2008年10月24日金曜日

戦後の日本の原風景とこれからの放送と通信

  午前中本当に久し振りに水道橋の再就職支援会社、1ヶ月振りくらいか。一件求人の紹介があり、それ用に職務経歴書をブラッシュアップ。いもやで天丼食べ(天丼前にたべたのはいつだったか)、
  神保町シアターで55年日活久松静児監督『警察日記(215)』。福島の田舎町の警察署を中心に貧しい故に起こる小さな事件を通じて人間の暖かみや切なさが描かれる。子沢山の巡査(森繁久弥)が保護した捨て子の幼い姉弟(本当に幼い二木てるみの演技が泣かせる)の話や紡績工場に身売りされていく娘と若い巡査(三國連太郎)との話、子供の為の万引き、食い逃げで直ぐ捕まる引き揚げ者(千石規子)、地元出身の大臣のお国入りの珍騒動など笑って泣かせるエピソード満載だが、単なる人情喜劇に終わらない洗練さが、どこかある。若い伊藤雄之助、宍戸錠、三國連太郎らも見ものだか。脇役もとてもよく描かれている。現代の日本にはどこにも無くなった人間と風景。
   六本木ミッドタウンでWIRED VISION主催のセミナー『IPTVビジネスはどのようにデザインされるか~コンテンツ制作の現場から』。IPTVを切り口に、放送通信に関してNHKからのMさん、東海大学の広報メディア学科の水島教授、角川グループホールディングスの角川歴彦会長の講演。それぞれなかなか面白かった。NHKのオンデマンド放送について、かなり誠意溢れる現状と今後の課題説明、水島教授の放送の意味と意義についての歴史的、法理的なところから言及する懇切丁寧な放送通信が持つ問題点、角川会長の業界のリーダーとして、フランクで熱意溢れる2011年に向けた課題。質問者がなかったので、会長に著作権の質問をさせていただいたが、時間をオーバーしているにも関わらず詳細を語って下さった。魅力的な人物だなあ。
   神保町に戻って56年日活久松監督『神阪四郎の犯罪(216)』。石川達三原作の法廷劇。神阪(森繁久弥)は雑誌編集長だが、会社経費の横領と梅原千代(左幸子)と心中を装った殺人と彼女のダイヤの指輪を略取した容疑で逮捕された。著名マスコミ人の女と金に関する大スキャンダルが世間を騒がす中、裁判は始まった。神阪の後見人でもあった評論家の今村(滝沢修)や出版社の事務員(高田敏江)らの証言は、神阪の虚言に満ちた人格と不誠実を激しく非難し、彼が犯人と断定する。愛人のシャンソン歌手(轟夕起子)や、妻(新珠三千代)らは、彼の無罪を主張するが、神阪の生活と性格の謎は深まるばかりである。また、元今村の内弟子で、死んだ千代の日記も神阪との恋愛と裏切りについて書いてあり、更に事実を分からなくする。果たして真実は?証言の相違を分かり易くするために、各証人ごとに、同じ場面を全く異なるやり取りで再現するシーンも多く、全体が111分になり流石に長く感じるが、最後に神阪が、今まで各証人が自分に都合のよい事実だけ述べ、不都合なことを話していないことを、幾つかの衝撃的事実も含め滔々と陳述するシーンは見もの。第三者も、当事者も、誰にも真実は判らないのだと熱弁をふるう。若き森繁の役者としての凄さを思い知らされる。また、神阪と心中をする(殺される?)梅原千代役の左幸子の肺病で弱っていきながら心中(無理心中?)に至る、狂気を感じさせる演技は壮絶で美しい。

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