2009年12月6日日曜日

目力と母力。

   神保町シアターで、目力対決 田宮二郎と天知茂

    64年大映東京増村保造監督『「女の小箱」より 夫が見た(679)』
    自宅で入浴する人妻(若尾文子)。湯船からあがり、鏡に自らを映す。美しいが表情は憂いに満ちている。体を拭き、寝間着に着替えると、電話が鳴る。夫からだ。「今夜も遅くなる。帰れないかもしれない。」「どうしても帰れないの?」「今会社は大変なんだ。戸締まりをして寝ていなさい。」夫の川代誠造(川崎敬三)は、会社から電話をしている。忙しいから切るよとつれない。ドアを閉めようと外を眺める那美子の眼差しは虚ろだ。ベッドには、夫のパジャマが置かれている。一人ベッドに入る那美子。
   翌日、敷島化工の社長室に、役員と株式課長の川代が集まっている。「社長!!この男ですよ、我が社を乗っ取ろうとしているのは。石坂という30過ぎの若僧ですが、今日も9万株を買って、114万株になりました。発行済み全株式300万株の3分の1は超えました。」「川代くん!この男に、買い戻しの交渉に行ってくれたまえ。そうそう、大株主に直接交渉されるとまずいから、株主名簿を隠しておいてくれよ。」「社長!!厄払いに、赤坂へ行って、ぱっとやりませんか!!」「いいねえ!」二代目社長と役員たちに危機感は薄いようだ。
   石塚興業の事務所、事務員の青山エミ(江波杏子)に「近頃、ぐっと派手になったな。スポンサーでも見つけたのか?」と声を掛ける社長の石塚健一郎(田宮二郎)。そこに川代が現れる。「川代さん、また敵情視察ですか?」「石塚さん、またやりましたね。お陰で、56円だった株価が、240円まであがりましたよ。十分儲けたでしょうから、このあたりで、我々に売りませんか?」「いや、過半数を取るまで、買いつづけてますよ。一度やり始めたら、最後までやるのが、僕の主義ですよ。敷島加工は内容のいい会社ですからね。」
川代は帰り掛けエミに、「今晩7時にいつものところで」と耳打ちする。石塚は、証券会社の谷田勇(中条静夫)を訪ねる。谷田「8万株売りに出ています。」「買ってくれ」「よっぽどいいスポンサーがいるんですね」「もっと買いたいが、大株主の情報を取ってくれよ。敷島化工に出入りしているんだろ。」
    津村産婦人科、院長の津村光枝(町田博子)が那美子の学校の先輩だ。「最近どうなの?」「もう半年もご無沙汰なの。結婚生活にはもう嫌気が差したわ」「それは贅沢と言うものよ。私ノようになっちゃ駄目。」「愛されていない毎日はもういやだわ」「適当に遊びなさいよ。良かったら、一緒にクラブ2,3 にいきましょうよ。そこのママは、私の患者よ。」
    那美子は、知らずに、石塚の経営するクラブに行くことになった。ママの西条洋子(岸田今日子)は、津村から紹介された那美子を、川代の妻が来ていると耳打ちする。調子に乗って、酔った那美子を、石塚は家まで送る。自分を顧みない夫との生活に疲れた那美子は、


   京橋フィルムセンターで、生誕百年 映画女優 田中絹代(2)
    54年大映京都溝口健二監督『山椒大夫(680)』
    これは人が、まだ人として目覚めていない、平安末期の話です。それから数百年、庶民の間に幅広く伝えられて来ました。
  「お母さま、なぜお父さまは筑紫のようなところに行ってしまわれたんですか?」「お父さまは、決して間違ったことはなさっていませんでした。」父平正氏(清水将夫)は、丹波守であったが、領民の窮状を無視できず、将軍の指示に従わなかったことで、筑紫に流されることになった。正氏を慕う領民たちは、落ちていく正氏を見送った。正氏は、まだ幼い厨子王に、「慈悲の心を失っては人ではない。己を責めても人には情けをかけよ。人は等しくこの世に生まれてきたものだ。幸せに隔てがあっていい筈はない」と教えた。
  平正氏の妻玉木(田中絹代)、その子厨子王と安寿の幼い兄妹、女中姥竹(浪速千栄子)の四人

   64年松竹大船桜井秀雄監督『この空のある限り(681)』
    多摩川下流六郷辺りの空撮。高校のグランド、野球部がランニングをしている。プールでは女子水泳部が練習をしている。タイムを計る三谷麻子(中村晃子)。「のりっぺ!!飛ばして!飛ばして!」練習が終わり、シャワーを浴びている麻子や則子(鰐淵晴子)。部長が「夏休み中は、7時半練習開始!!」と言い、みな悲鳴を上げる。
    工場の控え室、則子の母の千枝子(森光子)の手元を覗き込んだ女工員純子(竹田幸枝)が、「おばさん、また詩を書いているのね。ここ字を間違えているけど…。凄いわ、新聞や雑誌に出してみたら?」「工場の時給よりもよっぽどいいよ。」工場のサイレンが鳴る。「潰れそうな工場にしちゃデッカいサイレンだね。」と女工員路江(山本多美)
    高校の図書室、則子が「サブちゃん!お待ちどうさま。これが、原稿用紙、全校一の達筆のサブちゃんに清書してもらえば、鬼に金棒なんだから…。」前田三郎(田村正和)に原稿を見せる。「母の影か…。ノリっぺは河童みたいに泳ぐことしか能がないと思ったら、詩も書くのかー。」「あたしじゃないわ、かあさんが書いたのよ。毎朝新聞なら3万円も貰えるのよ。」

  渋谷シネマライズで、ポン・ジュノ監督『母なる証明(682)』
  !!!!!!!

  今日の印象だけなら、ボン・ジュノ>溝口健二、キム・ヘジャ>田中絹代と書くと、日本中を敵にまわすだろうか。

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