2009年12月7日月曜日

目力対決なら、勝新太郎。

   神保町シアターで、目力対決 田宮二郎と天知茂

   63年大映東京井上梅次監督『わたしを深く埋めて(683)』
   夜の銀座を走るタクシー。客席の男(田宮二郎)が、窓の外を嬉しそうに眺めるので、運転手(小山内淳)が「お客さんは、どちらからいらしたんですか?」「いや、東京だけど」「あまりに嬉しそうに窓の外をご覧になっているので」「九州に出張していたんだけど、あまりに寂しくて、半月の予定を一週間で帰ってきてしまったんだ。」「そういうもんですかね。わたしだったら、温泉にでも行けたら、一月でも二月でものんびりしていますがね。」「いや、僕は駄目なんだ。東京で何かあったかい?」「株が暴落して、首括ったり大変な騒ぎですよ。」
   タクシーの男がマンションの自分の部屋に戻って来る。何故かドアの鍵が開いている。不思議に思い中に入る。ソファーの陰から女の足が出る。裏を覗くと、黒いスリップ姿の女(浜田ゆう子)がブランデーを飲んでいる。
  「誰?おいおい、何だい、君は?」「あら、お帰りなさい、遅かったわね」「早かったんだけとね。何か間違えていないかい?」「中部さんでしょ?名前だけで、何をしている人かは知らないけど…。」「僕は弁護士だ。」「今夜は安心して、このミッチーに任せてよ。」訳知りな顔の女だが中部には全く心当たりはない。女は寝室へと誘う。いい香りだと言うと、彼女はディザスター災難と言う名の香水だと答えた。
キスをされたところにドアが開き、管理人が入ってきて失礼しましたと出て行った。ハンドバッグの中に、ここの住所を書いたメモが入っていたので、中部は、友人の芥川のたちの悪い悪戯だと思った。女は、ブランデーを飲もうとしきりと誘うが、中部は「僕はブランデーは嫌いだ」と答える。飲み過ぎたのか、女はベッドで鼾をかきながら眠ってしまう。中部はハイヤーを呼ぶ。するとドアのブザーが鳴る。外にはカメラマンを連れた男が立っていて、さあスキャンダラスな写真を撮りましょうと言う。とにかく帰ってくれと言って追い返し、やってきたハイヤーの運転手に寝てしまった女を適当に載せて、下ろしてくれと金を渡す。部屋に帰ると、突然男がやって来て、ミッチーをどこに隠した?と言う。部屋を探しまくり、ソファーに女の香水の残り香を見つけ、嘘を言ったら許さないぞと捨て台詞を吐いて帰って行く。何が何だかわからない騒ぎが落着した中部は、シャワーを浴び、睡眠薬を飲んで眠った。

    66年大映東京田中徳三監督『脂のしたたり(684)』
   兜町、八代線証券の調査役仲田浩(田宮二郎)が社に戻ってくると、課長の池内(小山内淳)が、「仲田くん、どこへ行っていた?」「繊維関係回っていました。」「君は調査役だから、外出してもらって構わんが、行き先は黒板に書いておいてくれたまえ。」何か機嫌が悪いのか嫌みを言う。若手社員の?が、「ちょっと情報があるんです。明昭工機を、難波証券が一万株づつ2回買いを出しているんです。」「農機具の地味な会社だよな。」
そこに、黒い服にサングラス姿の女(冨士真奈美)がやってくる。「あの女、仲田さんが化学株回してやった客じゃないですか」「あの女は、名和雪子と言う名前以外、住所も何も明かせないと言うんだよ。」仲田が相手をしようとすると、池内がすかさず「こちらにどうぞ」と案内する。「仲田さん。上客は課長が全部独り占めですね」と苦笑する?。しかし、名和雪子は、出来るだけ沢山明昭工機株を買いたいと言いながら、身分は明かせないとの一点張りだ。
