2009年2月12日木曜日

お春は、江戸時代のモナなのか。いや、逆だ、平成好色一代女。

朝とてもいい天気にダッシュで洗濯し、干して、更に家中掃除機をかけ、燃えるゴミ出し。
シネマート新宿で、新東宝大全集
52年新東宝/児玉プロダクション溝口健二監督『西鶴一代女(77)』。
   奈良の外れにある荒れ寺で、客を引く年を取った夜鷹の姿がある。初見世なのにお茶ひきだと夜鷹仲間と話をしながら、寺院の境内の焚き火に当たっている。御所にまで上がったあんたがねえと言われる女。お春(田中絹代)は、読経の声に惹かれ本堂に入る。百羅漢を眺めるうちに一つの仏像に男の顔が重なる。勝之介(三船敏郎)。
   奥井春は御所に仕えている。ある日小女を連れ外出した折、公卿の菊小路(清水将夫)の若党、勝之助(三船敏郎)は、偽って主人の名を出し、茶店に呼び込んで、春への熱い想いを伝えた。身分違いの不心得を叱責しながらも、憎からず思っていた心の底に気が付き、勝之助を受け入れる。しかし、一度だけの逢瀬は、京都所司代が遊女の摘発に茶店に乗り込んできたことで発覚し、御所内に仕える女官が身分卑しいものとの不義密通をしたと言うことで、克之介は斬首、お春と、監督不行き届きとして責められた父丹波新左衛門(菅井一郎)、母とも(松浦築枝)とともに洛外へと追放され、山里深い田舎家で生活することになった。勝之介は遺言で、誠に愛する者と結ばれてほしいことといつか身分などとは関係なく愛する者同士が結ばれる世がくることを願うと残して死んだ。お春は、その言葉を母親から聞き、後を追おうとするが、果たせなかった。
   京都の笹屋嘉兵衛(進藤栄太郎)のもとに、松平家からの早駕籠がやってくる。使者の磯辺老人が言うには、松平清隆(近衛敏明)と奥方(山根寿子)との間に世継がなく、江戸では松平の気に入る側室も見つからないため、お取り潰しが噂されるほどのお家の危機だとのことだ。側室探しかと安堵した嘉兵衛だったが、磯辺が掛け軸を取り出し、そこに描かれた女に似た、年の頃15歳から18歳、顔は当世風な丸顔、眉は厚く、ほくろがなく、足は八文三分・・・・と数十項目に及ぶ細かい注文を読み上げるのを聞いて驚き顔だ。数十人の娘を京じゅうから集めても、どれも帯に短し、たすきに長し、殿様の希望をすべて満たす娘は見つかるわけがない。
   困り果てた磯辺と嘉兵衛が、茶屋で頭を抱えていると、若い娘たちが舞を舞っているらしいのに気がつく、駄目元で覗いてみると、そこの娘の一人にお春がいる。よく見ると掛け軸の娘に瓜二つではないか。ほくろの有無など聞けば、殿様の条件にぴたりと合う。さっそく嘉兵衛は、新左衛門ととものもとへ行き、お春を側室に上げたい旨を伝える。勝之助の遺言を思い出し、妾になるのはいやだというお春だが、側室とはいえ三万石の大名、世継を産めば女としてはこれ以上のことのない出世、更に支度金100両に目も眩み、新左衛門は、お前が起こした親不孝が、これでようやくチャラになると言うのだった。
  江戸に下り、松平家に輿入れをするお春。医師も子供を産める身体だと太鼓判を押した。奥方の激しい嫉妬の視線を感じながら、それでもお春は見事世継を出産した。お春の希望も空しく、世継は、生まれてすぐに、奥方とお局吉岡(浜田百合子)取り上げられて、乳も与えさせてもらえなかった。しかし、清隆は、お春を愛し、頻繁に通った。しかし、房事過度で殿様の健康を危ぶむ声もあり、世継を得た松平家は、お春を親元に帰す。娘が三万石大名の世継の生母となったことで左うちわを夢見ていた新左衛門は大いに落胆、更にたった5両しか下されなかったことを知って、泣きだすのであった。
