2010年1月5日火曜日

生誕百年、太宰治、田中絹代、松本清張。生誕51年はマイケル、マドンナ、プリンス、小室哲哉と自分

   角川シネマ新宿で、大雷蔵祭

   66年大映東京森一生監督『陸軍中野学校 雲一号指令(3)』
    昭和14年9月、夜の神戸港、出港したばかりの貨物船が突然、火の手が上がる。次々に起こる爆発音。激しく燃えて沈没する貨物船。その頃、椎名次郎(市川雷蔵)は、中野学校を卒業し、ある任務を命ぜられ、北京に向かって、朝鮮半島を汽車で北上中だった。車掌が、客車ないで、椎名のフルネームを呼んで回っている。椎名が手を挙げると、電報が届いていると言う。草薙中佐からの暗号電報だった。任務が変更になったので、至急引き返して来いと言うものだった。
    神戸の港を見渡す丘で、草薙は椎名に、爆破された貨物船には、北支に派遣予定の幹部士官が94名と、開発されたばかりで画期的な威力を持つ特三式砲弾5000発が積まれていたと言う。この捜査は雲一号と名付けられ、神戸憲兵隊と中野学校に指令されたのだ。開校したばかりの中野学校をアピールするために、草薙が軍令部に無理矢理押し込んだので、何とか成果を上げてくれと頭を下げる草薙。中野学校同期で神戸駐在の杉本と一緒に行動してくれと言う。
    草薙は近くに椎名次郎という表札が掛かる家を用意してくれていた。そこには女中のトメと巡査が待っていた。巡査による身元調査に、24才、兵役検査は第一乙、東亜経済研究所という政府の外郭団体の研究員だと説明した。研究所は、近くの大学の構内にあったが、杉本は現れなかった。神戸港の埠頭に行ってみると、憲兵隊は、港湾労働者たちを片っ端から逮捕していた。椎名も不審者扱いされて、憲兵隊分室に連行される。
    憲兵大尉の西田(佐藤慶)の尋問に「陸軍少尉椎名次郎」「嘘を言うな」「名簿を調べてみるといいだろう」神戸憲兵隊の隊長の山岡中佐(戸浦六宏)の部屋で、中野学校同期の杉本明(仲村隆)に「大変だったな」と迎えられる。「邪魔をするな」と釘を差す西田。憲兵隊を出た後、杉本は「すまない、就職活動に忙しかったのだ。今まで荷揚げの労働者に潜入していたのだが、集団で作業する彼らより、一人で工作が出来る倉庫の夜警のほうが怪しいと思って、欠員が出たので何とか潜り込んだのだ。」「で怪しい奴はいたか?」「元川一郎、38歳、独身という男をマークしている」「では、自分が元川を尾行しよう」
    さっそく元川一郎(越川一)を尾ける椎名。元川は、夜景の仕事から帰宅すると、下宿で眠り、昼に中華料理屋の万来軒で食事をし、午後2時に銭湯に行くという几帳面な毎日を繰り返した。しかし、ある日銭湯で、女湯から手が出て、何物かを元川に手渡すのを、見逃さない椎名。女湯の手に填められた指輪をした女が出て行こうとするのを、番台の主人(石原須磨男)が「梅香さん、お釣りだっせ」と声を掛けるのを聞いて、椎名は尾行を開始する。梅香(村松英子)が置屋明田中(あけたなか)に入るのを見届けた。その日、夜景の仕事に出かける前の杉本と打合せる椎名。「そりゃ、なかなか収穫だな。あの梅香は、三業地でピカイチな芸者だ。元川と繋がりがあるのは怪しいな」「梅香は、新潟出身で、半年前に神戸に流れて来たらしい」「どうする調べに行くか?」「いや、学校にいる久保田に頼もうと思う」「そりゃいい、中野学校の講師として残らされた久保田は相当溜まっているらしいからな。喜ぶぞ。そうだ、未確認の無線電波が出ていることが分かった。今度の日曜日に探しに行こう」