仲田は、雪子の跡をつけ、高級外車に乗り込む直前に声を掛けるが、つれない返事だ。仲田は、直接、明昭工機の株式課に伊勢課長(春本泰男)を訪ねる。カマを賭ける仲田に、業績は相変わらず冴えないままだと言う。しかし、「買占めをしている妙なニュースがある」と言うと伊勢は仲田をお茶に誘った。しかし、世間話に終始する伊勢。来客がと言って席を外した伊勢は、蛇のような男(成田三樹夫)にペコペコ頭を下げている。
  仲田が会社に戻ると、後輩の?が難波が明昭30万株買ったという情報で2万7千株を押さえておいたと言う。仲田は、学生時代からの友人で資金運用を任されている野崎の口座で、3千株を追加して買ってくれと頼む。更に、明昭1万8千株の買いが入った。ニューパールホテルのロビーに株券を届けてくれとの依頼に、仲田は自ら向かった。そこには、蛇のような男がいた。仲田は名刺を渡し、情報を取ろうとしたが、全く相手にされない。しばらく張っていると、黒いドレスの女がやってきた。仲田はホテルのボーイに、「あそこの二人は泊り客か」と尋ねる。ボーイは断るが、金を渡すと「泊り客ではないが、男の方はよくこのロビーを使う」と答えた。また二人が来た時に連絡をくれれば、三千円を渡すと言って、札を握らせた。ホテルを出て、車に乗り込んだ男と女。「奥さん、まっすぐお屋敷にお帰りになりますか。」「桂、監視役も御苦労さまね。お前とは、昔どこかで会った気がするわ・・・。」
  桂が、クラブのマダム小倉敏子(久保菜穂子)に「今月も赤字だ。銀座で10年もやってきたというからマダムにしたのに、なんてザマだ。」「私だけのせいではありませんわ。」「男がいるそうだな。今あんたを世話しているのは、あんまり評判がいい男ではないらしい。」敏子が店に出ると、仲田と後輩の男がいる。ついているホステス(沖良美)が仲田を指し「こちらママの凄いファン」と言う。「めずらしいわね。」「すっかりママの貫録が着いたようだ。4年振りか・・・。」「何の用?」「風間に会わせてくれないか。一緒にいるんだろう。」「勝手に会えばいいじゃない。」「俺が会いたいと言っていたと伝えてくれ。情報屋風間銀介と仕事をしたいんだ。」と名刺を預ける。
  敏子が酔って帰ると、風間(鈴木瑞穂)が来ていた。「あらいらしてたの?めずらしいわね。」「酔っているな。」「(店の支配人の)桂って嫌なヤツ。」「君の店のオーナーは三国人だったな。」「李石尚という男だけど、全く顔を見せないの・・・。そういえば今日、仲田が来たわ。」「えっ、そうか君を束縛するつもりはない。」「いえ、そんなんじゃないわ、あなたと仕事をしたいって言っていたわ。」「今日は帰るから、ゆっくり休め。」「いえ、今日は泊って・・・。でないと私・・・。」
  とありホテルのレストランで、風間と仲田は再会する。二人は、明昭工機を狙っていることで一致し、手を組むことにする。仲田は金を手にするために、風間は情報屋としてのプライドを賭けて。風間は、李石尚や難波たちのグループは軍に関係した秘密組織に関わっていたらしい。大阪の滝沼一郎と言う男も仲間らしいので、探ってくれないかと仲田に頼む。
  羽田空港に李石尚(金子信雄)が帰国する。迎えの車を運転する桂三郎と話す李「今回の話は、香港の連中も大賛成だ。取引はうまくいった。ところで、株のことだが、難波と相談してやってくれ。」仲田は、大阪の滝沼不動産で、滝沼(守田学)に日東タイムスの名刺を出し、戦争中の秘密結社について取材をしていると告げた。「日東タイムスというと、営業部長は小松さんでしたね。」「ええ、そうです。」「ボロを出したな。この名刺は偽物だな。てめえは何者だ。」痛めつけられる仲田。

難波修(須賀不二男)

      61年大映京都田中徳三監督『悪名(685)』
      昭和初期、河内八尾中野村の農家の倅、朝吉(勝新太郎)は、隣村の高安から盗んできた軍鶏で闘鶏博打をやっていた。家に帰ると、父親に河内の百姓は軍鶏博打をして身を滅ぼす奴ばかりで、お前は勘当だと激怒され、高安まで返しに行く。妹の千代(中田康子)に念を押す朝吉。朝吉と幼馴染の辰吉(丸凡太)は若いエネルギーを持て余し、女が欲しいが、金などない。軍鶏で揉めた隣村高安の盆踊りに出掛ける。すると千代が誘ってくる。二人が深い仲になるのに時間はかからなかった。実は、千代は男の妹ではなく、妻だった。千代は、朝吉の子を妊娠したと告白し、噂になる前に駆け落ちしようと言う。
    二人は、有馬温泉に逃げ、千代は女中になった。間借りしている筆屋の主人(浅尾奥山)は、自分の妻もかって堂島の売れっ子芸者で、気の進まぬ旦那からの身請け話に、二人で駆け落ちをして、今ではこうなったが、まだ若いのだから故郷に戻ってやり直せと忠告する。お腹の子がなければという朝吉に、筆屋の妻(橘公子)は、とうに流れていると教えてくれた。そのことに納得いかない朝吉は、千代を置いて、有馬から大阪に戻る。
    しかし、大阪駅で、偶然お伊勢参りの帰りの幼なじみの辰吉らに再会する。彼らは、精進落としに松島の遊廓に遊びに行くところだと聞いて、同行する。店に上がり、琴糸(水谷良重)の哀しげな表情に惹かれる朝吉。福岡の炭坑町から売られてきたのだ。
   店では辰吉に付いた女郎白糸(若杉曜子)が、他の客と喧嘩になって大騒ぎが起こる。飛び出して行こうとする朝吉を止める琴糸。酒癖の悪い白糸は、仕舞いには地元のヤクザだと言う男の頭を瓶で殴りつけ気絶させる。翌朝、朝吉と琴糸の部屋に辰吉が現れ、昨夜の吉岡組の連中が待ち伏せしていると言う。朝吉は、全く動ぜず、吉岡組の連中の真ん中を歩いていく。吉岡組の貞吉(田宮二郎)が、モートルの貞と少しは知られた男だが、面子を潰されて黙っている訳にはいかないと襲いかかってくるが、朝吉は滅法強く、貞吉をのしてしまう。貞吉は、朝吉に惚れ込み兄貴分となってくれと言うが、ヤクザは嫌いだと相手にしない。そこに吉岡組の親分吉岡(山茶花究)がやって来て事務所に来てくれと言う。行く当てがなければ、客分として、この組にいてくれと言う。ヤクザは嫌いだと断っていたものの、貞吉が喧嘩の現場から逃げ出した弟分たちに折檻を加えるのを止めたことで、草鞋を脱ぐことに。
   ある日、女郎暮らしを嘆く琴糸に、一緒に逃げてやると約束をする。しかし、貞吉がそこに現れ、千日前の親分の出入りに加勢することになったので、助っ人に来てくれと言う。直ぐに着替えた朝吉は、吉岡組の前で、ダンブカーに乗り込む。すると朝吉を心配した琴糸が店を抜け出して来ていた。これでは足ぬけになってしまうが、吉岡の姉さん(倉田マユミ)に、とりあえず匿ってくれと預けて出入りに向かう朝吉。
    戻ってくると、遊廓を仕切る松嶋組に取り囲まれている。既に姉さんは、琴糸を隣家に逃がしていたが、松嶋組の兄貴分(須賀不二男)に凄まれて、吉岡はうちは全く関係ない、朝吉が戻り次第すぐに松嶋組に行かせると答える。吉岡のあまりの情けなさに、貞吉は盃を返して、朝吉と二人で、吉岡組を出る。琴糸は、隣家の母親が一緒に逃げた後だったが、隣家の娘、お絹(中村玉緒)とお照(藤原礼子)が気に入り、一緒に飯でも食わないかと誘う二人。今から、勤め先の千日前の肉屋“くいだおれ"に出なければ行けないと聞いて、四人で出かけることに。
  しかし、松嶋組の連中が待ち伏せしている。顔を貸せと言われ、一人空地についていく朝吉。ドスを手にしている兄貴分の男に、懐手で、銃を突き付ける朝吉。さすがにピストルにはビビる兄貴分。ピストルを捨てるので、ドスを捨て、手下を帰らせろと言う朝吉。迫力負けした男が言われた通りにすると、男のドスを拾い上げて脅す朝吉。勿論ピストルは嘘で、着物の下の人差し指という子供騙し、しかし、朝吉の度胸は、並の男には通じないのだ。
