2009年10月24日土曜日

俳優 佐藤慶。

   阿佐ヶ谷ラピュタで、俳優 佐藤慶

  68年大映東京増村保造監督『大悪党(602)』
 ボーリング場、ヤクザの安井一郎(佐藤慶)の視線の先は、ボーイフレンドの大学生(森矢雄二)と別れ話をする太田芳子(緑魔子)の姿がある。芳子は洋裁学校に通う二十歳、長野の有名高校の校長を父に持ち、いつまでも身体を許さない芳子に男は耐えられなくなったようだ。一人残った芳子に、安井が声を掛ける。
  5ゲーム程一緒にボーリングを楽しんだ後、安井は芳子をバーに誘う。お酒は飲めないと言う芳子にバーテンの男(三夏伸)は、そうしたご婦人にとカクテルを勧める。しかしバーテンは安井とグルだった。「安井さん上玉ですね」「狙って1ヶ月掛かったんだ。組が無くなって、金を稼ぐのが面倒になった」「自分は、こんなザマですよ。」飲まされたカクテルのせいで、フラフラになった芳子を、安井は自分のマンションに連れ込み、服を脱がし、処女を奪う。翌朝、目を覚ました芳子は、自分が全裸で、安井の隣で寝ていることに気付いた。慌てて服を探し、ハンドバッグの中に、学生証があることを確認し、安井に気付かれないように逃げ帰った。
 そんな出来事を忘れようとするように、一心不乱にミシンを踏む芳子の姿がある。下宿のドアを叩く音がし、入ってきたのは安井だ。「探したぜ」と口を開き、下宿の管理人に縁談の身元調査だと偽り、学校や長野の親のことを聞き出したと言った上で、芳子の裸の写真を取り出す。驚いて破る芳子に、ネガがあるので何枚でも焼けるから無駄だ、ネガまで返して欲しければ一回だけ、自分の言うことを聞けと脅す安井。
   あづさプロダクション。「ブルー・トランペット」がヒットし人気スターになった島輝夫(倉石功)のマネージャー(内田朝雄)は殺到する電話を断っている。事務所に安井が現れ、島に声を掛ける。周囲に気を使うように、別室に安井を案内する島。「人気者は大変だな。3万円で女を世話してやる。」「いいですよ。」「へんな商売女だと思っているのかもしれねえが、洋裁学校のお嬢さんだぜ。」「女の世話はいらないので、金だけ払います。」「お前、偉くなったな。俺に金を恵んでくれるのか…。新人時代、どれだけウチの組がお前のバックアップしたか忘れたのか。」「そんなことないですよ」「暴力団が表に出られ無くなって、俺も苦労しているんだ…。」「分かりました」「じゃあ、今夜10時に、地図のマンションの603号室に来てくれ。これが鍵だ。」
    その夜赤坂スカイハイツに入って行く、サングラスの島の姿がある。部屋に入ると、芳子がいる。「思ったよりも、君は上等だな」島は明るいまま、芳子を抱こうとする。「灯りを消して下さい。」「俺は客だ。俺は明るいのが好きなんだよ。」芳子を無理矢理ベッドに押し倒し、のしかかる島。
   「気に入ったよ。また頼むよ。」「私はそんな女じゃありません。」そこに、8mmカメラを廻しながら、安井が入ってくる。「これはなかなかいい、白黒ショウが撮れた。」「安井さん!俺を騙したのか」「そいつは俺の女だ。人気スターが、ヤクザの女とやっているブルーフィルムは高く売れるだろう。」

