2009年7月19日日曜日

若いという字は苦しい字に似てるわ。

   神保町シアターで、没後四十年 成瀬巳喜男の世界
   50年新東宝/藤本プロ成瀬巳喜男監督『石中先生行状記(413)』
   第一話隠匿物資の巻。弘前の町、電器屋の主人の中村金一郎(渡辺篤)が、スコップを持ち出掛ける。河野勇三(堀雄二)を連れ、石中先生(宮田重雄)の所に行く。石中先生は、本当にガソリンの入ったドラム缶が埋まっているのかい?東京にいる家内は娘の縁談が決まっているので、新聞に出るような変なことはしないでくれと言って来たが、大丈夫だろうねとのんびりした口調で尋ねる。中村は、そりゃもう、埋めた本人の河野君が言うんだから間違えありません。終戦直前に憲兵隊が、60人の兵隊を使って埋めたドラム缶460本ですよ。何に使うんだと尋ねる石中に、ちゃんと届けて、謝礼の一割だか四割だかを貰って、中古車を買って、友人全員を乗せて、どこまでも走ってやりますと中村。ライターのガソリンを僕にくれと石中。河野は、私は石中先生には初めてお目にかかりますが、従兄の木戸庄吉は、よく先生を存じ上げていて、何でも中学3年の時に、サーカスの女に熱を上げて家出をし、停学処分を食らったとお聞きしています。石中は、ん?木戸庄吉くん?そんなこともあったかなあと言う返事だった。
    中村は、石中と河野を連れ、ドラム缶が埋まっている筈の農家の山崎(進藤英太郎)のところに行く。河野は、山崎の一人娘のモヨ子(木匠久美子)が好きなようで、いきなりこの前頼まれていた美容クリームだよとプレゼントする。とりあえず畑に出て、河野くん鼻を利かせてくれ。ここ掘れワンワンと言う調子で、問い詰める中村。確かに佐藤少尉の指揮で、このあたりに埋めた筈ですが…と自信なさげな河野。何か匂わないか?ん?臭い!肥溜めの臭いだ。今朝、あっちの畑に堆肥を撒いたと山崎。
    とりあえずこのあたりかということになり、石中先生摘発隊と立て札を立て、石中が最初にツルハシを振るう。金属に当たった鈍い音がして色めき立つみんな。ドラム缶に穴を開けてしまうといけないと、中村は、河野と注意深く掘っていく。するとドラム缶でもなんともなく、小さな空き缶だった。ツルハシを石中は、3回振るうと疲れて昼寝を始める。中村も河野も疲労困憊だ。モヨ子が昼ご飯だと声を掛けに来る。酒も出される。
    山崎が、娘のモヨ子が去年のコンクールで一等を取った踊りを見てくれと言う。渡世人姿で出て来たモヨ子は、国定忠次を踊る。河野は拍手喝采だ。慣れない力仕事で疲れた中村は、高鼾で眠り始める。石中は、モヨ子さんは一人娘ですかと尋ねると、山崎は婿取り娘ですと答え、ドラム缶掘りは、皆さん大変でしょうから、自分がやりますよ、もちろん独り占めしようなんて料簡ではなく、出て来たらいち早く皆さんにご連絡いたしますからと言う。
    その頃、山崎のりんご園では、河野とモヨ子が語りあっていた。河野は、前回中村とここに来た時に、喉が渇いてりんごを貰えないかと声を掛けて、優しくしてくれたモヨ子に一目惚れをしたことと、ガソリンの話はみんながお前は手伝っただろと言われ、否定できなくなったので、実は埋めた場所も、埋めたかどうかもわからないと告白した。欲の皮が突っ張ったお父ちゃんはその気になっているけど、嘘だったのねと言う、しかし、モヨ子も河野を憎からず思っていて、二人の話を立ち聞きした石中が姿を表して、嘘だったんだねと言うとこの人をいじめないでてと立ちはだかった
    第二話仲たがいの巻。ヌードレビューのポスターが貼られてあり、石中と中村が見入っている。そこに通りかかった山田まり子(杉葉子)が、何を見ているのだろうとポスターに目をやり、不快そうな表情になって通り過ぎる。まり子の父の武造(藤原釜足)が営む山田書房に、木原亀吉(中村是好)が来ている。古本を一冊買う。すると、武造が声を潜め、ポスターを見せる。ヌードレビューのポスターだ。酷いもんですな青少年に決して見せてはいけないものだ、自分らの子供たちには絶対見せたくないと亀吉が言うと、武造は、実はチラシを一枚貼ってくれと切符を二枚置いていった。私は触るのも穢らわしいので、切符を破ってすてようと思っていると武造。すると、いくら風助良俗に反する物とは言え、ものを棄てると言うのはいかがなものか、どんなに酷いものなのかを我々が確認をして検討することはいいのではないか、我々が検察官を務めると言うことですな。今日の一時からであれば、ちょうどいい、一緒に行きましょうと相成った。
真ん中に座っていると、ダンサーがラインダンスをしているときに、ハイヒールが飛んで、武造の頭を直撃する。
   第三話干し草ぐるまの巻