   くいだおれで、4人で食事するうちに、貞吉はお照が、朝吉はお絹に惚れ、宝塚温泉に。お絹は、一生の妻にするという一筆を入れさせて、惚れた男に女を捧げた。お絹とお照に一旦家に帰すが、なかなか戻ってこない。二人が戻ってきて、大坂では大変なことが起きているという。松嶋組は、吉岡を半死半生の目に合わせ、またせっかく逃げながら、琴糸は朝吉を心配して、大阪に様子を見に来て、松嶋組に捕まって、瀬戸内海の因島に売られてしまったと言う。朝吉は琴糸を助け出しに行くと決めたが、ある程度纏まった金を作っていかないといけないが、手持ちはない。
   思案の末、朝吉は、有馬温泉に行き、筆屋を訪ねる。まだ、千代はそこにいた。帰ってきてくれたんだといいながら、金を作りに来たと聞いて、私がなんとかしようと言う千代。千代は神戸で行われる大規模なボンの世話役をするので、自分が合図を出すので、儲ければよいと言うのだ。イカサマは嫌いな朝吉だったが、背に腹は代えられず、千代の言う通りにすることに。纏まった金を持って、朝吉と貞吉は、因島に乗り込んだ。思案の末、朝吉は、有馬温泉に行き、筆屋を訪ねる。まだ、千代はそこにいた。帰ってきてくれたんだといいながら、金を作りに来たと聞いて、私がなんとかしようと言う千代。千代は神戸で行われる大規模な花盆(?)の世話役をするので、自分が合図を出すので、儲ければよいと言うのだ。イカサマは嫌いな朝吉だったが、背に腹は代えられず、千代の言う通りにすることに。纏まった金を持って、朝吉と貞吉は、因島に乗り込んだ。
    土生の港に上がり、近くにいた男にいい旅館がないかと尋ねると、渡海屋がいいと言う。さっそく渡海屋の部屋に上がり、女中おしげ(阿井美千子)に声を掛ける。おしげは、身持ちも固く、遊ぶなら島内どこにもあるから行ってくればと言う。朝吉と貞吉は、遊廓を流して歩いた上、島からの脱出方法を考えるがよい知恵は浮かばない。宿に戻り、おしげの人柄を見込んで頭を下げ、女を助け出しに来たと告白する。遊廓を縄張りにするのはシルクハットの親分(永田靖)と呼ばれる男。島を脱出する船を頼める信頼おける人間として、おしげのおじである漁師(嵐三右ヱ門)を紹介してくれた。
   貞吉は、女郎屋の大和楼に、琴糸がいることを発見、琴糸には朝吉と二人で助けに乗り込んできたのだと伝え、琴糸を励ました。しかし、琴糸が、大和楼から外出出来るのは、明後日の縁日の日しかない。朝吉は、貞吉と同行していることを隠すため、島内のもう一人の実力者、造船所関係を牛耳る女親分の麻生イト(浪花千栄子)が経営する島内一の格式ある旅館麻生館に移った。
    縁日の日、貞吉と琴糸、朝吉とおしげの二組は歩き回り、途中おしげと琴糸は入れ替わった。裏道を抜け、漁師の家に出向くと、足を怪我している。代わりに漁師の妻が漕ぎ出したが、瀬戸内海途中で潮目が代わり、結局、朝吉らが乗った伝馬船は、因島に押し戻された。ままよと、琴糸を連れ朝吉は麻生館に戻る。シルクハットの親分と子分たちが、麻生館に乗り込んできた。多勢に無勢、取り囲まれる朝吉たち。しかし、朝吉は懐からピストルを出して、親分に迫る。 そこに麻生イトが現れ、シルクハットの親分に、ここがワイの宿と知ってはったら、あんまりな振る舞いやおへんかと迫り、この場は私に預からせてくれと言う。イトの迫力にシルクハットの親分も頷くしかない。
    手打ちの式を行い、琴糸はイトが預かることになった。シルクハットの親分たちが去った後、イトは、ワシは二千人から子分がいるさかい、シルクハットの何ちゃらみたいには甘うあらしまへんでと言う。このまま琴糸と別れるのはと言う朝吉に、イトは、一週間だけあんさんにやるさかい必ず戻してくるんやでと念を押した。