   娘の出世で商売を始めようと高価な呉服を仕入れていた新左衛門の借財の形に京島原遊郭に売られるお春。島原一の由緒ある遊郭丸屋で太夫となった春。ある日、馬に酒樽を積んだ田舎ものの男(柳永二郎)がみせにやってきた。死ぬまでに一度こういうところで遊んでみたい と20年こつこつ金を貯め、はるばる越後からやってきたという。店の主人は、格式高い店なので、誰かの紹介がなければ、駄目だと言うが、男が懐中から大金を取り出して見せると手のひらを返すようなへつらい方だ。座敷に上がっても、男は金を派手にバラまき、皆に拾わせる。一人冷静な春。お前は金が欲しくないのかと男が尋ねると、私は乞食ではありませんと言うお春。慌てて主人は春を連れ出し、高い金で買われてきた自分の立場をわきまえているのかと凄まれる。しかし、金を欲しがらないあの太夫が気に入ったので身請けしたいと客が言い、早速手のひらを返す主人。春は男に身請けされたら、越後で贅沢を望まず、一生懸命尽くしますと言う春。しかし、男が贋金作りだと露見し、役人たちにその場で捕まった。
   年季が明け、迎えに来た母親と京の街を家路につく春。ある茶店で休もうとしていると、近くで女乞食が三味線を弾き歌っている。銭をやり、どこでこの歌を覚えなすったと尋ねる春。女乞食は、自分がかって少しは名のしれた太夫だったと告白する。他人事には思えない春。実家に戻った春に、笹屋での奉公の話が来た。うちから嫁にだしてやるので、自分の家のつもりでいろと言う主人夫婦。しかし、妻のお和佐(沢村貞子)は、春に他言無用と誓詞まで書かせ、自室に呼ぶ。お和佐は、重い病に罹った際髪が大量に抜け、自分の髪を密かに梳いてくれる女を探していたのだ。店の手代の太吉(大泉滉)が春に色目を使い何かと構ってくるが、春は相手にせず、主人夫婦に尽くした。しかしある時店を訪れた客(加藤大介)が、島原の遊女時代の客だったことから春の前職が露見する。春は夫が身請けした遊女ではないかと嫉妬したお和佐は、春の長く黒々と美しい髪を切ってしまう。また、主人も、今まで商売一途で、傾城遊び(女遊び)も出来なかったが、これからはタダで出来るのだと春に寄ってきた。主人夫婦の余りの仕打ちに怒った春は、ある夜、猫に自分の髪の匂いを覚えさせ、夫婦の寝屋に入らせた。思惑どおり、猫はお和佐の頭がら女将の頭から春の髪の毛を持ち去らせた。
   再び実家に戻った春に縁談の話が来た。よく働くことを認められ、暖簾訳を許された美扇屋の弥助(宇野重吉)が春を見初め、今までのことを全て知った上で、嫁に欲しいと申し込んできたのだ。苦労した娘の幸せに喜ぶ両親。しかし、幸せは一瞬だった。商いの帰り、春に約束した帯を求めて戻る途中、辻斬り強盗にあったのだ。帯を奪われまいと握り締めたままの亡骸にすがって泣く春。
   春は尼僧になろうとする。春の身の上話に同情し許す庵主妙海(東山千栄子)。ある時、笹屋では太吉が番頭の治平に売掛金があることで大層叱られている。反物は春に渡したと白状する。治平は尼寺を訪れ、反物を返せと言うが、春はもう仕立てたと答えた。では仕立てたものを返せと言う治平に、これだと言って、着ていた着物や帯を脱ぎ出す。治平は小僧に小遣いをやり、時間がかかるのでしばらく遊んでいろと命じて、春に襲いかかった。庵主が外出から戻り、治平と春の姿を目撃、直ぐに春は追い出される。
   尼寺の門外で呆然としていた春に太吉が声を掛ける。自分も店から暇をとらされ、腹いせに50貫の金を盗んできたと言う。一緒に逃げようと無理やり春を引っ張っていく太吉。しかし、道行きの途中で、追い掛けてきた治平たちに捕まえられ春をその場に残し太吉は連れて行かれた。