  夜警の宿直室で、杉本は元川にカマを掛ける。「元川さん!妹がいるのかい?」「えっ私に身寄りは一人もいませんよ」「あれ、この間、若い女と歩いていたのを見かけたんだ。あれは元川さんのいい女かい?」「そりゃないですよ。私は昔女にはエライ目に逢って、懲りたんだ。金輪際女には拘わらないことにしたんだ」尻尾を出さない元川。
  休日、神戸の街を見渡せる丘の上を歩く椎名と杉本。丘の上の公園で椎名は声を掛けられる。「やあ!三好くんじゃないか」「佐々木くんじゃないか!!」大学で友人だった佐々木(中野誠也)だ。佐々木は妻の邦子(香山恵子)と娘と一緒だった。「君は確か東日新聞に入ったんじゃなかったか」「そうだ、東日の特派員として上海に行った。その後、上海興明日報という中国系新聞の神戸支局にいる。君は、確か陸軍に入ったんだよな」「胸を悪くして、軍隊を辞めて、東亜経済研究所というところで研究員になった」「椎名と言ったな、君も結婚したのか?」「いや母方の姓を名乗ることになったんだ」佐々木の足許には、大きなシェパードがいる。「軍用犬協会から飼育を依頼されてな。食料代が掛って大変なんだ。また、会おう」
  佐々木と別れ、神戸の高台の洋館を眺め、「随分外国人が多いじゃないか」と椎名。暗号電波を発信している家はどこなのか、手掛かりはない。しかし、高台を下ったところにある教会の前で、ジョセフ神父(H・ジョンソン)と話している男を見て椎名は「あいつもクリスチャンなのか?おかしいな」その男は、元川が通っている中華料理屋の万来軒の主人だった。元川、万来軒、教会、梅香・・・すこしずつ手掛かりが見えて来た・・・。
   しかし、再び特三型砲弾を積んだ貨物船が爆発し沈没した。今回の輸送には、神戸憲兵隊も厳戒態勢を引き、極秘にしていただけに、山岡中佐、西田大尉は顔色を失った。
   椎名は、陸軍研究所の技師を装って、お茶屋に梅香を呼ぶ。売れっ子の梅香はなかなかお座敷に来ない。やっとのことやってきた梅香は、十八番を踊るが、軍隊っぽくて暗いから止めろと椎名。年増芸者(毛利郁子)は「そんなこと憲兵に聞かれたら、大変なことになりまっせ」と言うが、「憲兵がなんだ!俺を逮捕したら、逆に大変なことになるのは、あっちの方だ」と取り合わない。しかし、再び、梅香が他の座敷に呼ばれると、「梅香さんの御贔屓は、憲兵隊の隊長さんでっせ」と芸者。  
   ある夜の倉庫の宿直室、元川と杉本が眠っていると、元川がそっと起き上る。勿論、その気配に気が付き後を尾ける杉本。元川は、倉庫に入り、特三号砲弾の積荷を確認すると、何かの作業を始める。「元川!!何をしている!!」と杉本が大声を出すと、逃げる元川。何度か追いついて格闘するが、最後に、手に持った爆発物の発火装置のスイッチを押して、海に飛び込み、爆死する元川。
