池袋新文芸坐で、孤高のスタア高倉健。
67年東映東京マキノ雅弘監督『昭和残侠伝 血染の唐獅子(331)』
昭和の初めの浅草、瓦版屋が東京博覧会の開催地が上野不忍池に決まったと触れ歩いている。浅草の鳶政の小頭、聖天の五郎(水島道太郎)がその読み売りを持って、どじょう屋の井せ喜の暖簾をくぐり、女将で母親のおつた(清川虹子)に報告する。慌てるんじゃないだからお前は36にもなって嫁の来てもないんだ、浅草の鳶政には観音さまがついているので、絶対大丈夫だと思っていたが、早くお頭に伝えなければと言う聖天の五郎を送り出すおつた。
既に鳶政の前では鳶たちが読売を見ながら盛り上がっている。聖天の五郎の報告を受け頭の鳶政(加藤嘉)おひさ(宮城千賀子)夫婦は、息子の昭夫(小林勝彦)と喜び、身体が弱り寝込んでいた鳶政は、今回を最後と決めて現場に立つと宣言した。五郎たちは、昭夫に工業学校の建築科卒業の腕を振るえますねと話していると、車が停まり、阿久津剛三(河津清三郎)と子分の三日仏(天津敏)が降りてくる。お頭の見舞いだと言っていたが、鳶政に会うなり、東京博覧会の工事請負を阿久津組に譲れと言う。阿久津組は博打うちだったが、建設業に乗り出していた。今は信用がないが、東京市の仕事を受ければ阿久津建設の名前は売れる。仕事が欲しければ鳶の仕事は出してやると言い、札束らしき包みを放ってよこした。鳶政は、ここら一帯は、浅草寺から何でも、鳶政が請負と決まっている。自分たちを頼りにしてくれている地元の多くの大工や左官、石工、人足たちに会わす顔がねえ。帰ってくれと言う。金の包みも、おひさがきっちりと返した。
阿久津組に剛三と三日仏が帰ってくる。子分たちにおめうらも分かっているだろうが、今度の仕事は手荒なことをしようが絶対取ると言った。三日仏は、代貸には、この件秘密にしておいた方がいいでしょう。代貸は鳶政と親しいからと口止めをした。
そんな話を知らない阿久津組代貸の風間重吉(池部良)は、その夜井せ喜を訪れる。妹の文代(藤純子)が働かせて貰っているのだ。そこで、重吉は、五郎たちから昼間の剛三の話を聞く、自分に仁義を教えてくれた親分に限ってそんなことはない筈だ。何かの間違いだろうから自分が責任を持つと言う。重吉が、文代に会いに来た理由は、幼なじみで、鳶政の花田秀次郎(高倉健)が、兵役で海軍に入り3年が経ち、文代宛てに台湾から絵葉書を送ってきたのを届けに来たのだ。文代は秀次郎を思い続け、重吉もそんな妹と秀次郎を見守ってきたのだ。鳶政の若い衆にからかわれ、頬を染める文代。文代は外を通りかかった鳶政のお坊主の竹(津川雅彦)に秀次郎からの絵葉書を見せる。竹は吃音が酷く身なりも汚かったが、秀次郎に可愛がられていた。文代は、中で鳶政の若い衆が飲んでいると誘うが、竹は自分は身なりが汚いのでと断る。
料亭の座敷に東京市の土木局長の高見沢(金子信雄)や阿久津の姿がある。今までの古臭いしきたりで、業者が指名されるのはおかしいと言う阿久津に、局長は自由競争だ、公開入札で決めようと言った。そのポケットに金らしき包みを忍ばせる三日仏。堅苦しい話は抜きにしてと、芸者が呼ばれた。花奴(萩玲子)に鼻の下を伸ばす局長。花奴の姉貴分の染次(牧紀子)が来ると阿久津が呼び止め、女将から話を聞いたかと尋ねる。いえと答える染次。まあ、その話はいずれゆっくりと座敷に戻る阿久津。女中が染次に耳打ちする。鳶政の纏い持ちの一升舛の音吉(山城新伍)が来ていると言うのだ。音吉は一升飲まないと帰らないので、しばらく放っておいていいと言って微笑む染次。下の座敷で、既にかなりの徳利を空にしてふて寝をしている音吉。