    67年表現社篠田正浩監督『あかね雲(603)』
    昭和12年8月10日、福知山歩兵連隊駐屯地。起床ラッパが吹かれる。哨兵交代の時刻だ。清川誠と三枝数男、二人の二等兵は脱走した。山中の民家で私服を奪い着替えてから、二人は舞鶴線を別の駅から乗って合流しようと約した。三枝が乗った汽車が黒谷駅に着く。しかし、彼が見たのは4人の憲兵に取り囲まれ、逃げる清川(織本順平)の姿だ。追い詰められ、反対から来た機関車に飛び込む清川。
   輪島にある旅館さのや。そこに19才の女中二木松乃(岩下志麻)が働いている。近くのカフェの女給の律子(小川真由美)は、気に入った客をさのやに連れて来る。身寄りもなく食べるために春をひさぐようになった律子は、純真で人を疑うことを知らず、病身の父親のために健気に働く松乃を妹のように可愛がっていた。
  ある日松乃を兄の勇(河原崎長一郎)が訊ねてくる。召集令状が来たので、神経痛に苦しむ父親たちのことを頼むと会いにきた兄に、一円少ししかない有り金全てを渡し、両親のことは心配するなと送り出す松乃。父親の治療費のことで悩む松乃に、自分は、生きるために好きな男たちと寝る自分を淫売と言って軽蔑するさのやの女将たちや、輪島の街が嫌になったので、山代温泉に行って芸者になるのだと言う。山代の旅館の女中なら、今より給金が増えるだろうと松乃も誘うが、松乃は決心がつかない。
   ある日、松乃は、山代に出た律子からの誘いの手紙をさのやの女将に見つかり、叱られていた。そこに、缶詰会社の外交員だと言う小杉稲介(山崎努)が、さのやに客として訪れる。知り合いから山代温泉に来ないかと誘われていて悩んでいると打ち明け今3円しか貰っていないと言う松乃に、小杉は北陸三大温泉の山代に出れば7円でも、8円でも貰えるだろうと言う。山代の旅館なら知っているところも多いので自分が紹介してやってもいいと言う。誠実そうな小杉の言葉に、一銭でも多く仕送りをしたい松乃は、輪島を出る決意をする。
  踊りの師匠のところから、置屋の山野屋に戻ってきた律子を、松乃が待っていた。松乃の決意を喜ぶ律子。小杉が紹介すると言う旅館くらやにも、文句はなかった。しかし、律子はその夜から馴染みのご隠居と出掛けなければならなかったので、翌日松乃は独りで、くらやに小杉を訪ねる。
  小杉は、実家にお金を沢山送りたいのだったら、女中よりも仲居になったほうがいいと言う。綺麗な着物を着て、客にお酌をするだけで、何倍もお金が貰えると聞いて頷く松乃。小杉は直ぐに仲居置屋の里見に連れて行く。女将の里見チカ(宝生あやこ)は、若く美しい松乃を見て喜ぶ。小杉は里見から、三十円程の紹介料をせしめたようだ。
   帰って来た律子は、松乃の話を聞いて激怒する。仲居と芸者は、同じように着物を着て化粧をするが、踊りや歌、三味線など芸を売る芸者と違って所詮、女を売る仕事だ。旅館の女中から頼まれれば、客と一夜を共にしなければならないのだ。更に里見の仲居たちは、男を金で品定めするようなところがあり、評判が悪いのだ。世間知らずな松乃と、そんな松乃を騙して仲居に売った小杉に文句を言いに、律子は松乃を引きずるように出掛け、松乃を神社に待たせくらやに乗り込んだが、朝一番で発っていた。神社で、天涯孤独な自分が妹のように思っている松乃の身の上を思って泣く律子。自分も姉のように慕っている律子が、小杉のことを悪く言うので、どうしていいか泣き出す松乃。
   ある日、田舎の母親から手紙が来る。父親の神経痛がヒドくなり入院させなければならなくなったので、金を送ってくれないかと言うのだ。女将に相談したが、既に今月は、一度前貸ししているし、着物代や食費などを足すと、売上よりも上回っていると断られる。困っている松乃にお座敷が掛かる。行ってみると、小杉がいる。お世話になっている久能川市次(花柳喜章)に抱かれてくれないかと頭を下げられる。その代わり、久能川は百円のお金を出してくれると言う。小杉のためになるのかと尋ねると、頷く小杉に、松乃は、律子に相談しようと置屋に行くとお座敷だと言う。
  困った松乃は、小杉に抱かれるつもりで、久能川に抱かれると小杉に伝える。
郵便局から田舎の親に90円を送った松乃を、律子が待っている。くらやの女中に聞いたが、小杉が連れてきた久能川と言う男に水揚げされたと言うのは本当かと尋ねる律子に、どうしてもお父ちゃんの入院費のために大金が必要な自分に、久能川を紹介してくれたんだと答える松乃。水揚げ代が百円と言うのは安すぎる。絶対ピンハネしていると怒り狂う律子に、小杉さんは大金が必要な私に力を貸してくれた親切な人だと言い張る松乃。
   ある日、松乃は抱輩の徳子と金沢に出掛ける。嘘をついて、松乃は、北日本食品に小杉を訪ねる。久能川は、小杉が何日も休んでいる、松乃が気に入ったので、またお座敷に呼ぶと言う。久能川に聞いた宿に小杉を訪ねる松乃。小杉は、自分は脱走兵だと告白し、松乃を久能川に売ったのは自分だと言い、しきりと詫びるのだった。
   数日後、里見を憲兵隊少尉の猪股久八郎(佐藤慶)が訪ねてくる。小杉は脱走兵の三枝数男だと言う。久能川が、小杉を売ったのだ。脱走兵だと知りながら、いいように使って、密告して捨てる。酷い男だ。松乃が金沢に行った際に、北日本食品を訪ね、小杉の宿を聞いて出掛けたこと、久能川に百円で水揚げされたことまで、猪股は知っていた。女将は、勝手に水揚げをし、百円貰ったことなど、里見のせいにしたとされ、当局から目を付けられることを嫌い、直ぐに松乃をクビにする。
   一方、律子は、鴨下刑事(野々村潔)に、小杉が松乃にしたことを洗いざらいぶちまけて、松乃を食い物にした酷い男だと訴えた。
   猪股は、小杉を脱走兵として捜索すると軍部の恥になるので非公開で調べているが、実効性がないので、世間知らずの若い娘を食い物にする人身売買の卑劣漢だと、新聞にリークする。
  クビになった松乃は、実家を訪ねる。父親の角三郎(信欣三)は、松乃が送った金で、電気療法を受け、すっかりよくなっていた。角三郎と母親のぎん(赤木蘭子)は、松乃に心から礼を言う。名前の無い封書が届いていると言う角三郎に、松乃の胸がときめく。


