2008年11月10日月曜日

そろそろ映画観るのも疲れたな(笑)あるいはブログ書くほうか(苦笑)

   池袋新文芸坐で、58年宝塚映画川島雄三監督『暖簾(267)』。山崎豊子原作、菊田一夫脚色。明治の初頭のある日、浪花屋利兵衛(中村鴈治郎)が大阪の町を歩いていると、一人の小僧が付いて来た。余りに必死に追い掛けてくるので、訳を聞くと、吾助(頭師孝雄)は、淡路島から奉公先を探しに出てきたが、当てにしていた口入れ屋が潰れており、途方にくれ商家の主らしい利兵衛の後をつけていたのだ。自分も淡路の出身でもあり、思うところあって店に置いてやることにする。
   浪花屋は昆布屋の老舗、最初は奥の手伝いだったが、怒られながら、直ぐに店の小僧に昇格した。とにかくよく働き、番頭たちを差し置いて暖簾分けをさせてもらうことになり、八田吾平(森繁久弥)となった。店が順調になった頃、利兵衛と妻きの(浪花千栄子)に呼ばれる。2人は姪の千代(山田五十鈴)を嫁に取れという。実は、この店に来た時からずっと一緒だった女中のお松(乙羽信子)を嫁にと思っていたのだ。自分の気持ちを抑え、千代と結婚して幸せになれと言うお松。結局、千代と祝言を上げる。両親を亡くし叔父夫婦に育てられた千代ははっきりした性格で、初夜から大喧嘩になるが、昆布の新しい商売を思い付いて熱中する二人。
    長男辰平が生まれ、跡取りとして吾平は大いに期待する。次男の孝平(頭師正明)はラグビーに夢中で言うことを聞かない親不孝ものだ。二男一女をもうけ、商売も職人の手作業を一部機械化し、工場を建てるまでになった。しかし、ある日大きな台風に工場は全壊、致命的な損害を受けた。どこからも借金が出来ず、最後に本家に頭を下げに行くが、利兵衛亡き今“きの”は冷たく断る。資産家の後妻となっていた松が夫に頼むと言ってくれたが、千代は店の暖簾を吾平に渡し、商人の命の暖簾を持って、もう一度銀行に掛け合いなはれ!と送り出すのだった。何とか商売は続けられたが、戦争の影が店を覆う。昆布が統制品となり、手に入れにくくなり、辰平、孝平と続けて徴兵された。
   敗戦後の焼け跡に孝平(森繁)が帰って来た。ただ統制は解除されず店の再開も覚束ない。孝平がどこからかリュック一杯昆布を仕入れてくる。期待されなかった孝平のラグビーで鍛えた体力と根性で、浪花屋の再建が始まった。新しい店の開店披露の日、沢山のお得意様も見え、親不孝者と思っていた次男の働きを見て、吾平は幸せだった。松も現れ娘の静子(扇千景)の縁談が決まったという報告に、孝平の嫁にと思っていた千代はがっかりするが、孝平は店の手伝いをしているのぶ子(中村メイ子 )と結婚するつもりだという。吾平は、倉庫の昆布を調べていて絶命する。孝平たちは、昆布に囲まれ死んだ吾平は幸せだったと思うのだった。 
  何だかこのひと月というもの、森繁ばかり見ている気がする(苦笑)。しかし、芸達者だなあ。今こんな人はいないな。川島監督の演出は、最初の浪速屋と吾助が出会って、店に入り修行をしてという子役時代を、タイトルロール終わりまでに全部見せてしまう。監督川島雄三とクレジットが出て消えると、吾助は、森繁になっている。全く無駄がない。大阪の商家の関西弁、京都の色街の美しい京ことば、芦屋のモダンマダムの上品な関西弁、岸和田の極道、神戸の極道、それぞれ違うんだな。今のテレビで聞く関西弁にはない繊細な生活に密着した話し言葉が存在する。
   阿佐ヶ谷ラピュタで山下耕作監督特集。
