2008年11月24日月曜日

男と女

    阿佐ヶ谷ラピュタで、
    69年東映京都山下耕作監督『日本女侠伝 侠客芸者(312)』。新橋で売れっ子芸者だった信治(藤純子)は、陸軍大臣(若山富三郎)に絡まれ、徳利で頭を殴って、博多に流れ、侠気溢れる馬賊芸者になっている。博多は石炭景気に沸いていた。特に大須賀(金子信雄)は、番安と呼ばれる番場安次郎(遠藤辰雄)率いる番場組と組んであくどいやり方で、九州の全炭坑を手中に収めようとしていた。
    ある時町屋に花田組の坑夫たちが一生の思い出に芸者遊びがしたいとやってきた。本当は大須賀の宴会が入っているにも関わらず、彼らの相手をしてやる信治。そこに坑夫を探しに花田炭坑の納屋頭島田清吉(高倉健)がやってくる。彼らに、お前らの金では全く足りないと言って金を払おうとするが、信治は私が了解したことだからと取り合わない。大須賀からは何度も催促があった。お座敷に行くと、現金をばらまいて芸者、幇間に拾わせている大須賀。妾になれという大須賀に、女たちを猿扱いする男は嫌だという。また大須賀は、清吉に花田炭坑を売れという。お世話ななった先代から預かり日本一の炭坑にするので駄目だという島田。
   番場組の遊郭の余りに酷い扱いに幸太と足抜けした鈴江(伊藤栄子)を助けた信次は、番場組の追われているうちに入った家で清吉と再会する。幸太を清吉に預かってもらい、大須賀のもとに乗り込んで鈴江を救う信次。
   博多に陸軍大臣がやってきた。大臣は、自分を殴ったのは、西郷と母親と信次だけだと言って笑う。末席に座っている清吉を呼び、大臣の酒を飲めという。酒は一滴も飲めないので断ると、代りに飲むといった信次に、馬賊芸者なら一升杯を飲み干せという大須賀。見事飲み干して一舞する信次。気を失った信次が明け方気が付くまで看病する清吉。
   河原炭鉱を卑劣な方法で手中に収める大須賀。河原(田中春夫)は拳銃で自殺する。河原に引かれていた粂八(桜町弘子)を慰める信次。粂八は大須賀を刺そうとして捕まる。大須賀からの芸者置き屋組合への圧力に怒った、信次を始めとする馬賊芸者は、団結してお座敷に出ることを拒否する。最初は、甘く見ていた大須賀たちだが、陸軍大臣が再び来福した際にも、宴席がカラなことには参って、芸者たちに頭を下げる。
  大須賀は、しかし花田炭坑の石炭を若松港からの積み出しに圧力をかけ、石炭の出荷をストップさせた。その頃、花田組に先代の娘弥生(土田早苗)が東京の女学校を卒業して帰って来た。清吉の許婚だと知った信次は、大須賀のもとに行き、妾になるので、花田組への圧力を止めるように頼む。そこに清吉が大須賀に直談判しにやってきた。話を聞いて清吉は、信次を殴って、俺が惚れている女にそんな目に合わせないといって、信次を連れ帰る。そのまま数日圧力は続いたが、清吉の熱意に若松港の人々は折れた。
   石炭の出荷が出来るようになったという報を聞いて、坑夫たちが作業に取り掛かろうとした時に、ダイナマイトを仕込んだトロッコを坑道に突っ込ませようとする番場組。命をかけて防ごうとした3人の坑夫の命が奪われた。番場組に殴り込もうとする坑夫たちを、あいつらは炭坑を守るために死んだんだと言って止める清吉。一人山を降りる清吉の前に、信次が現れ、行くんですねと言い、更に弱々しく行かないでとつぶやいて、河島が残した拳銃を渡す。
   単身、大須賀の家に行く清次。大須賀、番安を斬るが、自らも絶命する清吉。死人が戸板に乗せられ運ばれていく。清吉に取りすがって無く弥生、離れた場所で涙を流す信次の姿。鏡を見ている信次。お座敷の時間が来て支度を始める。化粧をする信次の顔には2すじの涙が流れている。
  シリーズ1作目のせいか、少し未消化なところはあるが、やはり山下監督、将軍と呼ばれた男、さすがに、清吉と信次の男女の愛の情感は素晴らしい。寡黙な中に、それぞれの想いは溢れている。
    池袋新文芸坐、マキノ雅弘生誕百年記念上映会、39年日活京都『鴛鴦歌合戦(313)』。
    浪人浅井禮三郎(片岡千恵蔵)をめぐって、隣人の日傘屋志村狂斎(志村喬)の娘お春(市川春代)、近くに別邸がある豪商香川屋の娘おとみ(服部富子)、禮三郎の亡き父が決めた許婚藤尾(深見藤子)の3人の恋のさや当てに、骨董狂いの大名峯澤丹波守(ディック・ミネ)が絡むオペレッタ時代劇。
