2009年5月23日土曜日

齢五十の坂を越えていたか・・・(苦笑)

     久し振りに終日映画三昧。渋谷、阿佐ヶ谷、神保町のラインナップが良すぎ、更に今週後半から池袋で高倉健の特集。うーん仕事が無くても身体が一つでは回らない(笑)。残念だ。明日、吉本新喜劇東京公演の招待券があるのだが…。人に譲るか。

    シネマヴェーラ渋谷で、シナリオライター小國英雄のすべて
    45年東宝成瀬巳喜男監督『三十三間堂通し矢物語(303)』
    運慶作の見返り観音像で有名な三十三間堂の廊下は実際には六十六間ある。古来、武士たちは、奉納のための通し矢を競った。江戸時代、紀州藩士、和佐代右衛門が打ち立てた9000本放って6200本と言う記録が不世出と思われていたが、尾州藩士星野勘佐衛門が、一万五千余本放ち8000本を通すと言う超人的な大記録を打ち立てる。紀州藩は大いに悔しがり、既に齢五十の坂を越えていた大左衛門を担ぎ出し挑戦させたが、7600本しか果たせず、割腹して果てた。
   和佐家に二年ほど行儀見習いに上がっていた旅籠小松屋のお絹(田中絹代)は、両親を亡くし、娘ながら家業を盛り立てていたが、亡き大左衛門の大恩に報いようと、大右衛門の忘れ形見、大八郎(市川扇升)を小松屋の客人として預かり、五年間弓道に精進させた。18歳となった大八郎は、星野の記録を破り父の汚名をそそぐ日が近づいたと、街では大層評判を呼んでいる。しかし、的場で稽古をする大八郎の表情は暗く心に屈託があった。小松屋の下男で大八郎を見守り続けた甚兵衛(横山運平)は、毎日8000本程成功していた弓が、最近5000本程しか通せず、低迷しているのを、女将のお絹には報告出来ず、安定していると告げ、心を痛めている。また、星野の記録を破られることを嫌う尾州藩のものたちの中には、大八郎に怪我をさせて妨害しようとしていると言う噂もあり、お絹や小松屋の使用人は心配している。ある日、的場での稽古に屈託を感じる大八郎は、街を歩いていて、浪人たちと諍いになる。彼らは、大八郎を怪我させようと尾州藩に雇われている者たちだった。喧嘩の途中に、この若侍が、大八郎だと気がつく。
    4対1であったが、何とか大八郎は逃れ、馴染みの柳茶屋に逃げ込む。茶屋の娘おふみ(三谷幸子)と母親に最近の屈託を尋ねられ、通し矢が失敗した際に、自分は切腹をすればよいが、長い間応援してきたお絹や小松屋の使用人たちの失望を考えると、勝負が怖いのだと、おふみに本心を吐露する大八郎。柳茶屋の座敷には、武士(長谷川一夫)が眠っていた。大八郎たちの話を聞くでもなく武士は去る。
   大八郎がなかなか帰ってこないので、皆心配をし、お絹は甚兵衛に練習はどうだったのだと問い詰める。伝兵衛は、良心の呵責に5000本を7000本と偽るが、このところ毎日8000本と安定していた筈なのに、どこか調子が悪いのだろうかと心配するお絹と、更にいたたまれなくなる甚兵衛。そこに大八郎が帰り、伝兵衛は、救われる。
    しかし、大八郎が帰宅するのを最前の浪人たちが見つかる。彼らは偶然泊まっていた小松屋に大八郎が裏口から入ってきたのを知り、鴨がネギを背負ってきたと小躍りする。小松屋の女中に、和佐大八郎を呼ぶように言い、理由は本人ならばわかるだろうと付け加えた。星野某からの依頼は、殺さず、片腕に怪我をさせればいいのだと声を潜めて打ち合わせた。
     大八郎は喧嘩をした浪人たちだと知り、自分の蒔いた種だと座敷に上がろうとするが、お絹に、大事な身体だから女将である自分が対応すると止められる。お絹は、浪人たちの座敷に上がり、大八郎は大事な客人で、小松屋の中でのことは女将である自分がお相手すると言い、大八郎に怪我を負わせろと命じた雇い主と同額の銭を支払うので、引き取るよう頭を下げた。浪人たちは、無礼うちをすると息巻いて抜刀する。その時、座敷の襖が開き、隣室で飲んでいた男がお止めなされと言った。立ち聞きしていたのかと興奮する浪人たちに、あれた゛け大きな声で話せば聞こえるし、自分たちも壁に耳ありだと話していたではないかと男。これ以上の狼藉があれば自分がお相手すると言う男がかなり腕が立つと悟った浪人たちの頭目は、外で決着をつけようと皆を誘い店の外に出て、そのまま逃げ去った。お絹は、男の名を尋ねると唐津勘兵衛と答えた・・・。

    59年東映京都佐々木康監督『血槍無双(304)』
   桜の下、切腹する浅野内匠頭らしき姿がある。元禄15年10月7日、大石内蔵助(大河内伝次郎)は、山城を出て江戸に向かい、川崎の宿で、原惣右衛門(御橋公)の出迎えを受ける。顔を合わせて、江戸の浪士たちの近況を話し始めると、惣右衛門についていた竹林たびしが、京都のお茶屋でも見かけていた人間であることを内蔵助は見破り、切り捨てる。上杉の回し者だったのだ。浪士たちは、難波屋という酒屋や、美作屋(みまさかや)という呉服屋を経営しながら、主人、使用人などになっているもの、魚屋、八百屋になっているもの、喧嘩安と言われ江戸で顔が売れていた堀部安兵衛は、顔に熱湯をかぶり、人相を変えたという。
    美作屋の庭で、杉野十平次(大川橋蔵)が夜鳴き蕎麦を作り、美作屋主人になりすましている前原宗房(?)にそばを食べさせている。十平次は武芸はさっぱりだったが、料理の味付けなどは器用な二枚目の若者だ。夜鳴き蕎麦屋に化けて、吉良邸を探ろうというのだ。十平次は、当たり屋の平次となって、街を流していると、傷だらけの男たちが、蕎麦を頼む。俵星玄蕃(片岡千恵蔵)の道場に通うが、稽古の厳しさに音を上げている。しかし、玄蕃の妹のお妙(花園ひろみ)に声を掛けられると気付け薬みたいなもので、夢心地だと話していた。十平次は、その話を聞いて、玄蕃の道場に廻って見ることにする。


美作屋を訪れていた吉良の想い人のお蘭(長谷川裕見子 )は、手代姿の平次に懸想する。

    40年日活京都マキノ正博監督『続清水港(305)』


    ラピュタ阿佐ヶ谷で、孤高のニッポン・モダニスト映画監督中平康
    65年日活中平康監督『現代悪党仁義(306)』
    新世界で寿司屋を営む福山(藤村有弘)は、愛人にクラブを持たせようと、三百万を持参して、ある料理屋にやってきた。毎日商事の男(井上昭文)が部長の内田(宍戸錠)は、博打で盛り上がっていると言う。案内された座敷は、まさに内田部長が、極東物産の松本社長と、握りカッパと言う、手の中の碁石が奇数か偶数かを当てるインチキ博打で盛り上がっている。福山はつい、クラブの権利金を百万まけると言われ、その百万を賭けて勝ったことで、虎の子の三百万全額を巻き上げられてしまった。肩を落として帰って行く福山を見送ると、全員で乾杯をし、儲けを分け始める。八人は最初からグルで、内田部長役の日神善六をリーダーとする詐話師たちだ。しかし、パトカーのサイレンが聞こえはじめ、福山が警察に届けたことが分かり、逃げようとするが、皆逮捕される。
   事件から5年後の、加古川刑務所の第18房。眠っていた善六が、急に笑い出す。房の中の囚人たちは驚いて目を覚まし、善六に官房長と声を掛ける。

    62年日活中平康監督『若くて、悪くて、凄いこいつら(307)
    警視庁の正面が映る。場面は変わり、紳士(清水将夫)がベンツを運転している。カーラジオから、新幹線汚職についてのニュースが流れている。事件の鍵を握る佐倉総一郎氏は沈黙を守っていると言うと、運転した紳士はラジオを消す。助手席には、表紙に佐倉総一郎覚書と書かれた大学ノートが数十冊置かれている。紳士は佐倉総一郎本人らしい。
   一方サンダーバードのオープンカーを運転している若者納谷浩(高橋英樹)、後ろの座席で男女が揉み合う声が聞こえる。女の服が外に放り投げられる。お前のバージンをくれという男に一発お見舞いしてたところで、浩は車を止める。女(和泉雅子)を下ろすと、一枚の男もののシャツと赤いハイヒールだけ投げて、車を出す。女の名前は寺田新子。新子のバージンを奪って、今日こそ童貞とおさらばしようとしていた男は、松村俊夫(和田浩治)。
    しばらくして佐倉が運転するベンツが走ってくる。赤いハイヒールを見つけて、車を止めると、男もののシャツを羽織っただけの新子が現れる。佐倉は、新子を助手席に乗せる。「追剥ですか?」「男たちに襲われそうになって。大学の友達の男子二人とドライブに来たらバージンを奪われそうになって、必死に抵抗したの」「おじさまって立派ね。自分の知る男の中で、一番立派な紳士ね。私のバージン上げましょうか」。佐倉は車を止め「不愉快だ。古臭いと言われるかもしれないが、貞操を紙きれのように簡単に捨てる風潮が嫌いな男もいるのだ。もっと、自分を大切にしなさい」と言う。新子は、素直に謝った。しばらく走ると、浩と俊夫が車を降りて、殴り合いの喧嘩をしている。その横を、ベンツが通り抜ける。助手席の窓から新子が、ベロを出して、バカヤローと怒鳴る。
   佐倉と書かれた別荘にベンツは停まった。暖炉の前で火に当たる新子に、佐倉は若い女性もののセーターとスラックスを持ってきて着なさいと渡した。孫娘だった圭子が着ていたものだと言う。新子が、孫娘だった?と尋ねると、1週間前に自殺したのだと答える佐倉。悲しいことを思い出させてごめんなさいと、涙を流す新子。

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