2009年2月9日月曜日

職安と銀行強盗

   午前中新宿の職安の認定日。職業安定させるのが、おまえ等の仕事だろと心の中で毒づく(苦笑)。失業手当ては施しではなく、二十数年間払い続けてきた失業保険のほんの一部を返して貰っているだけなんだから(笑)。この日の為に、あんたらの給料や、スパウザなんちゃらや私の仕事館やらの莫大な建設費を払ってきたんじゃないかと、あと残り僅かになった支給に思う。デンマークは四年間前職の給料の80だか90%支払われ、職業カウンセラーによる、再就職支援が行われるらしい。官僚自ら職安では仕事が見つからないと思って特別扱いを望んでいるらしいが、彼らも、一度こっち側に並んで見るといいと思う。そうすると、介護や第一次産業など仕事はあるのに、文句だけ言っている失業者たちとは言わないだろう。ここの空気を吸っていると気持ちが荒んで、マルクス的プロレタリアート社会観にリセットされるので、社会的な意義はあるのかもしれない(笑)。
    時間が少し空いたので、赤坂の銀行で先延ばしにしたままだった手続きをする。奇跡的に殆ど待たずに終了。気のせいか月曜午前中でも人が少ない。銀行も閑古鳥がないている感じ。不景気でローン借りる人がいないのか、貸し渋りで借り手がいなくなったのか。独身美人OLに惣菜を差し入れ、元同僚とフィッシュでチキン・キーマカレー。
    何の映画を観ようか悩んだ末、神保町シアター東宝文芸映画の世界
    49年東宝/49年プロ谷口千吉監督『ジャコ万と鉄(68)』。昭和23年北海道、ニシン漁の漁夫として東北から沢山の出稼ぎが集まってくる。網元 九兵衛(進藤栄太郎)の漁場も、その一つ。ケチな九兵衛の娘マサ(清川虹子)も、飯の盛りが多いだの、沢庵を沢山切れば飯の量が増えるだのと賄い婦たちに文句を言っている。娘婿の宗太郎(藤原釜足)が、九兵衛に、賃料が安いので人手が集まらないと言って、どやされている。街に行って流れ者を集めて来いと言う九兵衛。前科者や氏素性の知れないものなど多いので、番屋が仕切れないのではと怯える宗太郎に、俺が仕切るから大丈夫だ、後ろ暗いところのある連中の賃料は、叩けるだけ叩けばいいのだと言う九兵衛。
   しかし、ジャコ万と言う隻眼の荒くれ者が北から九兵衛を追ってきたという噂を聞いて怯えだす。かって、敗戦のドサクサで、樺太から逃げる時に、ジャコ万の姿が見えないのをいいことに、彼の船を盗んで逃げ出したのだ。宗太郎が集めて来た男たちの中に、ジャコ万(月形龍之介)の姿を見つけて驚く九兵衛。そこに海軍に徴用され死んだと言われていた九兵衛の息子の鉄(三船敏郎)が帰ってくる。鉄の母のタカ(英百合子)は大喜びだ。マタギをしているジャコ万は、ライフルを持っているので、強くは言えない九兵衛だが、ジャコ万は何か魂胆があるらしく、毎日酒を飲むだけだ。しかし、何かと鉄は、ジャコ万に立て付いて取っ組み合いの喧嘩ばかりしている。
   ニシン漁は、いつ鰊がやってくるかだ。九兵衛は気がきでなく、朝晩と漁夫を叩き起こして働かせている。人使いが荒いくせに、他の漁場よりも賃料が安く、みな不満が起きている。鉄は、毎週土曜日になると、夜通し犬橇を飛ばして函館に行き、教会のミサに出席している。鉄は、そこでオルガンを弾く少女(久我美子)に思いを寄せている。しかし、声を掛けるわけでもなくオルガンを弾いている姿を眺めているだけだ。鉄は行き帰りに、馬橇に乗る鋭い目を持つ娘ユキ(浜田百合子)に出会う。ユキは、ジャコ万を慕って、函館から通うが相手にされない。ある時は、暴走する馬に牽かれているユキを見つけ、追跡し、助ける。橇の上でユキは縄で縛られている。そうされてもジャコ万を愛しているというユキを見送る鉄。ある夜、番屋の戸を叩くものがいる。鉄がまた街に遊びに行って帰って来たのだろうと戸を開けてやる家族はいない。タカが可哀そうだと戸を開けると、銃を持ったユキがいる。命がけでジャコ万のもとに現れたユキだが、顧みないジャコ万。タカが自分の布団に入れてやる。翌朝帰ってきた鉄は、姉のマサに女中として置いてやってくれと頼む。
