国からの引き揚げ船が着くことを知り、吉田清と母親のマチ子(淡島千景)が港の近くの旅館に泊まっている。清、母親に甘えている。「お母さん。肩を叩くよ。」「清ちゃん、ありがとう。」「お父さんの船いつ着くの?」「船はもう着いたらしいけど、明日の朝降りて来るの…。」「お父さん、僕に会ったら喜ぶ?」「清ちゃんが、こんなにいい子になっているんですもの、喜んでくれるわよ」隣のおばさんが、「ボン賢いなあ」と声を掛ける。「さあ、清ちゃん寝ましょう」
   翌朝、朝靄の中を、次々と桟橋を歩いてくる引き揚げ者たち。出迎えの人々の中には、勿論、町子と清の姿がある。一郎(伊藤雄之助)の姿を見つけ、「清ちゃん!お父さんよ」と町子が駆け寄る。「あなた!!良かったわ…」と涙ぐむマチ子。「うん…」「大変だったでしょ…」町子我に帰り、「あなた!!清ですよ!!大きくなったでしょう!!」「お前いくつになった?」「あなたが、あっちに行って直ぐ生まれたから、9つですよ」「9つかあ…」「清ちゃん!!お父さんって言ってご覧!!」「…おとうさん…」照れているのか、初めて会う父親に戸惑っているのか小さな声の清。
   祭り囃子が聞こえている。「清!!お神輿担いだことがあるか?」どうも、話は続かない。そこにマチ子が葛餅を出す。「はい、これお父さんの分、もう少しお砂糖いる?」「そうだな。こういうものはあっちでは食べられなかった。」「はい、清ちゃんの分」「お母さん!!僕もお砂糖頂戴!!」「ねえあなた、清ちゃん年齢にしては体大きい方なのよ。あなたみたいに身長高くなるわね」「そうだ、清腕相撲するか?」「清ちゃんやって貰いなさい。」「うん…」「おっ、清はギッチョか?」「直らないのよ…」「そうか、じゃあ、お父さんも左手だ。」「ハッケヨイ、残った!!残った!!残った!」マチ子、夫に負けてあげてと目配せをする。最後は清が両手を使い勝った。「やった!!やった!!お父さんに勝った!!」「清ちゃん、そんなに大きな声でお父さんと言って」涙ぐむマチ子。

2009年12月16日水曜日

捨てたこの身の落ち行く先は、雪の北国港町。

  池袋新文芸坐で、名匠清水宏 その感動の世界へ
   33年松竹蒲田清水宏監督『泣き濡れた春の女よ(705)』
    
   青函連絡船、函館に向かう飛天丸に、貨物車が入って行く。乗客デッキに、スコップを担いだ男たちが上がっていく。看板では、人足頭のぐず安(大山健二)が乗り込む男たちの人数を確認している。その後に女たちが乗り込んで来る。二等船室に、男たちがいる。ぐず安が声を掛ける。「整列!!番号!!」「1」「2」「3」…「18」。ぐず安が首を傾げる。「一人足りないなあ」
   汽笛を鳴らし出港する飛天丸。デッキには、五人の女たちがいる。デッキに落ちている吸い殻を拾おうとする健二(大日方伝)。しかし、女ものの下駄が踏みつける。顔を上げると女(岡田嘉子)が煙草を差し出し「一本どう?」一本抜く健二。「ありがとうぐらい言ったらどうなの?」隣に座って大きな人形を抱いているいる少女(市村美津子)がキャラメルの箱を差し出す。「どうもありがとう。お母さんは?」顔で示したのは先ほどの女だ。「おとうちゃんは?」俯く少女。「気にしないでくれ」「おじちゃん遊んでくれない?」「おじちゃんは、お話が下手なんだ。」「じゃあ、あたしが話して上げる。むかしむかし、あるところに…」そこに、ぐず安が探しに来て、下まで来いと言う。健二は、お礼にこれをやろうと腹巻きから出した物を少女に渡す。「お姉ちゃん、これなあに?」「みっちゃん、メダルよ。」
   再び「整列!!番号!!」と号令を掛けるぐず安。ようやく人数が揃い満足したような顔で、「気をつけ!!休め!!今一度、炭坑の抗夫たちの心得を説明しておく。酒と女は慎むように!博打はいかん!上官の命令には絶対服従だ。では解散!!」健二は、弟分の忠公(小倉繁)に「上官って、あいつは兵隊上がりか?」「万年軍曹と言ったところでしょう」ぐず安が睨んでいるのに気がついて、二人はデッキに上がる。先ほどの母お浜とおみつたちはまだそこにいた。
    おみつ「おかあさん、おふじちゃんまた泣いているわ」お浜「ねえ、お藤さん、今更泣いたってしょうかないじゃない」お藤(千早晶子)「諦めているわ。でも涙が出て仕方がないんですもの…。」お秋「ほっときなさいよ。どうせ泣いて涙も出なくなるんだから…。あ~あ、あたしも泣いた時代に戻りたいわ…。」
   忠公がお浜に声を掛ける。「姉さんどっかで会ったんじゃないですか?」「どうせ渡り鳥だもの、どっかで会ったこともあると思うよ。♪流れ、流れて、落ち行く先は、雪の北国港町~♪」忠公「いい歌ですねえ。教えて貰えませんか」「いいわよ」「捨てた」手帳を出し、「捨てた」「この身の」「この身の」「落ち行く先は」「落ち行く先は…」
 
   馬橇で、雪の平原を進む抗夫たち。
   炭坑での仕事をしている健二と忠公に上官が声を掛ける。「今晩あたり、女のいる店に飲みに行かないか?」「酒と女は慎まないといけないんじゃ」「ある店で、今度お前さんを連れてきてくれと頼まれたんだ。」「兄貴を?」「たまには、白粉の匂いを嗅ぐのもいいもんだろう」
    馬橇を急がす健二。後ろに上官と忠公が乗っているが、ふとした拍子に二人揃って振り落とされる。慌てて雪の中、馬橇を追い掛ける二人。
    カフェーに入る三人。カフェーに入ると、女たちが化粧をしている。女給たちは、連絡船で一緒だった女たちだ。上官は、お浜に気があり通っていたようだ。「なーる程、娑婆の白粉の匂いは悪かないですねえ。」と忠公。奥でお藤が、酔客に、「そろそろ、いい返事を聞かせてくれよ。」と絡まれている。上官に「忠公、売り出すいい機会だぜ」と唆された忠公は、間に入り「おいおいお兄さん」と声を掛けるが、「おいおい、お前の出る幕じゃねえぜ」と頬を打たれ、頭を下げて、すごすご引き下がる。帰ってきた忠公に、上官は「健二行こうか」と言うと、健二は男に「ここでは埃が立つから、外に出よう」と連れ出す。女給たちが、不安そうに窓から外を見ると、男は呆気なくひっくり返っていて、ペコペコ頭を下げ、走って逃げる。
   戻ってきた健二にお浜が「あっぱれなお手並み。気に入ったわ」と声をかけるが、健二はお藤のもとに行き「お前さんだね、連絡船の甲板で泣いていたのは。言葉の訛からすると、国は関西だね。どうしてこんなところに流れて来たんだい?」「お互い、そんなこと聞くもんじゃないわ。」「煙草を吸えるようになったんだな」「ええ、ここに来て随分と経った気がするわ。お酒も飲めるようになったのよ」
  それを聞くと健二は、カウンターに行き、お浜に「あちらものの方がいいな。」とウィスキーのボトルとグラスを二つ貰う。それを見て上官は忠公に「あいつ、見かけによらない早いことやるな・・・。」お藤「私そんな強いお酒は、酔っ払ってしまうわ」「酔いつぶれたら、俺が介抱してやるよ」続けて飲む健二に 、お藤は「そんなに飲んだら酔っ払ってさまうわ」「酔いつぶれたら、お前さんに介抱して貰うさ。」「あたしが介抱してあげるわよ」と健二とお藤の間に割って入るお浜。
   健二がお藤に「上官に言付けたのはお前さんかい?」と声を掛けると、「あたしではないわ」とお藤。「連れてきてと言ったのはあたしかもしれなくてよ」とお浜が寄って来る。その時、二階から「私よ」と声がする。見ると、おみつだった。「おじちゃんに話の続きを聞かせてあげるって約束したでしょ・・・」お浜が、「降りて来ちゃだめと言ったでしょう」と言い、健二には「あたしの部屋に来ない。」「部屋に行くと面白いことあるの?」「お話をしてあげるわ」モテモテの健二に、愉快ではない上官。健二が乗ってこないので、「今日は、私が奢るわ!!お明!お鶴!お静!お酒をどんどん持ってきて頂戴!!」お鶴(雲井鶴子)お静(兵藤靜枝)お明(白石明子)お龍(富士龍子)お秋(村瀬幸子)ら女たちは嬌声を上げ、店の中は一気に盛り上がる。一方おみつは、独り三階の屋根裏部屋に上がり、寝間着に着替え、隣に人形を抜かせて布団に入る。
  健二が起きると、もう点呼が始まっている。再び寝たふりをする。健二と忠公がいないのに気がついた上官は、宿舎に戻ってきて寝ている二人を見つけ「起きねえか!!!」と怒鳴りつける。飛び起きた健二と忠公は「18!」「19!」。「ゆうべ女に奢ってもらったと思っていたら、大間違いだからな!!」と言い26円の領収書を見せる上官。二人頭を下げる。調子に乗って忠公「白粉の香りも悪くないですね」とにやついて、「馬鹿野郎!!」とどやしつけられる。
  カフェーの前で、お藤がおみつに「みっちゃんは、あのおじちゃんは好き?」頷いたおみつが「お姉ちゃんは?」と聞くと、お藤は微笑む。お浜が女給たちの部屋の前を通ると女たちが盛り上がっている。「お藤ちゃんも、海千山千の悪い人を相手にしたわね。」「今晩の取り組みは見ものね。」「若い力士のテッポウも勢いがあるわよ。」「四つ相撲になるわ。」うふふ皆大笑いをしているのをドアの外で聞いて眉をしかめるお浜。
  お藤は実家からの手紙を読んで暗い表情だ。お浜の部屋に行き、「お姉さん。国のお母さん、また具合が悪いと報せが来たんです。少し貸して貰えませんか。」「あなた、この間そういって借りたばかりでしょ。そんなに貸せないわ。」肩を落として部屋に戻ったお藤に「南はシンガポール、北は満州まで渡り歩いて、大龍お浜とまで呼ばれたのよ。あんた、お浜さんに睨まれないようにしないと駄目よ。」「わたし、お浜さんに睨まれるようなことはしていないわ。わたし、それどころじゃないんですもの・・・」
  おみつがお浜と話している。「おかあさん、あたいのこと好き?あのおじちゃん来るかしら?」「みっちゃん、あのおじちゃんのこと好き?」頷いておみつ「おかあさんは、おじちゃんのこと好き?」お浜微笑むと「さっき、お藤ねえちゃんに、同じことをいったら、やっぱり笑っていたわ。」お浜「子供はここに来るんじゃないよ!!」と自分の部屋に上がっているようきつく言う。
  その夜、健二がやってきた。しかし、お藤は国の母親のことが気が気でなく上の空である。「この前、また来てねと言っていたのは、お世辞か、商売の口癖だったのか。」と怒り「忠公!おりゃあ帰るわ」お藤が追ってきて「私がまた来てねと言ったのは、お世辞でも、商売の口癖でもないわ。」「何か心配ごとでもあるのか?」そこに上官がやってきて「おい健二!俺を出し抜くなよ!」と言う。お藤の話を聞いて、健二は上官のもとに行き、「上官!今月分の給金を貸してください!」「この間、今月分は前借りしただろ!」「では、来月分を貸してください!」上官は金を渡してやる。健二はお藤のところに行き「これを送ってやんな」と全部渡す。「それじゃあんまり・・・。」「金を儲けるつもりなら、こんな仕事をやっていないぜ。」嬉し涙を浮かべるお藤。「じゃあ、お礼にシャツを洗ってあげるわ。」忠公がうらやましそうに「俺のシャツも洗ってくれ」と脱ぎ始め、寒くてくしゃみをする。
  翌日、嬉しそうに二枚のシャツを干しているお藤。その姿を眺めながら、頬杖をつくお浜。夕方、お藤が物干しをみると、健二のシャツがなくなっている。不思議に思いながら、同輩に「アイロンを貸して」と声をかけると「お浜さんが使っていたわ」という。お藤がお浜の部屋に行くと、お浜は、アイロンが掛かった健二のシャツの繕いものをしている。針仕事が苦手なお藤は何も言えない。
  その夜、船員の工藤(石山龍児)がやってきてお藤と話している。お浜が声をかける「工藤さんごゆっくり。」
   

