旗の台の事務所まで、年賀の挨拶。その後、超遅昼御飯を食べながら、N氏と作戦会議。
角川シネマ新宿で、大雷蔵祭。
67年大映東京井上昭監督『陸軍中野学校 密命(1)』
昭和15年初夏上海。椎名次郎(市川雷蔵)は、中国人の姿をした憲兵隊員に逮捕された。辻井機関に所属する特務将校だと名乗っても全く弁明を許されず、東京憲兵隊に護送された。
特高課長(久米明)は、重慶側のスパイに軍の機密情報を金で売った嫌疑が掛かっていると言う。陸軍省兵務局の草薙中佐に連絡をしてもらえば、そのような人物ではないと証言してくれると言うが、取調官から電話を受けた草薙(加東大介)は「お前が、国を売るような奴だとは思わなかった」と取り付くしまもない。後は、白状しろと、終日竹刀によって、問い詰められるだけの毎日だが、全く心当たりの無い椎名には、喋りようがないまま、一週間が過ぎる。
同房の初老の男は、元外務大臣の高倉秀英(山形勲)だった。親英米派で、戦争拡大を防ごうと動いている高倉の言動と行動は軍部にとって目障りだったのだ。紳士的で理知的な高倉と椎名との間に、信頼関係が生まれる。神経痛の高倉の背中と腰を揉んでやり、小便が近い高倉の為に、看守(黒木現)に意見をする椎名。
ある日、椎名は中尉から一等兵に降格を命じられ、更に一週間経った時に、突然不起訴となり、更に原隊に復帰することなく、召集解除と申し渡され釈放された。高倉からは、また会おうと声を掛けられた。不思議なことに、全く心当たりがない三平と名乗る男が、叔父さんの代理でもらい下げに来たという。取り敢えず、三平に話を合わせて、釈放される椎名。「そろそろもう良いだろう。本当のことを言えよ」と椎名は声を掛けるが、男はとあるアパートの二階の部屋に入っていく。そこには、草薙中佐がいた。「少々荒っぽい呼び出しで申し訳なかった」と頭を下げる草薙。三平と名乗った男は椎名の後輩の中野学校三期生狩谷三吉(山下洵一郎)。
今回の任務には同房の高倉に関係があった。政界上層部にキャッツアイと言うスパイが潜入し、機密情報がイギリスに漏れていて大問題になっていた。キャッツアイとは、シンガポールにある英国諜報部のキャップだ。昨年の10月に入国した形跡があるが、一切招待が分からなかった。椎名と同期の久保田に探らせていたところ、高倉の近くにいるのではとの情報を掴み絞り込んで特定するに至ったが、草薙に報告をする直前、多摩川河原に死体で発見されたと言う。久保田の手帳には、あまりに意外な人物なので、もう少し証拠を掴もうとしていたことが書かれている。
さっそく、椎名は、箱根の高倉邸に出向く。近くの道で自転車のチェーンが外れて困っている娘(高田美和)がいる。椎名は声を掛け直してあげる。喜んで去っていく娘に手を振る椎名。玄関に出て来た女中のまつ(橘公子)は、椎名を怪しんで中々入れてくれない。先ほどの自転車の娘が椎名に気がつく。彼女は、高倉の一人娘美鈴だった。右翼からの脅迫が続き、まつは過敏になっていると美鈴は言う。しかし、高倉は警察の警備などはいらないと断ってしまうので、椎名に警護をして欲しいと美鈴は頼んだ。高倉も、2,3日温泉に入って行きたまえと言い、椎名は高倉邸に潜り込むことに成功する。
翌日、釈放されたばかりの高倉の慰労を兼ねたパーティが開かれる。参加者は、リーマン英国大使夫妻、カールソン米国大使夫妻、マニエル仏大使夫妻。更に、久保田が怪しんでマークしていた、ロジャース神父、ヘイドン特派員、クラーク?、日本タイムスの坂上武(北龍二)、ウィーン大使の未亡人浅井夫人(野際陽子)も参加している。流暢な英語による会話とスマートなダンスで出席者に近づく椎名の姿を見て、高倉は怪しむ。酔い潰れた浅井夫人の代りに運転して送って行ったと聞いて、美鈴に「随分沢山の海外駐留武官を見て来たが、あんなに英語が流暢な男はいなかった。ひょっとすると椎名は、自分に何か意図があって近づいてきたのかもしれない」と言うが、椎名に好意を抱いている美鈴は否定する。
浅井夫人を家まで送った椎名は、誘われて同衾する。浅井夫人はモルヒネ中毒になっている。高倉邸に戻った椎名に、高倉は、若い娘がいる家なので、近所への手前もあり遠慮してくれないかと出て行かせる。言われるまま引き下がる椎名。傷つき追おうとする美鈴を止める高倉。
椎名は、久保田のリストで最も弱い浅井夫人をマークする。浅井夫人と一緒に出掛けたダンスクラブ・キャバーンで踊っていると、楽団のクラリネットを吹く男が、かって上海の共同租界で椎名を執拗に尾行してきた男と似ていることに気がつく。浅井夫人と飲みに行く途中、狩谷に電話をして正体を掴めと指令する。そのあと、飲みに行った椎名は、浅井の注射跡に、モヒだろうと問い詰め、どこから手に入れているのかと問い詰める。浅井夫人は、ドイツ大使館に情報を売っているのだと告白する。
