2009年7月23日木曜日

僕のマリー(笑)

    赤坂のメンタルクリニック。

    間に合わないかと思いながら渋谷へ。予告編本数が多かったと見えてぎりぎり間に合う。

  シアター・イメージフォーラムで、坪田義史監督『美代子阿佐ヶ谷気分(420)』
  寝ている美代子(町田マリー)。気怠そうに目覚まし時計を見て、11時か…もう1日休んじゃおうかな…。美代ちゃんは駄目ですね…。また眠る。起きて、何を食べよう。りんごでいい。私一人のときはいつもりんごだ。米を研ぐのもしみったれていて嫌だ。彼と別れたら、二号になろう。金持ちで、紳士で、ハゲでない男の二号だ。日が暮れるのは何て早いんだろう。謝国権の「これからのSEX」を読んでいる美代子。岡林信康の「今日をこえて」をギターのコードを押さえながら歌う美代子。「見る前に跳べ第2集」のジャケット。彼は帰ってこないのだろうか。またどこかを放浪しているのだろうか。押し入れの上の戸袋に上がろうとする美代子。MG5の瓶が転がる。

   阿佐ヶ谷の彼の部屋であたし平和よ(キスマーク)

   部屋で、服を脱ぐ美代子。ニコンで撮りながら、興奮してポーズを指示する愼一。

   ガロの1971年3月号で、安部愼一(水橋研二)は漫画家デビューした。阿佐ヶ谷で同棲する恋人の美代子との生活を描いた作品である。

  安部は、福岡県の炭坑町の田川で生まれた。子どもの頃から絵を描くことが好きだったが、ある時、永島慎二にショックを受け、漫画家を志して東京に出て来た。
 
    「今日、店出るのか?」美代子を押し倒す。「眠ることが恐ろしい?」「お客さんで、ガロとあんたのこと知っているお客さんがいたわ。」「話したのか?」「いいえ、出版社の人・・・。」

   「悪友 川本研二」と書かれた原稿用紙がある。美代子とは高校の夏に、新聞部の川本賢治(本多章一)を介して知り合った。川本も小説家になろうと上京している。

   「トルコが稼げるらしい。」「わたし、セックス下手だし・・・。」
  
   原稿を持って、川本の部屋に行く愼一。「書きあがったんですね」と川本。「やっぱり来たんだ」と友人の池田溺(松浦祐也)。ビー玉を持っている。これはこうやって見るんですと、ビー玉を窓の外の日の光に当てる。「シュールレアリスムやー」と池田。

   スナックたんたん、カウンターの中に美代子がいる。連れの女がトイレに行った隙に、「一人なんやろ・・」と声を掛ける男。「ママ、もうすぐ来るよ」と美代子。別の男が入ってきて、「今日一人?」「ママ遅くなるって」「なんや、旦那がおったんや・・」「旦那はいてへん・・」と美代子。

    公園で、美代子の友人の真知子(あんじ)の写真を撮る愼一。「コート脱いでみようか」と声を掛けて断られるが、その後二人で飲んでいる。「君をモデルに書きたくてね。体験したことしか書けないんだ。」二人の会話を聞きながら、共同便所の朝顔に吐いている川本。

   夜遅く帰宅したが、一人で天井を見上げている美代子。

   翌朝、真知子のベッドに、裸の愼一と真知子の姿。「君は、誰とでも寝るのか?」と愼一。答えず、愼一の頬を殴る真知子。まとまったお金を出し、殴り賃と言う真知子。「美代子には内緒よ。安部君、他で儲けなさい。お金のない男は駄目よ・・・。」「僕は漫画家になりますよ。」

   傘を借りて下宿に戻る愼一。「編集部に行って、ヤクザかポルノを書いて来いと言われた・・・。前借して、上着のポケットに入っている。新宿から歩いてきた。」机の上には、サガミのコンドームの箱が置いてある。

   ガロ編集部。ピストルという作品。編集者の松田(佐野史郎)に「絵のモデルは、彼女の美代子です。僕は絵に自信がないので、写真に撮ってから書いています。」

   居酒屋で向かい合う愼一と松田。「安部さんは甘えているんですよ。」「何に甘えているんですか?」「・・・青春にかな・・・。」「俺ばっかり抱え込んで・・・。」「青春は発見ですよ。体験なら二つが限界ですよ。」ふいに、カウンターに座っていたやくざ風の男(飯島洋一)、突然怒り始める。

