2009年12月13日日曜日

今年の700本目、会社を辞めてから1100本目は京都モノ。

    京橋フィルムセンターで、生誕百年 映画女優 田中絹代
    57年宝塚映画稲垣浩監督『太夫(こったい)さんより 女体は哀しく(698)』
    終戦から三年経った初夏。京都島原の廓。電柱に、下京区西陣下屋敷島原町と住居表示がある。
    とある朝、「ほな、出掛けて来るで…。」島原遊廓の組合長の輪違家のご隠居善助(小沢栄太郎)が出て来ると、何やら街が騒がしい。人だかりの中に声を掛ける。「おくにさん、どうしたんや」「何でもガス会社がストライキやらで、あっちはエラい騒ぎでっせ」「ストライキかね、ワシが生きている間に見られるとは思わなかったで。ちょっと見て来たろ…」と走り出す善助。
    老舗の宝永楼から、玉袖太夫(乙羽信子)が客の光太郎(伊藤久哉)と出て来る。「じゃあ太夫のストライキ頑張りや。今日3時に会えへんか?丹波口駅の前で待っとるで。映画でも見にいこ」頷く玉袖。玉袖にあのお客さん、何か大丈夫なんかと仲居頭お初(浪江千栄子)。「ガス会社のストライキを指導している共産党の人です。」「共産党!?」と目を回すお初。
    中では、仲居達は、朝の支度に忙しい。みな、ガス会社のストライキの騒ぎが気になるようだ。お千代(植田裕子)「大変だっせ。日本にも革命が起こるかもしれまへん」「金持ちは、殺されるかもしれん」「金持ちなお倉さん危ないで…」お倉(千石規子)は腹巻きの中にコツコツ貯めた小金を人に貸しているのだ。当たりを伺うお倉。「そんなことは、天子さまがいてる限り変わる訳あらしません」とお初が言って、ようやく話は終わる。
    そこに歯を磨きながら、宝永楼の女将おえい(田中絹代)がやって来る。「うるさいな、どこぞで運動会でもやってるんか」「違いまっせ、ガス会社でストライキだっせ」「ウチとこは、ガス引いてないし、関係ないわ。それよりも、あっこ、水道の蛇口ちゃんと閉まってないで…。へっついの神さんに灯明上がってないで…。ほら時計も止まっとるで…」あれこれ目に付くおえい。「昨日玉袖はんのお客、共産党でしたんや」「えーっ、そんな人上げたらあかんやないか」「赤い旗持ってる訳でもないんで、分からしません」「玉袖の部屋、消毒しておいてや」
   満員の市電から、善助と光太郎がやっとのことで降りてくる。車掌は完全に外にしがみついている。光太郎は、バラック街の部屋に入る。「お前、玉袖に共産党やって言っとるんやろ。」と盗人仲間の安吉(田中春男)。「ストライキさせたらおもろいし、そのどさくさに、玉袖を足抜きさせようと思っとるんや。そうでもせんと玉袖は自分のもんにはならんさかい…。」
    バラックの外では、吐き気を訴える喜美子(淡路恵子)に、隣に住むおたま(中北千枝子)が「あんたでけたんや」「何が出来たん?」喜美子は、少し頭が足りないのだ。「やや子がでけたんや」「やや子が…。」
    バラックに入り安吉に「やや子がでけた」と告げる喜美子。びっくりする安吉に、「絶対産む」「堕ろせ」と言い争いに。お腹を蹴ろうとする安吉に、泣いて抵抗する。
宝永楼の太夫たちの部屋では、玉袖が、女郎たちにオルグしている。「ワタシら虫けらのように搾取されてるんや。」古株の美吉野(東郷晴子)は「こんなにお世話になってるのに…、恩を仇で返すんか…。」と意見するが、「恩も何も、当然の権利やで、深雪はんは体が弱いのに、三国人やらボケた年寄りとかの旦那を取らされて可哀想や」
   深雪(扇千景)は涙を見せ、「うちには、酒飲みのおかあはんと、弟や妹も沢山いてるから…。」九重(清川はやみ)矢車(環三千世)も乗せられて、おえいとお初の前に出る。玉袖が、要求書を出す。「一つ、今日までの借金を帳消しにすること、一つ、収入の八割は太夫に渡すこと、一つ、好きでない客を拒む権利を与えること…」途中まで読んだお初は、「阿呆らしくなったわ…」と言って要求書を破り、おえいの方に向き直り、「この件はあてに任せといておくれやす」と言って太夫に「部屋に言ってゆっくり話をしよやないか」と促す。みなが行った後に美吉野が一人残っている。「あんた何をしとるんや」「あては脱退します。」「今更何を言ってまんねんな、あんたみたいに長くいるんが、ちゃんと仕切らなあかんやないか、あんたもおいで」すごすごと、お初に連れられ、部屋に戻る美吉野。

太夫たち
   長屋で、夜鳴きうどん屋の
喜美子(淡路恵子)禿、和枝(岡田貴美子)照代(橘美津子)仲居お初(浪花千栄子)お千代(植田裕子)お倉(千石規子)おまつ(山田和子)
玉袖の情夫光太郎(伊藤久哉)喜美子の情夫安吉(田中春男)ちりめん問屋番頭佐七(平田昭彦)大番頭伝助(寺島雄作)うどん屋の五助(谷晃)かやく飯屋おくに(万代峯子)前宝永楼の薄雪太夫(宮脇よし)尾上(衣笠淳子)安吉の情婦おたま(中北千枝子)喜美子の子供の里親(汐風亮子)ジープ主人(山茶花究)ジープ抱妓べに子(宇野美子)チェリー(平原小夜美)まゆみ(森昭子)深雪の母お為(千代田綾子)幇間かん八(松葉家奴)

   脳膜炎で足りない娘だが男を信じ子供を愛する淡路恵子(いつもとは正反対の不細工振りだ!!)と、家族のため健気に働く病弱な太夫振りで、皆を騙す扇千景が素晴らしい。

  体験入学講師

   池袋新文芸坐で、名匠・清水宏 その感動の世界へ
   36年松竹大船清水宏監督『有りがたうさん(699)』
    伊豆天城街道の乗合バス。道路工事人夫、荷馬車、薪を背負った農夫、鶏でさえ追い越す時に「有りがたう」と声を掛ける運転手(上原謙)。だから彼を有りがたうさんと呼ぶ。
毎日、下田との間を一往復するのだ。茶屋、有りがたうさんが横になって休んでいる。母親(二葉かほる)と娘(築地まゆみ)二人連れに、茶屋のおかみさん(高松栄子)が声を掛ける。娘は東京に行く。村を出たことが無いので、下田までは見送りに行くと母親。「東京の奉公先は、大きなお屋敷かい。」返事がない。女中奉公と言うよりも、売られて行くのだろう。同情した女将は、峠を2つも越えるのだから、バスの中で食べろと二本の羊羹を差し出す。出発の3時になった。一番奥に座った母娘に「おかあさん、一番前が揺れないですよ」と声を掛けるが、偉そうな髭を生やした男(石山竜嗣)が座ってしまう。運転席の後ろには、黒衿の酌婦(桑野通子)が座る。酌婦仲間(和田登志子、雲井ツル子)が、もし景気が良さそうなら、誘っておくれと言う。バスが出発すると、居眠りをしていた老人(青野清)が、茶店の女将にバスに乗るんじゃなかったの?と言われ慌てて追い掛ける。

    37年松竹大船清水宏監督『風の中の子供(700)
   一学期の終業式帰りらしい小学生たちが掛けている。目の前に空の荷馬車がある。一年生の三平(爆弾小僧)は座って、二年生の金太郎(アメリカ小僧)と通信簿の話をしている。荷馬車引きに見つかって怒られ逃げ出す子供たち。三平を母親(吉川満子)が怒っている。「甲が一つもないじゃないの…。善太の通信簿を見なさい。甲ばっかりよ。金ちゃんと遊んでばかりいるからよ。勉強しなさい。」
    外から金太郎たちが、「三ちゃん遊ぼう!!」と声が聞こえる。飛び出そうとする三平に、「駄目!!勉強をしなさい!!」と怒る母。5年生の兄の善太(葉山正雄)と二人で机に向かっている。「善ちゃんは贔屓して貰って成績がいいのか」「違うよ」「いつも先生の後を追っかけてるじゃないか」「ロビンソンの続きを聞きたいからだい」「ロビンソンよりターザンの方が面白いよ。今度オリンピックにターザンが出場するんだよ」「するわけないよ。馬鹿馬鹿馬鹿!!」「馬鹿じゃないよ」「あんたたちはいつも喧嘩ばかりして!!善ちゃん、お父さんにお弁当を持って行っておくれ」三平「僕が行くよ」「あんたは勉強してなさい」「ちえっ」
一人残された三平は、桃太郎を大声で読み始める。母親の様子を伺い、気がつくといなくなっている。「あ~ああ~」とターザンを真似て雄叫びを上げると近所から続々と友達が駆け寄って来る。
   通信簿を見た父親(河村リョウ吉)は、「男の子たからいいじゃないか。外を元気に駆け回っているくらいがいいんだ。当人も成績なんか気にしていないんだし…」「あなたが、そうやって甘やかすからいけないんです。どんな大人になってしまうか…」
    翌日も、勉強を始めても直ぐに飽きて善太と兄弟喧嘩をする三平。今日も父親の弁当届けを善太に取られると、遊びに出掛けてしまう。今日は川遊びだ。褌姿で川に掛けて行く。金太郎は服を脱ぎ始めるが、褌がないので、嫌だと言う。からかってやるつもりで、みんなで追い掛けると、金太郎は、三平の家の前で、「三ちゃんが苛めるんです」と大声を出す。金太郎の家の前まで追い詰めると、「三ちゃんのお父さんは、悪いことをしているので、会社をクビになって、お巡りさんに連れて行かれるとウチのお父さんが言っていた!!」と言う。大好きなお父さんの悪口に三平はかっとして、棒で金太郎の頭を叩く。善太がやって来て「金ちゃん、乱暴はやめろ!!」と注意するが、訳を聞いて、善太も金太郎に詰め寄る。金太郎は家に逃げ込み、友達も皆帰ってしまった。
   善太と三平は、母親に金太郎が言っていた話を伝える。母親は勿論否定する。善太と三平が眠っている深夜、母親が、「金ちゃんがそう言うのは、佐山さんが家で話していると言うことよね。何か企んでいるんじゃないかしら」「株主たちは腹黒い策略を用意しているのかもしれないな」翌朝、子供たちに「お父さんは会社を立派な会社にしようとしているんだよ」と言った。

おじさん(坂武木おばさん(岡村文子)幸介(末松孝行)美代子(長船タヅコ)佐山(石山隆司)赤沢(長尾寛)曲馬団の正太(突貫小僧)親方(若林広雄)

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