   ある日、大時化がやってくる。九兵衛一生のお願いだ。割り増し金を払うので、沖に出て網を引き揚げてくれと漁夫たちを海にやる九兵衛。漁夫たちの命がけの働きで、なんとか網を回収することが出来たが、割り増し金の話などなかったかのような九兵衛の態度に、漁夫たちの不満は爆発する。九兵衛の話には全く信用が置けないというのだ。漁夫たちはストライキを始める。その時大船頭(島田敬一)が鰊がやってきたと言う。30分以内に網を上げないとカズノコが出て、駄目になってしまう。九兵衛は、一生のお願いだと言うが、仏の顔も三度までだと、誰も立ち上がらない。
   その時、身体が弱く九兵衛からは、唯飯食らいだと罵られていた大学(松本光男)が病床から出てきた。ニシンは、九兵衛のものではなく、日本のものだ、日本人の食生活を豊かにするため、日本の漁業を振興するために、鰊を取るのだと言う。一人また一人と立ち上がった時に、ジャコ万がライフルを撃つ。「この時を待っていたのだ。網を上げられなければ九兵衛は悔し涙を流すだろう。自分の船を盗まれ、ソ連に抑留された自分の苦しみを味わえ」と叫ぶジャコ万。鉄は止めに入り格闘になる。しまいに網を切ってやると言うジャコ万に、「そうすれば、九兵衛は悲しむだろう。しかし、鰊が取れなければ、出稼ぎに出た父親や夫の稼ぎを待っている妻や子供に、一文も持って帰れなくなったら、皆が悲しむのだ」と説く鉄。ジャコ万は、隻眼から涙を流した。
   鰊が懸った網を上げる漁夫たち。その中には、鉄もジャコ万もいる。大漁だ。ユキはふと大学の姿が見えないことに気がつく。鰊の山の隅で息絶えている大学。名前も何も自分のことを語らず横文字の本を静かに読んでいることで大学と漁夫たちに呼ばれていた大学。本に一通宛名のない手紙がある。読もうかという鉄に、知られたくないからこそこんな処に流れて来たんだろうから、止めてやれと言うジャコ万。そうだなと言って手紙を囲炉裏にくべる鉄。春が来て、出稼ぎは皆帰っていく。給金を渡す九兵衛。ちゃんと払っただろう、来年も来てくれと頼む。大学の分の給金を懐にいれようとする九兵衛から取り上げる鉄。ジャコ万は、マタギの仕事に戻ろうとしている。大学の墓の前から旅立とうとしているジャコ万に、忘れ物があるぞと言う鉄。そこには、大きな荷物を持ったユキの姿がある。ユキに大学の給金を押し付け、これだけあれば掘立小屋くらい建つだろう。お前が連れて行かないならおれの嫁にすると言う鉄。ジャコ万は何も言わないが、戻ってきてユキの荷物を持つ。嬉しそうにジャコ万の後を追うユキ。
   鉄が身支度をしている。姉夫婦は、長男の鉄がこの仕事を引き継ぐものだと思っていただけに驚く。鉄は、「俺は船乗りだから、クジラを追っかけている方がいいのさ」と言って、後を姉夫婦に託して去っていく。鉄は協会でオルガンを弾く少女を見つめて笑顔になり、函館の街を歩いて行く。
    62年東京映画堀川弘通監督『娘と私(69)』。
    雨の中、ホテルには招待客が次々と訪れる。なかなか現れない新婦と新婦の父親に苛立つ叔母の北川キヨ(杉村春子)は「志郎さんは、こういうところ心配だから」とやきもきしているところに現れる2人。新婦の父で小説家の岩谷志郎(山村聡)を新聞記者たちが囲む。花嫁の父の感想を聞かれ、ようやく解放された感じだよと答える岩谷。窓の外の雨を見ながら回想する岩谷。
   貧乏作家の岩谷は、フランスでエレーヌ(フランソワーズ・モレシャン)と恋に落ち、小さな田舎町で結婚、日本に連れて帰国する。
  大正14年8月26日、雨が降る夜、麻理が生まれる。しかし、6年後、エレーヌは身体を壊し一次帰国することになった。幼い娘を育てる為にも、中野の叔母(杉村春子)に同居する。アイの子とからかう男の子を泥だらけで馬乗りになって喧嘩をする麻理(小橋玲子)。就職も決まらず、子育てとの両立に疲れた岩谷は8歳になった麻理を、寄宿舎のある白薔薇学院にいれることにする。入舎の前夜、麻理は、寂しくないかという岩谷に、へっちゃらさーと明るく答える。しかし、ママがやってきて、自分を笑顔で見つめている夢を見たと言う。
  娘を寄宿舎に入れたことで、肩の荷が降りた気がし、精力的に仕事を始める。しかし、ある日、フランスから手紙が届き、エレーヌが10月15日に死去したことを知る岩谷。岩谷は麻理を連れて遊園地に出かける。遊具に乗りはしゃぐ麻理。ガルガンチュアという孤独な巨人の逸話を話す岩谷。結局その日、エレーヌの死を伝えられないまま寄宿舎に送り届ける。
   ある日、岩谷は友人の作家渡辺(小沢栄太郎)と酒を飲む。渡辺は処女作を出版していた。取り残された気分に酔い帰宅すると、麻理が肺炎で重体だと言う。慌てて寄宿舎に向かうと医師は非常に深刻な状態で絶対安静だと言う。しかし、修道女のリシェール(ジャンヌ・キャランドロウ)は、他の生徒にうつるといけないので、入院させろと言う。怒りに震えて、寄宿舎に入れたのは間違いだったと、麻理を抱き抱え運ぶ岩谷。入院しても厳しい容態が続く。リシェールがやってきて、静かに聖書を読みながら看病をする。岩谷も介護婦が疲れ果て眠ってしまった時も、不眠不休のリシェール。静かに岩谷を起こし、熱が下がってきたと体温計を示すリシェール。リシェールは、麻理は、ママの死に耐え、毎朝教会で祈りを捧げていますよという。岩谷が言えなかった大切なことを、リシェールは伝えてくれたのだ。それが私の仕事だと言い、もう大丈夫、仕事が待っていると学園に帰っていくリシェール、。心から彼女に感謝する岩谷。
  麻理の病気は、皮肉なことに、岩谷に生きる勇気を与え、仕事も徐々に安定していく。翌年の夏、雑誌の連載小説を書いている岩谷。叔母のきよが、連日のように見合い話を持ってくる。麻理に母親は必要だと思いながらも気が進まない岩谷。しかし、ある日強引にきよが自宅に呼んできた千鶴子(原節子)には、好感を持つ。千鶴子は夫と死に別れた物静かな佇まいの女性だ。11月4日ささやかな式を挙げ、雑司ヶ谷の貸家に一家三人で暮らすことに。
  麻理と千鶴子はすぐに親しくなる。一緒に遊ぶ二人を見てきよは、「麻理は不思議な子だねえ。小さい時から人に揉まれて苦労してきたからかねえ」と言う。しかし、徐々に千鶴子にはストレスが溜まる。原稿を遅くまで書いている岩谷に付き合って翌朝寝坊した千鶴子が謝っても麻理はぐずっている。学校まで一緒に行って先生に謝るという千鶴子に、甘やかすなと言って、麻理を叩いて学校に行かせる岩谷。遅くまで付き合わなくていいと気遣ったつもりの岩谷だが、夫婦の寝室は別々になる。麻理は一生大事にするので、岩谷の子供を産みたいという千鶴子に、自分は子供を作らないつもりだと言う岩谷。
   翌年正月、岩谷と麻理は外出し、駄菓子を買って帰ると、「菓子なんて私が買うのに」と泣き出す。怒った岩谷は駄菓子を庭に叩きつける。何か不満があるなら言ってくれと問い詰める岩谷に、「私みたいな馬鹿な女は、田舎に帰ってほうがいいのです」とい言いだし、家を出て行ってしまう。置き手紙に、寝室がずっと別なことの哀しさをウィットに富んだ書き方で書いてある。笑い始める岩谷。数日後、千鶴子が帰ってくる。一転して明るくなった千鶴子に、初めて女を感じる岩谷。しかし千鶴子は友人の夫の産婦人科医に診断してもらうと、不妊症だと診断され、ふっきれたと明るく言う千鶴子。
   女学生に成長した麻理(星由里子)の姿がある。女友達を家に招き、誕生日だ。岩谷も千鶴子も追い出されて苦笑する。そんな明るい日々は、しかしその年の12月8日に太平洋戦争が起きたことで、急速に暗い影が覆う。リシェールがフランスに帰国する挨拶にやってくる。自分の聖書を麻理に渡すリシェール。小説家は、いちいち情報省に行って、事前検閲を受けなければ書くことも出来ない。世渡りの上手い渡辺は、戦意高揚のための従軍作家になっているらしい。ある日、岩谷のもとを刑事がやってくる。千鶴子に勧められて始めた習い事をサボって、無届集会で取調べ中の教師アンリー・ユゲットというフランス人の元に通っていると言うのだ。ちゃんとしたフランス語を習いたかったという麻理に、こういうご時世だから行動を慎め、フランス語が習いたいのであれば、自分が紹介してやると言う岩谷。日仏混血の麻理を守ろうと強く思う岩谷と千鶴子。近所の防空訓練に、弱い心臓を酷使して参加する千鶴子は倒れてしまう。警戒警報が鳴り自宅の防空壕に三人で潜んでいると、庭で飼っていた鶏が、銃撃されるのを見て、疎開を決意する岩谷。四国愛媛の千鶴子の実家しか頼るところは無い。しかし東京を離れても、恐怖と食糧難から解放されることはない。
    暑い夏の盛りに、買出しに出かけた三人が歩いていると、老人(東野英治郎)が、彼岸花に囲まれて座っている。沢山の人が死ぬとこの花は咲き誇る。だから極道花と言うんじゃ。あんたたちは敗戦の放送を聞いとらんのかと言う。戦争は終わったのだ。終戦となって1年が経っても、岩谷は、義父(三津田健)と、毎日釣りをしている。そこに古くからの友人の編集者の植村(松村達雄)が、はるばる東京から書き始めないかといいにやってくる。渡辺は、エログロ小説を書いて売れっ子らしい。まだ、書く気にはなれないという岩谷。書斎には、疎開してきた時のまま、蔵書は解かれないまま積み上げてある。いつものように釣りから帰宅すると、書斎が片付いている。麻理と千鶴子が、一日掛けて大掃除したのだ。物を書かないのかという麻理に、不本意でも戦争に協力した文章を書いていた自分は、文章を書くことしか自分には出来なくとも、戦争に負けてすぐに宗旨替えをすることはできないと言うのだ。
   しばらく後、麻理は東京に出て学びたいという。アテネフランスも再開しており、植村の所に下宿して通いたいと言うのだ。麻理は東京に旅立った。一人娘の上京を心配して落ち着かない岩谷。ようやく麻理から電報が届く。「ブジツイタ。イイイエミツケタ」驚く岩谷に、一緒に上京しましょうという千鶴子。思いがけず、しばらく実父と暮らせたので、幸せな疎開暮らしだったという千鶴子。終戦から1年廃墟となった東京の復興を進めるスピードは、岩谷の文学的好奇心を刺激した。書き上げた原稿を読む植村。こんな短期間でまとめた割に出来はいいと言う。復活の手ごたえを感じる岩谷。
   麻理は22歳になっている。大学の友人たちと、岩谷の書斎から原書を探して、読書会などをしている。ようやく、小田原に家を買うことになり、千鶴子は内装に張り切っている。その日も麻理と一緒に下見に出かける。一方、岩谷は、自作の文学賞の受賞パーティに向かう。植村に祝福されているところに、渡辺が現れる。本を読んで嫉妬したと告白する渡辺。岩谷の長い屈託は、ようやく解消される。ホテルに麻理から電話が入る。急に千鶴子が倒れ、危篤状態だと言う。駆け付けた岩谷に医師は。脳血栓だと告げる。結局その夜千鶴子は亡くなった。海に向かって慟哭する岩谷。
   千鶴子があれだけ楽しみしにていた海辺の家に引っ越す。腑抜けのようになり、朝麻理が外出すると酒を飲み海を眺めている岩谷。フランスからエレーネの弟のフランソワから手紙が届く。フランスに行きたいと言いだす麻理。お嫁にいかずにフランスに行くのかという岩谷に、お嫁に行ってフランスに行くことになるかもしれないと言い、一人の男に会ってみてほしいという麻理。
   外務省の研修所にいる鍋島直樹(?)という男を連れてくる麻理。庭でキャッチボールをしながら、あまり小説は読まないという鍋島に、自分の小説は読んだ事はあるかと聞くと、今度読んだが、あまりピンと来なかったと正直に答える。鍋島がフランスに書記官として赴任する日が急に決まる。慌ただしく結婚式をすることになる。挙式の前夜、千鶴子は、岩谷の部屋で眠りたいと言う。もう、麻理が自分でさいころを振ったのだから、自分は心配しないと言う岩谷。さいころを振りそこなってもベソをかくな、自分と千鶴子だって、14年かかって初めて本当の夫婦の幸せを共有することが出来たのだからと娘に話す。
   式を終え、フランスに発った麻理。小田原の家で、女中から郵便物が渡される。麻理からは相変わらず、無事に着いたという便りがない。あいつは!!と麻理を心配している自分に気が付き、もう心配しなくてもよくなったのだと考えなおす岩谷。
   16歳から24歳までの麻理を演じる星由里子が、本当に美しい。華やかな岡田茉莉子とは、また違った日本人離れした涼しげに整った顔。やばい、またおっかけたくなる女優が増えてしまった。
    47年東宝谷口千吉監督『銀嶺の果て(70)』。
    3人組の銀行強盗が、長野に逃げ、冬の北アルプスに潜伏した。新聞記者が警察で話を聞いている。鹿の湯温泉方面の電話線が切断された痕跡があり、そちらに向かった可能性が高い。鹿の湯通りは一本道で、冬山を越えることはかなり熟練した登山家でなければ不可能なので袋の鼠だと言う署長(深見泰三)。とりあえず捜索隊を組んで鹿の湯温泉に向かう。鹿の湯温泉に泊まり客は、10人以上で、酒を持って登ってきた団体客(花沢徳衛)と、二人連れの学生(石田鉱、笹井利夫)。そこに人相の悪い3人組がやってくる。宿のラジオも、銀行強盗の報道がされて直ぐに真空管を盗まれ配線が切断された。電話も不通になっている。
     学生の一人は探偵小説ファンで、3人組が強盗犯だと言う証拠を見つけてやると張り切る。3人組の1人は、小指と薬指がないとラジオで聞いたので、彼らが温泉に行くのを部屋から見張ることにする。2人が温泉に行ったが指は揃っている。最後の男が行く前に2人は先回りすることにする。しかし用心深いその男は普段は手袋を必ず嵌め、温泉でも手拭いで巧妙に左手を隠している。大胆にも学生の1人が手拭いに引っかかったふりをして確認する。学生は、得意のスキーで下山し通報しようとスキー靴を履いているところを拳銃を突き付けられる。宿のものと学生を縛り上げた上、宴会の男たちの服を脱がせた。犬の吠える声がする。
   しばらく後、やってきた警官隊は、露天風呂に入っている集団を見つける。男たちは、服を剥がれたので風呂に浸かって助けを待っていた。銃を持った3人の男たちは、犬の吠える声に逃走したと言う。男たちは、更に山を登った営林所の山小屋に逃げ込む。男たちは、リーダー格の野尻(志村喬)、一番年配の高杉(小杉義男)若くギラギラとした野獣のような目を持つ江島(三船敏郎)の3人。今自首すれば何年食らうだろうと言い出し、江島にジジイいい加減にしろとどやされている高杉。
      とりあえず金を分けようと、野尻が札束を配る。3人組と報道されているので、早く別れたほうがいいと言い出す江島に、体力に自信のない高杉は、一緒に動こうと言う。もともと、ほとぼりが冷めるまで、温泉でひと冬ゆっくり温泉に連れて来たお前のせいだと、高杉を罵る江島。いい加減にしねえかと野尻が言った時、犬の声がして、再び夜の雪山を登り始める男たち。徐々に高杉は遅れだす。しばらくすると高杉と追っ手の先頭にいる犬との差は詰まってきた。恐怖のあまり犬を撃つ高杉。しかし銃声は雪崩を引き起こした。必死に逃げる野尻と江島、また警官隊と新聞記者たち。結局高杉は雪崩に巻き込まれ、行方不明になる。
     当てのない逃走に疲労困憊した野尻と江島は、明け方スキーの跡を見つける。それを辿る2人。行く手にヒュッテがある。その小屋を守っているのは老人(高堂国典)と孫娘の春坊(若山セツ子)。その時には、登山家の本田(河野秋武)が逗留していた。純真なハル坊と接する内に、生きていれば同じ位の娘がいた野尻は、癒やされ次第に人間的な感情を取り戻していく。江島は、いつ追っ手がくるのか不安で、ハル坊が大切に飼っていた伝書鳩を殺してしまう。早く山を越えて逃げようと言う江島に、老人は無理だと言っているので、焦るなと言う。しかし、イラつく江島。
    本田とハル坊は蓄音機をかける。流れる曲に心を打たれる。曲名を尋ねると「オールド・ケンタッキー・ホーム」だ。西洋も日本も人情は一緒だと聞きほれていると江島は、湿っぽいこんな音楽を掛けるなと怒鳴る。慌てて蓄音機を仕舞うハル坊。
     朝焼けの空を見ている本田。ローゼン・モルゲン。薔薇色の朝。この景色に魅せられ山に登っているのだと言う本田。しかし、そんな本田に拳銃を突きつけ、山越えの案内を強要する江島。断れば春坊たちをどうにかすると脅され、翌日早朝、本田、野尻、江島は山小屋を出発する。本田は3人を縄で結び慎重に登っていく。雪渓、岩場、徐々に難しくなって行く。垂直にそそり立つ岩場で、野尻は足を滑らせ、野尻と江島は絶壁に宙吊りになる。やっとの思いで野尻が這い上がると、必死で縄をよじ登るとら縄を止めるために、身を投げ出したことから左腕を骨折していた。頂上まで来たので、邪魔になった本田を置いて行くと言う江島と野尻はもみ合いになる。拳銃の暴発で銃弾は本田の足を貫通し更に深刻な状態だ。江島は野尻の金を奪い、絶壁から突き落とそうとする。しかし2人は一緒に落下する。1人逃げようと縄を解いていた江島は行方知らずに、2人の落下を薄れる意識の中で、縄の確保をした本田により、野尻は墜落を免れる。
      必死に上がってきた野尻は失神している本田を見つける。そこから野尻の闘いが始まった。本田を背負い、本田にロープの扱いを教わりながら絶壁を下り、雪の中を戻り始める。終いには手を凍傷でやられ、暗い中を山小屋に辿り着く。そこで待ち受ける警官隊に逮捕される。応急処置をされた本田に、何でロープを切らなかったんだと尋ねる野尻。山では、ロープで繋がった人間同士は自分の命を捨てても相手を助けるのが掟なんですと答える本田。野尻は、ハル坊に十徳ナイフを渡す。ハル坊はお爺ちゃんがおじさんは悪い人じゃないと言っていたと言う。微笑む野尻。警官隊に連れられ山を下っていく野尻。本田がハル坊レコードをかけるんだと言う。慌ててオールド・ケンタッキー・ホームをかけるハル坊。穏やかな表情になる野尻。
   銀座シネパトスで、燃やせ!俺たちの70'sジャパニーズ・グラインドハウス魂!。   
   76年東映京都深作欣二監督『爆走パニック大激突(71)』
   名古屋の銀行を白昼堂々と、覆面をかぶった2人の拳銃強盗が現れる。彼らは、大津、京都と同じ荒っぽい手口で成功させた。2人は山中タカシ(渡瀬恒彦)と関光夫(小林稔持)。神戸の第一勧銀三宮支店を下見する。これを成功させて2人はブラジルに逃げる計画だ。店舗に入り、トイレで変装し拳銃を撃って逃走する。鮮やかに決まったかに見えたが、関が車にはねられ死んだことから計画は崩れ始める。関の死体は身元が割れる。更に山中がバーテンをしている店に飛び込んできて、アパートに居着いた娘緑川ミチ(杉本美樹)と別れがたくなっていることが事態を複雑にする。アパートに関の兄と称する男(室田日出男)が現れ、関の香典を寄越せと襲いかかる。何とか逃れるが、ちょうど警官の秦野(川谷拓三)が運転をするパトカーと遭遇し、警官一人が亡くなった。ミチを乗せ逃走する山中。犯人の顔はと周り中から詰問され舞い上がる秦野。そこに秦野の同期だが出世頭でやり手刑事の新田(曽根将之)が、指紋から山中が銀行強盗の片割れだと断定し、指名手配される。テレビのニュース番組で名前と顔が流れる。山中はミチに、別れようと言う。しかし付いて来ようとするミチを捨てられない山中。・・・・・。

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