神保町シアター、58年日活鈴木清順監督『踏みはずした春(302)』。緑川奎子(左幸子)は、バスガイド。しかし、BBSという少年院を出た少年少女たちの更生支援の民間グループで活動している。初めて担当することになったのは、父親の殺人未遂などで2回少年院に入っている19歳の信夫(小林旭)。最初に会った時から、憎んでいる母親の下に帰りたくないと言って、いきなりジャズ喫茶に誘い、踊ってを酔わせ待合いに連れ込んだりする。早速元舎弟の塚本(野呂圭介)たちに誘われて昔の情婦の奈々子(車谷瑛子)の所な行く。奈々子はぞっこんだったが、信夫は幼馴染みで保育園の保母をしている和恵(浅丘ルリ子)のことが忘れられない。
和江に会いたいと聞いて、和恵に信夫について気持ちを確かめに行く奎子。和恵は、信夫のことを想っているが、気持ちの整理がつかないと言う。奎子は、信夫の乱暴な態度の影にある、繊細な心を理解し、そんな奎子を徐々に受け入れる信夫。しかし、ライバルの梶田(宍戸錠)は、和恵に目を付けていることあり、信夫にも何かと絡んでくる。しかし少年院あがりの信夫に世間の風は冷たく、なかなか信夫の仕事は決まらない。母が清掃の仕事をしている会社の宮村専務(安倍徹)が面接をしてくれるということだったが、宮村や他の社員の蔑んだ目に途中で出てしまう信夫。奈々子の店で飲んでいるうちに、周りの客の顔が、昼間の会社の人間に見えてしまい、暴れて店を滅茶苦茶にしてしまい、逮捕される信夫。信夫を励まそうと信夫と和江を誘い、弟妹を連れて海に行く。集合場所に信夫は現れず、落胆するみんな。しかし、しばらく海で遊んでいると、信夫が現れた。奎子が走っていくと、和江と口づけをしている。ショックを受ける奎子、弟のつもりでいた信夫に違う感情を抱いていた自分に。
似顔絵書きで生計を立てることを決意する信夫。しかし梶田たちは、信夫の大切な似顔絵描きの道具を叩き壊して信夫を叩きのめした上に、和江に信夫が怪我をしたと嘘をついておびき寄せ暴行しようとする。間一髪のところで、偶然に刑事(殿山泰司)が現れ、和江は助かるが、気絶してしまう。信夫の舎弟だったはずの塚本は、掏りを信夫に見つかって絶交したことを逆恨みして、和江の暴行未遂は、信夫の指示でやったものだと偽証する。警察は、信夫を逮捕する。信夫がいくら無実を主張しても信じてもらえない。奎子も何かの間違いだと言うが、少年院上がりは世間の誰も信用してくれないことに傷ついている信夫。刑事が証言の食い違いに、ようやく信夫と塚本を対決される。信夫を恐れて、梶田の指示でやったことを認める。
翌朝、無罪放免となった信夫を迎えに行く奎子。しかしその手前で和江が信夫を待っている。二人の姿を見て、身を隠す奎子。逃げるように走り出した奎子だったが、靴ひもを結び直して、顔を上げた奎子には、迷いなどは消えていた。
旭、ルリ子、どちらもデビューから数年経っているとはいえ、まだまだ初々しい。鈴木清順監督の演出も非常にストレート。左幸子の演技が強すぎて、少し全体のバランスを崩している感じがするのは、このところ、左幸子の主演作を見過ぎているせいなのか。
62年日活浦山桐郎監督『キューポラのある街(303)』。東京の北東、荒川を渡ると景色が一変して、川口の町となる。500を超える鋳物工場があり、独特な形をした煙突、キューポラのある街だ。
そこに住む石黒ジュン(吉永小百合)は中学3年生。鋳物の職人だが、工場の事故で怪我をし、勤務先の工場がマルサンに買収されることでクビになるった父親辰五郎(東野栄次郎)と、4番目の子供の出産間近な母親トミ(杉山徳子)、悪ガキの弟タカユキ(市川好郎)含めた6人で一間の長屋で暮らしている。隣には、辰五郎と同じ工場で働く幼馴染みの塚本克巳(浜田光夫)が、母親のうめ(北林谷栄)と暮らしている。失業している辰五郎に克巳は、組合を通じて怪我の保障を要求しようと言い仲間からのカンパの金を渡すが、、昔気質の辰五郎は組合はアカだから付き合いたくないといい、金も受け取らない。