  成瀬巳喜男らしくないと評価はあまり高くない映画だが、男のスケベ心を全く肩に力を入れずに笑えるテンポのいい第二話と、何よりも若水ヤエ子の明るさがいい第三話が楽しめた。堀雄二、池部良、三船敏郎とイケメン三人、もう少しだなあ。

   体験入学の講師、男子一人と女子が二人。どうしても、目の前に座っている女子を見る時間が長いんじゃないかと気になる(苦笑)。

     池袋新文芸坐で、本当に面白かった日本映画たち。
     60年松竹大船大島渚監督『太陽の墓場(414)』
     寄せ松(伴淳三郎)の娘の花子(炎加世子)は、大阪港湾地区で元衛生兵の村田(浜村淳)を使って売血をやっている。一人300円。人集めはヤス(川 津祐介)やポン太(吉野憲治)が担当し、このあたりをシマにしているヤクザ大浜組(清水元)や愚連隊の信栄会の信(津川雅彦)の目を盗んでの大胆なシノギ だ。花子に使われているのも嫌気がさしたヤスとボン太、タケシ(佐々木功)は信栄会の仲間に入れてもらいに行く。
    ドヤ街に、帝国陸軍の元 士官だったと言う動乱屋(小沢栄太郎)が現れた。食うものもすむところもないくせに偉そうに、来たる対ソ戦のための武装資金が必要だと言う動乱屋を仲間に 入れ、父親の寄せ松のドヤに住まわせてやる花子。しかし、弁舌巧みな動乱屋は、寄せ松の手下だった桂馬と香車や、村田を手懐け、売血のシノギを乗っ取って しまう。タケシは、さらってきた女たちに売春をさせている信栄会のシノギがどうも好きになれない。直ぐに逃げ出して食堂の店員になるが、信栄会の副会長マ サ(戸浦六宏)や竜(松崎慎二郎)たちに見つかり、愚連隊を抜けることは出来ないと袋叩きにあう・・・。

     60年松竹大船大島渚監督『青春残酷物語(415)』
女子高生の新庄真琴(桑野みゆき)は、友人の石川陽子(森島亜紀)と遊んだ帰りに、外車を運転する中年の紳士に声を掛け、家まで送って貰うことでスリルを味わっていた。
しかし、その夜声を掛けたパッカードを運転する中年男(山茶花究)は、陽子を降ろした後、どこかで食事でもしないかと誘って来て、強引にホテルに連れて行こうとする。抵抗する真琴の唇を奪い、力が抜けたところに、大学生の藤井清(川津祐介)が現れ、男を殴りつけ、警察に行こうと言うと、男はそれだけは勘弁してくれと言って金を置いて逃げ出した。
   数日後、中年男が置いて行った5千円を使ってしまおうと、二人は待ち合わせた。ニュース映画館で、韓国での学生紛争の場面が流れる。映画館から出てきた藤井は、映画を見るのかと思ったわと言う真琴をタイミングが合わなくてと答える。街はメーデーのデモが行われている。ジグザグデモをする学生たちの中の伊藤好巳(田中晋二)に声を掛ける。伊藤は全学連のビラ配りをしている女と付き合っているのだ。木場をモーターボートで楽しむ二人。しかし、海に浮かぶ材木の上を歩いていると、藤井は豹変する。真琴に強引にキスをし、結局君たちは、男への興味やセックスへの好奇心で、金持ちの中年男たちに声を掛けて楽しんでいるんだろう。そんなに関心があるなら教えてやるぜと、真琴に抱きついた。真琴が激しく抵抗すると、海に落とす藤井。泳げない真琴が溺れそうになり、抵抗する元気も無くなったところで、引き上げ、抱きかかえる藤井。材木の上で、真琴は、女になった。裸の藤井が海に飛び込み、上がってくると、真琴は、私を嫌い?嫌いだからあんなことをしたの?と問い掛けた。藤井は好きだよと言って、君だけでない色々なことに腹を立てていたんだと言ってキスをする
   その後、藤井は馴染みのバー黒猫に真琴を連れて行く。そこには、愚連隊の男たちがいる。樋上功一(林洋介)寺田登(松崎慎二郎)ともう一人(水島信哉)。彼らは、真琴が席を外した隙に、藤井に、これからコマすのか?と声を掛ける。もう済ませたところさと藤井が答えると、捨てるならこっちで引き取るぜと言う。真琴は、また会ってくれと言って、一人暮らしの陽子の家の電話番号を藤井に教えた。店を出たところで、別れるつもりだったが、愚連隊の3人も店を出て来たのを見て、家まで送ると言う藤井。自宅の最寄駅で、真琴の姉の由紀(久我美子)に出会う。

藤井清(川津祐介)新庄新庄正博(浜村淳)坂口政枝(氏家慎子)伊藤好巳(田中晋二)西岡敏子(富永ユキ)秋本透(渡辺文雄)吉村茂子(俵田裕子)下西照子(小林トシ子)堀尾敬三(二本柳寛)津田春子(堀恵子)松本明(佐藤優)刑事(土田圭司、園田健二、宮坂将嘉、佐野浅夫)パッカード(山茶花究)マーキュリーの男(森川信)シボレー(春日俊二)

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