2008年11月15日土曜日

牡丹と菊。

 テアトル新宿で、若山富三郎×勝新太郎の軌跡
  64年大映池広一夫監督『座頭市千両首(281)』シリーズ6作目。座頭市が、板倉村へやってきた。かって誤って斬ってしまった吉蔵の墓参りに来たのだ。その時村では上納金千両を供出したところだった。しかしその千両は運んでいる所を襲われ、千両箱は転がり落ちた。偶然知らずに千両箱の上に腰を下ろし、かかってきた盗賊を斬ったことで市は、濡れ衣を着せられる。斬られた渡世人は国定忠治(島田正吾)の子分らしい。代官と岡っ引きでヤクザの百々村の紋次は、忠治と市の犯行としながら、農民には、千両をもう一度用意するように言う。実は盗んだのは代官と紋次が差し向けた浪人たちだった。上州の百姓に信頼の厚い忠治を追い詰める一石二鳥の手だ。
   市は、なんとか赤城山に籠もっている忠治に会う。忠治は市が子分を斬ったと思っていたが、子分がそんなことに手を染めていたを知り、市に頭を下げる。紋次たちは、何百という捕り方を山に差し向ける。間一髪のところを市の助けと子分たちの命により、忠治は何とか死地をだっする。市は、紋次が開く賭場に乗り込む。かなり儲けたところで、紋次と用心棒の十四郎(若山富三郎)が現れる。十四郎は上に投げた銭を空中で2つに切り、市が出来るかと35両を賭ける。果たして市の居合いが炸裂見事まっ二つになった穴あき銭。儲けた金で飲んでいると、隣に金を盗んだ二人の浪人が。浪人の帰りを待ち伏せて市が聞くと、斬りかかってきた。今わの際に、金だったら代官に聞きに行けという一言を漏らす。
   代官屋敷に乗り込む市、捕り方に包囲されるが、十四郎は、改めてお前を殺すといって逃がす。代官と紋次は、直訴に及んだ百姓と庄屋を捕え、磔刑に処すと宣告する。翌朝、刑場に連行される行列を市は襲い、庄屋たちを逃がし、再び代官屋敷に。代官と紋次は千両をめぐって仲間割れに。残った代官の前に市は現れた。代官を斬り千両箱を取り戻し、吉蔵の娘千代(坪内ミキ子)に託す。そして、十四郎の待つ決闘の場に。
  市と十四郎の決闘は、騎乗の十四郎が、鞭を使い市を引きずりまわすのだが手に汗握る。全編殺陣が過剰というほど冴えわたっている。しかし、それを美しくしているのは、名カメラマン宮川一夫の技だ。
  72年東宝三隅研次監督『御用牙(282)』。
  北町奉行所の隠密廻り同心の伊丹半蔵(勝新太郎)は、かみそり半蔵と呼ばれている。筆頭与力の大西孫兵衛(西村晃)は、目の敵に。ある日、無宿人狩りで三次(石橋蓮司)を捕えて、島流しになった人斬りの三途の勘兵衛(田村高広)を町中で見かけたというのだ。更に調べると、勘兵衛の女お美乃(朝丘雪路)は、大西の妾になっている。何か陰謀が隠されていると見た。半蔵は、子分の鬼火(草野大悟)、まむし(蟹江敬三)に三次を加え策略をもってお美乃を捕まえ、半蔵の男の武器を使って攻め立てると、ついに、勘兵衛の島流しを見逃すことで、大西は、お美乃と金子50両を受け取ったのだと。勘兵衛と半蔵は橋の上で斬り結ぶ、半蔵はやっとのことで勘兵衛を倒す。
  更に大西に勘兵衛の放免の工作をした人間を調べていくと、大奥の最高権力者のお市の方と、出入りの奥医者稲村玄白(嵯峨善平)が関係していることがわかった。玄白の娘おゆら(渥美マリ)を拉致し、また半蔵は男の武器を使って、おゆらに、お市の方は、おゆらの身体に、役者への恋文を彫りやりとりしていることも分かった。半蔵は、筆頭与力大西と大奥の秘密を握ることで、奉行所の力が及ばない悪場所への追及を続けるのであった。
ヤングコミックに連載された小池一雄・原作、神田たけ志・画の劇画の映画化。大人向けの劇画なので、濡れ場も多いが、半蔵が黙々と男性自身を鍛えているところや、お美乃やおゆらを責めるところは、正直かなり笑える。また、大番所での責め具は、どれだけ効果があるか身をもって体験しなければ、意味がないといって、石抱きなどを、子分たちに命じて、自分で体験するところなど、勝新がまじめな顔でやればやるほど、何だか可笑しい。日本映画低迷期に、新しいエンターテイメント時代劇を作ろうと、勝新と三隅研次監督がやりたいことやったという怪作なんだろうな。モップスが、かみぞり半蔵、おとこ一匹どこへいく~的な主題歌を歌っていて、これも拾いものだった。