   お藤(千早晶子)おみつ(市村美津子)

   新宿ジュンク堂カフェに、美人映画プロデューサーから相談があると言われていたのでいそいそと出かける。珍しくはないが、珍しく直球の音楽青春映画。1時間のつもりが、2時間半話し、見ようと思っていた大雷蔵祭を断念。
   博華で、餃子とビール。

2009年12月15日火曜日

街は忘年会

   池袋新文芸坐で、名匠清水宏
   40年松竹大船清水宏監督『信子(702)』
  大きな荷物を抱えた小宮山信子(高峰三枝子)が、家を探しながら歩いている。一軒の家の玄関に掃除をしている娘チャー子(三谷幸子)がいる。信子が娘に声をかける「尾張町の服部さんは違ったわ。18番地の服部さんってどこかしら。」「番地はここですけど・・・。変ねえ。お母さん、18番地の服部さんって知っている?」「うちじゃないの。」「えっ?うちは巴屋でしょう。」「巴屋は屋号で、服部佳子ってあたしだよ!!!」「うちだったんです」「あらまあ」「じゃあ、お信ちゃんかい?大きくなったねえ。お上がりよ。電報でも寄こせば迎えにいったのに。」
   芸者見習いのチャー子は2階に上がり、眠っていた二人の芸者駒勇(草香田鶴子)君香(東山光子)に声を掛ける。「姉さん、姉さん来たわよ。来たわよ。ねえ起きて。」「手紙が来たの?」「手紙じゃないわ。」「ああ、信子さんが来たのね。どういう人?」「じゃけん、じゃけん。」「何言っているの?」「洋装でかっこいいわ。」「とにかくモダンな人なのね。」「そうよ、田舎モダン。」
  下の居間では、お佳(飯田蝶子)と信子が話している。「大きくなったねえ。お信ちゃんが、女学校の先生になるんだもの。あたしがお婆ちゃんになる訳だね。」「お婆ちゃんだなんて・・・。そうやって白髪を染めていれば、40代に見えるですけ。」「あたしゃ、まだ40代だよ。白髪染めもしていないし。」「お父さんの従兄だっていうから、もっと年を取っていると思っていましたたい。」
  女学校の職員室で、校長の関口(岡村文子)の前に立つ信子。「では、お給料は32円差し上げます。」「・・・」「ご不満ですか。」「結構でございますヶ。」「そこから、校友会費1円、積立金1円を引いて、30円になります。」「校友会費と積立金を引いて、30円ですか・・・。」「それから・・」「まだ、何か引かれるのでごわすか。」「いえ、良家の子女をお預かりして、女は女らしくというのが、私たちの指導方針です。」「結構ですヶ。」「最近の人は、君、僕と言ったりしますが、持ってのほかです。あなたのお国の女学生はなんと言いますか?」「あたしの国では、ワシ、アンタといいますヶ。」「ワシも、アンタもいけません。それに、あなたの〝ケ"がいけません。終わりにつける〝ケ"がいけません。」「承知しましたケ。あっ、承知いたしました。」「あなたは、国語を受け持っていただく予定でしたが、体操を受け持ってもらいます。ご不満ですか?」「結構でございますヶ。あっ!結構でございます。」「では、保坂先生、小宮山さんを先生方にご紹介をお願いいたします。」

  教頭の保坂(森川まさみ)が次々に紹介していく。吉岡ふさ子先生(高松栄子)、手塚保子先生(忍節子)、山口花子先生(青木しのぶ)・・・。「よろしくお願いしますヶ。あっ!よろしくお願いいたします。」を繰り返す。山口先生は咳をし、「喘息なものですから。」信子「私の国では、阿蘇の蝦蟇を生け捕りにして、黒砂糖で煮詰めて、適当に湯呑に入れて薄めて、お茶代わりに飲むといいと聞きますヶ」山口熱心にメモを取り始める。「蝦蟇を生け捕りにして・・・。」
  保坂が「では、教室を案内しますわ。」「よろしくお願いしますヶ。あっ、よろしくお願いします。」廊下で出会った教師を紹介する。「こちら、岩崎三千子先生(大塚君代)、渡辺真知子先生(三笠朱実)梅沢豪子先生(出雲八重子)秋山先生(雲井ツル子)」「よろしくお願いしますヶ。あっ!よろしくお願いします。」
  音楽室では、松原操(松原操・特別出演)がピアノを弾いている。「こちら松原操先生。」「よろしくお願いします。」「あたしは、国語を受け持つ予定だったんですが、体操を受け持つことになって、少し戸惑っているですヶ。じゃっどん、がんばりますヶ。」「私が、体操を受け持って、小宮山さんには唱歌を受け持っていただこうかしら。うふふ。」「あはは。」
  さっそく、体操の時間になった。体操をキビキビと指揮する信子。「集合!こん可笑しな運動をやるっちゅう訳ば、人間は唯一二足歩行をするという可笑しな動物ちゅうこんに原因しておりますけん・・・」九州弁丸出しの信子の話に笑いだす生徒たち。
  
細川頼子(三浦光子)岩崎松原(松原操)梅沢()
細川源十郎(奈良真養)細川夫人(吉川満子)児玉初枝(春日英子)近藤ミチ子(なぎさ陽子)泥棒(日守新一)

    41年松竹大船清水宏監督『暁の合唱(703)』
    秋田女子高等専門学校、三日間の入学試験の2日目、教師たちが、国語の採点をしている。一人の教師が傑作を発見しましたぞと言い「春の海、ひねもすのたりのたりかな。の意味を書けに、春の海にひねもすと言う魚がのたりのたりと泳いでいる。房州でよく採れ、皮はハンドバッグにされる。いや傑作だ(笑)」
   「こちらもいい作文です。本当に傑作だ・・・・。」子供の時の怪我がもとで、一本の指が不自由になっていると言う。今までの試験は上手く行っているものの、決して裕福ではない親のことや、本来この学校の身体検査では、彼女の障害はいくら学科試験がよくても不合格になると聞いたことなどを考えると、果たして受験したことがいいことだったのかと悩んでいると、現在の率直な気持ちを、ウイットに富んだ表現で綴られた作文だ。
   この作文を書いたのは齋村朋子(木暮実千代)。あと1日残した試験の帰り、ふと朋子は、小出自動車と言うパス会社に、車掌募集と出ているのを見かけ、中にはいる。中では男二人が将棋をしている。事務所から和装の小出米子(川崎弘子)が、御用は?と声を掛ける。朋子は、この会社に入りたいと言う。将棋をしていた男(佐分利信)は、浮田兼輔と言う運転手の責任者だった。女子専門学校の受験を止めて、将来は運転手になりたいと言う朋子に、まずは両親の承諾を貰いなさいと言う浮田。あとで、連絡すると言う浮田に、名前も住所も言っていないので、連絡のしようもないと思うわと指摘する朋子。浮田の将棋の相手の小出三郎(近衛敏明)は、近くにある映画館の支配人をしながら、小出自動車を経営する兄が亡くなったので、姉の経理を手伝っている。横手の実家に帰る朋子。父・兵吉(坂本武)も継母・美代(吉川満子)も、異母弟の銀二郎(沖田儀一)ともとても良い家族を築いている。上の学校に進学せず、将来はパスの運転手になると言う朋子の話を承諾する兵吉。
    小出自動車に入社した朋子に、浮田はまず車掌をやらせる。初乗車には、浮田自ら運転手となった。朋子に興味のある三郎も、パスに飛び乗った。物怖じせず、愛想もいい朋子は、少し気が散りやすいのと、思ったままを口に出すのがたまに傷だ。いつも三郎は、バスにタダで乗っていたが、三郎さんの切符はどうします?と尋ねる朋子に、浮田はバスを持っていない客は誰でも運賃を貰わなければ駄目だと答えたことで、三郎から運賃を取る朋子。バスは終点に着く。折り返しの出発の時に、三郎は停留所前の茶屋の軒先で、昼寝をしている。結局三郎を置き去りにして、バスを出す浮田と朋子。

作文を書いている?(木暮実千代)。

「最終学歴は?」「横手の女学校を出ました。今日は女子高等専門学校の受験に来ました。」「さては落ちたな…」「サブちゃんひどいわね」「出来はよかったんですが、気が変ったんです。家は決して裕福ではありませんし。働きたいんです。」
  横手市横手町

   角川シネマ新宿で、大雷蔵祭
   62年大映京都三隅研次監督『斬る(704)』


   学校で、学生とイベントの打合せ。さすがに今日は皆顔を見せる。
   何人かの先輩の先生方と飲みに行く。初めてお話をさせていただいた方も多くて、面白いなあ。地元の飲み会にちょっと顔を出したが、既に撃沈気味で、すぐに帰る。

2009年12月14日月曜日

雷蔵VS勝新。最近大映ばかり見ている気がする。

   角川シネマ新宿で大雷蔵祭
   59年大映京都森一生監督『薄桜記(701)』
   赤穂浪士吉良家討ち入りの雪の降る夜、吉良邸に向かう隊列の中で、堀部安兵衛(勝新太郎)は、丹下典膳(市川雷蔵)のことを思い出していた。
   自分が典膳に初めて会ったのは、義伯父の菅野六郎左衛門(葛木香一)と村上兄弟との決闘を知り、高田馬場に走る途中だった…。旗本の典膳は御用の旅に向かう途中だ。走る中山安兵衛に、騎乗から「襷の結び目が解けている」と声を掛ける典膳だったが、駆ける安兵衛に伝わらなかったのではと、行列をそのまま進ませ、自分は安兵衛の後を追った。
   高田馬場に着いた安兵衛は、村上兄弟に多勢に無勢で、取り囲まれ窮地に追い込まれていた義叔父菅野六郎左衛門たちを救い、村上勢を次々に斬ってすてる。そこに駆け付けた播州赤穂藩浅野家江戸留守居役の堀部弥兵衛(荒木忍)は、娘お幸(浅野寿々子)の帯を襷に使えと安兵衛に投げた。決闘の場を見た典膳は、村上兄弟は同門の知心流であり、お役目もあったので、その場を離れた。
   最後に安兵衛は、村上庄左衛門(須賀不二夫)と弟の中津川祐見(光岡龍三郎)を討つ。傷ついた叔父の手当てをと、近くの武家屋敷の門前を貸して貰えぬかと、安兵衛は申し入れるが、どの屋敷かも知らず、自ら名乗りもしない申し入れに一度は拒絶される。その屋敷は米沢藩上杉家江戸屋敷だった。腹を立てて去ろうとした安兵衛に、上杉家江戸家老千坂兵部(香川良介)は、名代の長尾竜之進(北原義郎)に命じて門内での治療を許した。
    この高田馬場の一件は、中山安兵衛の名を世に轟かせたが、村上兄弟の真伝知心流の評判は地に落ちた。
   典膳は、道場に呼ばれ、高田馬場での決闘の場にいながら助太刀もせず立ち去ったことを責められる。典膳は、自分は御用の途中で、その時にはまだ村上兄弟は存命だった。目撃した門弟は何をしていたのだと反論する。「自分たちは人に向けて刀を抜いたことはない」などと意気地のないくせに典膳を責めるだけの連中だ。師範代が、仇を討って貰えぬかと頭を下げるが、御用で回った各地で、村上兄弟の悪い評判を聞いているので断ると答える典膳に、門弟たちは抜刀する。しかし、素手のまま、次々と門弟を倒す典膳。その騒ぎに師の知心斎が人に支えられ見台に現れ、典膳に破門を言い渡した。
    一方、安兵衛も、直心影流の師堀内源太佐衛門(嵐三右衛門)から、知心斎が典膳を破門にしたのは互いの遺恨になり余計な争いを避けるための配慮であり、その気持ちを知った以上、自分も安兵衛を破門せざるおえないと言って、一門のものにも、そのことを肝に命ぜよとと念を押した。
   道場には、噂の安兵衛を一目見ようと町娘たちが押し寄せている。源太佐衛門は、安兵衛を呼び、町娘だけでなく、縁談、お召し抱えの話があまた来ているだろうと言う。源太佐衛門のところに、上杉藩千坂兵部より話があると言う。ちょうど、千坂の家臣長尾竜之進が妹の千春(真城千都世)を連れ、源太佐衛門の娘浪乃(三田登喜子)のもとに来ていると言う。茶室に案内され、千春を見た安兵衛の心はときめいた。
   安兵衛が長屋に帰ると、やはり沢山の町娘に取り囲まれる。何とか自分の部屋に入ると、内職の筆作りの筆屋の娘お志津(加茂良子)が来ていた。健気にもお志津は、材料を届けがてら安兵衛の食事の仕度までしているのだが、先ほど会った千春のことが頭から離れない安兵衛は上の空だ。お志津についてやってきた三重(大和七海路)は「お嬢様、そんなことでは想いは伝わりません!!」と、とても歯痒い。娘たちだけでなく、堀部弥兵衛と武家の使者物部(沖時男)も仕官の返事を聞きにやってきて鉢合わせし、長屋の前で譲り合っている。
  その時子犬が現れ、野次馬たちの姿が消えた。時代は正に犬公方綱吉の時代、生類憐みの令により、犬猫はおろか、鳥虫に至るまで殺してはならぬとのことで、極刑まで下されていたのだ。
  ある日、安兵衛が、筆を納めに出かけた際、七面山千春院を通りかかると、想い人千春が野犬の群れに襲われていた。安兵衛が助けようとする間もなく、編み笠を被った武士が千春を庇い、犬を斬った。その武士は典膳だった。犬役人が近づいてくることに気がついた安兵衛は、高田馬場の借りを返そうと、自分は浪人であり、旗本である典膳よりも身軽だと言って、典膳を逃がす。とっさの判断で、安兵衛は、千春院に舞を奉納している風を装い犬役人の目を欺いた。千春は、ここが自分の母の菩提寺であり、そもそも、母親が兄竜之進の次に娘が生まれるようにと祈念しに通ったところ自分が生まれたので、千春という名前を貰ったのだと話す。
  安兵衛が橋の上から密かに犬の死骸を捨てると、真伝知心流の門弟たちが現れた。村上兄弟の仇討だと抜刀する門弟たち。堀内源太佐衛門からの言付けもあり、安兵衛が逡巡していると、そこに、典膳が現れ、安兵衛に借りがあるのだと言って、間に入った。数には圧倒的な差はあったが、腕に優る典膳は門弟たちに手傷を負わせ、退けた。
  安兵衛の気持ちは固まった。上杉藩に仕官して、千春を娶ろうと・・・。堀内源太佐衛門のもとを訪れ、報告しようとした矢先、師の思いがけない言葉に打ちのめされる安兵衛。かねてより相思相愛であった千春と典膳の祝言が決まったという。茶室からは、千春と浪乃が典膳の話しで華やいだ嬌声を上げている。二人はかねてより、七面山千春院で会っていたという。一人合点に気がついた安兵衛は、暫く気儘な浪人生活を続けると師に伝える。
  雨の中、ずぶ濡れで呆然としている安兵衛に、傘を差しかける者があった。堀部弥兵衛である。既に仕官の話は断っていたが、熱心に通う弥兵衛の気持ちに打たれ、婿養子となることを承諾する安兵衛。
  典膳と千春は祝言を上げ幸せな生活を送っていたが、典膳はお役目で京都に赴くことになった、翌年の雛祭りまで離れ離れに暮らさなければならない。千春は幼いころに作った夫婦雛の女雛を典膳に自分だと思って持っていてくれと渡す。雛祭りが近づき、典膳が京都から送ってくれた雛人形と自分が作った男雛相手に、独り芝居で典膳と語り合っていた千春だったが、真伝知心流の門弟5人に買収された下女が痺れ薬を入れた白酒を飲み倒れる。五人の門弟たちは、手引きした下女を斬り捨て、千春を攫い凌辱した。
   江戸への帰参の途中、出迎えた下男嘉次平(寺島雄作)から、下女が今わの際に下手人は真伝知心流の門弟五人だと告白したこと、更に、千春が典膳の留守中に、赤穂藩家臣堀部安兵衛と不義密通をしているという悪質な噂が流されていることを告げる。しかし、その疑いは、偶然安兵衛と出会ったことで、これも真伝知心流の門弟たちが流していることを知る。
   屋敷に帰った典膳の前に、憔悴しきった千春の姿がある。町人、農民であればともかく武士であれば例え強姦にせよ、他の男と関係をもった妻は斬り捨てなければならない。またそうしなければ武士としての面目が立たない。自害するよりも典膳に斬られるためにおめおめと生きておりましたと泣く千春に、お前には罪はない、どんなことがあっても死ぬなと言いながら、卑劣な男たちに切歯扼腕する典膳。
   千春を殺さず、不義密通の汚名を雪ぐために一計を案じる典膳。江戸帰参の祝宴を義父長尾権兵衛(清水元)ら身内の者を集め開く。宴の半ば、典膳が謡いを披露していると、障子を狐の影が奔り、典膳は抜刀し、障子越しに狐を刺す。権兵衛たちが、血の跡をつけると井戸の中に大狐の死骸がある。典膳は、一同に、妻の不義密通の噂の正体はこの大狐だった、しかし、生類憐みの令の手前、この話は各自の胸に仕舞っておくよう話をする。この大狐の正体は、典膳が嘉次平にももんじ屋に密かに用意させたものだったが、千春の身内の人間は、「さすが典膳、真伝知心流の腕前だ」と言い、不義密通の疑いは晴れた。
  その上で、「そちの罪ではないから咎めはせぬ。咎めはせぬが、そちの体をわしは赦すことが出来ないのだ。理屈で、頭で、赦していて、わしの体が赦そうとせぬのだ」と言って、千春との縁を切り、実家に帰す。千春を実家に帰した上で、お役御免を申し出て、卑劣な5人に復讐をしようと考えていたのだ。義父である権兵衛は、不義密通の疑いが晴れたのに離縁するとはと納得できない。しかし、夫婦お互い納得しているのだとしか言わない典膳に、千春の兄である竜之進は激高して、典膳の右手を斬り落とす。
  その日は、正に京からの勅使の江戸城登城の日であった。傷ついた典膳を運ぶ駕籠からの血を警備役から咎められたのを救ったのは千坂兵部だった。その日以来典膳の姿は江戸から消えた。しかし、城内松の廊下で、播磨赤穂藩主の浅野内匠頭長矩が吉良上野介義央に刃傷に及ぶという事件が起こり、典膳、安兵衛、千春の運命を更に動かすことになる。
  安兵衛は、大高源吾(島田竜三)友成造酒之助(千葉敏郎)神崎与五郎(舟木洋一)戸谷兵馬(伊沢一郎)らと仇討の計画を練っていた。吉良邸の前で見張っていると、茶道指南の女が出てきたというので、安兵衛が覗くと、千春であった。跡をつけると四方庵字編流茶道指南という看板の掛った庵で独り暮らしをしているようだ。 
  不審に思った安兵衛が数日後、典膳の屋敷を訪ねると荒れ果て無人となった屋敷に千春が佇んでいた。典膳との経緯を聞いて、何故か胸のときめきを感じてしまう安兵衛。
 ある日、千春は病の床にある千坂兵部に呼ばれ、傷ついた典膳を上杉藩の温泉に送って静養させていたという。上杉家家臣として吉良家に用心棒として送り込んだ浪人たちを指揮する役目を典膳に頼みたいので、千春に迎えに行ってほしい、浪人たちの中には斬って捨ててよい五人が含まれていると言う。あの五人への復讐を暗示しているのだ。
  江戸に戻った典膳たちを待っていたのは、千坂兵部の訃報だった。吉良家に入る手立てと、生活の糧を失ったという典膳に、私が生活費を出しますと千春が言う。典膳は、我々は離縁したのだ、そのために長尾家に右腕を差し出したのだと答え、嘉次平に今後この家には上げるなと命ずる。泣くしかない千春。典膳は、五文叩きの大道芸を始める。さっそく五人の仇の一人、三田四郎五郎(伊達三郎)が典膳の姿に気が付き、残りの4人大迫源内(志摩靖彦)壱岐練太郎(浜田雄史)友成造酒之助(千葉敏郎)戸谷兵馬(伊沢一郎)に告げる。
   四郎五郎と?は、片手を失っており笠を被っているので顔もわからないため跡をつける。誘い出しに成功した典膳は、卑劣なお前らに使う刀はないと竹棒で二人を倒すが、心配して後を追ってきた?の銃弾を足に受ける。偶然七面山に参詣の帰りの千春の駕籠が通りかかる。倒れていた典膳を駕籠に乗せ七面山千春院に運び応急処置をする。知合いの医師への手紙をしたため嘉次平に往診を頼みに行かせる。心配そうに付き添う千春は、典膳が自分の渡した女雛を持っていることに気がつく。自分の男雛を出し、「持っていて下さったのですね」「そなたに罪はないと言っていたではないか・・・。」
   二人だけのときはすぐに破られた。後をつけていた知心流門弟と助太刀の浪人たちが襲いかかる。右手を失い、左足が使えない典膳は、尋常な勝負をしろと言い、自分を広場に運ばせる。横たわったままの典膳であったが、襲いかかる浪人たちを斬り続ける。しかし、あと二人というところで気絶をする。走り寄ろうとした千春は撃たれてしまう。そこに、安兵衛が駆け付ける。安兵衛は残った浪人を倒すが、千春は安兵衛に「吉良さまの年忘れの茶会は明日の夜です。」と言い残して絶命する。最後に手を握り合って死んだ典膳と千春の姿に雪が降り積もる。
   その夜、堀部家では、安兵衛とお幸の祝言が行われた。
   翌日、吉良邸に向かう赤穂浪士の隊列の中に安兵衛の姿がある。吉良家の大きな門の前に並ぶ赤穂浪士。そして討ち入りが始まった・・・。

   高田馬場での安兵衛18人斬りも、片腕片足での典膳の殺陣も、勿論最高だ。更に勝新の舞と雷蔵の謡をさりげなく見せる。時代劇ってこれだよなあ、と前の晩に見たTBS時代劇ドラマを思い出し悲しくなるものだ。
  



神谷町の元会社で、打合せ。年内どこまで詰められるか。
学校で、講義は終わっているが、冬休みに入る前に、来年のイベントのことで詰めることは山のようにある筈が誰もいない。終業式の明日に順延だが(苦笑)。

2009年12月13日日曜日

今年の700本目、会社を辞めてから1100本目は京都モノ。

    京橋フィルムセンターで、生誕百年 映画女優 田中絹代
    57年宝塚映画稲垣浩監督『太夫(こったい)さんより 女体は哀しく(698)』
    終戦から三年経った初夏。京都島原の廓。電柱に、下京区西陣下屋敷島原町と住居表示がある。
    とある朝、「ほな、出掛けて来るで…。」島原遊廓の組合長の輪違家のご隠居善助(小沢栄太郎)が出て来ると、何やら街が騒がしい。人だかりの中に声を掛ける。「おくにさん、どうしたんや」「何でもガス会社がストライキやらで、あっちはエラい騒ぎでっせ」「ストライキかね、ワシが生きている間に見られるとは思わなかったで。ちょっと見て来たろ…」と走り出す善助。
    老舗の宝永楼から、玉袖太夫(乙羽信子)が客の光太郎(伊藤久哉)と出て来る。「じゃあ太夫のストライキ頑張りや。今日3時に会えへんか?丹波口駅の前で待っとるで。映画でも見にいこ」頷く玉袖。玉袖にあのお客さん、何か大丈夫なんかと仲居頭お初(浪江千栄子)。「ガス会社のストライキを指導している共産党の人です。」「共産党!?」と目を回すお初。
    中では、仲居達は、朝の支度に忙しい。みな、ガス会社のストライキの騒ぎが気になるようだ。お千代(植田裕子)「大変だっせ。日本にも革命が起こるかもしれまへん」「金持ちは、殺されるかもしれん」「金持ちなお倉さん危ないで…」お倉(千石規子)は腹巻きの中にコツコツ貯めた小金を人に貸しているのだ。当たりを伺うお倉。「そんなことは、天子さまがいてる限り変わる訳あらしません」とお初が言って、ようやく話は終わる。
    そこに歯を磨きながら、宝永楼の女将おえい(田中絹代)がやって来る。「うるさいな、どこぞで運動会でもやってるんか」「違いまっせ、ガス会社でストライキだっせ」「ウチとこは、ガス引いてないし、関係ないわ。それよりも、あっこ、水道の蛇口ちゃんと閉まってないで…。へっついの神さんに灯明上がってないで…。ほら時計も止まっとるで…」あれこれ目に付くおえい。「昨日玉袖はんのお客、共産党でしたんや」「えーっ、そんな人上げたらあかんやないか」「赤い旗持ってる訳でもないんで、分からしません」「玉袖の部屋、消毒しておいてや」
   満員の市電から、善助と光太郎がやっとのことで降りてくる。車掌は完全に外にしがみついている。光太郎は、バラック街の部屋に入る。「お前、玉袖に共産党やって言っとるんやろ。」と盗人仲間の安吉(田中春男)。「ストライキさせたらおもろいし、そのどさくさに、玉袖を足抜きさせようと思っとるんや。そうでもせんと玉袖は自分のもんにはならんさかい…。」
    バラックの外では、吐き気を訴える喜美子(淡路恵子)に、隣に住むおたま(中北千枝子)が「あんたでけたんや」「何が出来たん?」喜美子は、少し頭が足りないのだ。「やや子がでけたんや」「やや子が…。」
    バラックに入り安吉に「やや子がでけた」と告げる喜美子。びっくりする安吉に、「絶対産む」「堕ろせ」と言い争いに。お腹を蹴ろうとする安吉に、泣いて抵抗する。
宝永楼の太夫たちの部屋では、玉袖が、女郎たちにオルグしている。「ワタシら虫けらのように搾取されてるんや。」古株の美吉野(東郷晴子)は「こんなにお世話になってるのに…、恩を仇で返すんか…。」と意見するが、「恩も何も、当然の権利やで、深雪はんは体が弱いのに、三国人やらボケた年寄りとかの旦那を取らされて可哀想や」
   深雪(扇千景)は涙を見せ、「うちには、酒飲みのおかあはんと、弟や妹も沢山いてるから…。」九重(清川はやみ)矢車(環三千世)も乗せられて、おえいとお初の前に出る。玉袖が、要求書を出す。「一つ、今日までの借金を帳消しにすること、一つ、収入の八割は太夫に渡すこと、一つ、好きでない客を拒む権利を与えること…」途中まで読んだお初は、「阿呆らしくなったわ…」と言って要求書を破り、おえいの方に向き直り、「この件はあてに任せといておくれやす」と言って太夫に「部屋に言ってゆっくり話をしよやないか」と促す。みなが行った後に美吉野が一人残っている。「あんた何をしとるんや」「あては脱退します。」「今更何を言ってまんねんな、あんたみたいに長くいるんが、ちゃんと仕切らなあかんやないか、あんたもおいで」すごすごと、お初に連れられ、部屋に戻る美吉野。

太夫たち
   長屋で、夜鳴きうどん屋の
喜美子(淡路恵子)禿、和枝(岡田貴美子)照代(橘美津子)仲居お初(浪花千栄子)お千代(植田裕子)お倉(千石規子)おまつ(山田和子)
玉袖の情夫光太郎(伊藤久哉)喜美子の情夫安吉(田中春男)ちりめん問屋番頭佐七(平田昭彦)大番頭伝助(寺島雄作)うどん屋の五助(谷晃)かやく飯屋おくに(万代峯子)前宝永楼の薄雪太夫(宮脇よし)尾上(衣笠淳子)安吉の情婦おたま(中北千枝子)喜美子の子供の里親(汐風亮子)ジープ主人(山茶花究)ジープ抱妓べに子(宇野美子)チェリー(平原小夜美)まゆみ(森昭子)深雪の母お為(千代田綾子)幇間かん八(松葉家奴)

   脳膜炎で足りない娘だが男を信じ子供を愛する淡路恵子(いつもとは正反対の不細工振りだ!!)と、家族のため健気に働く病弱な太夫振りで、皆を騙す扇千景が素晴らしい。

  体験入学講師

   池袋新文芸坐で、名匠・清水宏 その感動の世界へ
   36年松竹大船清水宏監督『有りがたうさん(699)』
    伊豆天城街道の乗合バス。道路工事人夫、荷馬車、薪を背負った農夫、鶏でさえ追い越す時に「有りがたう」と声を掛ける運転手(上原謙)。だから彼を有りがたうさんと呼ぶ。
毎日、下田との間を一往復するのだ。茶屋、有りがたうさんが横になって休んでいる。母親(二葉かほる)と娘(築地まゆみ)二人連れに、茶屋のおかみさん(高松栄子)が声を掛ける。娘は東京に行く。村を出たことが無いので、下田までは見送りに行くと母親。「東京の奉公先は、大きなお屋敷かい。」返事がない。女中奉公と言うよりも、売られて行くのだろう。同情した女将は、峠を2つも越えるのだから、バスの中で食べろと二本の羊羹を差し出す。出発の3時になった。一番奥に座った母娘に「おかあさん、一番前が揺れないですよ」と声を掛けるが、偉そうな髭を生やした男(石山竜嗣)が座ってしまう。運転席の後ろには、黒衿の酌婦(桑野通子)が座る。酌婦仲間(和田登志子、雲井ツル子)が、もし景気が良さそうなら、誘っておくれと言う。バスが出発すると、居眠りをしていた老人(青野清)が、茶店の女将にバスに乗るんじゃなかったの?と言われ慌てて追い掛ける。

    37年松竹大船清水宏監督『風の中の子供(700)
   一学期の終業式帰りらしい小学生たちが掛けている。目の前に空の荷馬車がある。一年生の三平(爆弾小僧)は座って、二年生の金太郎(アメリカ小僧)と通信簿の話をしている。荷馬車引きに見つかって怒られ逃げ出す子供たち。三平を母親(吉川満子)が怒っている。「甲が一つもないじゃないの…。善太の通信簿を見なさい。甲ばっかりよ。金ちゃんと遊んでばかりいるからよ。勉強しなさい。」
    外から金太郎たちが、「三ちゃん遊ぼう!!」と声が聞こえる。飛び出そうとする三平に、「駄目!!勉強をしなさい!!」と怒る母。5年生の兄の善太(葉山正雄)と二人で机に向かっている。「善ちゃんは贔屓して貰って成績がいいのか」「違うよ」「いつも先生の後を追っかけてるじゃないか」「ロビンソンの続きを聞きたいからだい」「ロビンソンよりターザンの方が面白いよ。今度オリンピックにターザンが出場するんだよ」「するわけないよ。馬鹿馬鹿馬鹿!!」「馬鹿じゃないよ」「あんたたちはいつも喧嘩ばかりして!!善ちゃん、お父さんにお弁当を持って行っておくれ」三平「僕が行くよ」「あんたは勉強してなさい」「ちえっ」
一人残された三平は、桃太郎を大声で読み始める。母親の様子を伺い、気がつくといなくなっている。「あ~ああ~」とターザンを真似て雄叫びを上げると近所から続々と友達が駆け寄って来る。
   通信簿を見た父親(河村リョウ吉)は、「男の子たからいいじゃないか。外を元気に駆け回っているくらいがいいんだ。当人も成績なんか気にしていないんだし…」「あなたが、そうやって甘やかすからいけないんです。どんな大人になってしまうか…」
    翌日も、勉強を始めても直ぐに飽きて善太と兄弟喧嘩をする三平。今日も父親の弁当届けを善太に取られると、遊びに出掛けてしまう。今日は川遊びだ。褌姿で川に掛けて行く。金太郎は服を脱ぎ始めるが、褌がないので、嫌だと言う。からかってやるつもりで、みんなで追い掛けると、金太郎は、三平の家の前で、「三ちゃんが苛めるんです」と大声を出す。金太郎の家の前まで追い詰めると、「三ちゃんのお父さんは、悪いことをしているので、会社をクビになって、お巡りさんに連れて行かれるとウチのお父さんが言っていた!!」と言う。大好きなお父さんの悪口に三平はかっとして、棒で金太郎の頭を叩く。善太がやって来て「金ちゃん、乱暴はやめろ!!」と注意するが、訳を聞いて、善太も金太郎に詰め寄る。金太郎は家に逃げ込み、友達も皆帰ってしまった。
   善太と三平は、母親に金太郎が言っていた話を伝える。母親は勿論否定する。善太と三平が眠っている深夜、母親が、「金ちゃんがそう言うのは、佐山さんが家で話していると言うことよね。何か企んでいるんじゃないかしら」「株主たちは腹黒い策略を用意しているのかもしれないな」翌朝、子供たちに「お父さんは会社を立派な会社にしようとしているんだよ」と言った。

おじさん(坂武木おばさん(岡村文子)幸介(末松孝行)美代子(長船タヅコ)佐山(石山隆司)赤沢(長尾寛)曲馬団の正太(突貫小僧)親方(若林広雄)

2009年12月12日土曜日

中川信夫vs家城巳代治

   神保町シアターで、目力対決 田宮二郎と天知茂
    59年新東宝中川信夫監督『東海道四谷怪談(696)』 
   浄瑠璃、舞台上には、黒子が、蝋燭を灯した竿を揺らし、人魂を飛ばしている。

  備前岡山、夜道を歩いてくる二人の武士四谷左門(浅野進次郎)佐藤彦兵衛(芝田新)と提灯を掲げ先導する小者、直助(江見俊太郎)。「寒いのう、大寒を明けたというのに…。」行く手に手を付き頭を下げる浪人者(天知茂)。「ご息女おいわさまとの祝言のお願いにあがりました。」「民谷伊右衛門か…。いわとの祝言など、浪人風情のお前に認める訳がない。」左門だけでなく彦兵衛も、乞食侍、追い剥ぎ、野良猫、泥棒と酷い言いようだ。「武士にあまりの屈辱」といきり立つ伊右衛門に、「浪人風情が!!」と尚も罵る二人に思わず、抜刀し、切りかかる伊右衛門。恋しいおいわの父親左門、彦兵衛の二人を斬ってしまい呆然と立つ伊右衛門に直助が「あっしに任せてくれれば、悪いようにはしませんぜ」と囁く。
    四谷左門の位牌の前に、悲嘆にくれる、お岩(若杉嘉津子)とお袖(花沢典子)、美しい姉妹の姿がある。そこに、お袖の許婚で、彦兵衛の息子、佐藤与茂七(中村竜三郎)がやってくる。お岩「父上たちを殺したのは、顔に傷があることを直助が目撃したので、金藏破りに失敗した小沢宇三郎だと分かりました。伊右衛門さまも助太刀をして下さると仰って下さいました。与茂七さまもご一緒して下さいますか」「勿論父上とお袖さまの父上さまの仇です。」
直助を含めた五人での仇討ちの旅、半年が過ぎ、お岩は疲れ遅れがちである。直助は、伊右衛門に耳打ちする「そろそろ半年、早く与茂七をやってしまわないと面倒なことになりやすぜ
」「分かっておる」「裏切るつもりじゃないでしょうね。そんなことしたら、全部バラしますよ」曾我兄弟が仇討ち成就をきがん

