2009年12月15日火曜日

街は忘年会

   池袋新文芸坐で、名匠清水宏
   40年松竹大船清水宏監督『信子(702)』
  大きな荷物を抱えた小宮山信子(高峰三枝子)が、家を探しながら歩いている。一軒の家の玄関に掃除をしている娘チャー子(三谷幸子)がいる。信子が娘に声をかける「尾張町の服部さんは違ったわ。18番地の服部さんってどこかしら。」「番地はここですけど・・・。変ねえ。お母さん、18番地の服部さんって知っている?」「うちじゃないの。」「えっ?うちは巴屋でしょう。」「巴屋は屋号で、服部佳子ってあたしだよ!!!」「うちだったんです」「あらまあ」「じゃあ、お信ちゃんかい?大きくなったねえ。お上がりよ。電報でも寄こせば迎えにいったのに。」
   芸者見習いのチャー子は2階に上がり、眠っていた二人の芸者駒勇(草香田鶴子)君香(東山光子)に声を掛ける。「姉さん、姉さん来たわよ。来たわよ。ねえ起きて。」「手紙が来たの?」「手紙じゃないわ。」「ああ、信子さんが来たのね。どういう人?」「じゃけん、じゃけん。」「何言っているの?」「洋装でかっこいいわ。」「とにかくモダンな人なのね。」「そうよ、田舎モダン。」
  下の居間では、お佳(飯田蝶子)と信子が話している。「大きくなったねえ。お信ちゃんが、女学校の先生になるんだもの。あたしがお婆ちゃんになる訳だね。」「お婆ちゃんだなんて・・・。そうやって白髪を染めていれば、40代に見えるですけ。」「あたしゃ、まだ40代だよ。白髪染めもしていないし。」「お父さんの従兄だっていうから、もっと年を取っていると思っていましたたい。」
  女学校の職員室で、校長の関口(岡村文子)の前に立つ信子。「では、お給料は32円差し上げます。」「・・・」「ご不満ですか。」「結構でございますヶ。」「そこから、校友会費1円、積立金1円を引いて、30円になります。」「校友会費と積立金を引いて、30円ですか・・・。」「それから・・」「まだ、何か引かれるのでごわすか。」「いえ、良家の子女をお預かりして、女は女らしくというのが、私たちの指導方針です。」「結構ですヶ。」「最近の人は、君、僕と言ったりしますが、持ってのほかです。あなたのお国の女学生はなんと言いますか?」「あたしの国では、ワシ、アンタといいますヶ。」「ワシも、アンタもいけません。それに、あなたの〝ケ"がいけません。終わりにつける〝ケ"がいけません。」「承知しましたケ。あっ、承知いたしました。」「あなたは、国語を受け持っていただく予定でしたが、体操を受け持ってもらいます。ご不満ですか?」「結構でございますヶ。あっ!結構でございます。」「では、保坂先生、小宮山さんを先生方にご紹介をお願いいたします。」

  教頭の保坂(森川まさみ)が次々に紹介していく。吉岡ふさ子先生(高松栄子)、手塚保子先生(忍節子)、山口花子先生(青木しのぶ)・・・。「よろしくお願いしますヶ。あっ!よろしくお願いいたします。」を繰り返す。山口先生は咳をし、「喘息なものですから。」信子「私の国では、阿蘇の蝦蟇を生け捕りにして、黒砂糖で煮詰めて、適当に湯呑に入れて薄めて、お茶代わりに飲むといいと聞きますヶ」山口熱心にメモを取り始める。「蝦蟇を生け捕りにして・・・。」
  保坂が「では、教室を案内しますわ。」「よろしくお願いしますヶ。あっ、よろしくお願いします。」廊下で出会った教師を紹介する。「こちら、岩崎三千子先生(大塚君代)、渡辺真知子先生(三笠朱実)梅沢豪子先生(出雲八重子)秋山先生(雲井ツル子)」「よろしくお願いしますヶ。あっ!よろしくお願いします。」
  音楽室では、松原操(松原操・特別出演)がピアノを弾いている。「こちら松原操先生。」「よろしくお願いします。」「あたしは、国語を受け持つ予定だったんですが、体操を受け持つことになって、少し戸惑っているですヶ。じゃっどん、がんばりますヶ。」「私が、体操を受け持って、小宮山さんには唱歌を受け持っていただこうかしら。うふふ。」「あはは。」
  さっそく、体操の時間になった。体操をキビキビと指揮する信子。「集合!こん可笑しな運動をやるっちゅう訳ば、人間は唯一二足歩行をするという可笑しな動物ちゅうこんに原因しておりますけん・・・」九州弁丸出しの信子の話に笑いだす生徒たち。
  