  阿佐ヶ谷ラピュタで山下耕作監督特集、68年東映京都『緋牡丹博徒(283)』。明治中頃、岩国の竹花組の賭場で、イカサマを見破った熊虎一家の不死身の富士松(待田京介)を救った矢野竜子(藤純子)。彼女は、熊本人吉の矢野組の組長の娘で、堅気の呉服問屋に嫁入り直前に父親を辻斬りに殺され、嫁入りの話しも破談になり矢野組は解散、女を封印し、敵討ちの渡世人となった。
   面子を潰された竹花組に襲われ危ない所を、渡世人片桐尚治(高倉健)に救われた。父親の死んだ場所に落ちていた証拠の財布に心当たりがありそうだったが、知らないと答え、財布とともに姿を消す。
  ある時、竜子は、道後の熊虎親分にお世話になっている矢野組の三下、フグ新(山本麟一)が不始末をして、松山の岩津組岩津源蔵(金子信雄)と熊虎一家が揉めているという話を聞く。熊虎一家に出向くと熊田虎吉(若山富三郎)は、一目竜子を見て惚れる。富士松が世話になったこともあり、出入りも辞さない覚悟だ。
    しかし竜子は、自分の子分の不始末だと言って単身松山に乗り込む。女と見て舐めていた岩津一家だが、竜子の度胸は圧倒する。そこに居合わせた堂島の堂本組組長“お神楽のたか”こと堂本たか(清川虹子)が、竜子の技量をかって仲裁に入り、岩津組と熊虎一家は手打ちをし、熊虎の妹の清子(若水ヤエ子)は、兄の嫁になってくれと言うが、結局、熊虎と竜子は兄弟の杯を交わす。
  次に草鞋を脱いだのは、大阪の堂本一家だった。たかの息子善太郎(山城新伍)は、ボンクラで女にだらしない。浪速千成組2代目加倉井(大木実)は、最近大阪を伸してきており、堂島の利権を堂本組から奪おうと思っていた。ある日、片桐が加倉井のもとを訪れる。博多時代に、片桐は加倉井の兄貴分、命の恩人であった。
   しかし、実は矢野組先代の辻斬りは、食い詰めた加倉井が起こしたものであり、竜子が持っていた財布は、片桐が出入りの際に加倉井に預けたものだったのだ。最初は、兄貴分を立てていた加倉井だったが、次第に裏切りを始めた。富士松は、芸者君香(三島ゆり子)と契りを交わした中だったが、借金のかたに加倉井に見受けされるところだった。竜子は、加倉井と君香のもとへ乗り込んで、見受け金に上乗せして君香を譲ってほしいと頼む。博徒同士ならサイコロで決めようと言い出しながら、負けると竜子をものにしようと卑劣な加倉井。片桐は、そこに乗り込み竜子を救う。しかし、竜子が父の仇を教えてくれと頼んでも今は言えないと言って去る片桐。
   千成組は、策略をもって善太郎を人質に、堂島の利権の譲り渡しを迫る。たかは、息子を殺せといいながら苦悩する。善太郎の見張り役をしていたフグ新は責任を感じて、既に千成組に潜りこんでいた。袋叩きにあいながら、加倉井の顔を見て、親父の辻斬りをした人物だと思いだした。片桐によって助けられるが、富士松の家で亡くなった。千成組に向かう竜子、富士松がダイナマイトを腹に巻いて従う。千成組で富士松のダイナマイトと竜子のピストルが炸裂する。途中片桐が現れ助太刀をする。片桐は、加倉井を斬ったが、自分も斬られた。竜子の腕の中で、あんたに殺人をさせたくなかったからと言って息を引き取る。慟哭する竜子。
  シリーズ第1作。よく出来た脚本と、牡丹の花をうまくつかった様式的な映像。藤純子さん美しかったなあ。
   66年東映京都『続花と龍 洞海湾の決闘(284)』
福岡若松港の港湾荷役で玉井組を起こした玉井金五郎(中村錦之助)と妻マン(佐久間良子)が、友田組(佐藤慶)らの妨害にめげず、沖仲士たちの待遇改善のために、荷主との料金交渉のためにも、小頭の組合を作ろうと奔走する姿を描く。友田の手下によって、23か所刺されて瀕死の重体になるが、生き返る。先日観た73年の加藤泰版が、群集劇のような演出だったのと比べると、やはりスターシステムの時代下で、金五郎とマンの夫婦が話の中心になっていて、志を抱いた男と、健気にそれを支える女と本筋を分かりやすく通俗である。通俗が決して悪いわけではなく、単に好みの問題だ。個人的には加藤版の方が好きだが、こちらも楽しめた。なんども映画化されている作品なので、いろいろなものを観たいなあ。

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