建設予定地を鳶政、輝男、鳶たち、仲間の業者たちと下見をしている。満足そうに頷いて、鳶政は息子の輝男に目を閉じてみろ何が見えると尋ねる。わからないと言う昭夫に、俺には不忍池に鳶政の纏いが翻っているのが見えるぜと言う鳶政。台湾でお国の為に働いている秀次郎に笑われないように、今度の仕事をやりきってあの世に行くと言い切ったが、鳶政は倒れ絶命する。
鳶政の頭の初七日が終わった。五郎たちは、その後博覧会の連絡が無いと話している。葬儀で忙しいと思って遠慮しているんじゃないかとか、近々問い合わせの電話とかしてみようかとかあくまでものんきな鳶政の連中だ。そこに染次から音吉に電話が入る。だらしなく顔が崩れにやつく音吉に、今座敷に、市の役人や阿久津や、建設業者が集まって、図面を広げ入札制だてか話しているが、鳶政だけがいないので不審に思って電話をしたのだと言う。鳶政は大騒ぎになり、昭夫と小頭の五郎が駆けつけたが、話は終わり局長は帰るところだった。二人は頭を下げたが、阿久津の仕組んだ策略だ。建設局長も、東京の名誉のための一大事業を汚す不届きな業者だ、阿久津くんきちんとしなければ困ると吐き捨て帰って行った。阿久津や三日仏も辛辣な言い方をしたが、重吉が割って入り、鳶政にもきちんと説明した上で、正々堂々と入札で戦いましょうととりなした。
鳶政や浅草の人々が待ち望んでいた花田秀次郎(高倉健)が除隊して帰ってきた。鳶政の位牌に三年降りの帰還の挨拶をする秀次郎。おひさと昭夫から組頭の半被を渡される。固辞する秀次郎だが、五郎は白い軍服の上から半被を掛ける。花奴と染次が鳶政にやってくる。染次は秀次郎を思い続けていたのだ。しかし、竹が、秀次郎には文代がいると言って追い払う。花奴は姉さんあんなに待っていたのにと言うが染次は秀次郎に改めてと告げて帰る。秀次郎は文代がいる井せ喜に向かう。しかし途中で重吉が待っている。再会を喜びあいながらも、重吉は妹が女房気取りで、秀次郎の家で待っていると告げる。重吉、文代兄妹と秀次郎は、幼なじみだった。泣き虫だった文代も、最近は強くなったぜと重吉。帰宅すると、文代は針仕事をしている。秀次郎は、只今帰りましたと敬礼し、こんな着物が縫えるようになったのかと言った。文代は拗ねて、せっかく顔を見ずに辛抱していれば、後ろから抱きしめてくれると思ったのに…と言った。もう一度最初からやり直すかといいながら、文代を抱き締める秀次郎。
数日後、染次は、女将さんに、いくら借金があるからと言って阿久津からの身請け話を断ると言う。困り顔の女将。そこに女中が染次の想い人がお呼びですと声を掛ける。秀次郎の顔を想い浮かべて行くと、やはり音吉だ。阿久津のお座敷よりもこっちの方がいいと音吉に言い、六百円の借金のかたに阿久津の女房になれと言われていると告げた。すると、三日仏が座敷に現れ、無理矢理阿久津の座敷に連れて行こうとする。音吉は、染次を守ろうとするが、三日仏は六百円の証文と引き換えに染次は阿久津のものになったのだと言う。音吉は、染次は芸者だから座敷には出るが、鳶政の名に賭けて、座敷猫みたいに売り買いはさせないと啖呵を切った。音吉は、すぐさま質屋の岩源の戸を叩き、鳶政の三番纏を持ち込んで、六百円貸せとねじ込んだ。岩源から借りた六百円を持ち染次のもとに行く音吉。音吉に尋ねられ、染次は病気の母親を何とか治そうと最高の医者に看て貰ったが、手術の甲斐なく母親は死に、千円で芸者になった。その残りがまだ六百円あるのだと答えた。この金は俺とお前と二人の借金だと思ってくれればいいと言い、でも阿久津とは違って金で染次を買ったなんて思っていない。いつまでも俺は待っていると言って去る音吉。涙する染次。
しかし、質屋の岩源(沢彰謙)は、阿久津と繋がっていた。さっそく纏を、阿久津組に持ち込む岩源。恥を搔かせてやろうと言い、岩源にしばらく温泉にでも行ってのんびりしているように頼む。すぐに、音吉が纏を質入れしたことがばれる。その纏が何故か岩源から阿久津組の手に渡ったことも。秀次郎は、女将さんと若旦那には黙っているよう口止めし、音吉が借りた600円を集める。みなから馬鹿にされていた竹がコツコツと貯めていた100円以上の金を出した。五郎も母親のおひさから200円のへそくりを借りた。秀次郎は、家の骨董をかき集めていると、文代が嫁入りに貯めていた200円の通帳を差し出した。なんとか660円が集まった。これで阿久津組にのりこむぜと言う皆を制し、秀次郎は、音吉に男なら命を賭けても纏を取り戻してこいとドスを取り上げ、金を渡した。音吉に名誉挽回のチャンスを与えたのだ。
音吉は、岩源が見つからないので、手代を連れて阿久津組に乗り込み、1割の利息を付けて660円を叩きつけるが、阿久津と三日仏は、ウチは質屋ではないので、岩源を連れて来いと言い放ったうえ、音吉を刺し殺し、凶器のドスを音吉の手に握らせた。警察から音吉が一人で阿久津組に殴り込みをかけ、死んだと連絡が入る。秀次郎は、竹一人を連れ、阿久津組に向かう。正当防衛だと警察の旦那も認めてくださっているという阿久津に、竹に音吉の死体を背負わせ、鳶政に連れ帰る秀次郎。殴り込みを掛けると言う若い衆を押し留め、自分の責任だと鳶政の位牌に頭を下げ、音吉は立派に火事の先頭に立って死んだのだと思ってやってくれという。音吉の葬儀が行われている鳶政の前に染次が立ちつくしている。その晩火事が起こった。秀次郎は、組のものに全員の心の中に纏があるのだと言って、消火に向かう。そこに、染次が三番纏を持って現れ、秀次郎に手渡し、去っていく。阿久津の妻になると言って、纏を取り戻したのだ。しかし、秀次は、川に身を投げて音吉の後を追った。鳶政一同、変わり果てた染次の姿に頭を下げ、遺体を警察から引き取り、阿久津組に向かい、奥様をお連れ致しましたと言って、手渡した。
東京博覧会の工事は、阿久津組により他の鳶衆を回さないような直接的な妨害によって遅れ始めていた。三社祭の間も、現場を交代で見張る鳶政の鳶たち。秀次郎は、祭りの晩くらい皆で飲んで、明日から期日を守るために命を張るんだと説得した。そして、自分は自宅に帰り、文代が縫ってれた着物を着た。竹から秀次郎が一人で殴り込みに行くに違いないと聞いた文代は、急いで家に帰る。私は死に装束を縫ったわけではないと言うが、秀次郎の決意を感じて、止めてはいけないのだと涙をこらえた。その頃、重吉は、阿久津のあまりのやりくちを諌め、これでは組の名を落とすと言う。自分に仁義を教えてくれた剛三はどこに行ってしまったのだという重吉に、剛三はビール瓶で頭を叩き割り、破門を宣告した。その足で、重吉は秀次郎の元に行き、助っ人を買って出る。泣く文代に、秀次郎を殺させはしないと約束する。
秀次郎と重吉の後ろを、日本刀を隠し持った竹が付いて行く。竹は死に際位奇麗な顔でと髭を剃り、顔を洗って、文代に別れを告げていた。阿久津組に二人が入ると、竹は三社祭踊り斬りだと、日本刀を差し出した。斬りまくる秀次郎と重吉
昭夫(小林勝彦)聖天の五郎(水島道太郎)
ペス虎(大村文武)一升舛の音吉活弁(曽根晴美)お坊主竹(津川雅彦)染次(牧紀子)花奴(萩玲子)阿久津剛三(河津)三日仏(天津敏)
65年東映東京佐伯清監督『昭和残侠伝(332)』
昭和21年焼け跡の闇市を歩く男(池部良)の姿がある。ここには、進駐軍からの横流し物資で何でもある。新誠会の島田(八名信夫)たちが、目付きの鋭い男の正体を怪しんでてめえは何者だと尋ねると、男は、こう何でもあると警察の旦那でも目を止めるだろうよ、来るところを間違えたようだと去る。神津組墨田市場と書かれた闇市がある。そこに島田や日の出の辰(室田日出男)たちが現れ、小沢由太郎(沢彰謙)ユキ(梓英子)親子の古着をナイフで斬り裂き、てめえの店はこんな破れた服を平気で売るのかと因縁を付けてきた。そこに、ジープの政(松方弘樹)がやってきて、てめえら新誠会だな、神津組のシマを荒しに来たのかと文句を言う。新誠会は、待っていたとばかりに何十人と集まって来て、政、ゼロ戦の五郎(梅宮辰夫)福永繁(中山昭二)たちに襲いかかってきた。売人たちも集まってきて、新誠会の連中は帰って行った。
神津組の四代目川田源之助(伊井友三郎)と小頭の江藤昌吉(菅原健次)のもとに、新誠会の羽賀明(山本麒一)たちがやってきて、子分たちが神津組の若い衆に怪我をさせられてと文句をつける。子分のしくじりは、自分のしくじりだと頭を下げる四代目に、羽賀はお宅も売り物が手に入らなくお困りでしょう、うちと手を組めばいくらでもモノを流しますよと言う。そんな素生のしれねえものをウチは扱わないときっぱり断る四代目。新誠会が帰ると、福永、五郎、政たちが帰ってくる。てめえら、あれほど喧嘩をするなと言っただろうと怒られ、清次兄貴が帰ってくればと口ぐちに言う若い衆たち。石岡組を継いだ西村恭太(江原真二郎)綾(三田佳子)夫妻が訪ねてくる。石岡組の先代の娘だった綾と清次は恋仲だった。しかし清次は出征、戦争が終わっても帰ってこずに5年の月日が経ち、先代がこの男ならと認めた恭太を後継ぎとしたのだった。源之助は、これで石岡組も安泰だと二人に太鼓判を押した。小頭の昌吉は、清次は綾にぞっこんだったからなあと辛そうに言う。
そこに、闇市にいた男がやってくる。仁義を切り、自分は八州宇都宮十文字一家の坂本親分のところの風間重吉と名乗った。重吉は神津組に草鞋を脱ぐことになった。
警察署に、浅草露天商組合の面々が集まっている。新署長(河合絃司)は、平和裏に浅草のために協力をしあって欲しいと言う。新誠会のやり口を暗に非難しているが、新誠会の物資横流しの恩恵を受けている組がほとんどなので、新誠会の岩佐徹造(水島道太郎)にモノを言うのは、神津組の川田と花川戸のご隠居大谷(三遊亭円生)しかいない。
その日、源之助は、息子の輝男(中田博久)と、崩れ落ちたビルの上から浅草の街の焼け跡を眺めながら、浅草再建のために命を賭けると誓う。しかし、ライフルで撃たれてしまう。神津組に運ばれ、新誠会に違いない殴り込みだといきり立つ若い衆たちを止め、輝男に紙と筆を持って来させ、口述で、五代目は、未だ復員しない寺島清次とすることと、最後の最後まで争いごとをしてはいけないと言う遺言を残し亡くなった。殴りこもうとする政や五郎、ロク(潮健児)たちを小頭の昌吉は、証拠もなく今殴りこめば相手の思うつぼだと必死に抑えた。清次がいればと皆は心の中で思った。
その頃、神津組と浅草の露天商たちが待ち望んでいる清次の姿が浅草寺にあった。清次は、源之助の位牌に5年ぶりの帰還の報告をした。昌吉が源之助の遺書を持ってくる。自分が5代目を継ぐこと、争いごとを禁じる遺書を読んで言葉を失う。兄貴分の昌吉が継ぐべきだと言ったが、昌吉は足を悪くしているし、清次にしか神津組の危機を守ることはできないのだと説得する。清次は5代目を襲名した。
清次が帰ってきたと聞いて、石岡組の西村と綾が挨拶に来た。清次は昔の気持ちを封印して二人の結婚と西村が石岡組を継いだことを祝福した。庭場を守り、売人たちのために商品の仕入れを頑張ろうと言う清次。神津組にも活気が戻ってきた。
美代(水上竜子)ジープの政(松方)遠山六兵衛(潮健児)大谷小沢由太郎(沢彰謙)ユキ(梓英子)島田(八名信夫)
府中まで行き、高校の後輩たちの定期演奏会を覗く。息子や娘でもおかしくない見知らぬ後輩たちの演奏を聴きにくるモノ好きは、自分と2年後輩のYしかいない。なかなか悪くないというか、自分たちの時代に比べて確実にというか格段にうまくなっているなと、そのままビルの屋上にあるビアガーデンに上がる。Yと自分の他に1組しか客がいない。とりあえず、ビール飲み、四方山話をして帰る。
67年東映東京マキノ雅弘監督『昭和残侠伝 血染の唐獅子(331)』
昭和の初めの浅草、
阿久津組に剛三と三日仏が帰ってくる。
そんな話を知らない阿久津組代貸の風間重吉(池部良)は、
料亭の座敷に東京市の土木局長の高見沢(金子信雄)や阿久津の姿がある。
建設予定地を鳶政、輝男、鳶たち、
鳶政の頭の初七日が終わった。五郎たちは、
鳶政や浅草の人々が待ち望んでいた花田秀次郎(高倉健)
数日後、染次は、女将さんに、
しかし、質屋の岩源(沢彰謙)は、阿久津と繋がっていた。さっそく纏を、阿久津組に持ち込む岩源。恥を搔かせてやろうと言い、岩源にしばらく温泉にでも行ってのんびりしているように頼む。すぐに、音吉が纏を質入れしたことがばれる。その纏が何故か岩源から阿久津組の手に渡ったことも。秀次郎は、女将さんと若旦那には黙っているよう口止めし、音吉が借りた600円を集める。みなから馬鹿にされていた竹がコツコツと貯めていた100円以上の金を出した。五郎も母親のおひさから200円のへそくりを借りた。秀次郎は、家の骨董をかき集めていると、文代が嫁入りに貯めていた200円の通帳を差し出した。なんとか660円が集まった。これで阿久津組にのりこむぜと言う皆を制し、秀次郎は、音吉に男なら命を賭けても纏を取り戻してこいとドスを取り上げ、金を渡した。音吉に名誉挽回のチャンスを与えたのだ。
音吉は、岩源が見つからないので、手代を連れて阿久津組に乗り込み、1割の利息を付けて660円を叩きつけるが、阿久津と三日仏は、ウチは質屋ではないので、岩源を連れて来いと言い放ったうえ、音吉を刺し殺し、凶器のドスを音吉の手に握らせた。警察から音吉が一人で阿久津組に殴り込みをかけ、死んだと連絡が入る。秀次郎は、竹一人を連れ、阿久津組に向かう。正当防衛だと警察の旦那も認めてくださっているという阿久津に、竹に音吉の死体を背負わせ、鳶政に連れ帰る秀次郎。殴り込みを掛けると言う若い衆を押し留め、自分の責任だと鳶政の位牌に頭を下げ、音吉は立派に火事の先頭に立って死んだのだと思ってやってくれという。音吉の葬儀が行われている鳶政の前に染次が立ちつくしている。その晩火事が起こった。秀次郎は、組のものに全員の心の中に纏があるのだと言って、消火に向かう。そこに、染次が三番纏を持って現れ、秀次郎に手渡し、去っていく。阿久津の妻になると言って、纏を取り戻したのだ。しかし、秀次は、川に身を投げて音吉の後を追った。鳶政一同、変わり果てた染次の姿に頭を下げ、遺体を警察から引き取り、阿久津組に向かい、奥様をお連れ致しましたと言って、手渡した。
東京博覧会の工事は、阿久津組により他の鳶衆を回さないような直接的な妨害によって遅れ始めていた。三社祭の間も、現場を交代で見張る鳶政の鳶たち。秀次郎は、祭りの晩くらい皆で飲んで、明日から期日を守るために命を張るんだと説得した。そして、自分は自宅に帰り、文代が縫ってれた着物を着た。竹から秀次郎が一人で殴り込みに行くに違いないと聞いた文代は、急いで家に帰る。私は死に装束を縫ったわけではないと言うが、秀次郎の決意を感じて、止めてはいけないのだと涙をこらえた。その頃、重吉は、阿久津のあまりのやりくちを諌め、これでは組の名を落とすと言う。自分に仁義を教えてくれた剛三はどこに行ってしまったのだという重吉に、剛三はビール瓶で頭を叩き割り、破門を宣告した。その足で、重吉は秀次郎の元に行き、助っ人を買って出る。泣く文代に、秀次郎を殺させはしないと約束する。
秀次郎と重吉の後ろを、日本刀を隠し持った竹が付いて行く。竹は死に際位奇麗な顔でと髭を剃り、顔を洗って、文代に別れを告げていた。阿久津組に二人が入ると、竹は三社祭踊り斬りだと、日本刀を差し出した。斬りまくる秀次郎と重吉
昭夫(小林勝彦)聖天の五郎(水島道太郎)
ペス虎(大村文武)一升舛の音吉活弁(曽根晴美)お坊主竹(
65年東映東京佐伯清監督『昭和残侠伝(332)』
昭和21年焼け跡の闇市を歩く男(池部良)の姿がある。ここには、進駐軍からの横流し物資で何でもある。新誠会の島田(八名信夫)たちが、目付きの鋭い男の正体を怪しんでてめえは何者だと尋ねると、男は、こう何でもあると警察の旦那でも目を止めるだろうよ、来るところを間違えたようだと去る。神津組墨田市場と書かれた闇市がある。そこに島田や日の出の辰(室田日出男)たちが現れ、小沢由太郎(沢彰謙)ユキ(梓英子)親子の古着をナイフで斬り裂き、てめえの店はこんな破れた服を平気で売るのかと因縁を付けてきた。そこに、ジープの政(松方弘樹)がやってきて、てめえら新誠会だな、神津組のシマを荒しに来たのかと文句を言う。新誠会は、待っていたとばかりに何十人と集まって来て、政、ゼロ戦の五郎(梅宮辰夫)福永繁(中山昭二)たちに襲いかかってきた。売人たちも集まってきて、新誠会の連中は帰って行った。
