2008年11月26日水曜日

六本木珉珉で餃子とビール。

    朝一で職安に寄って、大門の歯科。ようやく歯が復活。
    池袋新文芸坐でマキノ雅弘生誕百年記念上映会
39年日活京都『江戸の悪太郎(318)』。 信州伊那の豪農手代木家の箱入り娘浪乃(轟夕起子)は、名家の暗愚な跡取りとの気の進まない祝言の場から、深い雪の中を逃亡し行方不明に。
    江戸の貧しい者たちが肩を寄せ合って暮らす割銭長屋と呼ばれる一角があった。そこで、島崎三四郎(嵐寛寿郎)は、寺子屋を開き長屋の悪太郎たちに、読み書きと、人としての道を説いていた。長屋で暮らす寡婦お栄(星玲子)は、貧しいながら身持ちも堅く、息子弥一(宗春太郎)の成長を楽しみに慎ましく生活している。秋山典膳(市川小文治)という旗本の屋敷で、祈祷師の道満(瀬川路三郎)が評判を呼んでいた。その門前で、菓子を売っていた弥一は、掏摸騒ぎの混乱に商売道具を壊されてしまうが、身寄りも住む所もない三吉(轟夕起子)と出会う。弥一は三吉を島崎のもとに連れて行き、三吉は寺子屋で暮らすことになった。
    商売道具が壊されお栄は、高利貸しの勘兵衛(香川良介)に一両借りる。しかし弥一は虎の子の一両を無くしてしまい。母に合わせる顔も無く、帰宅できなかった。弥一を探すお栄や三吉、島崎。途方に暮れたお栄は、道満のもとへ。お栄の美しさに襲い掛かった道満。ふと我に帰ったお栄は、守ってきた貞操を奪われたショックで大川に身を投げる。翌朝弥一が長屋に帰ってきた。島崎は、どんなことがあっても真っ直ぐ生きろと言って母の死を告げる。
    長屋に住む島崎の友人の講談師、楽々亭三山(志村喬)とガマの油売り長井兵助(原健作)と話すうちに、お栄の懐中にお札が入っていたことから、道満に毒牙にかかってお栄は亡くなったのではと推理する。
   島崎の寺子屋の場所に、道満の祈祷所を建てるために立ち退けという話が、地主からきた。50両払えと言う。清貧の暮らしを送る島崎には支払う術もない。長屋連中が少しずつお金を出し、高利貸しの勘兵衛でさえ、無期限、無利子でお金を貸すと言う。足りない分は講釈師の三山が説得するという。なかなか三山が戻ってこないため、小屋の客たちは怒り出す。そこで、三吉は、歌を歌って、舞を踊る。なかなかに達者で、観客からは大受けだったが、本当は、三吉が女性であることがバレてしまった。やっと50両集まり地主のもとに行く島崎。しかし、地主は道満側は100両出し、更に売らなければ神罰がおちるぞと脅して、強引に契約をしていったという。一方、三山らの話で、母親の死に、道満らが関わっていると知ってしまった弥一は、道満の屋敷に一人で乗り込み、暴れ回った末、捕えられた。
   島崎が長屋に帰って来た。女であることを隠していた三太は島崎に嘘をついていたことを謝る。しかし、島崎は、長屋の人々に寺子屋は大丈夫だと言って安心させてあげなさいと嘘をついて、秋山の屋敷に乗り込む。お栄の死について、道満たちを問い詰め、斬り合いになる。縛られ押入れに閉じ込められていた弥一を見つけ、屋敷を脱出しようとする。しかし足を斬られ、危機一髪。そこに、急を聞いた長屋の人々が駆けつけた。怒りに燃える町人たちに侍たちはタジタジに。
   割銭長屋に、大がかりな花嫁道中がやってきた。駕籠から出てきたのは、美しい花嫁姿で浪乃に戻った三太の姿が。今日は、島崎と浪乃の祝言だ。
   清順の『悪太郎』を見てこちらがどうしても気になっていたら、素晴らしいタイミング。自分の子供の頃悪太郎と言ったら、巨人の堀内のことだった。悪太郎、今では死語なのか。