細川頼子(三浦光子)岩崎松原(松原操)梅沢()
細川源十郎(奈良真養)細川夫人(吉川満子)児玉初枝(春日英子)近藤ミチ子(なぎさ陽子)泥棒(日守新一)

    41年松竹大船清水宏監督『暁の合唱(703)』
    秋田女子高等専門学校、三日間の入学試験の2日目、教師たちが、国語の採点をしている。一人の教師が傑作を発見しましたぞと言い「春の海、ひねもすのたりのたりかな。の意味を書けに、春の海にひねもすと言う魚がのたりのたりと泳いでいる。房州でよく採れ、皮はハンドバッグにされる。いや傑作だ(笑)」
   「こちらもいい作文です。本当に傑作だ・・・・。」子供の時の怪我がもとで、一本の指が不自由になっていると言う。今までの試験は上手く行っているものの、決して裕福ではない親のことや、本来この学校の身体検査では、彼女の障害はいくら学科試験がよくても不合格になると聞いたことなどを考えると、果たして受験したことがいいことだったのかと悩んでいると、現在の率直な気持ちを、ウイットに富んだ表現で綴られた作文だ。
   この作文を書いたのは齋村朋子(木暮実千代)。あと1日残した試験の帰り、ふと朋子は、小出自動車と言うパス会社に、車掌募集と出ているのを見かけ、中にはいる。中では男二人が将棋をしている。事務所から和装の小出米子(川崎弘子)が、御用は?と声を掛ける。朋子は、この会社に入りたいと言う。将棋をしていた男(佐分利信)は、浮田兼輔と言う運転手の責任者だった。女子専門学校の受験を止めて、将来は運転手になりたいと言う朋子に、まずは両親の承諾を貰いなさいと言う浮田。あとで、連絡すると言う浮田に、名前も住所も言っていないので、連絡のしようもないと思うわと指摘する朋子。浮田の将棋の相手の小出三郎(近衛敏明)は、近くにある映画館の支配人をしながら、小出自動車を経営する兄が亡くなったので、姉の経理を手伝っている。横手の実家に帰る朋子。父・兵吉(坂本武)も継母・美代(吉川満子)も、異母弟の銀二郎(沖田儀一)ともとても良い家族を築いている。上の学校に進学せず、将来はパスの運転手になると言う朋子の話を承諾する兵吉。
    小出自動車に入社した朋子に、浮田はまず車掌をやらせる。初乗車には、浮田自ら運転手となった。朋子に興味のある三郎も、パスに飛び乗った。物怖じせず、愛想もいい朋子は、少し気が散りやすいのと、思ったままを口に出すのがたまに傷だ。いつも三郎は、バスにタダで乗っていたが、三郎さんの切符はどうします?と尋ねる朋子に、浮田はバスを持っていない客は誰でも運賃を貰わなければ駄目だと答えたことで、三郎から運賃を取る朋子。バスは終点に着く。折り返しの出発の時に、三郎は停留所前の茶屋の軒先で、昼寝をしている。結局三郎を置き去りにして、バスを出す浮田と朋子。

作文を書いている?(木暮実千代)。

「最終学歴は?」「横手の女学校を出ました。今日は女子高等専門学校の受験に来ました。」「さては落ちたな…」「サブちゃんひどいわね」「出来はよかったんですが、気が変ったんです。家は決して裕福ではありませんし。働きたいんです。」
  横手市横手町

   角川シネマ新宿で、大雷蔵祭
   62年大映京都三隅研次監督『斬る(704)』


   学校で、学生とイベントの打合せ。さすがに今日は皆顔を見せる。
   何人かの先輩の先生方と飲みに行く。初めてお話をさせていただいた方も多くて、面白いなあ。地元の飲み会にちょっと顔を出したが、既に撃沈気味で、すぐに帰る。

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