    どの位経っただろうか。荒れ寺の門前で女乞食に身を堕とし、三味線を弾き歌う春の姿がある。春の前の茶碗に銭を投げる人はなく、3日間何も口にしていない。そこにみすぼらしい身なりの女が2人通り掛かり、自分たちの塒に連れて行き、食事と酒をご馳走してくれた。女たちは夜鷹だった。着物などを借りてもらい、夜道に立つ春、しかし客はつかない。1人の老人が声を掛け、宿に連れて行く。しかし、老人は沢山の道連れの若者たちの前で、春の顔に灯りを当て、女遊びがしたいというが、こんなババアの化け猫がいいのかと言う。春は銭を受け取ると化け猫の真似をして、脅してから帰る春。
    そして冒頭のシーンに繋がる。羅漢の顔を眺めながら涙している春に夜鷹仲間が声を掛ける。自分を通って行った男たちによく似たヘンな顔があると言う春。春は倒れた。寺の部屋で介抱され意識を取り戻す春。母ともの姿がある。長い間春を探し歩き、このあたりで見かけたと聞いて訪ねてきたと言う。ともは、もうこんな苦労をしなくてよくなったのだと言う。松平の先の殿様が亡くなり、春の生んだ子が正式に継いだので、生母の春を江戸屋敷に迎えたいと言う使者が来たのだと。抱き合い泣く母娘と、良かったねと口々に言う夜鷹仲間たち。
    江戸屋敷に向かった春だが、実子である現殿とのお目通りはかなわなかった。更に、遊女にまで身を落としていたことが、先殿への恩義も忘れた不届きものだとの沙汰がおり、国表に連行し蟄居を命じられる。たった一つの恩情として、屋敷の渡り廊下を歩く殿の姿を庭から眺めることだけが認められた。静かに見ていた春だったが、これが最初で最後なのだと思うと、我が子の姿を追い始めた。必死にとめようとする家臣たち。しかし最後に春を見逃してしまい行方知れずになる春。
托鉢僧が門付けをしている。その顔は春である。
    新宿バルト9で、フィリダ・ロイド監督『マンマ・ミーア(78)』。
    ギリシャの地中海に浮かぶ島でホテルを経営しているドナ(メリル・ストリーブ)の20歳になる一人娘ソフィ(アマンダ・セイフライド)がスカイ(ドミニク・クーパー)と結婚することになる。ソフィの友達2人、ドナとかってドナ&スーパー・ダイナモズを組んでいた、独身主義者で料理本のベストセラー作家のロージー(ジュリー・ウォルターズ)と全身整形で4度目の結婚相手募集中のターニャ(クリスティーン・バランスキー)もお祝いに駆けつけた。しかし、ソフィはドナに内緒で、昔の日記を読んで、自分の父親の可能性のある男3人にドナ名で招待状を出して出席の返事を貰っていた。自分の父親に会いたかったことと母親へのサプライズのためだ。NYで建築家として活躍するサム(ピアース・ブロスナン)、ロンドンの銀行家ハリー(コリン・ファース)、スウェーデンの冒険小説家のビル(ステラン・スカルスガルド)。3人は偶然島に向かう途中一緒になり、ビルのヨットで島にやってくる。お互いが同じ夏にドナと恋に落ち、皆ソフィの父親の可能性があるとは知らない・・・・。
   うーん、女性のための映画だなあ。二十歳の娘と親の話だから、自分の世代だと思うが、もし自分にソフィのような娘がいることが分かったら、幸せだろうなと妄想は膨らむが、すっぴんのメリル・ストリープが現れて、気持ちが変わらずにいるかときかれても、君は変わらないねと本心からは絶対言えない。自分の娘でなければ、ソフィと恋をやり直したいと叶わないことを夢見てしまう駄目な私。万が一、かって愛したドナをブロスナンのようなイケメン同世代に取られたからと言って、ドナの友達のロージーに私はフリーとパーティーで迫られて、“試しに”付き合うことになってしまうビルは悲し過ぎる。おめでたい席だからあまり無粋なことも出来ないし位の優柔不断さを持った自分には確実に存在する危険だ。ああ。    
  ABBAは、パート・バカラック、カーベンターズと並んで、ポップスの世界ではハズレのない曲ばかりなので、どれもこれも懐かしさいっぱいだが、最後にアマンダ・セイフライドのサンキュー・フォー・ザ・ミュージックがJPOP風味のアコースティックアレンジで歌われるのがいい。
   神保町シアターで東宝文芸映画の世界38年東宝山本嘉次郎監督『綴方教室(79)』。
   葛飾区四ツ木に住む本田尋常小学校六年生女二組の豊田正子(高峰秀子)は、ブリキ屋の父ちゃん(徳川夢声)、母ちゃん(清川虹子)、弟で六年生の実と五歳になる光雄の五人家族。景気が悪いので父ちゃんの仕事は少なくとっても貧乏だ。綴り方の授業で、正子は弟について書いたものを読んでいる。読み終わり、先生(滝沢修)が質問のある人と尋ねると、級友たちは競って手を挙げた。どっちの弟のことかとか、ちゃーが重いとはどう言う意味かとか。先生は、綴り方は他人に読んで貰うものだから、誰にもわかるように、独り善がりではいけないと注意して、次の授業までに、よく考えて直してくるようにと言った。
     家に帰る途中で、団子売りがいた。1本1銭。家に帰ると、父ちゃんと光雄が1通の手紙を前に深刻な顔をしている。母ちゃんに団子を買いたいので、1銭おくれと言うが、金なんか無い、父ちゃんに頼みなと言う。父ちゃんは、手紙を見せ、何でも裁判所からのもので、家賃が溜まっているので、この家を出て引っ越さなければならないらしいと言う。これを読んでみろと父ちゃんは言うが、裁判所からの手紙なんか難しくて読めない。読めないよと言うと、6年にもなってなんだと怒られてしまった。母ちゃんから金のことを言われて父ちゃんは布団を引っ張り出して、まだ3時半なのに、ふて寝してしまう。正子は実と光雄を連れて外に遊びに出る。馬車が轍を泥道にとられて困っていたので、お馬さん頑張れと声を掛ける子供たち。
    次の綴り方の授業で、弟についての文章を読み上げる正子。とても分かり易い文章になったと先生に褒められて、綴り方がとても好きになる正子。夏休みになる。隣の丹野さん(三島雅夫)の奥さん(本間敦子)は娘を連れて田舎に帰ることになった。夫では世話をしないだろうからと、つがいのウサギを正子にくれた。子供が生まれたら、1匹20銭で売れるらしい。早速弟たちを連れて荒川の土手で餌の草を取る正子。
    二学期が始まった。正子が書いたウサギについての綴り方が雑誌の赤い鳥に掲載された。正子は走って帰り、母ちゃんに見せた。褒美に服を買ってくれる母ちゃん。しかし、思わぬところから問題が起きた。綴り方の中で、丹野のおばさんが言った「梅本さんに兎をあげてもいいが、あの人はお大尽のくせにケチだから」と言った話を、そのまま正子が書き、雑誌に乗ったことで、梅本さんちの子供が学校でいじめられたと、文句を言いに来たのだ。梅本さんは地元の顔役で、父ちゃんの仕事の差配もする偉い人なのだ。先生は責任を感じて、正子の家に来て、両親に頭を下げる。両親は恐縮するが、先生に出す座布団もない。また先生は、梅本さんのところに謝りに行く。子供の綴り方ぐらいで、仕事を干すようなことはしないとしながら、他の職人たちへの手前、黙って見過ごす訳にはいかないと言われる先生。
     隣の丹野さんは、とても若い後添えを貰った。今日は父ちゃんが給金を貰ってくる日だ。お腹が空くが、父ちゃんが帰ってこないと食べるものがない。母ちゃんは、寝ていろと正子や稔に言う。しかし、遅くに帰ってきた父ちゃんは、大変なことになった。自転車が盗まれたという。先方で1時間くらい世間話をしていて、帰る時に無くなっていたことに気がついたと言う。あんなボロ自転車と父ちゃんは言うが、大赤字だ。