   まあ、ストーリーはそれ以上でもそれ以下でもなく、軽快、軽妙、最軽量の洒脱なオペレッタ。気持ち良くなって寝てしまう。まあ、何度も見てるからな(苦笑)。
   67年東映東京『侠骨一代(314)』。昭和初期、初年兵として伊吹竜馬(高倉健)と小池文平(大木実)は出会う。何事にも生真面目で間違ったことが嫌いな伊吹とやくざの小池は気が合った。上等兵の言われない鉄拳に反抗した二人は懲罰房に入れられる。そこで、伊吹は8歳の時に別れたきりの母たか(藤純子)に白い米の飯を腹いっぱい食わせるのが夢だと言って涙を流す。ある日訓練中に母たかが亡くなったという電報を受け取る。帝国軍人が母親の死亡如きで涙を流すのはと叱責する上官たちに、重機関銃を乱射する伊吹。
   兵期満了で徐隊になった伊吹は母親の墓参をする。この寺の住職、呑海和尚(石山健次郎)は、亡父の親友で、母親の死に水もとってくれた人間だ。自殺しようと、服に石炭を入れて飛び込むと海は浅く呆然とする伊吹。そこに通りがかった老人が死ぬ気ならなんでもあるだろうと言って去る。空腹で横になっていた伊吹は、乞食たちに乱暴している宍戸組の連中を止める。彼らを追っ払ったが空腹で倒れた伊吹を、乞食たちは自分のねぐらに連れて行って面倒を見てくれる。数日過ごしてシャバに戻るときに、乞食の房州(山本麟一)が着いてきた。
   宍戸組の港湾荷役現場で働いていると、宍戸組は、夜は、イカサマ賭博で荷役たちから金を巻き上げていた。伊吹は金を取り戻してやるが、宍戸組の事務所で、以前出会った老人坂本(志村喬)によって、宍戸(南原宏二)に取りなされる。坂本は田町で阪本組をやっているのだ。また、そこで月島がシマである岩佐組の代貸しをしている小池にも再会した。荷役たちと飲みに行った飲み屋で、女郎のお藤に出会う。お藤は、母のたかに生き写しだった。何もしないで、ただただ見つめて帰る伊吹。
   伊吹と房州は、阪本のもとへ行き、働かせてくれと頼む。坂本の娘綾(宮園純子)を女中と間違えたりするが、受け入れてもらう。ある日、安いバナナを大量に抱えた荷主が、坂本に相談に来ている。通常の荷役代なら安く売りさばけるのだが、日もちもあり足元を見た宍戸組と岩佐組が荷役代の法外な釣り上げを脅すので困っているというものだった。宍戸組と岩佐組とのいざこざを恐れた坂本が断ると、伊吹は坂本組の法被を脱いだうえ、身寄りのないものだけで荷役作業を行う。一人だけ波紋してくれと頭を下げる伊吹を許す坂本。
  しばらく後、坂本は、伊吹に芝浦に出す予定の支店を仕切ってくれと言う。固辞する伊吹だったが、結局受けることに。また綾が突然やってきて、支店でみんなの世話をするといって伊吹を驚かす。ある日、東京水道局が下町の水道工事に伴う荷役事業を入札制で行う。岩佐組の縄張りだったが、下町の人々のために落札する坂本。しかし帰り道、坂本は宍戸組の刺客の銃弾に倒れる。坂本は一命を取り留めたが、伊吹に命をかけて水道敷設を引き継いでくれと頼む。
  いよいよ工事が始まった。人手が足りなかったが、宍戸組の現場で働いていた仲間や乞食仲間が加わった。しかし、宍戸組がトラックに火をつけるという妨害に出た。これでは、仕事を続けられない。坂本は、家屋敷を売り、組員たちも家財道具を質に入れ、呑海和尚も大金をもってやってきた。頭を下げる坂本。しかし呑海和尚の金は、坂本の苦境を知ったお藤が満州に渡る約束で前借りした金だった。真相を口止めされていた綾から教えられ、お藤のもとに走る伊吹。だが、お藤は既に旅立ったあとだった。女郎仲間から、母親のつもりで伊吹に着物まで縫って消えたのだという。
   現場に戻った伊吹に、房州は岩佐組宍戸組が今夜殴り込みがあるようだと告げる。固く口止めして、工夫たちに今日は早じまいだと告げる伊吹。お藤が縫ってくれた着物を着て現場に戻ろうとすると、小池が立ちはだかる。斬り合いになるが、小池の腕を斬る。小池もまた伊吹に斬らせたのだ。そして、現場でひとり佇んでいるt、次々に現れる宍戸、岩佐組の面々。多勢に無勢だが、次々に切り倒していく伊吹。撃たれ斬られながらも岩佐たちを斬る伊吹。組のみなも現れ歓声があがった。
   
   

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