    大阪に琴糸を連れて戻る朝吉。くいだおれの店に行く。そこには、勿論お絹とお照がいる。無事で帰ってきてと涙ぐむお照とお絹。お絹は、琴糸に朝吉の妻ですと挨拶をする。切ない顔になる琴糸。お照と貞吉は、久しぶりの再会にすぐ消えた。琴糸は、今から一人で因島のイトの下に戻ると言う。朝吉は、あんな嫌な所に戻ることはないと言うが、お絹と別れることは出来ない。とりあえず、朝吉、お絹、琴糸と言う三人で京都見物に出掛ける。嵐山で、朝吉は、琴糸に東京へ行って幸せに暮らせと言い、独りで因島のイトの下に戻る。
    イトは、二人で逃げて戻らぬように因果を含めたつもりが、のこのこ一人で戻ってきた朝吉に、女だと思って舐めているのかと怒りに震える。どうにでもしてくれと言う朝吉を連れて海岸に行き、持っていたステッキで、朝吉を打ち据える。意地でも、その苦痛に耐える朝吉。容赦なく打ち続けながら、イトはあんたは大きな人間になって名を上げるだろうと言って、このステッキ付いてどこでも行けと子分たちを引き連れて帰っていく。朝吉は、ステッキをへし折り、なんぼ名前を上げる言うても、所詮悪名や。なんも嬉しくはないわい。とにかく琴糸は自由になったんや。ワイは勝ったんや。砂浜で横になり、空を見上げる朝吉。

    61年大映京都田中徳三監督『続悪名(686)』
    満州事変の頃。河内地元の若者が相撲をしている。そこに手拭いをほっかぶりした男が飛び入りする。河内の若者たちは次々に倒される。辰吉(丸凡太)が「お前、頭突きが一番強い朝ヤンを知ってるか。」男は笑い出し、手拭いを取ると朝吉(勝新太郎)だ。みんな、似てると思ったと笑い、今までどうしていたんだと尋ねる。因島にと話し出して、長くなるからと言う朝吉の後ろに、みなお絹(中村玉緒)の姿を見つけて興味津々だ。
朝吉は、お絹を連れ、実家に戻る。母親と姉に紹介したが、みな頑固ものの父親のことを心配する。父親と兄が帰って来たので、お絹を二階に隠す。意外にも、父親は朝吉が、各地で疲弊する農村を見てきたと言うと上機嫌だった。朝吉が花嫁候補を連れて来たと聞いても、まずは会わせろと言い、お絹が従順なよそ行きの挨拶をしたので、ご機嫌で、「直ぐに野良着を持って来い!明日から野良仕事だ。祝言は手に豆を作ってからだ!」二階で、朝吉は、お絹に、「お前がうまいこと言いすぎるからいかんのや。」
  貞がや河内にやってくる。農夫に「おい!おっさん~~村上朝吉っつぁんとこ知っとるけぇ」と声を掛ける。「朝吉?ああ、あそこじゃ」と事もなげに言う農夫に、「おい、おっさん、ワレ先見てものいえよ。親兄弟ならともかく、近所の百姓ごときに、朝吉などと言われるような人やおへんのや。」「お前は誰じゃ!!」「朝吉親分の弟分でモートルの貞ちゅうケチな野郎でござんす。」と仁義を切ると、農夫は激怒し、「わしが、朝吉の親父じゃ!!朝吉!!しょうもない、やくざになんぞなりくさって!!この嫁連れて、出て行きさらせ!!」

  銀座シネパトスで、魅惑の女優列伝Part1ひし美ゆり子
   73年東映京都石井輝男監督『ポルノ時代劇・亡八武士道(687)』
   橋の上で、鑓を構えた4人の武士に囲まれた白い着流しの浪人(丹波哲郎)。鑓をよけ、次々と斬り捨てる。無数の捕り方が御用提灯を掲げて殺到する。しかし、男の相手ではない。「斬るのも飽きた」と呟く男。川に飛び込む。流れ沈みながら、「生きるも地獄、死ぬも地獄か…。」
    男を暖めている二人の裸女に、袢纏姿の男が尋ねる。「どうだ?」股間を覗きこみ「もう少しで、天狗です。」浪人は気がつく。「死ねなかったようだな。」枕元に立つ男(伊吹吾郎)が声を掛ける。「あんさんは、悪名高き兇状持ちの人斬り明日死能(あしたしのう)でしょう。あっしは、吉原遊郭の亡八、白首の袈裟蔵と申しやす。吉原はあんたを必要としているもんでしてね。大門四郎兵衛さまのお指図だ。」
   亡八とは、仁、義、礼、智、忠、信、孝、悌、という人の八つの徳目を無くした者を言い、転じて遊廓の経営者を言った。その亡八者の仲間に入らねえか、但し試験に通ってからだと、袈裟蔵は言う。それもいいだろうと言う明日死能。
   用心棒として、玉出しの姫次郎(久野四郎)について行くことになる。姫次郎が長屋を歩くと、おかみたちは汚い物を見るように毛嫌いをし物を投げる。姫次郎は「亡八は、感情も無くした者。怒っちゃいけねえんで。ケケケケ。」と言い、磊落した浪人の娘おしの(ひし美ゆり子)を訪ね、「死んだ親父の残した借金、今日こそお前の体で、払って貰うぞ」と脅す。おしのは武家の娘らしく、辱めを受けるなら自害すると抗い、ハサミを喉に当てたが、明日死能は小柄を投げおしのの体の自由を奪い、着ていた着物を真っ二つに斬り、おしのを全裸にした。姫次郎は「ケケケケ餅肌だぜ」と、おしのの体を弄り、下を噛み切ろうとしたので口輪を咬ませ、吉原に連れ帰った。
   おしのは全裸のまま手足を縛られ、2日間男たちに抱かれ続ける達磨抱かせをされると言う。最初の相手は客に競りをさせるのだ。好色そうな僧侶、金持ちなどが舌なめずりをしながら値を釣り上げたが、最後に明日死能が、今日の日当だと渡された50両をおしのの体に投げつけた。しかし、明日死能は、酒を飲み続け、おしのを抱こうとはしなかった。
   実はしのは、女亡八のお紋と言う女だった。明日死能は、試されたのだ。試験には不合格だと袈裟蔵。お紋の着物を持ってきた下女が、「死ぬも地獄、生きるも地獄か知らないが、キザだね。一晩中、聞いているのがきつかったよ」と哄笑する。明日死能が、表情も変えずに居合いを使い、女の耳は吹っ飛んだ。苦痛に呻き騒ぐ女。
     吉原の大門を出て行ってくれと袈裟蔵、大門の外には捕り方で埋め尽くされている。平気で、その中に入って行く明日死能。そこに、吉原総名主大門四郎兵衛(遠藤辰雄)が現れ「お役人衆、手を引いて貰いましょう」同心が「いかに、吉原総名主と言えども、その男は凶状持ち。咎め立てをすると…。」「いや、お奉行様に、いやお奉行様よりも上、ご老中にお尋ね下され。」「今日のところは、四郎兵衛に免じて引かせて貰うが、次はないぞ!!」
四郎兵衛は、明日死郎を座敷に案内する。「試験には失敗したかもしれんが、今日から、お主はワシの客分だ。」
    四郎兵衛は、葵の鈴を取り出し、かって、大納言が江戸城を築いた際、荒くれ者の人足たちが、手をつけられなくなった時に、東海林仁右衛門が女郎200人を連れて参上、それにより騒ぎが収まり、大納言は幕府公認の吉原遊廓を認め、多額の献上金を納めて来た。しかし、時代は移り、ご政道は乱れ、江戸中、岡場所は言うに及ばず、湯女や、飯盛り女、夜鷹まで私娼がはびこっている。大名、旗本、御家人に至るまで、その上がりにたかっている。それに関わる侍たちを成敗してほしいのだと言い、2代目首切り仁左衛門が使ったと言う血塗られ大刀、鬼包丁を預けた。明日死能は依頼を受けるが、袈裟蔵は亡八でない死能に不快感を抱き、拳銃を取り出し、一発触発の事態になる。

片目の勘次(佐藤京一)おけらの金六(原田君事)(福本清三)多門伝八郎(笹木俊志)加田三次郎(深江章喜)お陸(相川圭子)お甲(池島ルリ子)お時(一の瀬レナ)町奉行同心(野口貴史)黒鍬者(川谷拓三)黒鍬の小角(内田良平)夜鳴きそば屋台の老人(浪花五郎)荷馬車の男(畑中伶一)やくざの親分(鈴木康弘)浪人(高並功)(宮城幸生)女郎(小林千枝、北川マキ)島田秀雄(男)小島慶四郎 (湯屋の客侍)田貴リエ(湯女)鈴木康弘(やくざの親分)# 土橋勇(浪人)

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