   68年東映京都『大奥絵巻(268)』。十一代将軍家斉(田村高広)。和泉屋の二女あき(佐久間良子)は、姉で、今では大奥若年寄の浅丘となっている“しの"の引きで大奥に上がった。その美しさは、11代将軍家斉(田村高広)の目にとまり、既に御台所(宮園純子)のお伽辞退をしており、側室となる。勿論、御台所(宮園純子)、大年寄松島(三益愛子)、若年寄藤尾(小暮実千代)らは不愉快である。ある日、松島が浅丘を叱責していて、額を扇子で傷つけたところを、家斉は目撃、御台所らの猛反対にも関わらず、松島のお役を解いて、浅丘を大年寄に。
  町屋育ちのあきは、公家、武家出身の姫君とは違い、人間的な癒しを家定に与えた。ある時、浅丘は、家定とあきを、町屋のお祭りにお忍びで出かけさせた。
  このことは、復讐に燃える松島に伝わり、いっそう互いに権謀術数を巡らす事態となった。浅丘は、告げ口をした飛鳥井(宮園純子)に歌舞伎役者とのスキャンダルを偽装し葬る。松島は、家定とあきの城外への外出の件で、大奥に憧れる和泉屋の三女まつ(大原麗子)を証人に仕立てる。妹まつを見て驚く浅丘とあき。松島のはかりごとだと気がついたまつは口を割らなかった。しかし、不安に駆られた浅丘は妹を刺殺しようとする。それを止めようとしたあきは、浅丘を刺す。浅丘は自分で腹を刺して井戸に身を投げた。しかし、その事件は大奥内に知れ渡り、まつは自分がやったと嘘の供述をする。あきは、まつを逃がし、自らは御台所から贈られた葡萄酒を、毒入りと知りながら飲むのであった。
  大原麗子やっぱりいいなあ。低くて少しハースキーな声で娘役。
   68年東映京都『極道(269)』。釜ヶ崎の愚連隊島村組の島村誠吉(若山富三郎)たちは、富崎新地の富崎パラダイスを石垣組から奪い、釜ヶ崎から進出した。島村を襲ったヒットマンの流れ弾が夫に当たって、小さな子供を抱え未亡人になった千恵子(藤田佳子)に花屋をプレゼントした。島村の妻のみね子(清川虹子)は嫉妬しながらも、夫のキスで丸めこまれる。誠吉とみね子は惚れあっているのだ。兄弟分の大野(大木実)の妻菊子(北林早苗)が、金看板の天野屋一家の5代目の一人娘であることを利用して、強引に6代目を襲名した。しかし、大阪には、城西会という大組織がある。三田村会長(内田朝雄)と、その傘下の八つ藤組の八つ藤(天津敏)の利権に食い込んでいこうと思い、自分を売り込んできた弁護士の江森(金子信雄)を雇う。まず始めに。天野屋一家先代の子分が内職でやっていた、八つ藤組の資金源であるブルーフィルムを大々的に流通させるが、お互いのタレコミで壊滅状態になる。この件で、島村の子分、修(待田京介)が逮捕された。
  その頃、天野屋の代貸だった杵島(鶴田浩二)が出所してきた。杵島は、5代目が跡目を譲ろうと考えていたほどの人物だったが、城西会との抗争で重体になった時に、実は千恵子の父親に治療を受け、千恵子の看病で一命を取り留めた過去があった。大野は、杵島に城西会との抗争で迷惑をかけるので、旅に出てくれというが、千恵子の受けた恩を返すつもりか、単身、三田村、八つ藤たちの会食に切り込んで、八つ藤を刺殺、自らも銃弾に倒れる。
   島村は、城西会憎しで、江森から聞いた城西会の神保が苦労している難波の大規模な駐車場ビル大阪パーキングセンター建設の地上げに関して、3件の地権者の委任状をまとめて建築主から賠償金を脅し取り、建設会社の指定と建築後のパーキングの仕切りを任せるという一筆をとった。
   しかし、警察は、暴力団取締りを強化。まず、富崎新地を検挙、穣次(山城新伍)が逮捕された。城西会も、島村より一枚も二枚も上手だった。結局、大阪パーキングセンターの建設業者の約束は反故に。弁護士の江森は、城西会の神保ともつながっていたのだ。大野まで殺され、島村は、佐々木俊也(菅原文太)、岩田照夫(潮健児)の二人だけを連れて殴りこむ。
   カポネ風のハットと、黒いダボシャツ。アナキズムの象徴としての黒い服装に触れるブログが多いが真偽はわからない。若山富三郎と清川虹子の夫婦というのも、かなり強烈だ。
   63年東映京都『関の弥太ッぺ(270)』。長谷川伸原作。
   渡世人の関の弥太郎(中村錦之助)は川に溺れたお小夜という娘を助ける。茶屋で娘の父親(大坂志郎)と、10年前に生き別れたたった独りの肉親の妹お糸を探し、出会った時のために50両という大金を持って旅をしているという身の上話をしていると、箱田の森介(木村功)が親子連れの護摩の灰(置き引きだろうか)を探していると声をかけられる。親子と50両は消えていた。何とか追いつき父親を問いただす最中に箱田の森介が父親を斬る。虫の息で娘のお小夜を甲州街道吉野の旅籠沢井屋へ届けて欲しいと頼まれる。金も森介が持って行ったようで、貧乏くじを引いた弥太郎は、お糸を連れていく。沢井屋の女あるじお金(夏川静江)、息子銀太郎(竹内享)おすみ(鳳三千代)は怪しむが、結局預かることに。弥太郎が去った後に、お小夜と話をしているうちに、かどわかしにあった娘の子供であったことがわかる。孫娘を抱いて喜ぶお金。
  弥太郎は、訪ねた先の女郎屋で、妹お糸が咳外で亡くなっていたことを知る。
  10年後、妹を見つけることのみが生き甲斐だった弥太郎は、荒んで顔つきも変わっている。各地を旅しては、出入りの助っ人で人を斬り続けている。ある出入りの場で、相手方に加わっていた森介と、以前妹の居所を教えてくれた田毎の才兵衛(月形龍之介)に会う。飯岡の助五郎(安部徹)を裏切って、三人で酒を酌み交わすのだった。そこで、才兵衛は、10年前甲州街道吉野の沢井屋に、45両を預け賃として、孫娘お糸を届けてくれた奇特な渡世人がいて、今では大きくなったお糸が夢にまでみる渡世人を探してくれるよう主お金から頼まれたのだが、心あたりはないかと言うのだった。二人とも知らないと答える。
  しかし、箱田の森介は、博打の金に困って、45両欲しさに沢井屋に名乗り出た。みな10年前のことに、どうも印象が違うようだと思いながら、恩人との再会に喜ぶのだった。しかし、森介はお小夜の美しさに惚れ夫婦にさせろと、戸惑うお小夜に迫るだけでなく、沢井屋の人間に乱暴狼藉を働く始末。病に倒れ茶屋で寝込んでいた弥太郎は、客の話に沢井屋の出来事を知る。回復して、吉野に向かう途中、追ってきた飯岡の助五郎一家に出会う。用事を済ませたら必ず戻るのでしばし待てと、弥太郎は沢井屋に。森介を呼び出し、直ぐに立ち去れという弥太郎に、博打うちが護摩の灰の娘を嫁にして何が悪いとうそぶいて刀を抜く森介を斬る。
   沢井屋へ行き、森介は改心して旅立ち、その際に、45両も花嫁支度にでも使ってくれと預かり、またお小夜の父親は堅気の人間だったと言預かったと嘘をついた。最後に「シャバには、辛いことや苦しいことがたくさんある、忘れるこった・・・忘れて日が暮れりゃあ、明日になる・・・明日は晴れだなあ」と言うと、お小夜の表情が変わった。正に10年前、自分の命の恩人の渡世人が、沢井屋に向かう途中、子供だった自分に諭してくれた言葉だった。「渡世人さん。渡世人さん。」と呼びかけながら、追いかけるお小夜に身を隠してやり過ごし、弥太郎は、飯岡の助五郎たちが待つ場所に向かっていく。

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