     雨が続き、父ちゃんはブリキ職人の仕事が無くなり、日雇い派遣の登録人夫になった。しかし、毎日仕事がある訳ではない。仕事にあぶれた時は米の配給切符を貰ってくる。朝、米屋に引き換えに行くときに、通学途中の級友に会うのが恥ずかしい正子は、友達に糠漬けの糠を貰いに言ったと嘘をつく。辰吉さんから仕事が来た。年末急ぎなので少し割がいい仕事らしい。大晦日給金が出る。正子は、着物を買って貰うことに。小学校2年生の時以来なので、正子の着物はつんつるてんだ。正子は、父ちゃんは、酒を飲んでいる時は嫌な父ちゃんだけど、酒を飲まなければいい父ちゃんだと母ちゃんに言う。家の外に、丹野さんの前の奥さんと娘が立っている。丹野さんは留守だ。母ちゃんは家に入れてやる。奥さんは、田舎の暮らしがうまくいかず、娘を丹野さんのもとに連れて来たらしい。奥さんは、キリスト教を信仰しているらしい。何か言うたびに、アーメンとかイエスさまと言うので、正子と稔は可笑しくなったが、我慢をする。丹野さんが帰って来たので、奥さんたちは出て行った。除夜の鐘が鳴り始めた。ようやく父ちゃんが帰ってきたが、酔っ払っている。騙されて勘定が貰えなかった。タダ働きだ。辰吉の野郎ぶっ殺してやると言う。
    食うや食わずの正月が過ぎて、三学期が始まった。雨や雪が続いて、家計は更に厳しくなった。ご飯と沢庵だけの食事だ。父ちゃんが鰹節か醤油はないかと聞くがどちらも切らしてから随分たっている。
    13歳(数え年なんだな)になり、もうすぐ卒業だ。 母ちゃんが、芸者になれば綺麗な着物を着て、美味しいものを腹いっぱい食べられるという。その話を聞いて、正子の箸が止まった。母ちゃんは、お前もういいのかい。いつもだったら、4杯や5杯食うじゃないか、おかしな子だねえと言う。家族が寝静まってから、学校の休み時間に、正子はちびた鉛筆を舐め舐め、綴り方を書き続けている。教室で書いていると先生が声を掛けてきた。「豊田さんは、最近いつも綴り方を書いているが、先生に見せてくれなくなったね。何か心配事があったら、遠慮なく先生に言いなさい。卒業してもいつまでも先生は相談にのるよ」と言う優しい言葉に、正子は窓際に走って行って泣く。先生は、正子の書いていたものに目を落とし、言葉に詰まる。
   先生は家で、奥さん(赤木蘭子)と話している。奥さんは、「娘を芸者にするというのは、よっぽどのことでしょう。何とか、芸者にならずともすむようにしてあげたいですね」と先生に話している。その時、正子の母親が先生を訪ねてくる。父ちゃんが本所の建築現場の常雇いになったので、ようやく生活の不安が減ることになったと言って、以前先生が貸してくれた米代を返すと言う。いいですよ、子供に何か買ってあげてくださいと言う先生に、いや借りたままだと、義理を欠くのでと言って、お金を返した。
   いよいよ卒業だ。みんなで記念撮影をした。先生や級友たちと一緒に帰る正子。みんなの進路を言う先生。正子は、ここから見える煙突がある工場で働くことになっている。最初は、ひと月70銭だけど、頑張れば1円50銭になるので頑張るんだ、新しいことを体験して、どんどん綴り方を書くんだと言う正子。
   膝までしかないつんつるてんの着物姿で、明るく前向きに生きている正子を演じる高峰秀子、素晴らしい。正子が活き活きと綴り方(作文)として、ありのまま正直に書いた当時の貧しい庶民の生活を、ありのまま映画にした山本嘉次郎監督と、徳川夢声、清川虹子ら役者の演技。唸る。
   夜は、かって同じ会社の先輩が転職した同業会社の退職をすることになったので、お祝いを外苑前の粥屋喜々で。まあ喜々をやっている後輩も含め、元の会社の同窓会のようなものだ。

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