2008年9月20日土曜日

有馬稲子さん、芦川いずみさん。美人の不幸は切ない。

   阿佐ヶ谷ラピュタで深作欣二監督『軍旗はためく下に』。やはり名作だなあ。左幸子大平洋戦争で死んだが、軍法会議で死刑になったことで戦死ではなく、戦没者にも遺族年金の給付も認められないことに納得がいかず、8月15日になる度に厚生省に書類を提出するが毎年却下されている。敵前逃亡という名も含め当時の事情は全く不明なままだ。毎年現れる未亡人困り果て役人から同じインドネシアからの帰還兵に直接聞いてみろとリストを渡される。そして聞きに出掛けると、それぞれの 証言食い違いについての話も曖昧なものだったが、次第におぞましい敗戦前後の南方戦線での日本軍地獄のような日々とそこに生き抜こうとする夫の姿が明らかになっていく。左幸子は勿論、優陣もいい。亡夫で下士官役の丹波哲郎、部下の夏八木勲、戦地でマラリアで死にかけていて丹波の部隊で唯一復員しスラム街養豚をしている三谷昇、今は寄席ポール牧と帰還コントをしている関武志(ラッキー7だな)など、最近の終戦記念ドラマや回顧的な映画にはない生きるか死ぬかの極限に追い込まれた兵士たちを演じている。ただの反戦映画でもなく、追い詰められた人間、醜いとは一言では言い切れない。
   吉祥寺スカラで『ウォンテッド』主人公のウェスリー・ギブソン。おいおいどころか、列車鉄橋から落として 乗客全員事故死させちゃうんだから、1人消して人を救う のなら、お前を殺せという指令は正しかったんじゃないのかとか、アンジェリーナ・ジョリー主演作品最大ヒットって宣伝は、確かに重要な役で、アンジェリーナ・ジョリーファンの自分にも不足はないけど、主演はないだろ。確かにジェームス・マカヴォイと『イーグルアイ』のシャイア・ラブーフと区別つかなくて、予告編ごっちゃになっているくらい通知名度ない。まあ、このところ、洋画の興行厳しくて必死なのはわかるけど、『ヨコズナ・マドンナ』をジャニーズ映画と宣伝するみたいだと思うぞー。まあこっちはこっちで、大人の事情でマスコミには一切載ってないが(笑)。勿論、ハリウッド大作らしく、映像は派手でかっこよいけど、設定やらおざなりでご都合主義で突っ込みどころ満載。「ありゃねーよなー」「私あそこのところ意味わかんなーい」「おめーありゃなんとかよ」「ヒロくん映画超詳しー。かっこいい」と幸せなカップルのデートムービーとして映画ファンを増やしてくれるといいが。
  またラピュタに戻り、(一人寂しく、中央線の定期券内をうろついているだけだなあ)、58年今井正監督の『夜の 』と65年中平康監督『結婚相談』『夜の 』は、さすが社会派今井監督の時代劇第1弾、全く救いがない。『武士道残酷物語』では、封建時代の主従関係だったが、ここでは、封建時代の夫婦の愛、も、同じく、これでもかという不幸。参勤交代で江戸詰めから戻った下級武士が、不義密通が、藩内中でのまとになっていることを知る。下級武士を三國連太郎、お嬢様といってもいような美しい若を有馬稲子。三國連太郎息子よりもカッコ良かったんだなあ。有馬稲子も、人妻役なので鉄漿をひき、を剃っているが、綺麗だったんだなあ。それだけに、夫婦降りかかった不幸切ない
  『結婚相談』は、最も好きな 女優である芦川いずみを、これでもかと不幸な女に突き落とすなんてひど過ぎる。何だか、観ていて腹が立ってくる。確かに当時30歳女性に対するエイジハラスメントは想像を絶するものだったかもしれないが。こんなに寄ってたかって、結婚していないオールド ミス幸せになる資格はないと決めつけることはない。それも、あんな可憐な芦川いずみさんを!!全作品を見ているわけではないので、間違っている かもしれないが、この後、主演というより回り、数年後に藤竜也と結婚して引退したことに、この作品を見て、初めて何か安堵した。幸せを掴んでよかった。芦川いずみは長女次女は山本陽子、弟は、中尾彬山本 陽子 かわいかったなあ。中尾彬、でこそ渋い演技派のをしているが、ただのそこらへんにいるイケメン大根だったんだなあ(笑)。ちなみに縦横でみると、水平は現在の三分の一、ひょろっと背が高い人だった。他人のことは言えないが(笑)。母親を浦辺粂子、結婚相談所の悪徳所長を沢村貞子、コールガール仲間が笹森みち子。平凡な幸せな家庭を築くことを予感させる、とってつけたようなラストシーンを見せられても、なんだか、そのまま帰る気になれなくて、阿佐ヶ谷の中華定食屋で、餃子と肉野菜炒めでビール。ただ阿佐ヶ谷の店は、客と店の人の距離が西荻よりも圧倒的に近い。しみじみ飲もうと思っても、なんだか色々愛想よく話しかけられ、ちょっと困るのだった。

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