  名曲喫茶、クラシックが掛かっている。女(しまおまほ)の胸を触ろうとして拒絶される男(杉作J太郎)。真知子と話している美代子。話していると、「お静かに」という紙をテーブルに置かれる。あたしんちに来ないと誘い、コーヒー代を二人分払う真知子。真知子の家、「最近誰か来た?」と真知子に尋ねる美代子。真知子は否定するが、美代子は何か気付いたようだ・・・。

   ガロ編集部。「松田さん。この安部っていいのかね。」と編集長(林静一)。「今度特集してみますか、松田さん。漫画はね、ただただ面白ければいいんだ。」「いいんですかね?」と松田。編集部に来ていた三人の男(つげ忠男、シバ、原マスミ)肯く。

   愼一、池田の下宿を訪ねる。「殴られたらしいね」と愼一が尋ねると、「来るような気がしていたんだ。」と池田。電気を止められているのかランプの灯り。さっきまで作っていたものを愼一に差し出して、「これ、玉子酒、飲んで、飲んで。」と勧める池田。躊躇うが飲んで、美味いと愼一。うれしそうに「そうだろ。普通は病気になった時に飲むもんだけど、気合をいれるためにいつも飲んでいるんだ。」と池田。待たされている間に、時計や火薬があって、爆弾を作っているような池田。「さっき、来るような気がしていたんだといったろ。実は君が来る夢を見ていたんだ。夢はこれから起きることを見せてくれたりするんだ。」と夢の話をする池田。池田と、愼一は、煙突のテッペンに立っている。

   阿佐ヶ谷書房で、安倍愼一特集のガロを買う美代子。いつもコロッケ三コを買う総菜屋で、嬉しそうにメンチカツもと言う美代子。雨が降り出す。愼一は帰ってこない。彼はどこへ行ったのかな・・・。
置いてある新聞に、派出所ツリー爆弾の記事が出ている。

   川本の下宿に来る美代子。「ごめんなさい。」「どうしたんですか・・。上がって下さい。」「私の友達が四ツ谷に住んでいるんです。そこにいっているんじゃないか思うんです。」「男の友達ですか・・・。」「この部屋いい部屋ですね、お酒が飲みたくなるような。」「お酒のほうがよかったですか。」「川本さん小説書いてる?」「すこしずつ書いてます。」「頑張ってね。」

   「本当に何もないのね、川本さんの部屋。」「美代子さんは浮気しないんですか?」「川本さん、コロッケ食べませんか?」

   「あれから美代子と寝た?」と尋ねる真知子に、「いや」と答える愼一。「それじゃ、一人でしていたの?教えてどうやってするの?」

   「私ここにいてもいいですか?」と美代子。川本、膝の上のこぶしを握り締めて、「安部さんは、四ツ谷にいます・・・。」

   服を脱ぐ真知子。自分のことは自分でするからと愼一。

   コロッケを食べながら泣く川本。

   裸の真知子の前で、自涜する愼一。そこに美代子が泣きながら現れる。「きさん!!」博多弁で愼一をののしる美代子。二人を見ながら、笑って手を叩く真知子。
   
   「昨日、美代子さんが来た」と川本。「彼女もなかなかやるな」と愼一。「相変わらず、シビアーなことをやっているんですね。安部さんは」「シビアーってどういうこと?」「過酷ということです。」



    美人か不美人か微妙な町田マリーは、70年の中央線阿佐ヶ谷で、売れない漫画家との同棲相手にぴったりで、なかなか好演。どこかに、体当たりでと書いてあった記憶があるが、毛皮族の体当たりと言うか、体を張った涙なしでは見られない芝居を何度も見ていると、とてもそんな気はしない。
   ロケとか、かなり頑張っている。二つだけ妙に気になったのが、MG5のボトルが転がるシーンだ。バーコードがある。個人的な思い込みだと思うが、バーコードは80年代に急速に広がったイメージがあるのだが・・・。もうひとつは、真知子の家から持ってきた赤い傘。ありゃ、絶対1990年以降の海外生産品だ。ジャンプ傘だし。

   池尻大橋と五反田で打合せ2件。

0 件のコメント: