池袋新文芸坐で、名匠清水宏 その感動の世界へ。
33年松竹蒲田清水宏監督『泣き濡れた春の女よ(705)』
青函連絡船、函館に向かう飛天丸に、貨物車が入って行く。乗客デッキに、スコップを担いだ男たちが上がっていく。看板では、人足頭のぐず安(大山健二)が乗り込む男たちの人数を確認している。その後に女たちが乗り込んで来る。二等船室に、男たちがいる。ぐず安が声を掛ける。「整列!!番号!!」「1」「2」「3」…「18」。ぐず安が首を傾げる。「一人足りないなあ」
汽笛を鳴らし出港する飛天丸。デッキには、五人の女たちがいる。デッキに落ちている吸い殻を拾おうとする健二(大日方伝)。しかし、女ものの下駄が踏みつける。顔を上げると女(岡田嘉子)が煙草を差し出し「一本どう?」一本抜く健二。「ありがとうぐらい言ったらどうなの?」隣に座って大きな人形を抱いているいる少女(市村美津子)がキャラメルの箱を差し出す。「どうもありがとう。お母さんは?」顔で示したのは先ほどの女だ。「おとうちゃんは?」俯く少女。「気にしないでくれ」「おじちゃん遊んでくれない?」「おじちゃんは、お話が下手なんだ。」「じゃあ、あたしが話して上げる。むかしむかし、あるところに…」そこに、ぐず安が探しに来て、下まで来いと言う。健二は、お礼にこれをやろうと腹巻きから出した物を少女に渡す。「お姉ちゃん、これなあに?」「みっちゃん、メダルよ。」
再び「整列!!番号!!」と号令を掛けるぐず安。ようやく人数が揃い満足したような顔で、「気をつけ!!休め!!今一度、炭坑の抗夫たちの心得を説明しておく。酒と女は慎むように!博打はいかん!上官の命令には絶対服従だ。では解散!!」健二は、弟分の忠公(小倉繁)に「上官って、あいつは兵隊上がりか?」「万年軍曹と言ったところでしょう」ぐず安が睨んでいるのに気がついて、二人はデッキに上がる。先ほどの母お浜とおみつたちはまだそこにいた。
おみつ「おかあさん、おふじちゃんまた泣いているわ」お浜「ねえ、お藤さん、今更泣いたってしょうかないじゃない」お藤(千早晶子)「諦めているわ。でも涙が出て仕方がないんですもの…。」お秋「ほっときなさいよ。どうせ泣いて涙も出なくなるんだから…。あ~あ、あたしも泣いた時代に戻りたいわ…。」
忠公がお浜に声を掛ける。「姉さんどっかで会ったんじゃないですか?」「どうせ渡り鳥だもの、どっかで会ったこともあると思うよ。♪流れ、流れて、落ち行く先は、雪の北国港町~♪」忠公「いい歌ですねえ。教えて貰えませんか」「いいわよ」「捨てた」手帳を出し、「捨てた」「この身の」「この身の」「落ち行く先は」「落ち行く先は…」
馬橇で、雪の平原を進む抗夫たち。
炭坑での仕事をしている健二と忠公に上官が声を掛ける。「今晩あたり、女のいる店に飲みに行かないか?」「酒と女は慎まないといけないんじゃ」「ある店で、今度お前さんを連れてきてくれと頼まれたんだ。」「兄貴を?」「たまには、白粉の匂いを嗅ぐのもいいもんだろう」
馬橇を急がす健二。後ろに上官と忠公が乗っているが、ふとした拍子に二人揃って振り落とされる。慌てて雪の中、馬橇を追い掛ける二人。
カフェーに入る三人。カフェーに入ると、女たちが化粧をしている。女給たちは、連絡船で一緒だった女たちだ。上官は、お浜に気があり通っていたようだ。「なーる程、娑婆の白粉の匂いは悪かないですねえ。」と忠公。奥でお藤が、酔客に、「そろそろ、いい返事を聞かせてくれよ。」と絡まれている。上官に「忠公、売り出すいい機会だぜ」と唆された忠公は、間に入り「おいおいお兄さん」と声を掛けるが、「おいおい、お前の出る幕じゃねえぜ」と頬を打たれ、頭を下げて、すごすご引き下がる。帰ってきた忠公に、上官は「健二行こうか」と言うと、健二は男に「ここでは埃が立つから、外に出よう」と連れ出す。女給たちが、不安そうに窓から外を見ると、男は呆気なくひっくり返っていて、ペコペコ頭を下げ、走って逃げる。
戻ってきた健二にお浜が「あっぱれなお手並み。気に入ったわ」と声をかけるが、健二はお藤のもとに行き「お前さんだね、連絡船の甲板で泣いていたのは。言葉の訛からすると、国は関西だね。どうしてこんなところに流れて来たんだい?」「お互い、そんなこと聞くもんじゃないわ。」「煙草を吸えるようになったんだな」「ええ、ここに来て随分と経った気がするわ。お酒も飲めるようになったのよ」
それを聞くと健二は、カウンターに行き、お浜に「あちらものの方がいいな。」とウィスキーのボトルとグラスを二つ貰う。それを見て上官は忠公に「あいつ、見かけによらない早いことやるな・・・。」お藤「私そんな強いお酒は、酔っ払ってしまうわ」「酔いつぶれたら、俺が介抱してやるよ」続けて飲む健二に 、お藤は「そんなに飲んだら酔っ払ってさまうわ」「酔いつぶれたら、お前さんに介抱して貰うさ。」「あたしが介抱してあげるわよ」と健二とお藤の間に割って入るお浜。
健二がお藤に「上官に言付けたのはお前さんかい?」と声を掛けると、「あたしではないわ」とお藤。「連れてきてと言ったのはあたしかもしれなくてよ」とお浜が寄って来る。その時、二階から「私よ」と声がする。見ると、おみつだった。「おじちゃんに話の続きを聞かせてあげるって約束したでしょ・・・」お浜が、「降りて来ちゃだめと言ったでしょう」と言い、健二には「あたしの部屋に来ない。」「部屋に行くと面白いことあるの?」「お話をしてあげるわ」モテモテの健二に、愉快ではない上官。健二が乗ってこないので、「今日は、私が奢るわ!!お明!お鶴!お静!お酒をどんどん持ってきて頂戴!!」お鶴(雲井鶴子)お静(兵藤靜枝)お明(白石明子)お龍(富士龍子)お秋(村瀬幸子)ら女たちは嬌声を上げ、店の中は一気に盛り上がる。一方おみつは、独り三階の屋根裏部屋に上がり、寝間着に着替え、隣に人形を抜かせて布団に入る。
健二が起きると、もう点呼が始まっている。再び寝たふりをする。健二と忠公がいないのに気がついた上官は、宿舎に戻ってきて寝ている二人を見つけ「起きねえか!!!」と怒鳴りつける。飛び起きた健二と忠公は「18!」「19!」。「ゆうべ女に奢ってもらったと思っていたら、大間違いだからな!!」と言い26円の領収書を見せる上官。二人頭を下げる。調子に乗って忠公「白粉の香りも悪くないですね」とにやついて、「馬鹿野郎!!」とどやしつけられる。
カフェーの前で、お藤がおみつに「みっちゃんは、あのおじちゃんは好き?」頷いたおみつが「お姉ちゃんは?」と聞くと、お藤は微笑む。お浜が女給たちの部屋の前を通ると女たちが盛り上がっている。「お藤ちゃんも、海千山千の悪い人を相手にしたわね。」「今晩の取り組みは見ものね。」「若い力士のテッポウも勢いがあるわよ。」「四つ相撲になるわ。」うふふ皆大笑いをしているのをドアの外で聞いて眉をしかめるお浜。
お藤は実家からの手紙を読んで暗い表情だ。お浜の部屋に行き、「お姉さん。国のお母さん、また具合が悪いと報せが来たんです。少し貸して貰えませんか。」「あなた、この間そういって借りたばかりでしょ。そんなに貸せないわ。」肩を落として部屋に戻ったお藤に「南はシンガポール、北は満州まで渡り歩いて、大龍お浜とまで呼ばれたのよ。あんた、お浜さんに睨まれないようにしないと駄目よ。」「わたし、お浜さんに睨まれるようなことはしていないわ。わたし、それどころじゃないんですもの・・・」
おみつがお浜と話している。「おかあさん、あたいのこと好き?あのおじちゃん来るかしら?」「みっちゃん、あのおじちゃんのこと好き?」頷いておみつ「おかあさんは、おじちゃんのこと好き?」お浜微笑むと「さっき、お藤ねえちゃんに、同じことをいったら、やっぱり笑っていたわ。」お浜「子供はここに来るんじゃないよ!!」と自分の部屋に上がっているようきつく言う。
その夜、健二がやってきた。しかし、お藤は国の母親のことが気が気でなく上の空である。「この前、また来てねと言っていたのは、お世辞か、商売の口癖だったのか。」と怒り「忠公!おりゃあ帰るわ」お藤が追ってきて「私がまた来てねと言ったのは、お世辞でも、商売の口癖でもないわ。」「何か心配ごとでもあるのか?」そこに上官がやってきて「おい健二!俺を出し抜くなよ!」と言う。お藤の話を聞いて、健二は上官のもとに行き、「上官!今月分の給金を貸してください!」「この間、今月分は前借りしただろ!」「では、来月分を貸してください!」上官は金を渡してやる。健二はお藤のところに行き「これを送ってやんな」と全部渡す。「それじゃあんまり・・・。」「金を儲けるつもりなら、こんな仕事をやっていないぜ。」嬉し涙を浮かべるお藤。「じゃあ、お礼にシャツを洗ってあげるわ。」忠公がうらやましそうに「俺のシャツも洗ってくれ」と脱ぎ始め、寒くてくしゃみをする。
翌日、嬉しそうに二枚のシャツを干しているお藤。その姿を眺めながら、頬杖をつくお浜。夕方、お藤が物干しをみると、健二のシャツがなくなっている。不思議に思いながら、同輩に「アイロンを貸して」と声をかけると「お浜さんが使っていたわ」という。お藤がお浜の部屋に行くと、お浜は、アイロンが掛かった健二のシャツの繕いものをしている。針仕事が苦手なお藤は何も言えない。
その夜、船員の工藤(石山龍児)がやってきてお藤と話している。お浜が声をかける「工藤さんごゆっくり。」
お藤(千早晶子)おみつ(市村美津子)
新宿ジュンク堂カフェに、美人映画プロデューサーから相談があると言われていたのでいそいそと出かける。珍しくはないが、珍しく直球の音楽青春映画。1時間のつもりが、2時間半話し、見ようと思っていた大雷蔵祭を断念。
博華で、餃子とビール。
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