  2年大映京都『すっ飛び駕(319)』。千代田城のお数寄屋坊主だが、練塀小路に住んで、賭場を開き、ゆすりたかりを業とする河内山宗俊(大河内伝次郎)。ある日、銭湯に入っていると、追われて逃げ込んだ浪人を、助けてやる。浪人は奥州棚倉藩の金子市之丞(南条新太郎)。市之丞の父は棚倉藩の筆頭家老であったが、江戸詰家老大村典膳の河川改修工事に関わる公金横領を暴こうとして、逆に腹を切らされた。
   宋俊は市之丞を森田屋清蔵に匿ってもらうことにする。清蔵は、かって生き別れた妹が、吉原の花魁、三千歳(長谷川裕見子)だということが分かり、その身の振り方を相談していた。
三千歳には、片岡直次郎(河津清三郎)という小悪党の情夫がいる。宗俊は、三千歳を身請けし、直次郎と別れさせ、市之丞の嫁にと考える。清蔵は、お上が密貿易に目をつけ始めたことを潮に、森田屋に火を放ち、三千歳のことを宗俊に託して江戸を去る。
  直次郎は、宗俊の屋敷で働く娘お春(伏見和子)に懸想してストーカー化していた男から100両騙し取るが、かって金を取り川に投げ落とした座頭に復讐され、金を奪われた上に袋叩きにされて川に捨てられる。宗俊は、死にかけていたところを蘇生してやり、二度と三千歳に会うなと言い聞かせる。しかし、直次郎は、三千歳のもとに行って、心を惑わせる。更に典膳のもとに情報を流し、市之丞の証拠書類を奪われせる。
  時間の猶予もなくなった宗俊は、一世一代の賭けに出る。上野の将軍家ゆかりの吉祥院から将軍家の使いの僧に化けて、棚倉藩上屋敷に乗り込み、藩主にことの次第を告げたのだ。河内山宗俊とバレ、囲まれるが、田舎侍とは迫力が違う。家老典膳から金を取って帰宅する。更に、逃げようとしていた典膳のもとに、市之丞を伴って急襲し、市之丞に仇を討たせる。直次郎に自分を裏切ったことを責めるが、十二分な路銀を渡し江戸から去って、二度と自分の前に現れるなと脅す。その後、三千歳のもとに連れて行き、市之丞に三千歳を娶るか側女にしろと迫る。市之丞は、三千歳を心憎く思っているが、金子家再興がなって家老に命じられた以上、吉原の元花魁を連れて帰るわけにはいかないと言うのだ。侍の心の狭さに自分の不明を恥じる宗俊。三千歳に、愛し合う者同士生木を裂くように、直次郎と別れさせたが、兄の清蔵との約束だから許せと三千歳に頭を下げる。しかし、三千歳に未練のある直次郎が再び現れた。三千歳は応えず、代りに現れた宗俊の姿に腰を抜かす直次郎。宗俊は直次郎を斬り捨てた。吉祥院の僧を名乗ったことで、沢山の捕り方が宗俊を取り囲む。獄門に自分の首を曝されることは、元より覚悟のことであった宗俊は、高笑いしながら捕り方たちの方に歩んでいくのであった。
  この映画を見る限り、「すっ飛び駕」ってなんだろうという疑問は残る。まあ、例によって、一瞬の居眠りもままある私なので、なんとも言えないが、どうも、市之丞は、三千歳を一旦断って郷里に戻りかけるが、思い直して三千歳のもとに引き返す。その駕籠よ急げということのようだ。まあ、有名な話なので、このタイトルで、あああの話ということなんだろうな。まあ教養がないといかんなあ(苦笑)。子母沢寛、もう少し齢を重ねたら読むことにしよう。
  「江戸の悪太郎」もそうだが、マキノ監督テンポいい。情感溢れるシーンとの緩急自在なスピードチェンジ、やっぱりうまいなあ。
   京橋フィルムセンター東京フィルメックス特集上映
   65年日活藏原惟繕監督『夜明けのうた(320)』。緑川典子(浅丘ルリ子)はミュージカルスター。ウェストサイド・ストーリーの公演打ち上げが終わるなり、溜まっていたテレビ出演、グラビア撮影、ディスクジョッキーなど立て続けに仕事をこなしたところで、彼女のもとに、白いスカイラインのオープンカーと次作「夜明けのうた」の台本が届く。彼女は夜の東京にドライブに出かける。そして、あるホテルに車を止める。相手は妻子ある作曲家野上(岡田真澄)。しかし彼は妻子の待つ自宅に帰って行った。そのまま典子は小田原まで車を走らせる。マネージャーとドライバーに何度電話をしても不在だ。ほとんど寝ていない典子は、ドライブインで見ず知らずの青年、利夫(浜田光夫)から運転させてくれないかと頼まれる。彼は千加子(松原智恵子)とい少女とヒッチハイクで信州から出てきたようだ。また彼女の目は、徐々に光を失っている。
    典子は知り合いの医者の下を訪れ、二時間の睡眠と千佳子の目の検査を頼む。医者は典子を起こして千加子の目は6ヶ月で失明すると告げる。駐車場の車には心無い傷が付けられていた。涙を流す典子。帰宅した典子を待っていたのは、マネージャーとドライバーが、典子の宝石と現金を一切合財盗んで逃げ、警察に言ったらスキャンダルをバラすという置き手紙だった。次作の打合せにプロデューサー神山(戸浦六宏)や脚本家の眞木(小松方正)がやってきた。まだ台本に目を通していなかった典子は、眞木の説明で、主人公が、ほとんど典子の私生活のままであることを知って激怒、出演はしないと言って家を出る。
   都内を走っていると、眠気のあまり追突事故を起こす。自分の額に血が流れているのを知って気絶する典子。怪我自体は大したことは無かったが、緑川典子の事故ということで、マスコミが殺到して大騒ぎに。野上の自宅に、典子が声色を使って電話をすると妻子を連れて遊園地に出かけるところだった。
   自宅に友人たちを呼んで乱痴気パーティーを開いて踊り狂っている典子。その後、取り巻きたちとクラブで飲んでいると、夜明けのうたを歌う岸洋子がステージに出てきた。典子に相談なしに花束贈呈をやらせ、既成事実化しようとしているプロデューサーたちに、腹を立て店を出ようとすると、昼間の若いカップルに会う。利夫は千加子に失明の話をして2人で一緒に闘っていくと言う。手術費用として貯めたお金で東京を堪能して信州に帰るというのだ。しかし、千佳子が実は睡眠薬を1瓶隠し持っているので、一緒にいてくれないかという青年。
  典子は二人を連れて、ボーリング場と会員制バーに行く、若い2人はようやく本音で向かい合えたようだ。一晩を共にして、これからの事を決めるという2人を、野上が待つホテルに連れて行く典子。 2人を残して部屋を出た典子は野上に別れを告げる。典子の部屋はパーティーのまま、とても散らかっている。急に部屋を片付け始める典子。綺麗になった部屋で「夜明けのうた」の台本を見つける典子。読み始めて、最後には正座をして真剣な表情で台本を読んでいる。読み終わった典子は眞木に電話をして、この話はぜひ自分にやらせて欲しいと言う。窓の外には、正に夜明けの東京が広がっていた。
   素晴らしい映画だ。ヒット歌謡の企画映画だと触手が伸びなかった自分が恥ずかしい。しかし、勝手なことをひとこと言えば、「夜明けのうた」がモチーフになっているのでしょうがないのだが、音楽をいずみたくが担当しているからなのか、ジャズがどうも古い。勿論現代でということでなくて、当時を前提にしてだ。蔵原惟繕監督の映像のシャープさが、いずみたくのセンスを超えてしまっているのか分からないが、かなり音楽が残念だ。
何だか人寂しくなって元会社の後輩Kを誘って六本木珉珉に。

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