神津組の四代目川田源之助(伊井友三郎)と小頭の江藤昌吉(菅原健次)のもとに、新誠会の羽賀明(山本麒一)たちがやってきて、子分たちが神津組の若い衆に怪我をさせられてと文句をつける。子分のしくじりは、自分のしくじりだと頭を下げる四代目に、羽賀はお宅も売り物が手に入らなくお困りでしょう、うちと手を組めばいくらでもモノを流しますよと言う。そんな素生のしれねえものをウチは扱わないときっぱり断る四代目。新誠会が帰ると、福永、五郎、政たちが帰ってくる。てめえら、あれほど喧嘩をするなと言っただろうと怒られ、清次兄貴が帰ってくればと口ぐちに言う若い衆たち。石岡組を継いだ西村恭太(江原真二郎)綾(三田佳子)夫妻が訪ねてくる。石岡組の先代の娘だった綾と清次は恋仲だった。しかし清次は出征、戦争が終わっても帰ってこずに5年の月日が経ち、先代がこの男ならと認めた恭太を後継ぎとしたのだった。源之助は、これで石岡組も安泰だと二人に太鼓判を押した。小頭の昌吉は、清次は綾にぞっこんだったからなあと辛そうに言う。
そこに、闇市にいた男がやってくる。仁義を切り、自分は八州宇都宮十文字一家の坂本親分のところの風間重吉と名乗った。重吉は神津組に草鞋を脱ぐことになった。
警察署に、浅草露天商組合の面々が集まっている。新署長(河合絃司)は、平和裏に浅草のために協力をしあって欲しいと言う。新誠会のやり口を暗に非難しているが、新誠会の物資横流しの恩恵を受けている組がほとんどなので、新誠会の岩佐徹造(水島道太郎)にモノを言うのは、神津組の川田と花川戸のご隠居大谷(三遊亭円生)しかいない。
その日、源之助は、息子の輝男(中田博久)と、崩れ落ちたビルの上から浅草の街の焼け跡を眺めながら、浅草再建のために命を賭けると誓う。しかし、ライフルで撃たれてしまう。神津組に運ばれ、新誠会に違いない殴り込みだといきり立つ若い衆たちを止め、輝男に紙と筆を持って来させ、口述で、五代目は、未だ復員しない寺島清次とすることと、最後の最後まで争いごとをしてはいけないと言う遺言を残し亡くなった。殴りこもうとする政や五郎、ロク(潮健児)たちを小頭の昌吉は、証拠もなく今殴りこめば相手の思うつぼだと必死に抑えた。清次がいればと皆は心の中で思った。
その頃、神津組と浅草の露天商たちが待ち望んでいる清次の姿が浅草寺にあった。清次は、源之助の位牌に5年ぶりの帰還の報告をした。昌吉が源之助の遺書を持ってくる。自分が5代目を継ぐこと、争いごとを禁じる遺書を読んで言葉を失う。兄貴分の昌吉が継ぐべきだと言ったが、昌吉は足を悪くしているし、清次にしか神津組の危機を守ることはできないのだと説得する。清次は5代目を襲名した。
清次が帰ってきたと聞いて、石岡組の西村と綾が挨拶に来た。清次は昔の気持ちを封印して二人の結婚と西村が石岡組を継いだことを祝福した。庭場を守り、売人たちのために商品の仕入れを頑張ろうと言う清次。神津組にも活気が戻ってきた。
美代(
府中まで行き、高校の後輩たちの定期演奏会を覗く。息子や娘でもおかしくない見知らぬ後輩たちの演奏を聴きにくるモノ好きは、自分と2年後輩のYしかいない。なかなか悪くないというか、自分たちの時代に比べて確実にというか格段にうまくなっているなと、そのままビルの屋上にあるビアガーデンに上がる。Yと自分の他に1組しか客がいない。とりあえず、ビール飲み、四方山話をして帰る。
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