「伊右衛門さま、お止め下さい。蛇は神様の使いと言いますし、私は巳年生まれです。」おいわが必死で止めても、蛇相手に刀を振り回す伊右衛門。
本所蛇山町の瑞祥寺

   やっぱり本当に傑作だ。キワモノでも何でもなく、日本映画史に残る作品。

   京橋フィルムセンターで、生誕百年 映画女優 田中絹代(2)
   57年独立映画家城巳代治監督『異母兄弟(697)』
   騎上の陸軍大尉鬼頭範太郎(三國連太郎)がやってくる。3人の歩兵が敬礼をし、満足そうに頷く鬼頭。大きな屋敷の前に馬を止める。下男の太田(島田屯)が慌てて駆け寄り手綱を取るが、殴りつけ「鞍擦れしとるではないか!!」と叱責をし、屋敷に入る範太郎。玄関前に、「お帰りなさいませ」と、婆や(飯田蝶子)が椅子を持って駆け寄り座らせ長靴を脱がせ、「相模屋さんが、新しい女中を連れてきています。」と告げる。玄関には、鬼頭の幼い二人の息子がやってきて、正座をし「お帰りなさいませ」と声を合わせお辞儀をする。
    客間には、相模屋(富田仲次郎)が利江(田中絹代)を連れてきていた。「この娘の父親は、大酒飲みの馬車引きで、わしら運送屋には鼻つまみ者だったが、先日亡くなった。この娘は苦労したから、よく働くし、辛抱強いので、先の女中みたいなことはないですよ…。ほれ挨拶をしろ」「利江でございます。」「うちは代々、藩の剣術指南役を勤め、百五十石を賜っていたので礼儀作法には厳しいのだ。」「では、家内に紹介しよう。」離れた和室に、鬼頭の妻のつた(豊島八重子)は寝付いていた。範太郎の惣領一郎司(浪江孝次)剛二郎(春日井宏往)を紹介する範太郎。
   ある雨の夜、範太郎は鬱々とした表情で、一人杯を傾けている。台所で婆やのマス「旦那さまは、奥様が?年も寝込んでいるのに、外に女ひとつお作りにならない、立派な方だ。」下男の太田は「まあ、したくても、奥様は連隊長のお嬢さんだで…」と笑う。奥から「酒!!」と声が掛かり、利江は酒を運ぶ。範太郎は、馬車引きの娘なら馬の扱い位出来るだろうと鞍擦れの手当てをするように命ずる。雨が降り続き湿気が多いせいか、妻の寝室から、咳が止まらない。範太郎の表情は一層曇る。利江は馬小屋で、馬相手に久し振りに明るい表情を見せていた。範太郎が現れる。「鞍擦れの手当ては済みました」無言で近寄る範太郎。突然利江を抱き締める。利江は驚き抵抗するが、大きく力の強い範太郎に、乾し草の上に投げ出され…。
    相模が来ている。「旦那さま、どうなさいますんで…。」範太郎が利江を睨む「お前が教えたんだな…。」「いや、もっと早く分かっていれば、堕ろせたんですが…」「どうしろと言うのだ」「こちらが伺いたいんです。もう少しすれば、お腹も目立って、噂になります…。」「…」「どっちかですよ。妻になさるか」「馬鹿を言え!!誰が馬車引きの娘と、」「では、宿下がりさせていただいて、どこかで産ませます…」「そうしてくれ」「その場合は、少しまとまったものを頂戴しないと…。」

年内最後の授業

   阿佐ヶ谷ラピュタで、昭和の銀幕に輝くヒロイン[第50弾]叶順子
   60年大映東京木村恵吾監督『痴人の愛(694)』
   熱海の旅館相模屋、波川(多々良純)村上(早川雄三)高田(本郷秀雄)橋本(河原侃二)佐藤(守田学)らが麻雀をしながら話している。「専務はご機嫌だな。」専務の吉岡(三国一朗)は、芸者相手に自慢の小唄を唸っている。「そりゃそうだ。テレビが売れて大儲け。俺たちは、こんな会でお茶を濁されて・・・。」

河合譲治(船越英二)ナオミ(叶順子)杉本忠雄(菅井一郎)看護婦の山田千恵子(岩崎加根子)女中おため(小笠原まり子)
熊谷正雄(田宮二郎)浜田裕太郎(川崎敬三)関口竜三(石井竜一)中村三郎(大川修)
由紀子(紺野ユカ)牧子(柏木優子)るみ子(三木裕子)正子(春川ますみ)
春子(江波杏子)綾子(美山かほる)芳江(愛川まゆみ)亜矢子(角梨枝子)
ぽん太(有明マスミ)芳丸(磯奈美枝)君江(村井千恵子)

  学校、年内最後の授業。

  神保町シアターで、目力対決 田宮二郎と天知茂
  68年大映東京今井正監督『不信のとき(695)』
 

2009年12月10日木曜日

博華で餃子とビールで忘年会

   池袋新文芸坐で、映画ファンが考えた2本立て
   55年東宝成瀬巳喜男監督『浮雲(691)』
   引揚船が着き、降りてくる引揚者の中に幸田ゆき子(高峰秀子)の姿がある。
ゆき子が、家を探しながら歩いている。一軒の家の前に立ち止まる。表札には富岡兼吾と書かれている。「ごめんください」と繰り返すと、老女(木村貞子)が現れる。「富岡さんのお宅ですか」と尋ねると、奥に引き込み、代わりに妻らしい女(中北千枝子)が顔を出した。「どちら様ですか」「幸田と申します。」不審そうに見る細君の邦子。「農林省から来ました」「農林省?」「農林省から使いで来ました。」「ああお使いで…」ようやく得心した様子で、夫を呼びに下がった。
   富岡(森雅之)が顔を出し、家の外に出て来た。歩き出し、空き地に入り、「元気かね。復員者には、内地は寒いだろう。」「電報は着いたの」「ああ、どうせ東京に出て来ると思った」「戻って、役所は辞めてどうしているの?」「官吏暮らしに嫌気がさしてね。木材の方を業者とやっている。、君はどこにいるの?」「鷺ノ宮の親類のウチに行ってみたら、まだ復員していなくて、荷物だけが着いていたわ。」「支度をしてくるので、どこか行こう。」
  大きな洋館、階段を白いサマードレスで降りてくるゆき子。ここは仏印のダラット、農林省の出張所、所長の牧田(村上冬樹)が声を掛ける。「幸田さん、こっちいらっしゃい。日本から道中長いので疲れたでしょう。こちらは3月にボルネオから赴任した富岡くん。こちらは、タイピストとして着任した…。」「幸田ゆき子です。」富岡は、全く愛想が悪かった。「こうみえても、富岡さんはきっちりしていて、三日に一度は妻に手紙を送る愛妻家です。」と加野事務官(金子信雄)。
  着替えをした富岡がやって来る。復興マーケットと看板が掛かる闇市を歩く二人。連れ込み旅館に入っていく富岡。少し置いて、入るゆき子。「内地も変わったわね。こんなに変わっているとは思わなかったわ」「敗戦したんたがら、何でも変わるさ。」「男はいいわ」「呑気だよ、女は」

  再び仏印、ゆき子の歓迎会らしい。「幸田くんは千葉かい?」「いいえ、東京じゃないの?千葉型かと思ったよ」「東京ですわ」「であれば、葛飾あたりかな」「富岡さんは毒舌家だから、気にしない方がいいですよ」と加野がフォローするが、「いくつ?」「いくつでもいいわ」「24、25かな」「私22です」「年齢を上に見ると貶していると言うのは間違いだよ。仏印のダラットまで来た幸田女史に乾杯しよう。」あまりの言い方に席を立つゆき子。加野が「気にして、行ってしまいましたよ」と咎めると、「若い女が、こんな所に来るのは、好かないねえ」と尚もゆき子に聞こえるように言う富岡。
  翌日、ゆき子が、富岡に声を掛ける「私は今日何をしたらいいでしょう」「所長は言って行かなかったの?」「何もおっしゃいませんでした」「加野は?」「あの方はまだ寝ていらっしゃいますわ、私は何をしたらいいんでしょう」「この先に安何王の墓があるんですが、見物でもしたらどうです」と

 安南人の女中(森啓子)伊庭杉夫(山形勲)ジョオ(ロイ・H・ジェームス)向井清吉(加東大介)おせい(岡田茉莉子)おしげ(中野俊子)アヤ(木匠マユリ)田村事務官(堤康久)登戸事務官(鉄一郎)のぶ(千石規子)

   56年日活川島雄三監督『洲崎パラダイス 赤信号(692)』

   夜の街、男たちを誘う女の嬌声が響いている。しんせいを買い、道を渡り、橋の欄干に佇んでいる男に渡す。二人の所持金は60円しか残っていない。
   蔦枝(新珠三千代)と義治(三橋達也)は、隅田川にかかる勝鬨橋の上で、行く宛もなく途方にくれていた。義治は、どうする?どこに行く?と蔦枝に聞くばかりで全く情けない。あまりの甲斐性のなさと優柔不断さに蔦枝は、そこに来たバスに飛び乗る。勿論義治は後を着いて来るだけだ。
   結局、洲崎弁天町の停留所で下車する蔦枝。慌ててついてきた義治は尋ねる「こんなところに降りてどうする?」「どうする、どうするって、何度同じことを聞くのよ。あんたこそ、ここがどんなところか知ってるでしょう。昼から何も食べていなかったわね」歓楽街を結ぶ橋の手前にある小料理屋千草に入る。ビールを頼む蔦枝。「私たち、この川の手前にいるのね。やっぱりここに来たわ・・・。」
  「女中さん入用」の貼り紙を見て、人の良さそうな女将お徳(轟夕起子)に無理矢理頼んで居着くのだ。義治は元倉庫の伝票付け、蔦枝は、どうも洲崎の遊郭にいたらしい。いきなり洲崎に時化込もうとしていたラジオ屋の落合(河津清三郎)に取り入る。
  翌日お徳は義治に、蕎麦屋だまされ屋の住み込みで出前持ちの仕事を紹介する。騙されてもともとと食べて貰う味自慢の蕎麦屋には、他に珍妙な出前持ち(小沢昭一)と看板娘玉子(芦川いずみ)がいる。義治は、全くやる気がなくぼーっとしている。お徳は、4年近く前に若い女郎と家出したきり帰って来ない夫を待ちながら2人の子供を育てている。亭主の戻りの願掛けで禁酒をし、弁天さまに毎日手を合わせている。
   洲崎に住んで3日目に、蔦枝は、義治に田舎に送るを蕎麦屋から前借り出来ないかと言いだす。勿論そんな金はない。義治は蕎麦屋のから、現金を盗む。千草に行ってみると、既に蔦枝は落合と鮨屋に出掛けたばかりだった。雨でずぶ濡れになりながら、義治は蔦枝の姿を探す。結局見つからず、店に戻った義治に、玉子はお金をそっと戻す。翌朝、蔦枝はきれいな着物を着て帰宅。数日後、落合が探してくれたアパートに引っ越していった。
   義治は、お徳から聞いた神田のラジオ屋の落合ということだけを頼りに、当てもなく探し歩く。神田のラジオ屋は何十軒、何百軒あるのだ。炎天下の中ようやく見つけた落合のスクーターを走って追いかけるが、気を失う。倒れた義治を介抱してくれたのは、道路工事の日雇い人夫たちだ。「あんた腹が減っているんだろう」とくれた半分のおにぎりを食べる義治。結局、義次は、洲崎に戻ってきた。お徳とたまの心からの説得で、義次は、蔦枝への思いを封印して、出前持ちの仕事に専念、表情にも明るさが戻った。戻ったといえば、お徳の夫がふらりと帰って来た。
   千草のまわりに平穏が戻ったが、長くは続かない。蔦枝がひょっこり洲崎に現れる。落合によって安定した生活を得たが、何か物足りなく、落合が仙台に仕事で出かけた義次に会いに来たのだ。この機会に別れろというお徳の説得は通じず、蕎麦屋に行く蔦枝。お茶を出す玉子に、何か自分にないものを感じて苛立つ蔦枝。15分ほど待って出て行ったため、義次とはすれ違いに。その晩、お徳の夫が、女に刺殺された。お徳は愕然として、崩れおちる。付き添って交番に行った義次は蔦枝と再会する。その翌日義次と蔦枝の姿は、洲崎から消えていた。栄代橋の上で思案にくれる二人の姿があった。「今度は、あんたが決めなさいよ。私がついて行くから。」「本当だな。」発車しようとしていたバスに駈け出す義治、後を追う蔦枝。

   京橋フィルムセンターで、生誕百年 映画女優 田中絹代(2)
   55年東京映画久松静児監督『渡り鳥いつ帰る(693)』

    隅田川、艀が行く。鳩の街とアーチが架かっている。昭和29年頃。赤線街の朝、泊まり客が帰り、見送る娼婦たち。花売りの老人(左卜全)が車を引いて来る。サロン藤村、女将のおしげ(田中絹代)が玄関を掃除している。花売り、如何でしょうと声を掛ける。店の花は替えたばかりだとおしげ、「女の子の部屋は?」「ウチの子たちは、まだ寝ているよ」「」

吉田伝吉(森繁久彌)おしげ(田中絹代)大石種子(桂木洋子)民江(久慈あさみ)栄子(淡路恵子)寺田(加藤春哉)佐藤由造(織田政雄)千代子(水戸光子)トヨ子(勝又恵子)街子(高峰秀子)組合長(深見泰三)ゴンドラの女主人おはま(月野道代)鈴代(岡田茉莉子)照子(二木てるみ)田部和市(富田仲次郎)まさ(浦辺粂子)松田(春日俊二)村井(太刀川洋一)武田(植村謙二郎)客の男(中村是好)(藤原釜足)

   いやあ、日本映画の最高だった時代の3本に唸る。いい台本、いい監督、いい役者、三拍子揃ったものを観ていると、正直、今のテレビドラマ見れない。

   元会社の同僚たちと、博華で餃子とビールで忘年会。

2009年12月9日水曜日

渋谷で餃子200円。

   天気も悪く、気分も上がらないので、午前中は本を読みながら二度寝(苦笑)。
   早めの昼を食べ、学校へ。年内の授業も、今日と明後日で自分は終わりだ。一年のイベント実習、出演交渉、完全に遅れている。学生に任せておいて大丈夫だろうか。かなりの不安がよぎる(笑)。まあ、しょうがないか(笑)
   夜は、N氏と飯、色々仕事の話をするつもりが、二人とも飲み食い過ぎて、ダウン。昼間自分が参加出来なかった打合せが盛り上がった話を聞くだけで、酔いは150%アップ。

2009年12月8日火曜日

瀬戸の花嫁。

   午前中は、赤坂のメンタルクリニック。

   京橋フィルムセンターで、生誕百年 映画女優 田中絹代(2)
   54年大映京都溝口健二監督『噂の女(688)』
    京都の島原遊廓、老舗の置屋(茶屋でもあるようだ)、井筒屋の前にタクシーが停まる。降りてきたのは、女将の馬渕初子(田中絹代)と一人娘の雪子(久我美子)。雪子は、東京の音楽学校でピアノの勉強に行っていたが、男に捨てられ自殺未遂を図ったのだ。初子は、入り口で動かない雪子に、「なんや、上がらんかいな。自分ちやないか」お咲(浪花千栄子)は「お嬢はん、お帰りやす。」初子はお春(小林加奈枝)に「的場せんせ呼んで来てんか。あてが東京から帰ったと必ず言うんやで」診療所の青年医師的場を呼びにやらせた。
   女郎たちの部屋、「お嬢はんモダンでキレイやなあ」「そりゃ、そうやろ、音楽学校行ってるゆうし、」相生大夫(阿井三千子)「あてらが働いたお金で行っとんのやで…。」
薄雲太夫(橘公子)「田舎に帰ってみたいなあ、麦が実って、雲雀が啼いて…。妹、どないしとるやろな…。」
    的場謙三(大谷友右衛門)がやって来る。「どうでした?」「それがな…。やっぱり自殺しかけたんやで…。男に失恋したんや。そやそや、これこれ、お土産どすね。」ネクタイピンを箱から出し、的場のネクタイに付ける初子。「いやあ、雪子のことで肩が凝って…。ここ揉んでくれんか…。あー気持ちい。あの子ちょっと見たってんか?でも、勘の鋭い子やし、あてらの事気いつけてや。」

    池袋新文芸坐で、映画ファンが考えた2本立て
    54年松竹大船木下恵介監督『二十四の瞳(689)』
    瀬戸内海で、淡路島に次いで二番目に大きな島小豆島。~石切場、お遍路など~十年ひと昔と言うけれど、この物語の始まりは、ふた昔も前の話です。ここでは、四年生までが岬の分教場、五年生になって初めて、片道5キロの道を歩いて本校に通うことになるのです。
    昭和3年4月4日。五年生たちが、村の鍛冶屋を歌いながら歩いている。突然、おなごせんせ~い!!と呼んで走り出す。小林先生(高橋とよ)は結婚のため退職するのだ。「岬ともお別れ、あなたたちともお別れ。でも、あなたたちは、今日から本校に行くからいいじゃないの」「新しいおなご先生はいい先生?」「いい先生よ。大石先生と言うとってもいい先生よ。」「大きいのかい?」「いや、この間、本校でお会いしたけれど、私の肩位よ。私は小林でも大きいでしょ。」「大石じゃなくて、小石先生だ。」「あんたたち、私の時みたいに泣かそうと思ったで駄目よ。騒いでいても山から降りてきた猿か鳥だと思いなさいって言ったから、さあ学校に遅れるから、急いで!!さようなら!!」「いい嫁さんになれよ~。」
   子供たちが走っていると、自転車に乗った大石久子(高峰秀子)がベルを鳴らし、おはよう~と声を掛け追い抜いて行く。「おなごのくせに自転車に乗っとる。」「ごっついモダンガールやな」「ちょっとちょっと洋服着てた。」洋装で、自転車に乗り「おはようございます」と声を掛け走り抜ける新しいおなご先生は、岬の住人たちを驚かしたようだ。
    大石の自転車に集まる子供たちに、大石が職員室の窓から「みんな、そんなに自転車が珍しいの?乗せてあげようか?」と声を掛けると蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。分教場の男先生(笠智衆)に、「あたしの家は、あの煙突の近くなんです。自転車で50分掛かるのに、あんなに近く見えるんですよ」と気安く声を掛けると、?は、始業式の支度をしないといかんと独り言を言って、併設の官舎に行き水を飲む。妻(浦辺粂子)に「ああ困った。どうも女子高等師範を出たバリバリの先生は、イモ女を出た先生とは勝手が違うわ。」と愚痴る。

   小学生時分に、学校推奨映画として見たんだろう。ひねくれたガキにこんな長い映画落ち着いて鑑賞しろと言われても無理と言うものだ。更に、第1回文部省推奨映画と言うだけで、強い拒否反応だ。しかし、ようやく、しみじみとこの映画の良さを味わうことができた。50を過ぎて、やっと大人になりかけた哀しい自分。木下恵介と高峰秀子の凄さは、やっと判り始めたんだなあ(苦笑)。

   60年近代映画協会新藤兼人監督『裸の島(690)』
   瀬戸内海にある島々。段々畑が覆い尽くしている。
   ……耕して天に至る。……乾いた土。……限られた土地…「裸の島」……
   凪の海を漕いでくる小舟。櫓を漕ぐのは男(殿山泰司)、女(乙羽信子)も乗っている。薄暗い。舟をモやって、二人共、天秤棒に桶を下げ、陸に上がる。田圃の用水路から水を汲み上げ、舟に戻る。遠くで鶏が啼いている。帰りは女が漕いでいる。日が昇ってくる。進む先には、小さな島がある。岩だらけで、切り立っている。小さな男の子が二人走り回っている。木を集め釜を炊き、木の葉を山羊に与え、家鴨に餌をやる。両親の舟が見えたので、食事の支度を大急ぎで始める。
   夫婦は、水桶を担いで陸に上がる。天秤棒が撓り肩に食い込む。足元が悪く急な斜面を一歩一歩確かめるように登って行く。一旦家の前に起き、女は水瓶に水を移し、家族は質素な食事を取る。食器を片付けをするのももどかしく、上の子供はランドセルを背負い、舟への斜面を駆け降りる。妻は、空の水桶を下げて舟に戻り、漕ぎ始める。大きな島の小学校に子供を送り、自分は再び水を汲みに行くのだ。その頃、すでに夫は、島の天辺にあるさつま芋畑に、大事そうに一杯一杯水を撒く。乾いた土に、水は瞬く間に吸い込まれていく。夫婦の毎日は、大きな島に水を汲みに行き、小さな島の斜面を重い天秤棒を担いで登り、水を撒く。ひたすらこの気が遠くなるような繰り返しだ。

  これも海外の映画祭で賞を取った名作だと言って、見せられても、ガキには分からない。しかし、言葉さえ必要ない毎日の繰り返しが生活であること、40年振りに見ると味わい深いんだなあ。

2009年12月7日月曜日

目力対決なら、勝新太郎。

   神保町シアターで、目力対決 田宮二郎と天知茂

   63年大映東京井上梅次監督『わたしを深く埋めて(683)』
   夜の銀座を走るタクシー。客席の男(田宮二郎)が、窓の外を嬉しそうに眺めるので、運転手(小山内淳)が「お客さんは、どちらからいらしたんですか?」「いや、東京だけど」「あまりに嬉しそうに窓の外をご覧になっているので」「九州に出張していたんだけど、あまりに寂しくて、半月の予定を一週間で帰ってきてしまったんだ。」「そういうもんですかね。わたしだったら、温泉にでも行けたら、一月でも二月でものんびりしていますがね。」「いや、僕は駄目なんだ。東京で何かあったかい?」「株が暴落して、首括ったり大変な騒ぎですよ。」
   タクシーの男がマンションの自分の部屋に戻って来る。何故かドアの鍵が開いている。不思議に思い中に入る。ソファーの陰から女の足が出る。裏を覗くと、黒いスリップ姿の女(浜田ゆう子)がブランデーを飲んでいる。
  「誰?おいおい、何だい、君は?」「あら、お帰りなさい、遅かったわね」「早かったんだけとね。何か間違えていないかい?」「中部さんでしょ?名前だけで、何をしている人かは知らないけど…。」「僕は弁護士だ。」「今夜は安心して、このミッチーに任せてよ。」訳知りな顔の女だが中部には全く心当たりはない。女は寝室へと誘う。いい香りだと言うと、彼女はディザスター災難と言う名の香水だと答えた。
キスをされたところにドアが開き、管理人が入ってきて失礼しましたと出て行った。ハンドバッグの中に、ここの住所を書いたメモが入っていたので、中部は、友人の芥川のたちの悪い悪戯だと思った。女は、ブランデーを飲もうとしきりと誘うが、中部は「僕はブランデーは嫌いだ」と答える。飲み過ぎたのか、女はベッドで鼾をかきながら眠ってしまう。中部はハイヤーを呼ぶ。するとドアのブザーが鳴る。外にはカメラマンを連れた男が立っていて、さあスキャンダラスな写真を撮りましょうと言う。とにかく帰ってくれと言って追い返し、やってきたハイヤーの運転手に寝てしまった女を適当に載せて、下ろしてくれと金を渡す。部屋に帰ると、突然男がやって来て、ミッチーをどこに隠した?と言う。部屋を探しまくり、ソファーに女の香水の残り香を見つけ、嘘を言ったら許さないぞと捨て台詞を吐いて帰って行く。何が何だかわからない騒ぎが落着した中部は、シャワーを浴び、睡眠薬を飲んで眠った。

    66年大映東京田中徳三監督『脂のしたたり(684)』
   兜町、八代線証券の調査役仲田浩(田宮二郎)が社に戻ってくると、課長の池内(小山内淳)が、「仲田くん、どこへ行っていた?」「繊維関係回っていました。」「君は調査役だから、外出してもらって構わんが、行き先は黒板に書いておいてくれたまえ。」何か機嫌が悪いのか嫌みを言う。若手社員の?が、「ちょっと情報があるんです。明昭工機を、難波証券が一万株づつ2回買いを出しているんです。」「農機具の地味な会社だよな。」
そこに、黒い服にサングラス姿の女(冨士真奈美)がやってくる。「あの女、仲田さんが化学株回してやった客じゃないですか」「あの女は、名和雪子と言う名前以外、住所も何も明かせないと言うんだよ。」仲田が相手をしようとすると、池内がすかさず「こちらにどうぞ」と案内する。「仲田さん。上客は課長が全部独り占めですね」と苦笑する?。しかし、名和雪子は、出来るだけ沢山明昭工機株を買いたいと言いながら、身分は明かせないとの一点張りだ。
仲田は、雪子の跡をつけ、高級外車に乗り込む直前に声を掛けるが、つれない返事だ。仲田は、直接、明昭工機の株式課に伊勢課長(春本泰男)を訪ねる。カマを賭ける仲田に、業績は相変わらず冴えないままだと言う。しかし、「買占めをしている妙なニュースがある」と言うと伊勢は仲田をお茶に誘った。しかし、世間話に終始する伊勢。来客がと言って席を外した伊勢は、蛇のような男(成田三樹夫)にペコペコ頭を下げている。
  仲田が会社に戻ると、後輩の?が難波が明昭30万株買ったという情報で2万7千株を押さえておいたと言う。仲田は、学生時代からの友人で資金運用を任されている野崎の口座で、3千株を追加して買ってくれと頼む。更に、明昭1万8千株の買いが入った。ニューパールホテルのロビーに株券を届けてくれとの依頼に、仲田は自ら向かった。そこには、蛇のような男がいた。仲田は名刺を渡し、情報を取ろうとしたが、全く相手にされない。しばらく張っていると、黒いドレスの女がやってきた。仲田はホテルのボーイに、「あそこの二人は泊り客か」と尋ねる。ボーイは断るが、金を渡すと「泊り客ではないが、男の方はよくこのロビーを使う」と答えた。また二人が来た時に連絡をくれれば、三千円を渡すと言って、札を握らせた。ホテルを出て、車に乗り込んだ男と女。「奥さん、まっすぐお屋敷にお帰りになりますか。」「桂、監視役も御苦労さまね。お前とは、昔どこかで会った気がするわ・・・。」
  桂が、クラブのマダム小倉敏子(久保菜穂子)に「今月も赤字だ。銀座で10年もやってきたというからマダムにしたのに、なんてザマだ。」「私だけのせいではありませんわ。」「男がいるそうだな。今あんたを世話しているのは、あんまり評判がいい男ではないらしい。」敏子が店に出ると、仲田と後輩の男がいる。ついているホステス(沖良美)が仲田を指し「こちらママの凄いファン」と言う。「めずらしいわね。」「すっかりママの貫録が着いたようだ。4年振りか・・・。」「何の用?」「風間に会わせてくれないか。一緒にいるんだろう。」「勝手に会えばいいじゃない。」「俺が会いたいと言っていたと伝えてくれ。情報屋風間銀介と仕事をしたいんだ。」と名刺を預ける。
  敏子が酔って帰ると、風間(鈴木瑞穂)が来ていた。「あらいらしてたの?めずらしいわね。」「酔っているな。」「(店の支配人の)桂って嫌なヤツ。」「君の店のオーナーは三国人だったな。」「李石尚という男だけど、全く顔を見せないの・・・。そういえば今日、仲田が来たわ。」「えっ、そうか君を束縛するつもりはない。」「いえ、そんなんじゃないわ、あなたと仕事をしたいって言っていたわ。」「今日は帰るから、ゆっくり休め。」「いえ、今日は泊って・・・。でないと私・・・。」
  とありホテルのレストランで、風間と仲田は再会する。二人は、明昭工機を狙っていることで一致し、手を組むことにする。仲田は金を手にするために、風間は情報屋としてのプライドを賭けて。風間は、李石尚や難波たちのグループは軍に関係した秘密組織に関わっていたらしい。大阪の滝沼一郎と言う男も仲間らしいので、探ってくれないかと仲田に頼む。
  羽田空港に李石尚(金子信雄)が帰国する。迎えの車を運転する桂三郎と話す李「今回の話は、香港の連中も大賛成だ。取引はうまくいった。ところで、株のことだが、難波と相談してやってくれ。」仲田は、大阪の滝沼不動産で、滝沼(守田学)に日東タイムスの名刺を出し、戦争中の秘密結社について取材をしていると告げた。「日東タイムスというと、営業部長は小松さんでしたね。」「ええ、そうです。」「ボロを出したな。この名刺は偽物だな。てめえは何者だ。」痛めつけられる仲田。

難波修(須賀不二男)

      61年大映京都田中徳三監督『悪名(685)』
      昭和初期、河内八尾中野村の農家の倅、朝吉(勝新太郎)は、隣村の高安から盗んできた軍鶏で闘鶏博打をやっていた。家に帰ると、父親に河内の百姓は軍鶏博打をして身を滅ぼす奴ばかりで、お前は勘当だと激怒され、高安まで返しに行く。妹の千代(中田康子)に念を押す朝吉。朝吉と幼馴染の辰吉(丸凡太)は若いエネルギーを持て余し、女が欲しいが、金などない。軍鶏で揉めた隣村高安の盆踊りに出掛ける。すると千代が誘ってくる。二人が深い仲になるのに時間はかからなかった。実は、千代は男の妹ではなく、妻だった。千代は、朝吉の子を妊娠したと告白し、噂になる前に駆け落ちしようと言う。
    二人は、有馬温泉に逃げ、千代は女中になった。間借りしている筆屋の主人(浅尾奥山)は、自分の妻もかって堂島の売れっ子芸者で、気の進まぬ旦那からの身請け話に、二人で駆け落ちをして、今ではこうなったが、まだ若いのだから故郷に戻ってやり直せと忠告する。お腹の子がなければという朝吉に、筆屋の妻(橘公子)は、とうに流れていると教えてくれた。そのことに納得いかない朝吉は、千代を置いて、有馬から大阪に戻る。
    しかし、大阪駅で、偶然お伊勢参りの帰りの幼なじみの辰吉らに再会する。彼らは、精進落としに松島の遊廓に遊びに行くところだと聞いて、同行する。店に上がり、琴糸(水谷良重)の哀しげな表情に惹かれる朝吉。福岡の炭坑町から売られてきたのだ。
   店では辰吉に付いた女郎白糸(若杉曜子)が、他の客と喧嘩になって大騒ぎが起こる。飛び出して行こうとする朝吉を止める琴糸。酒癖の悪い白糸は、仕舞いには地元のヤクザだと言う男の頭を瓶で殴りつけ気絶させる。翌朝、朝吉と琴糸の部屋に辰吉が現れ、昨夜の吉岡組の連中が待ち伏せしていると言う。朝吉は、全く動ぜず、吉岡組の連中の真ん中を歩いていく。吉岡組の貞吉(田宮二郎)が、モートルの貞と少しは知られた男だが、面子を潰されて黙っている訳にはいかないと襲いかかってくるが、朝吉は滅法強く、貞吉をのしてしまう。貞吉は、朝吉に惚れ込み兄貴分となってくれと言うが、ヤクザは嫌いだと相手にしない。そこに吉岡組の親分吉岡(山茶花究)がやって来て事務所に来てくれと言う。行く当てがなければ、客分として、この組にいてくれと言う。ヤクザは嫌いだと断っていたものの、貞吉が喧嘩の現場から逃げ出した弟分たちに折檻を加えるのを止めたことで、草鞋を脱ぐことに。
   ある日、女郎暮らしを嘆く琴糸に、一緒に逃げてやると約束をする。しかし、貞吉がそこに現れ、千日前の親分の出入りに加勢することになったので、助っ人に来てくれと言う。直ぐに着替えた朝吉は、吉岡組の前で、ダンブカーに乗り込む。すると朝吉を心配した琴糸が店を抜け出して来ていた。これでは足ぬけになってしまうが、吉岡の姉さん(倉田マユミ)に、とりあえず匿ってくれと預けて出入りに向かう朝吉。
    戻ってくると、遊廓を仕切る松嶋組に取り囲まれている。既に姉さんは、琴糸を隣家に逃がしていたが、松嶋組の兄貴分(須賀不二男)に凄まれて、吉岡はうちは全く関係ない、朝吉が戻り次第すぐに松嶋組に行かせると答える。吉岡のあまりの情けなさに、貞吉は盃を返して、朝吉と二人で、吉岡組を出る。琴糸は、隣家の母親が一緒に逃げた後だったが、隣家の娘、お絹(中村玉緒)とお照(藤原礼子)が気に入り、一緒に飯でも食わないかと誘う二人。今から、勤め先の千日前の肉屋“くいだおれ"に出なければ行けないと聞いて、四人で出かけることに。
  しかし、松嶋組の連中が待ち伏せしている。顔を貸せと言われ、一人空地についていく朝吉。ドスを手にしている兄貴分の男に、懐手で、銃を突き付ける朝吉。さすがにピストルにはビビる兄貴分。ピストルを捨てるので、ドスを捨て、手下を帰らせろと言う朝吉。迫力負けした男が言われた通りにすると、男のドスを拾い上げて脅す朝吉。勿論ピストルは嘘で、着物の下の人差し指という子供騙し、しかし、朝吉の度胸は、並の男には通じないのだ。
   くいだおれで、4人で食事するうちに、貞吉はお照が、朝吉はお絹に惚れ、宝塚温泉に。お絹は、一生の妻にするという一筆を入れさせて、惚れた男に女を捧げた。お絹とお照に一旦家に帰すが、なかなか戻ってこない。二人が戻ってきて、大坂では大変なことが起きているという。松嶋組は、吉岡を半死半生の目に合わせ、またせっかく逃げながら、琴糸は朝吉を心配して、大阪に様子を見に来て、松嶋組に捕まって、瀬戸内海の因島に売られてしまったと言う。朝吉は琴糸を助け出しに行くと決めたが、ある程度纏まった金を作っていかないといけないが、手持ちはない。
   思案の末、朝吉は、有馬温泉に行き、筆屋を訪ねる。まだ、千代はそこにいた。帰ってきてくれたんだといいながら、金を作りに来たと聞いて、私がなんとかしようと言う千代。千代は神戸で行われる大規模なボンの世話役をするので、自分が合図を出すので、儲ければよいと言うのだ。イカサマは嫌いな朝吉だったが、背に腹は代えられず、千代の言う通りにすることに。纏まった金を持って、朝吉と貞吉は、因島に乗り込んだ。思案の末、朝吉は、有馬温泉に行き、筆屋を訪ねる。まだ、千代はそこにいた。帰ってきてくれたんだといいながら、金を作りに来たと聞いて、私がなんとかしようと言う千代。千代は神戸で行われる大規模な花盆(?)の世話役をするので、自分が合図を出すので、儲ければよいと言うのだ。イカサマは嫌いな朝吉だったが、背に腹は代えられず、千代の言う通りにすることに。纏まった金を持って、朝吉と貞吉は、因島に乗り込んだ。
    土生の港に上がり、近くにいた男にいい旅館がないかと尋ねると、渡海屋がいいと言う。さっそく渡海屋の部屋に上がり、女中おしげ(阿井美千子)に声を掛ける。おしげは、身持ちも固く、遊ぶなら島内どこにもあるから行ってくればと言う。朝吉と貞吉は、遊廓を流して歩いた上、島からの脱出方法を考えるがよい知恵は浮かばない。宿に戻り、おしげの人柄を見込んで頭を下げ、女を助け出しに来たと告白する。遊廓を縄張りにするのはシルクハットの親分(永田靖)と呼ばれる男。島を脱出する船を頼める信頼おける人間として、おしげのおじである漁師(嵐三右ヱ門)を紹介してくれた。
   貞吉は、女郎屋の大和楼に、琴糸がいることを発見、琴糸には朝吉と二人で助けに乗り込んできたのだと伝え、琴糸を励ました。しかし、琴糸が、大和楼から外出出来るのは、明後日の縁日の日しかない。朝吉は、貞吉と同行していることを隠すため、島内のもう一人の実力者、造船所関係を牛耳る女親分の麻生イト(浪花千栄子)が経営する島内一の格式ある旅館麻生館に移った。
    縁日の日、貞吉と琴糸、朝吉とおしげの二組は歩き回り、途中おしげと琴糸は入れ替わった。裏道を抜け、漁師の家に出向くと、足を怪我している。代わりに漁師の妻が漕ぎ出したが、瀬戸内海途中で潮目が代わり、結局、朝吉らが乗った伝馬船は、因島に押し戻された。ままよと、琴糸を連れ朝吉は麻生館に戻る。シルクハットの親分と子分たちが、麻生館に乗り込んできた。多勢に無勢、取り囲まれる朝吉たち。しかし、朝吉は懐からピストルを出して、親分に迫る。 そこに麻生イトが現れ、シルクハットの親分に、ここがワイの宿と知ってはったら、あんまりな振る舞いやおへんかと迫り、この場は私に預からせてくれと言う。イトの迫力にシルクハットの親分も頷くしかない。
    手打ちの式を行い、琴糸はイトが預かることになった。シルクハットの親分たちが去った後、イトは、ワシは二千人から子分がいるさかい、シルクハットの何ちゃらみたいには甘うあらしまへんでと言う。このまま琴糸と別れるのはと言う朝吉に、イトは、一週間だけあんさんにやるさかい必ず戻してくるんやでと念を押した。
    大阪に琴糸を連れて戻る朝吉。くいだおれの店に行く。そこには、勿論お絹とお照がいる。無事で帰ってきてと涙ぐむお照とお絹。お絹は、琴糸に朝吉の妻ですと挨拶をする。切ない顔になる琴糸。お照と貞吉は、久しぶりの再会にすぐ消えた。琴糸は、今から一人で因島のイトの下に戻ると言う。朝吉は、あんな嫌な所に戻ることはないと言うが、お絹と別れることは出来ない。とりあえず、朝吉、お絹、琴糸と言う三人で京都見物に出掛ける。嵐山で、朝吉は、琴糸に東京へ行って幸せに暮らせと言い、独りで因島のイトの下に戻る。
    イトは、二人で逃げて戻らぬように因果を含めたつもりが、のこのこ一人で戻ってきた朝吉に、女だと思って舐めているのかと怒りに震える。どうにでもしてくれと言う朝吉を連れて海岸に行き、持っていたステッキで、朝吉を打ち据える。意地でも、その苦痛に耐える朝吉。容赦なく打ち続けながら、イトはあんたは大きな人間になって名を上げるだろうと言って、このステッキ付いてどこでも行けと子分たちを引き連れて帰っていく。朝吉は、ステッキをへし折り、なんぼ名前を上げる言うても、所詮悪名や。なんも嬉しくはないわい。とにかく琴糸は自由になったんや。ワイは勝ったんや。砂浜で横になり、空を見上げる朝吉。

    61年大映京都田中徳三監督『続悪名(686)』
    満州事変の頃。河内地元の若者が相撲をしている。そこに手拭いをほっかぶりした男が飛び入りする。河内の若者たちは次々に倒される。辰吉(丸凡太)が「お前、頭突きが一番強い朝ヤンを知ってるか。」男は笑い出し、手拭いを取ると朝吉(勝新太郎)だ。みんな、似てると思ったと笑い、今までどうしていたんだと尋ねる。因島にと話し出して、長くなるからと言う朝吉の後ろに、みなお絹(中村玉緒)の姿を見つけて興味津々だ。
朝吉は、お絹を連れ、実家に戻る。母親と姉に紹介したが、みな頑固ものの父親のことを心配する。父親と兄が帰って来たので、お絹を二階に隠す。意外にも、父親は朝吉が、各地で疲弊する農村を見てきたと言うと上機嫌だった。朝吉が花嫁候補を連れて来たと聞いても、まずは会わせろと言い、お絹が従順なよそ行きの挨拶をしたので、ご機嫌で、「直ぐに野良着を持って来い!明日から野良仕事だ。祝言は手に豆を作ってからだ!」二階で、朝吉は、お絹に、「お前がうまいこと言いすぎるからいかんのや。」
  貞がや河内にやってくる。農夫に「おい!おっさん~~村上朝吉っつぁんとこ知っとるけぇ」と声を掛ける。「朝吉?ああ、あそこじゃ」と事もなげに言う農夫に、「おい、おっさん、ワレ先見てものいえよ。親兄弟ならともかく、近所の百姓ごときに、朝吉などと言われるような人やおへんのや。」「お前は誰じゃ!!」「朝吉親分の弟分でモートルの貞ちゅうケチな野郎でござんす。」と仁義を切ると、農夫は激怒し、「わしが、朝吉の親父じゃ!!朝吉!!しょうもない、やくざになんぞなりくさって!!この嫁連れて、出て行きさらせ!!」

  銀座シネパトスで、魅惑の女優列伝Part1ひし美ゆり子
   73年東映京都石井輝男監督『ポルノ時代劇・亡八武士道(687)』
   橋の上で、鑓を構えた4人の武士に囲まれた白い着流しの浪人(丹波哲郎)。鑓をよけ、次々と斬り捨てる。無数の捕り方が御用提灯を掲げて殺到する。しかし、男の相手ではない。「斬るのも飽きた」と呟く男。川に飛び込む。流れ沈みながら、「生きるも地獄、死ぬも地獄か…。」
    男を暖めている二人の裸女に、袢纏姿の男が尋ねる。「どうだ?」股間を覗きこみ「もう少しで、天狗です。」浪人は気がつく。「死ねなかったようだな。」枕元に立つ男(伊吹吾郎)が声を掛ける。「あんさんは、悪名高き兇状持ちの人斬り明日死能(あしたしのう)でしょう。あっしは、吉原遊郭の亡八、白首の袈裟蔵と申しやす。吉原はあんたを必要としているもんでしてね。大門四郎兵衛さまのお指図だ。」
   亡八とは、仁、義、礼、智、忠、信、孝、悌、という人の八つの徳目を無くした者を言い、転じて遊廓の経営者を言った。その亡八者の仲間に入らねえか、但し試験に通ってからだと、袈裟蔵は言う。それもいいだろうと言う明日死能。
   用心棒として、玉出しの姫次郎(久野四郎)について行くことになる。姫次郎が長屋を歩くと、おかみたちは汚い物を見るように毛嫌いをし物を投げる。姫次郎は「亡八は、感情も無くした者。怒っちゃいけねえんで。ケケケケ。」と言い、磊落した浪人の娘おしの(ひし美ゆり子)を訪ね、「死んだ親父の残した借金、今日こそお前の体で、払って貰うぞ」と脅す。おしのは武家の娘らしく、辱めを受けるなら自害すると抗い、ハサミを喉に当てたが、明日死能は小柄を投げおしのの体の自由を奪い、着ていた着物を真っ二つに斬り、おしのを全裸にした。姫次郎は「ケケケケ餅肌だぜ」と、おしのの体を弄り、下を噛み切ろうとしたので口輪を咬ませ、吉原に連れ帰った。
   おしのは全裸のまま手足を縛られ、2日間男たちに抱かれ続ける達磨抱かせをされると言う。最初の相手は客に競りをさせるのだ。好色そうな僧侶、金持ちなどが舌なめずりをしながら値を釣り上げたが、最後に明日死能が、今日の日当だと渡された50両をおしのの体に投げつけた。しかし、明日死能は、酒を飲み続け、おしのを抱こうとはしなかった。
   実はしのは、女亡八のお紋と言う女だった。明日死能は、試されたのだ。試験には不合格だと袈裟蔵。お紋の着物を持ってきた下女が、「死ぬも地獄、生きるも地獄か知らないが、キザだね。一晩中、聞いているのがきつかったよ」と哄笑する。明日死能が、表情も変えずに居合いを使い、女の耳は吹っ飛んだ。苦痛に呻き騒ぐ女。
     吉原の大門を出て行ってくれと袈裟蔵、大門の外には捕り方で埋め尽くされている。平気で、その中に入って行く明日死能。そこに、吉原総名主大門四郎兵衛(遠藤辰雄)が現れ「お役人衆、手を引いて貰いましょう」同心が「いかに、吉原総名主と言えども、その男は凶状持ち。咎め立てをすると…。」「いや、お奉行様に、いやお奉行様よりも上、ご老中にお尋ね下され。」「今日のところは、四郎兵衛に免じて引かせて貰うが、次はないぞ!!」
四郎兵衛は、明日死郎を座敷に案内する。「試験には失敗したかもしれんが、今日から、お主はワシの客分だ。」
    四郎兵衛は、葵の鈴を取り出し、かって、大納言が江戸城を築いた際、荒くれ者の人足たちが、手をつけられなくなった時に、東海林仁右衛門が女郎200人を連れて参上、それにより騒ぎが収まり、大納言は幕府公認の吉原遊廓を認め、多額の献上金を納めて来た。しかし、時代は移り、ご政道は乱れ、江戸中、岡場所は言うに及ばず、湯女や、飯盛り女、夜鷹まで私娼がはびこっている。大名、旗本、御家人に至るまで、その上がりにたかっている。それに関わる侍たちを成敗してほしいのだと言い、2代目首切り仁左衛門が使ったと言う血塗られ大刀、鬼包丁を預けた。明日死能は依頼を受けるが、袈裟蔵は亡八でない死能に不快感を抱き、拳銃を取り出し、一発触発の事態になる。

片目の勘次(佐藤京一)おけらの金六(原田君事)(福本清三)多門伝八郎(笹木俊志)加田三次郎(深江章喜)お陸(相川圭子)お甲(池島ルリ子)お時(一の瀬レナ)町奉行同心(野口貴史)黒鍬者(川谷拓三)黒鍬の小角(内田良平)夜鳴きそば屋台の老人(浪花五郎)荷馬車の男(畑中伶一)やくざの親分(鈴木康弘)浪人(高並功)(宮城幸生)女郎(小林千枝、北川マキ)島田秀雄(男)小島慶四郎 (湯屋の客侍)田貴リエ(湯女)鈴木康弘(やくざの親分)# 土橋勇(浪人)