   翌日の憲兵隊分室、西田は「功を焦って、自決されたのは杉本の責任だ」と激しく非難した。元川のアジトに隠されていた爆発物は、煙管に擬装されていて、爆破実験をするとかなりの威力であることが分かる。そこに、久保田からの梅香に関する調査結果が届けられた。幼い頃に両親に死なれた梅香は、芸者になり苦労して、各地を転々としたらしい。田中正三という同じ境遇の幼馴染がおり、右腕に正の時の想い墨を右手に入れているということだ。さっそく、椎名は座敷に梅香を呼び、手相を見てやると言って、梅香の腕を確認する。梅香の手に三味線胝がないことに気がつき、梅香が神戸の前にいたという大津に調査に出掛ける椎名。
   大津の調査には大変苦労するが、ようやくかって一緒に芸者をしていて今は焼鳥屋のおかみ(近江輝子)を探し出す。梅香は去年の8月頃、相手のことを詮索しないでくれと言いながらも、かなりよい縁談があると、この街を出て行ったと言う。梅香の素性には謎が多い。
   その夜、佐々木は妻と寝ている寝室から下宿人の日本造船の設計部に勤める堺(木村玄)の国民服を盗む。堺の服を着て、守衛(尾上栄五郎)に重大な忘れ物をしたと言って、堂々と日本造船の構内に入った。鉄条網で厳重に警戒された高い塀際で、声を掛けると、犬が中に飛び込んで来る。犬の首輪に付けた超小型カメラを取ると、設計部内に入り、戦艦の設計図の撮影を始める。作業が終わると、再び犬の首輪にカメラをつけ、何食わぬ顔で門外に逃がし、自分は正門から堂々と出た。
   明田中を見張っていた杉本は、梅香が出て来たので尾行する。街中で、周王洋(伊達三郎)と待合わせ、教会に入って行く梅香。跡を追って、教会に入るが、梅香の姿はない。ある部屋の中で、梅香と周王洋の姿がある。「許婚の件について教えなかったのはこちらのミスだった。この自白剤を打たれても、自分の恋人は田中正三だと証言できれば大丈夫だろう」梅香に自白剤を注射して、尋問のテストをしている二人。その部屋の前で盗み聞きしようとした杉本は、佐々木の犬に吠えたてられて逃走する。
  再び、梅香を座敷に呼んだ椎名は、梅香に血液型がO型だと聞いたうえで、梅香の吸った煙草を、久保田に送り血液型の検査を依頼する。
  横浜港から出国しようとしたスパイを水際で逮捕したところ、日本造船の神戸造船所の軍艦の設計図の写真を持っていたことが判明し、神戸憲兵隊の面目を失う事件が起こった。佐々木が帰宅すると妻の邦子から離れを間貸ししていた堺がスパイ容疑で逮捕され、特高刑事が家宅捜索に来ていると言う。正門からの入構、出構したのが堺のみだという証言が守衛からあったというのだ。特高刑事に、「あの晩ですか・・・」と思わせぶりに証言する。
  憲兵隊に逮捕され、西田に執拗に尋問され憔悴しきった堺の前に、佐々木が証言者として呼ばれ「あの晩、僕は、君が出掛けて行くのを見てしまったのだ」と言うのを聞いて愕然として、「あの日、不眠症だという僕に、ドイツ製のよく効くという睡眠薬を飲ませてくれたのは佐々木さんだったじゃないですか!!」と抗弁するが、西田には全く聞いてもらえず肩を落とす堺。
   椎名は日本造船の構内を隈なく調べる。壁に犬が蹴ったような跡があり、梯子を登って鉄条網を調べると犬の毛が引っ掛かっていたことを発見する。佐々木の務める新聞社に憲兵隊が急襲し、佐々木は逮捕される。

久保田(森矢雄二)医師(原聖四郎)

    67年大映東京田中徳三監督『陸軍中野学校 竜三号指令(4)』
    中国の荒野を、日本陸軍のサイドカー付きバイクと乗用車が疾走している。小屋から、ワルサーの自動小銃が乗用車のタイヤを狙撃する。急停止する車とバイク。そこにトラックがやってきて、ダイナマイトを投げる。全員が死亡した。
   草薙中佐(加東大介)に呼び出された椎名次郎(市川雷蔵)。膠着した中国戦線を打開するため、重慶政府との和平交渉に向かった日高大佐たちと、出迎えの兵士?人が全滅された事件は、上海の軍ルートからの機密情報の漏洩が原因だと考えられ、椎名には、上海憲兵隊と共に徹底的に調査することが命じられた。竜三号指令と名付けられた。このテロ団の規模は大きく、乗り捨てられたトラックには、口径7.63mmのモーゼルの薬莢と、何故か078と刻印が打たれた1$銀貨が残されていた。南京に行っている杉本と行動を共にしろと言う草薙。また登戸の研究所で開発された新兵器を渡された。
椎名は、指令を受けた3日目の午後には上海の日本人租界にいた。日本人経営のホテルに旅の荷をほどき、

 「神よ、与えよ万難、我に。」

  池袋新文芸坐で、生誕100年 文豪・松本清張と映画

  63年松竹大船川頭義郎監督『風の視線(5)』
    冬の雪原で三脚を立て撮影する男(園井啓介)。タクシーに戻って来ると、作家の富永弘吉(松本清張)と編集者の角谷(矢野宣)が待っている。「奈津井くん。先生がびっくりしているんだ。結婚式を挙げて、花嫁を置いて、こんな所まで撮影に来て…」「花嫁さんとは浅虫温泉で落ち合うんだろ」タクシーの運転手が「写真さ撮るなら、十三潟さ、行くといいべ。何にもない」「いいですね。行ってみたいな」と奈津井。富永が「若い人は気が短いなあ」角谷は「もういい加減にしないと奥さんが可哀想だ。勿論、家庭にうつつを抜かして貰っちゃ困るんだ。新進写真家としての君を評価して、この作家と旅の企画を頼んでいるんだから…。しかし、今回は流石に新婚旅行の最中なんだから」「いや、僕は仕事を優先しますよ」
   青森駅前でタクシーから降りる奈津井久夫。浅虫温泉の旅館に一人待つ千佳子(岩下志麻)がいる。女中「ご主人様がお見えになりました」千佳子「お帰りなさい」何だか他人行儀な千佳子。新妻だからと言うだけではなさそうだ。女中「お食事になさいますか」「いや、風呂を先にしたい」浴衣を用意しながら女中が「奥様もご一緒に」「私は後からにします」支度をしに女中が出ると、奈津井「君は食事は?」「いえまだです」「僕の仕事は普通の人とは違うので、気を使わないで下さい。待っていられると恐縮だ。」「分かりました」風呂から出た奈津井が、千佳子と膳を囲んでいる。「君もビール飲むかい」「いいえ、私はジュースを…」「おめでとう!!」と奈津井はコップを掲げるが、千佳子はまだジュースを自分のコップに注いでいる。「君は僕の写真を見たことはあるかい?」「いいえ」「写真に興味はあるかい?」「特には…」弾まない会話。千佳子が風呂から部屋に戻って来ると、奈津井は既に眠ってしまっていた。
奈津井久夫(園井啓介)千佳子(岩下志麻)龍崎重隆(山内明)亜矢子(新珠三千代)姑聡子(毛利菊枝)妹啓子(中村たつ)夫義昭?久世俊介(佐田啓二)英子(奈良岡朋子)山岡ミチ(小林トシ子)作家富永弘吉(松本清張)写真家長沖保(滝田裕介)編集長窪田清人(野々村潔)文化部長(加藤嘉)望洋閣番頭(遠山文雄)

   61年ニュー東映石井輝男監督『黄色い風土(6)』
   東京駅、東海道線のホームに、週刊東都の記者、若宮四郎(鶴田浩二)がやってくる。ホームには、熱海に新婚旅行に出かける二人を祝福する人々で溢れている。「成程、文字通り新婚列車だ」と思いながら若宮は乗り込む。「おっ、いい匂いがする。カトレアの香水だろうか。」カップルだらけの座席に、一人、女(佐久間良子)が座っている。「そこ空いてますか」頷く女。発車間際に男女が乗り込んでくる。服装は新婚だが、見送りが一人もいないことが若宮は気になった。発車する。横に座ったカトレアの匂いのする女は、原書で哲学書を読んでいる。「列車の中で、哲学書を読むなんて、何者だろう。カトレア・・・。カトレアの女だ。」
  熱海で下車し、東都新聞の熱海通信局の村田(春日俊二)とつるやホテルに行く。このホテルに泊っている評論家の島内輝明(柳永二郎)にコメントを取りに来たのだ。フロントの春田(増田順司)は満室だと答えたが、村田が島内先生に会いに来たんだと告げると、部屋を用意する。列車の中で気になった新婚夫婦がチェックインするのを目撃する。
  若宮が618号室で待っていると、島内から、今晩は遅くなるので、翌朝8時に屋上の喫茶室で会おうという伝言が入る。突然、大きな洋服の箱を持った男が入って来て、「洋服の用意が出来た」と言うが、心当たりのない若宮がその旨を伝えると、男は慌てて出て行った。部屋を間違えたようだ。

木谷編集長(丹波哲郎)奥田正一(内藤勝次郎)妻(吉川満子)田原(曽根晴美)珠美(小林裕子)児玉(須藤健)野村(若杉瑛二)村田の妻(藤里まゆみ)谷川由美(八代万智子)島内夫人(故里やよい)岩淵安男(北川恵一)倉田敏夫(大東良)桜井(神田隆)

0 件のコメント: