2008年11月11日火曜日

おんなは夫のおいどを叩いて出世させなきゃあきまへん。

     しかし寒くなった。もともと夏は暑く冬は寒い方が好きだが、暑がりの寒がりと言う面倒くさい性分だ。この所、映画を見てブログを書くだけの毎日だったが、自分で作った握り飯を持って行ったりもしたので(信じてもらえないかもしれないが)、3食自炊の日もしばしばだ。脳味噌が昭和30年代40年代漬けなので、今日が何曜日かどころか、今自分は何の時代を生きているか曖昧な気分になってきたので、今日は溜まりに溜まった本を読む。しかし現代の本より、その時代の映画監督の本を読む方が苦労しないのが困ったものだ。日が暮れ始めると、活字読むのにも飽きて結局、
    神保町シアターで、59年日活中平康監督『才女気質(271)』。
    京都木屋町の表具屋堤松江堂(つつみしょうこうどう)のおかみの登代(轟夕起子)は、しっかりもの。目を離すとコーヒーを飲みに行ってしまう夫市松(大坂志郎)の尻を叩いて仕事をさせ、失業中の息子令吉(長門裕之)の縁談で京都中を走り回って、西陣の老舗織常(下條正巳)の娘久子(吉行和子)との見合いをまとめた。しかし実は久子は、登代の娘宏子(中原早苗)の同級生で、令吉のガールフレンドでもあるが、登代は知らない。見合いの首尾は勿論上手く行き、失業中だった令吉の就職も決まって、登代は大喜びで、一流の仲人探しを、市松の母で芸妓の置屋を営む、つね(細川ちか子)に頼みに行く。また、弟で婦人雑貨屋の成次(殿山泰司)が次の区議選に出たいと言っているのを、男ならやってみろと励ましたり、妾をしていて別れ話に泣く妹の辰江(渡辺美佐子)にもっと男を見る目を養えと叱り飛ばす。
    しかし、登代の一番の気懸りは、離れに、市松の恩人スミ(原ひさ子)が息子の中国からの復員を待ちながら暮らしているのを、新婚夫婦のために、出て行ってもらうことだ。市松や宏子は反対する。そんな時に、スミの息子一夫(葉山良二)が復員してくることになり登代だけは渋い顔だ。しかし、登代は、飲み屋を営む妹の辰江の2階が空いていることを思い出し、スミ親子を引っ越しさせて、息子夫婦は無事離れに住むことに。一夫と宏子が付き合っていることが登代に知れる。反対するが、宏子は全く聞く耳を持たない。弟は、ダントツの最下位で落選。また、久子は登代が考えていたような、姑の言うことを聞き、家事全般を率なくこなすような嫁ではなかった。ある日、登代に断りもなく外出し、令吉と食事をして帰宅したことをきっかけに嫁姑の争いはピークに達し、久子は実家に帰ってしまう。更に、一夫が宏子との結婚を申し込みにやってきた。登代の反対にも関わらず、宏子は一夫と出て行く。
  さすがの登代も落ち込む。長男尚夫の七回忌がやってきた。尚夫は、勉強が出来、医学部にまで進学したが、学徒出陣で戦死したのだ。次男令吉と長女宏子に期待したが失望したと号泣する。しかし、市松が、久子と、一夫宏子夫婦を呼んでいることを知ると、離れに引き籠って取り付く島もない。
皆白けて帰っていく。市松は、残っていた令吉夫婦にも外出を促す。市松が一人酒を飲んでいると、登代が出てきた。市松の何だか田舎でゆっくり何もしないで過ごしたくなったという言葉に、登代は、市松は仕事をしているからこそ元気なのであって、働くなったら、おかしくなると言い、市松の尻を叩き始めると元気になった。離れに台所を作って、息子夫婦と生活を分けることにすると言いだす。しばらくして、一夫は、警官になり挨拶に来た。完全に復活した登代は、今日も元気に切り盛りしていた。
  中平康という監督は、計算し尽くしたクールな映像が魅力な人だと思っていた。初期の傑作と言われるこの映画では、鰻の寝床のような京の町屋を活かしたアングルなどにも唸らされるが、むしろ京都の市井の生き生きとした人間を描いた脚本と、芸達者な役者を活かした人間ドラマの展開が本当に素晴らしい。芸妓たちや、法事のお坊さん、表具屋の小僧さん、登場する人物全てに細やかなキャラクターが構築されていて、京都の暮らしが伝わってくる。結局、いつも女優なのだが、京のしっかり者の役の主人公を演じる轟夕起子は、『グラマ島~』では、男にすがって生きるしかない年増の女郎役をやっていた、見た目は一緒だが(当たり前か・・・)、全の別人だ。よく似た人かと思ったほど(苦笑)。一番の眼福は、新人だった吉行和子が、初々しく可愛い新妻の好演だ。

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