狩谷は、クラリネット吹きの男が、小柳(千波丈太郎)という男で、キャバーンには昨年の10月頃やってきたことを掴んだ。丁度キャッツアイが日本に潜入した時期と重なっている。小柳は自転車で安アパートとクラブを往復するだけだが、何故かアパートの前にオースチンの車が止めてあるのだ。更に何故かコーヒー屋のサエグサに週一度通っていることが判明する。更に、サエグサは英国大使館に、コーヒーを頻繁に届けているのだ。
ある日、ドイツ大使館の武官ウィンクラー大佐(フランツ・グルーベル)が、重大な情報が英米に漏れているという忠告が入る。大庭次官(内田朝雄)は草薙を呼び出し叱責する。更に草薙はウィンクラーに、キャッツアイをいつまでも捕まえられないのは、日本の諜報機関は何をやっているのだと罵倒され、切歯扼腕し帰ってきた草薙に、2週間で、キャッツアイを捕まえましょうと言う椎名。そのために、小柳を徹底的にマークしろと狩谷に命ずる椎名。
狩谷は小柳の留守に、部屋に忍び込む。しかし、小柳は戻って来て、銃撃戦になる。小柳は逃走してしまった。椎名は、拙速の末唯一の手掛かりを失った狩谷を責める。「一人のスパイは一個師団に相当する。死をもって失策を償え。遺書を書いて自決せよ」と言う。「どうすれば?」という狩谷に「死んでお詫びいたしますと一筆書いて署名だけすればいいんだ」と言って、手帳と万年筆を渡し、コップの一杯の水に数滴の薬品を垂らし、飲めと言う。震えながらコップの水を飲む狩谷に、「よし、これで中野学校は卒業だ。ただの水だ。とにかく、サエグサを全力で見張れ。」と言う椎名。
椎名は、高倉を訪ね、自分が諜報機関の人間であり、英国のスパイ。キャッツアイを追跡しているのだと告白する。高倉は、スパイは最低の人間であり、自分は一切信用しないと言って、椎名を罵倒する。しかし、高倉邸を去った椎名を追いかけて来た美鈴は、自分が椎名を信用し、椎名の為に、父親を裏切っても、情報を流すと言う。
68年大映東京井上昭監督『陸軍中野学校 開戦前夜(2)』
汽笛が鳴り出港する船の甲板に椎名次郎(市川雷蔵)の姿がある。これは前作密命のラストシーンである。昭和16年11月、支那大陸での戦闘は膠着し、英米との開戦も回避出来ない感が強まって来ていた。椎名の今回の任務地は、英領香港。香港の夜の街外れを歩く椎名。後を付ける影があるが、椎名は巻く。
昭和貿易公司の看板が出ている。椎名に柏木陸軍中佐(内藤武敏) 「そうか、付けられたか」「おそらく、P機関でしょう」「そうだろう、連中は日本人と見れば、観光客でも誰でもつきまとっているからな。紹介しておこう。海軍の情報将校の磯村君だ。表向きは、山本物産香港支社員だ。」磯村宏(細川俊之)「何でもお手伝いさせて貰いますよ」
マレー駐在の米軍のダイク大佐が、11月5日から10日まで、プラザホテルの433号室に宿泊している。その目的は、フィリピン、マレーなど、米英の参謀たちが集まる防衛会議だが、9日の内に、ダイク大佐が纏めた報告書をコピーすることが、今回の椎名の使命なのだ。磯村は、プラザホテルのダイク大佐のすぐ近くの432号室を椎名の為に取ってくれていた。
磯村は、山本物産の支店長令嬢の中田昌子(織田利枝子)と彼女の友人の女医の一の瀬秋子(小山明子)と食事をしようと言う。プラザホテルのラウンジで、昌子と磯村がダンスをしている間、椎名は秋子と話をし、惹かれていく自分に気がついていた。ダイク大佐は、必ず決まって、午後8時にバーに現れ、30分過ごすのだ。9日の夜、椎名は、ダイク大佐が部屋を出るなり、鍵を開けて忍び込む。ダイク大佐は侵入者対策に、ドアに自分の髪の毛を貼り付けておいたが、ドアの下部の隙間から見ていた椎名はそのトラップを簡単に見破った。
忍び込み、ダイクの部屋を調べる椎名。最後にシャンデリアの上に隠された資料を発見し、撮影する。ダイクが1Fラウンジで酒を飲んでいるカウンターの隣には、磯辺と昌子がいる。いつもより短い時間で、切上げて部屋に戻ろうとするダイクに、磯辺はグラスを倒して、昌子に拭かせ、時を稼いだ。磯辺がダイクの部屋に電話をすることで、危険を知らせ、間一髪、椎名はダイクが戻る直前に、髪の毛のトラップも含め偽装し、逃げることに成功する。しかし、一流の軍人であるダイクは、何事かの気配を感じて、P機関に椎名の調査を依頼する。
椎名は、1Fのラウンジに降り、磯村と会話をする振りをして、磯村のズボンの折り返しに、直前に撮影した連合軍の報告書のフィルムを忍ばせる。翌日、任務を無事済ませた椎名が、ホテルを出て歩いていると、路地から出て来た若い中国娘(川崎あかね)が、麻酔薬を椎名に刺す。そして、椎名は拉致される。
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