2008年11月6日木曜日

大奥、幕末。どちらも新珠三千代、着物が似合う女優No.1

   午前中睡眠クリニック。
    午後は、神保町シアターで、59年大映京都安田公義監督『千代田城炎上(255)』。材木問屋の娘千鶴(新珠三千代)は、大奥に上がったが、一番身分の低い御三の間の奥女中で、死ぬまで大奥から出られない一生奉公だった。継母が連れ子の妹に身代を継がせようと計ったのだ。
   朝から水汲み、掃除、かまど番。おんぼ日傘の千鶴には辛く、おくら(千石規子)らの苛めも酷かった。自殺しようとした千鶴を、おくらは「お前が死んだら私らの責任になるんだ。」と言って止める。大奥には死ぬ自由もないのだ。
  しかしある日チャンスが巡ってくる。新入りは大奥の皆の前で余興をやらされるのだ。普通は裸踊りをして笑われるのだが、千鶴はいなせな若姓姿で見事な踊りを見せる。千鶴の男装に心を奪われた年寄り稲月(村田知栄子)が世話親となり、表役に出世。大奥には稲月と藤波(角梨枝子)という二人の年寄りが世継ぎのことも含めて争っていた。
  ある夜、藤枝の密書を持った不審者を捕らえて、千鶴は更に中老に出世。だが、千鶴は気さくに、御三の間を訪れ、ここで働いた半年が自分にとって幸せだったと言い、おくらを許し、自分付きの表女中にするのだった。
   その頃、新任の大奥担当老中、安藤伊予守(勝新太郎)と会う。改革を熱く語る伊予守に、千鶴は賭け、藤波の密書を預けた。その密書には世継問題で豊千代君の毒殺の謀議が書かれており、藤波以下30数名が大奥追放となった。稲月の天下となったが、父親が死んで商いが上手くいかなくなった。継母と連れ子の妹が稲月に賄賂を贈って大奥御用を頼んできた。千鶴は稲月であろうと不正は許さないと宣告する。
  ある日将軍家治(三島雅夫)が千鶴の美しさに目を止め夜伽を命じたが、断る。前代未聞の出来事に稲月は、打ち首を命じたが、御三の間の奥女中全員が助命の嘆願をし、騒ぎとなった。御台所は、稲月に里に帰って休んだらどうかと告げる。
  しばらくして、千鶴は伊予守の下屋敷に出掛ける。大奥から貰い受けて妻にしたいと告白する伊予守。千鶴は、祐筆の娘が伊予守に恋慕のあまり寝付いていることを伝えるが、最後には、大奥に入った時に女としての幸せを諦めたが、自分も伊予守に初めて会った時から慕っていたことを語った時、江戸城から急ぎの使者が。大奥の千鶴の居室から火が出たという。慌て帰城する千鶴。果たして火事は、千鶴への想いを断ち切れない稲月がやったことが分かったが、大奥は燃え盛るばかり、火の中に投げ遅れた祐筆を助けに燃える屋敷に飛び込む千鶴。祐筆は助けたものの、稲月は、千鶴の目の前で自害して果てた。その頃千鶴を探し求めて伊予守は、燃え盛る火中をさまよっていた。やっと火から逃れた千の前に、戸板に乗せられた伊予守の姿が。燃え盛る柱が倒れてきて瀕死の状態だ。駆け寄ると名を呼んで絶命する伊予守。
  その後、大奥の再建に尽力した千鶴は、年寄りに任じられた。生涯大奥から外に出ることはなかった。
  とてもいい映画だった。火事のシーン、かなり緊迫感がある。新珠三千代は、やっぱりいいなあ。勝新太郎も、その後の猛獣のようではなくて(笑)、真面目に2枚目を演じている。何だかんだ言って、大奥ものは、時代劇の定番だな。 しかし、何だか、江戸時代、女島耕作のよう(笑)。
   神保町で人になど会って再び、65年東宝・三船プロ岡本喜八監督『(256)』。
   桜田門外の変を題材に、水戸浪士たちと、ある大名の御落胤でありながら、身分の違いで辛酸を舐め、侍として取り立てられることを夢見たある浪人の悲しい時代劇。
   尾州浪人、新納鶴千代(三船敏郎)は、水戸浪士たちの井伊大老の暗殺に協力することで、仕官を夢見た。日々、浪士たちが、桜田門を見張っていても井伊は現れない。相模屋での会合の後、一味の首領である星野監物(伊藤雄之助)は、二十人を超えるメンバーの中に内通者がいるのではないかと疑う。特に怪しいのは、一旗揚げる目的で合流したが、氏素性のはっきりしない新納と、ある藩の300石取りのお納度役の身分を捨て合流した、文武両道に秀でた栗原栄之助(小林桂樹)だ。浪々の身で野良犬のような新納と、人格者で妻子との幸せな生活を送る栗原はなぜか馬が合い、新納は、栗原の家を訪れることも度々だった。
   しかし水戸浪士たちは、栗原の妻みつ(八千草薫)の実姉が井伊家用人松平某の嫁であることを突き止め、新納に裏切り者栗原を斬れと言う。悩む新納、しかし斬らなければ、暗殺メンバーから外すと迫られ斬殺する。栗原は「なぜ俺を?」と問いかけながら、死んでいった。
  新納は初めて相模屋に行った時に、女主人のお菊(新珠三千代)を見て驚く。かって、酔った侍に絡まれていたところを救った、さる高貴な家柄の娘で、家柄の違いで恋の成就が叶わなかった菊姫(新珠三千代)と瓜二つだったからだ。相模屋で酒を浴びるほど呑みながら居続けた末、お菊に勘定と立ち退きを言い渡されたが、金の無い新納は、幼少から世話になった木曽屋(東野英治郎)に無心に行く。荒んだ姿で5年振りに現れた新納に冷たい態度を取る。暫くして、木曽屋に会ったお菊は、新納の屈折の悲しい理由を知る。
 その後、内部通報者が栗原ではなく、幹部の増井惣平(平田昭彦)だったことが判る。栗原は無実だったのだ。激怒する新納に、監物は、冷酷にならなけらば大願は成就しないと言うのであった。
  いよいよ決行の日が近付いた。水戸浪士と新納の接近の噂を不安がる木曽屋を問い詰めてお菊が聞き出したのは、新納の父が井伊直弼だという非情な事実だった。新納は、その事実を知らない。折り悪く、水戸浪士の一人が二人の話を盗み聞きしていた。監物は、決行の日の早朝に新納を斬り捨てる刺客を送ることと、隊の不名誉を隠ぺいするために、記録から増井と新納の存在を削除することを命ずる。しかし、何も知らない新納は、早朝襲ってきた刺客たちを返り討ちに。
   井伊直弼の登城を待ち伏せする監物たちのもとにやって来る新納。驚きながらも、何事もなかったように新納に、井伊の首を上げることを指示する狡猾な監物。大老井伊直弼の一行が桜田門に現れた。記録からは消され存在しないことになっている新納を含めた水戸浪士は、3月3日の節句ながら季節はずれに降り続ける雪の中を、井伊の駕篭目指して走るのだった。
   『にっぽんのいちばん長い日』を思い出させるような、重厚感にあふれた映像が素晴らしい。時に、登場人物の内面にまで切り込む超クローズアップと、水戸浪士たちや、町道場での稽古など、躍動感溢れる集団のシーンとの対比は、岡本喜八監督の技量を十二分に発揮している。 桜田門外、雪が降り続ける中での死闘は、本当に壮絶で、切ない。
  夜は、外苑前の粥屋の喜々で、元会社の後輩KやAと飯。ちゃんぽんに行き当たりばったりに飲むと、2時間過ぎで終了に。

0 件のコメント: