阿佐ヶ谷ラピュタ。昭和の銀幕に輝くヒロイン[第44弾]乙羽信子。
54年近代映画協会新藤兼人監督『どぶ(331)』。
工員の徳(殿山泰司)は、製鉄所に行く途中に行き倒れの女乞食にコッペパンをやる。京浜工業地帯にある製鉄所はストライキ中。会社が雇った愚連隊が組合員に襲い掛かる混乱の中抜け出し、競輪場でオケラに。東京大空襲の時の命拾いした爆弾の破片の爆弾の神様も無くすし意気消沈して塒に帰る徳。ここはカッパ沼と呼ばれる湿地帯。バラックが数軒寄せ集まって極貧の人々が暮らしている。同居人のイチ(宇野重吉)も摺ったようだ。いきなり昼間の女乞食が現れた。名はツル(乙羽信子)。身の上話をし始めるが、少し頭がおかしいようだ。カッパ沼の住人が集まる中、満州からの引き揚げの途中で身寄りを亡くし、叔父の家から紡績工場に働きに出るが、製糸不況でストライキをしてクビに、そこから男に騙されたりしながら、流れ着いたらしい。一度は追い出そうとした徳とイチだが、ツルが土浦の置屋から逃げる時に千円を盗んで持っていると聞いた途端自分たちの飯を分けてやる。翌日からツルはカッパ沼の住人となった。
イチ、徳、元役者の忠さん(信欣三)は、イチは学生だが授業料を払えないで困っていると嘘をついて、大場の鹿蔵の飲み屋に芸者として売り飛ばしてしまう。しかし製鉄所の偉い人たちの大事な宴会でツルは、労働者を大切にしろと言って大暴れ、巡査に連れられカッパ沼に帰ってくる。翌日鹿蔵に金を返せと迫られるが、昨晩のうちにカッパ沼の住人たちで豪遊してしまって返す金はない。結局ツルが駅前でパン助をやって返すことに。ツルは毎晩千円以上稼ぎ、借金は5日で返せる計算だ。喜ぶツル。 しかしカッパ沼の住人は、なんやかんやツルから金を借りていく。また嫌な顔一つせず貸すツル。元役者はイヤリングを、イチと徳はネックレスをプレゼントする。
鹿蔵と地主は、このカッパ沼を競艇場用地にして儲けようと考えている。そのために住人を追い出したいが、一筋縄ではいかない人々。ある時地主の息子が20万円入っている金庫を持って逃げるのを知ったツルが叫ぶのを聞いて、皆水の中まで追い掛けるが、鹿蔵は用地買収資金を使い込んでおり、金庫の中身はヌード写真だった。
風邪を引くカッパ沼住人。イチが寝込んでいるのを甲斐甲斐しく看病するツル。イチがツルに迫ると、激しく拒絶するツル。イチに出ていけと言われ、住人たちからも嫌みっぼくくしゃみをされて、とぼとぼ出て行くツル。ツルが個人で売春していたことが気に入らないパン助たちのグループがツルを締め上げようとする。揉み合う内に駅前の交番に逃げ込むが、あいにく巡査は席を外していて拳銃を掴むツル。訳もわからず乱射するツル。頭の中を、今までの人生が駆け巡り、更に混乱するツル。駅前は大パニックになり、巡査はツルを射殺した。
ツルの遺体を囲むカッパ沼の住人たち。ウナギ取りの名人で元医者らしい博士と呼ばれる老人(加藤嘉)が、ツルは男に移された病に罹っており、自分の死を知っていたようだという。イチを拒んだことも愛する男に病を移してはいけないと思っていたからだ。また、弘美は、ツルが書いた小説を見せ、忠さんが読み始める。カッパ沼が人生で最も幸せな場所で、ここの住人を愛する言葉が拙い文字と文章で綴られている。身を捩って慟哭するイチと徳。住人たちはツルを失った悲しみに打ちのめされるのだ。
乙羽信子、暗愚な娘の役を熱演、しかし、イチと徳が地面に身を投げ出して慟哭する場面、日本人の男で、あんな泣き悶え方をするものは、50年の人生の中で、現実にも映像でも見たことがないので、ただただ驚く。
山下耕作ノ世界。 76年東映京都『夜明けの旗 松本治一郎伝(332)』。
明治41年福岡、徴兵検査の場で差別的な嘲笑を受け、検査官の兵士を殴りつけ取り押さえられる男がいた。彼の名は、松本治一郎(伊吹吾郎)被差別部落の出身ということで言われのない差別を受けてきた。兵役は免除になり、父(浜村純)母(毛利菊枝)兄鶴吉(品川隆二)次兄次七(滝田裕介)の家族での食事中、中国大陸に渡るという治一郎。中国からの手紙の度、送金する両親だが、最後に乙種医師となっているという写真の元気な姿に喜んでいる。
博多座で役者をしている虎松(田中邦衛)が、公園で寝ている治一郎に出会う。大陸でも、部落差別を受け、領事を殴って強制帰国されたのだ。鶴吉の土木作業を手伝うことにする治一郎。治一郎は、すぐに親方として信頼されるようになる。しかし差別は何も変わらない。治一郎は、ある時酒場で絡まれている娘タキ(檀ふみ)を救う。父親が保証人になった借金に苦しんでいると聞いて、金を建て替えてやる。タキは部落出身であることを知った上で、嫁にしてほしいと言う。しかしタキの両親は、部落出身者に娘を嫁がせると村八分になると言って反対する。家を出るというタキに、治一郎は、タキの親の承認がないと、二人の子供は、戸籍上部落出身者の私生児となり、子供が苦しむので一生結婚しないという。
また半三郎(長門勇)の娘ミヨ(高瀬春奈)は、葉村裕介(岡田裕介)と結婚したが、結核になった途端、離縁して実家に戻された。結局ミヨは亡くなるが、部落の火葬場が故障しているので、地域外の火葬場に持っていくと拒否され、海岸で焼くことになる。そこに裕介が現れる。怒り殴る半三郎だが、勘当されてやってきた裕介を許す。しかし、その葬儀に関して、嘲笑する記事を福岡日日新聞が掲載されたことで、みなの怒りが爆発する。暴動になり、治一郎も逮捕される。
大正11年京都で水平社が発足、治一郎のもとに、花田慈円(小池朝雄)らが九州水平社を作ろうと訪ねてくる。治一郎の入獄中に九州水平社の結社式が開かれ、治一郎が代表に選ばれた。しかし、父親は出所3日前に亡くなっていた。その遺影の前で、一生を部落解放運動に捧げ、獄中で伸びた髭を剃らず、酒、煙草、女犯などを断つと誓う。
大正14年、治一郎は全国の水平社の委員長になる。半三郎の息子の清(山田正則)が、徴兵された。軍隊こそ、階級社会であり厳しい差別が残っている。清はその中で差別と闘い懲罰倉に入れられる。残った被差別部落出身者への拷問により自殺者が出る。そのことは、治一郎たちを激しく怒らせた。福岡の連隊に通い、談判する中で、福岡の連隊の責任者である連隊長(山本麒一)を引っ張り出すことに成功し、連隊内で人権講演会を開催することを了解させる。しかし、葉村が全国の水平社に発信したチラシが、在郷軍人会などを刺激する。連隊に激しい圧力があり、約束も反故に。
水平社が、天皇制のもとでの階級制度に対する重大な脅威だと考えたものたちは、あからさまに、あるいは悪辣な陰謀として妨害工作を行う。部落出身者ではない葉村を特高と検察は拷問にかけ、転向させ、治一郎の自宅に爆弾を隠させる。水平社による博多連隊爆破計画をでっちあげ、治一郎、慈円、半三郎らを含む10数名を逮捕した。
昭和2年6月6日、いよいよ裁判が始まる。検察側の主張を、理路整然と明解に否定していく治一郎。旗色の悪い検察は、葉村を検察側の証人として立て、爆破事件の共同謀議を証言させようとする。被告席に並ぶ治一郎らを前に真実を語り、謝罪する葉村。正に検察側の証人がでっち上げを認めたことに裁判は大混乱になる。しかし、それでも、裁判官は治一郎たちに実刑判決を下す。控訴審、最高裁でもこの不当判決は覆されることはなかった。
公園を埋め尽くす水平社の同志たちを前に、差別撤廃への新たな決意を語って、獄に向かう治一郎。治一郎を先頭に力強い行進の列は切れることはない。
68年東映京都『前科者(333)』。尻斬り常こと杉田常次郎(若山冨三郎)は、大組織の昇竜会がのさばる関西が嫌になって修(菅原文太)を連れて新宿の黒崎組の客人となっている。縄張りの揉め事に手当たり次第突っ込んで行く常次郎を厄介者扱いにする弟の黒崎勇治(小松方正)に兄久造(安倍徹)は秋葉会を潰す時に使えばいいとうそぶく。今日も1人のチンビラを締めている杉田たち。そこにチンピラの兄貴分の小磯(待田京介)がやってくる。派手に殴り合って兄弟の盃を交わす。しかし杉田も修も金を持っていない。杉田を慕って出てきた情婦玉代(春川ますみ)を料理屋に売り飛ばして、キャバレーで飲む杉田たち。小磯から喫茶店やしろが、一筋縄ではいかないと教えられて、店内で暴れる杉田と修。店主の矢代(大木実)は、全く動じない。しかし矢代の妻(宮園純子)が堅気の店ですと言うと、何も言えなくなって店を出る杉田。
黒川の話で秋葉組に文句をつけに行く杉田だが、秋葉政之輔(嵐寛寿郎)に、、迷惑料として20万現金を貰ったことと、矢代があいさつに来ていることで、秋葉の人物に恐れ入る。矢代は、かって歌之町の7人斬りの健という伝説の男だったが、堅気になっている。秋葉から貰った金を元手に、杉田は、自分の一家を構える。新宿の夜景を見ながら、この街で男を挙げると、小磯に誓う杉田。
さっそく賭場を開く。杉田自身は全く博打の才能はなく、金をばらまくだけだ。しかし、かなり上がりは出る。ある時、小磯の舎弟の川村(林彰太郎)が黒崎組に寝返った。その情報を売りにきた男がいるが、裏切り者を抱えるつもりはないと言う杉田。しかし、黒崎組が杉田の賭博をサツに垂れ込んだという情報のおかげで、松浦刑事(山本麒一)の裏をかくことができた。杉田は、裏切り者の川村を斬って、2年の懲役を食らう。
その間に、小磯は、落ちぶれた秋葉の杯を受けていた。その話を小磯から聞いて、よくやったと褒める杉田。その日から、秋葉と小磯に恩返しをしようと、黒崎のシマで暴れまくる杉田と修。黒崎勇治が、秋葉のもとに落とし前をつけろと乗り込んでくる。小磯は自分が預かるという。秋葉組の叔父貴には、大倉(本郷秀雄)と梅田(遠藤辰雄)がいるが、二人とも、黒崎の後ろに、関西の昇竜会がいることで、見て見ぬふりをする。小磯が、耐えてくれと言っても暴れ続ける杉田。仲立ちの失敗で、指を詰める小磯。
いよいよ、昇竜会と黒崎たちは火ぶたを切った。小磯を、秋葉を、次々と射殺する黒崎組。結局、杉田は、修と弘(広瀬義宣)と守の3人になってしまった子分たちと、仇を討とうと殴り込む。新宿中を黒崎たちが徘徊する中で、次々に倒れていく舎弟たち。一人残った杉田は、ダンプカーを黒崎組に突っ込む。倒れていく黒崎の子分たち。警官隊が取り囲む中、駆け付けた珠代が撃たれたことで、黒崎たちを皆殺しにする。松浦刑事の目の前で、ワッパを掛けてくれと両手を出すが、既に意識が遠のいている杉田。
馬鹿で、アナクロで、純情な3枚目役の若山富三郎いいなあ。
池袋新文芸坐で、マキノ雅弘生誕百年記念上映会。
48年吉本プロ/大泉スタジオ『肉体の門(334)』。
戦後まもなく、教会を望む廃墟の中に売春婦たちの塒がある。そこで腕に関東小政と刺青を入れている女、浅田せん(轟夕起子)である。教会では結婚式が行われている。かっぱらいをして逃げ込むが、盗もうとした十字架のペンダントを牧師神山哲夫(水島道太郎)に見つかり返却する少女。牧師は少女にペンダントを渡す。少女はせんの前に現れる。人の物を盗むことはいけないと言うせん。身寄りのない少女は夏目まや(月丘千秋)と名乗る。せんは彼女に山猫まやと名付けて、菊間町子(逢初夢子)、美乃通称ジープの美乃(春名薫)、花江通称ふうてんお六(水町京子)、良子(鈴木俊子)ら仲間に加えた。
まやは街で男のポケットから金を盗もうとして捕まる。男(田端義夫)は、まやをモノにしようとするが、隙を見て金を盗んで逃げるまや。
せんは、男に会う。慈愛に満ちたまなざしを持った男は、いつもの客とも刑事たちとも違っていた。躊躇いながらも客だと勘違いして、問わず語りに、迷い込んできた子猫のような山猫まやのことや、ここで暮らす女たちのことを語るせん。しかし、男は、客ではなく近くの教会の牧師だった。売春婦のせんを軽蔑したり、蔑むこともなく、人として対等に、また優しく語る男。チョコレート・キャラメルをせんに渡し、また会おうと言って去る牧師。
そのあとやってきたのは。刺青を入れた彫師彫留(清川荘司)だ。せんに金の催促をする。まだ、腫れも引かないので商売にも出られないので、手持ちがないというせんに体で払えと迫る彫留。借金のカタに身を売るような真似はしないというせん。ちょうど金を持ったまやが帰ってきたので、その金で彫留を追っ払う。しかし彫留は帰り道強盗に金を入れた鞄を奪われる。警官を連れて彫留がやってくるが、追っ払う。実は怪我をした強盗伊吹新太郎(田中実)を匿っていたのだ。伊吹を含めた奇妙な共同生活が始まった。
街に出たせんは、戦争中に戦需工場で一緒だった折部はるみ(小夜福子)に再会する。彼女は婦人警官になっていた。女が生きることの苦労を語り合う2人。金がなくとも、ちゃんと女たちが生きていける世の中は来るのだろうか。
町子が、金がない男(成瀬昌彦)に惚れ、逢い引きをしていることを目撃されていた。金を取らずに男と寝ることはリンチを受け追放されることを意味するのが彼女たちの掟だ。町子は、男に騙されるとも、ここを出て男と一緒に暮らしたいと言う。町子を叩きながら、せんは泣く。それを見ている女たちも泣いている。
伊吹も出ていくと言う。女たちは送別会をやろうと言う、酒を飲み、踊り続けた。朝になって、まやは、飲めない酒を飲み、伊吹のもとへ行く。二人の間に愛が生まれていた。ここを出て自首しようと思っていた伊吹だが、最後に一度だけ強盗して、二人で逃げてどこかで暮らそうと考えた。しかし、警官たちに追われ、教会の牧師の前で捕まる。牧師は、伊吹に伝えることがあるかと聞くと、自分が戻ってくるまで、この教会にいてくれと。
その頃、まやは、せんたちとの生活から別れるために自分を鞭打てと頼んでいた。泣きながら、まやを打ちすえるせん。まやは苦痛に耐えながら泣かなかった。仕置きが終わった。まやは、教会に行った。傷だらけの彼女を優しく迎える牧師。その頃、せんは脱力して倒れている。愛してはいけない牧師を愛してしまった苦悩が彼女を貫いている。朝日が射し、窓の桟の影が十字に、せんに重なる。その姿は、まさに十字架にはりつけられたキリストのようだ。
非常に宗教的な作品だった。せんに町子や、まやを鞭打たれるシーンもリンチというよりも、罰を受ける殉教者のようだ。売春婦せんの苦悩も、人間の原罪ゆえのことのような気がする。まやが持つ、どん底の生活に堕ちても汚されない純粋さは、何の象徴なのだろうか。
今まで自分が観てきた「肉体の門」は、戦後の焼け跡の売春婦たちが逞しく生きていくというところで、焼け跡の風俗やエロティシズムを強調していたものばかりだったが、どちらが、原作に近いのだろうか。まあそれは、原作を読むことにして。どちらにせよ、どちらがよかったかということではなく、どちらも魅力的だ。このマキノ版の「肉体の門」は、原作を読んだ上で、改めて考えたいと思う。 人間の魂の清らかさを問うようなこの映画に、正直なところショックを受けた。
年末に、観月ありさ主演、東映京都撮影所で収録されたドラマが放送されるらしい。はたしてどういうものになっていることやら。
41年東宝東京『昨日消えた男(335)』。
本所横山町、回向院近くの勘兵衛長屋、大家の勘兵衛(杉寛)は、因業で店子全員から憎まれている。今日も浪人篠崎源左衛門(徳川夢声)の家に訪れ、明日借金を返せなければ、美しい娘お京(高峰秀子)を連れて行くと脅している。長屋の貧乏住人はみなやきもきするが、勘兵衛を殺してやると陰口を言うくらいなものだ。
因業大家の勘兵衛をぶち殺して、かんかんのうを踊らしてやると文吉(片岡千恵蔵)が言う。辰巳芸者の芸者小冨(山田五十鈴)と文吉は言い争いになる。小冨は、文吉が好きなのだが、素直でない二人の口げんかはしょっちゅうで、小冨は、文吉の言葉で一喜一憂して、病気で寝ている母を呆れさせている。
他の長屋の住人は、年中焼き餅で、夫婦喧嘩をしている人形師の椿山(鳥羽陽之助)と女房おこん(清川虹子)。居合抜きの松下源蔵(鬼頭義一郎)と、ろくろ首の見世物をやっているおかね(藤田房子)の夫婦。駕籠かきの甚公(渡辺篤)と一公(サトウ・ロクロー)、源左衛門の隣人で、お京と相思相愛の若侍横山求馬(坂東橘之助)、錠前屋の大三郎(清川荘二)、長屋の男たちが集う飲み屋の上州屋(進藤栄太郎)、そして勘兵衛の下男の久助(沢井三郎)
翌日、源左衛門は、旧友を回って借金の申し込みをして回るが徒労に終わり夜になり帰宅する。 袴の裾の汚れを洗っている源左衛門。父からお前を絶対渡さないと告げられ安堵するお京。甚公、一公らが上州屋で呑んでいると、目明しの八五郎(川田義雄)がやってきた。寒い夜回り、燗酒で身体を暖めていると、人殺しだという椿山の叫び声が。八五郎らが駆けつけると、死体をみつけたという空家から死体は消えていた。酔った椿山の勘違いだったとなりそうだったが、別の場所でかんかんのうの姿で死んでいる勘兵衛。八五郎はただちに、この一帯を包囲させ、長屋を検め始めた。何故か旅立とうとしていた求馬、騒ぎを覗いてから部屋に戻り眠っていたかを装う文吉、源蔵の挙動も怪しい。
翌朝、長屋の住人は、八五郎に与力原六之進(江川宇礼雄)の取り調べがあると集められる。死因は胸から心臓を一突きした刀傷。六之進は、源左衛門と求馬の刀を改めようとする。人を殺めた刀は、血を拭っても脂が残っている。その時、また死体がという声。ドブにはまったものは、椿山の作った等身大の人形だった。女の人形に嫉妬したおこんが焼き餅を焼いて捨てたことが分かった。刀検めが再開、求馬の刀には、果たして脂が、求馬は犬を斬ったが申し開きはできないだろうと自ら語る。また六之進は、勘兵衛の金庫を大三郎に開けさせる。貯め込んでいる筈の金は消えていた。
文吉は、なにかと八五郎にからかうようにかまってくる。八五郎は、文吉をどこかで見たような気がするが、思い出せない。八五郎のいる番屋に、文吉名で大三郎に気をつけろという張り紙がある。果たして第二の殺人が起きた。最近金周りがよくなっていた大三郎が、何者かが投げた小柄で殺されたのだ。文吉を捕まえようと、捕り方を大量動員する八五郎。しかし、身軽に身をかわしながら、お京のもとに、お父上と求馬は下手人ではないので安心しろという手紙を投げ込み、小冨から、大三郎から貰ったという櫛を預かるとしばらく身を隠すと言い残して逃げ去った。
数日後、南町奉行自ら、お裁きをするということで、お白州に呼び出される長屋の住人たち。登場した遠山金四郎を見て、みな驚く。姿は全く違うが、文吉だ。遠山は、今回の事件の謎解きを始めるのだった。
事件が起き、関係者すべてが怪しく、最後にすべての人間が集められて探偵によって謎解きがされる。ホームズやポアロのようだ。ネット上には、オリエント急行殺人事件の翻案ものだとの指摘もあるが、まあ、真偽のほどは、自分には分からない。しかし、伏線のはりかた、ミスリードさせるような思わせぶりな行動など、非常に巧みな演出だな。戦後に、同タイトルでリメイクしたらしい。
個人的には、甚公と一公の「あ、なるほど、なるほどね」「いや、まったく」というやりとりの全く下らない繰り返しが、なかなかツボにはまる。いつしか一緒に言っていたりする(苦笑)
同居人と地元のしんぽで魚と酒。冬の燗酒は格別じゃのう。いや、まったく。
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