午後は、神保町シアターで、日本映画★近代文学全集。
55年大映東京衣笠貞之助監督『婦系図 湯島の白梅(297)』
早瀬主税(鶴田浩二)は、13年前静岡の大火で孤児となったが、独逸語の大家で、帝大教授の酒井俊蔵(森雅之)に拾われ、教育を受けさせて貰い帝大に進み独逸語の学者として酒井の独和辞典の編纂を手伝っていた。神田の専門学校の教師としての職を得、湯島妻恋坂上52番地に借家で、女中おげんと暮らしている。しかし主税には、大恩ある酒井に打ち明けていない秘密があった。柳橋の芸者蔦吉(山本富士子)と相思相愛になり、牽かして女房としていたのだ。しかし酒井に許しを貰うまではと、家に来客があれば隠れ、茶碗や箸の数さえ気を使う。万事おげんは心得、温かく二人協力してくれるが、気軽に二人で外を歩くことも出来ないまま20日が過ぎた。上野で、東京市の水上大博覧会が開かれ、夜で人出も多いだろうと、二人は出掛けるが、見知った顔に会わないか気が気ではない。事実、酒井教授の令嬢の妙子(藤田佳子)と同級生や、大学で同級生だった河野英吉(三田隆)や宮畑閑耕(八木沢敏)たちに次々と声を掛けられる。その度に、二人は他人の振りをするのだった。河野は、妙子の美しさに目を付けた。
翌日は日曜日、姉さんかぶりをしたお蔦が雨戸を開け、主税の書斎を片付けながら、主税を起こす。布団の中から、後五分寝させてくれと主税は答える。初々しい新婚家庭の休日だが、枕許に散らかる紙を丸めてゴミ箱に捨てはじめ、それは大事な原稿だと叱られて、私は旦那様の仕事も解らない馬鹿な女ですと涙する。そこに魚屋の‘めの惣’(加東大介)がやってくる。そんじょそこらに売っている鯛とは違い生きのいい“てえ”を勧められて、刺身とあら汁にしようとしていると、妙子が訪れる。慌てて隠れるお蔦。酒井の屋敷は真砂町にあるので、真砂町の先生と皆呼んでいるのだが、妙子は女中さんと二人の暮らしでは大変だろうと、重箱に一杯の料理を持ってきて、酒井教授が呼んでいるので、真砂町まで来てくれと言っていると伝言をする。
急ぎ支度をして、妙子と共に真砂町に向かう主税。書生の?に尋ねると、酒井は朝からあまり機嫌がよくなく、用事があるのでちょっと外出するが、早瀬が来たら必ず待っているようにと言っていたと言う。不安になりながらも、病で伏せっている酒井の妻のきん(平井岐代子)に挨拶をする。主税は、酒井家の家族同然なのだ。しばらくして酒井が戻ってくる。主税が独和辞典の原稿を渡すと、酒井は、出版社の人間が辞典の原稿料を為替で持って来たので、現金にしたのだと言って、その金を持って行けと言う。固辞する主税に、一度出した金を戻すような酒井でないと言って受け取らせる。
60年東京映画豊田四郎監督『濹東綺譚(298)』
急ぎ支度をして、
60年東京映画豊田四郎監督『濹東綺譚(298)』
0 件のコメント:
コメントを投稿