   71年日活小沢啓一監督『関東破門状(604)』
    
  関東浜野組若衆頭、寺田組組長の寺田次郎(渡哲也)が、浜野組舎弟頭、総長代理の岩井(加原武門)の叔父貴を刺した。関西の西田会の進攻に、浜松の組を一家を見殺したことに義憤を感じたのだ。寺田の代わりに、沢木(藤竜也)が自首をした。
  浜野組幹部会が開かれている。岩井の後任には、長谷川(山本麟一)がなった。沢木の処遇を決めるにあたって、幹部組長の投票で、寺田を殺ることに反対票を投じたのは、中桐組組長中桐徹(佐藤慶)だった。「中桐の・・・。またおめえさんかい。」「あの筋目をつける寺田が、あそこまでやったということには、それ相応の理由があるんじゃねえですかい。岩井の兄貴のやり方には、俺にもあんまりだと言う思いがある。ことと場合によっちゃ、寺田ではなく、俺がやっていたかもしれねえ。」「中桐の。それじゃおめえは!!」「まあ、待て!中桐の言うことにも一理ある。寺田は無期限の処払い。寺田組は解散。縄張(シマ)は、本家直轄とする。寺田の身柄は中桐に預ける。」と総長の浜野吉太郎(佐々木孝丸)がとりなして幹部会は終わった。苦虫を潰した表情の長谷川。
  寺田組事務所、荷物を運び出し、書面を燃やしている。「沢木は、5年位は出て来れねえだろう。確か沢木には妹さんがいただろう。紘二(郷鍈治)!この金を届けてくれ。残りはみんなで分けろ。看板を取ってくれ」看板を燃やす寺田に、泣く組員たち。
  長野県の上諏訪駅に降り立った寺田を出迎える中桐組若頭の田村(長谷川明男)とタケシ(岡崎二朗)。中桐組の事務所に草鞋を脱ぐ寺田。恐縮する寺田に客分としてゆっくりしてくれと言って小遣いまで渡す中桐。
   その頃、ポンコツな車が長野の手前でお釈迦になっていた。紘二、さとる(武藤章生)、敏夫(長浜鉄平)が乗っている。三人は、渋谷の松木組に預けられたが、寺田を慕ってやってきたのだ。諏訪湖畔のレストランに辿り着いて、寺田に何と話をしようか相談をしていると、店のウェイトレスのミドリ(夏純子)に、入ってきたチンピラたちが絡み始めた。「おお姉ちゃん。付き合ってくれよ。チンピラのタケシといちゃいちゃしても、俺たちとは付き合えないっていうのか?」白井(榎木兵衛)たちがあまりにしつこいので、見かねた紘二たちが止めに入る。「お前ら、どこのモンだ?俺たちが共栄会と知ってのことか?」「知らねえなあ。表に出ろ!!」共栄会のチンピラたちを袋叩きにする元沢田組の三人。ミドリは、タケシに電話をしている。
  その頃、湖畔荘という旅館で、中桐組の賭場が開かれている。中桐が沢田に「こんな田舎の盆茣蓙で申し訳ないが、良かったら遊んでいってくれ。」「いえ、そんな・・・。」そこに、京栄会の会長の神崎(曽根晴美)が、派手に包帯を巻いた子分たちを連れてやってきた。「おお神崎の・・・。遊びに来たわけじゃねえみたいだが・・・。」「中桐の・・・、おめえのところの客分の沢田の子分が、うちの連中に大怪我させやがったので、どんな魂胆だと聞きに来たのよ。」

  筋目を通し、寺田を支援する組長役の佐藤慶。いつもの冷徹な、でなく、暖かい眼差しだが、どうしても最後の最後まで、渡哲也を裏切るんではないかと思ってしまうのは、凡人の哀しさだ(笑)。何だか、観たことがある気がしていたが、このあたりは、東映と日活で同名異作があったんだな。小沢啓一監督と小沢茂弘監督も混同しやすいし・・・。

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