ジュンは県立第1高校に進学したいが、とても家計的に言い出せる状況ではない。それどころか、修学旅行も朝鮮人のクラスメート金山ヨシエ(鈴木光子)と2人で不参加かと話し合っている。ヨシエが学校に内緒でやっているパチンコ屋のアルバイトを自分もやれないかと相談する。入学金位は自分で貯めようと思ったのだ。しかし初日から克巳に見つかってしまう。内緒にしてくれる克巳。ヨシエの家は北朝鮮への帰国事業に加わることになっていたが、父(浜村純)と別居している日本人の母(菅井きん)は行かないかもしれない。ヨシエの弟のサンキチは、タカユキの悪ガキ仲間。タカユキは、不良に伝書鳩の雛を売る約束をし前金を貰ったが、猫に殺されてしまう。ジュンはクラスメイトのカオリ(岡田可愛)に勉強を教えてくれと言われ、彼女の家に行く。ジュンの家とは正反対のカオリの家。優しく車で通勤する父(下元勉)、高価なステレオを持っている兄。勉強を教えてあげたお礼にカオリから口紅を貰うジュン。
不良は、鳩のお金の返済の代わりに、クズ鉄泥をタカユキにやらせようとする。そこに、ヨシエから話を聞いて駆け付けたジュンが立ちはだかる。小学生に泥棒をさせることに文句を言い、もっと上の人間と話させろといいクラスメイトのリス(青木加代子)で不良のリーダーをしている兄の処に行って、自分が分割で返済するのだと言う。帰りにジュンとタカユキがラーメンを食べていると、そこにカオリの父親が、二人を励まし、シューマイを御馳走してくれた。更にカオリの父は、辰五郎に仕事の世話もしてくれた。最新式のシステムが導入されている大工場だ。ジュンの担任のスーパーマンこと野田先生(加藤武)は、ジュンが禁止されているパチンコ屋でのバイトをしていることを知る。それには目をつぶって、修学旅行のお金は市が援助してくれるから行きなさいと言ってくれる。
修学旅行の出発の日、ジュンが用意をしていると、辰五郎が仕事を辞めると言い出す。昔堅気の職人にとて、オートメ化されボタンを押すだけの毎日は堪らないと言って朝から酒を飲みだすのだ。酔って、ダボハゼの子は所詮ダボハゼだ。中学出たら働けとわめく辰五郎。母に促されて集合場所に向かうが、迎えに来たカオリの姿を見かけて隠れる。結局荒川の土手でみんなが乗った電車を見送る。その時、ジュンは初潮を迎える。
夕方あてもなく町を歩いていると飲み屋で酌婦として酔客の相手をしている母親の姿を見てしまう。嫌悪感に苛まれるジュン。繁華街で学校に来なくなっていたリスに会う。遊びに行こうと誘われてゴーゴー喫茶に行くジュン。ジュンとリスが踊っているのを見た不良達は、二人のアルコールに睡眠薬を入れる。その頃、修学旅行先から電報がジュンの家に届く、両親とも不在なので代わりに受け取った克巳は、初めてジュンが修学旅行に行っていないことを知る。睡眠薬で寝てしまったジュンを店の2階に連れて行き乱暴しようとする不良達。そこに、警官を連れた克巳が現れる。逃げだす不良達、リスはジュンと逃げる。店の裏で足をくじいて歩けなくなったジュン。ジュンの名を呼びながら探す克巳の声を聞きながら、答えることが出来ないジュン。その日からジュンは学校にも行かず、家に引き籠っていた。担任の野田が家に来て学校へ来いという。貧乏人は高校に行ってもしょうがないと言うジュン。野田は、勉強は全日制の高校に行くことだけではない。定時制でも、通信制でも、あるいは学校に行かなくとも職場で勉強することが出来ると諭す。学校に行けと言う母に酌婦をしている母は不潔だと言い、口紅を投げつける。絶句する母。
そんな時、カオリがヨシエたちが今日北朝鮮に出発するので見送りに行こうと言いにきた。川口駅の前で見送る人の輪がある。野田はじめクラスメイトもジュンを迎える。ヨシエが心配していたと言い、一緒にパチンコ屋でバイトしたことが一番楽しかった思い出で、もっと色々なことを話し会いたかったと告げて、彼女が乗っていた自転車をくれる。タカユキとサンキチたちも別れを惜しんでいる。そこにヨシエたちの母が現れる。父もサンキチも弱い人間だから、意志が挫けるので会わないでくれと必死に頼むヨシエ。帰還事業の特別列車が出発した。
翌日、タカユキがサンキチに預けて途中で飛ばすように託した伝書鳩が戻ってきた。ヨシエからジュンへの手紙とサンキチからの母に宜しくという手紙が付いていた。サンキチの母の勤める定食屋に走るタカユキ。店の前に行くと泣きじゃくるサンキチの姿が。驚くタカユキが聞くと、母親に会いたくなって一人戻ってきたが、母は、再婚のため店を辞め誰も行先を知らないと。知り合いの家に厄介になって、次の帰還船で出国することになった。
元気を取り戻し、ユキエから貰った自転車で川口の町を走るジュン。新聞配達をしているタカユキとサンキチ。タカユキはサンキチの事情を話し、二人で新聞配達をしてお金を貯めると言う。ジュンが帰宅するとご機嫌な良心と克巳の姿が、克巳のおかげで仕事が決まったのだ。お礼を言う辰五郎に克巳は、組合のお陰だと克巳は言う。ようやく、その意味がわかった辰五郎。娘に酌をしてもらって涙ぐむ辰五郎。これで高校でも大学でもいかせてやれるぞという両親に、ジュンは、工場に勤めながら定時制に通うことに決めたという。全日制に拘る両親に、辰五郎たちも若くはないし、ちゃんと自立したいのだと言うジュン。
日本中が貧しい時代。その中に、健康的に悩んで成長していく吉永小百合の姿に、みんな明るい光のようなものを見たんだろうな。今昔を強く感じることは勿論多いが、再び格差社会が進行している今、
新しい吉永小百合が生まれるとしたら、何の分野なのだろうか。
63年日活浦山桐郎監督『非行少女(303)』。北若枝(和泉雅子)は、中学生だが、父の長吉(浜村純)が(佐々木すみ江)を妾にしたことで母が死に、そのまま後添えになったことで、家庭では酷い扱いをされ、また学校の金も出して貰えないので、学校にも行かず金沢の夜の町を彷徨いていた。
一方、沢田三郎(浜田光夫)は、東京で失業し郷里に戻ってきたが仕事がない。兄の太郎(小池朝雄)は、町会議員選挙の真っ最中だ。そんな居場所のない幼なじみの2人が出会う。町でスカートを買ってやり、学校の勉強を教えてやり、PTAの会費も出してやる。生まれて初めて自分に親切にしてくれる人間に会ったと涙する。しかし、若枝の不良仲間は、彼女を襲おうとした挙げ句、次郎がせっかくくれた金を奪う。若枝は困って学校に深夜忍び込んで盗もうとしたが、用務員(小沢昭一)に見つかる。お金を握らせ襲われそうになって逃げ出した若枝を、用務員は、盗みをしようとした挙句俺を誘惑しようとした不良娘だと言いふらす。 裏切られた気持ちで三郎は二人の思い出の弾薬庫に別れの手紙を置く。若枝は、金沢の叔母マス(沢村貞子)の経営する旅館で働かされている。マスは、若枝を芸者に仕込もうと思っている。
その後、三郎は、豪農の北静江(北林谷栄)と娘幾子(佐藤オリエ)の家で、住込みで養鶏を手伝っていた。幾子は学生だが、三郎のことを心憎く思っているようだ。ある夜、三郎のもとに若枝が現れる。
三郎は、養鶏場に案内し、もう会うことはない帰ってくれという。泣きながら彷徨い歩いた若枝だが、結局養鶏場に戻って、三郎からの手紙を燃やす。呆然としていたら、手紙の燃えカスが藁に燃え移って火事になっていた。数日後、義姉のへそくりを盗んで、三郎は家出をして、金沢のジャズ喫茶でウェイターをしていたが、ある日、やくざとケンカ、金沢にいられなくなって、実家に戻る。
逮捕され感化院に送られる若枝。最初情緒不安定だったが、相談所で集団生活をするうちに、落ち着いてくる若枝。あるとき施設の徒競争で町内を走ったときに、地元の子供たちや用務員から火付け女とか泥棒などと心無い言葉を投げつけられる若枝。その時、施設の仲間たちが庇ってくれた。釣りをしていた三郎は、その一部始終を影から見る。年末年始は、みな実家に帰っていく。残ったのは若枝ともう一人しかいない。雪が降り始めた。若枝は三郎の姿をみつけ驚く。今までしてきたことを泣きながら謝罪した若枝に、三郎は、自分もちゃんと働きながら若枝の退所をいつまでも待っていると告げ、キスをする。
ようやく退所日が来た。しかし、若枝は、施設の所長夫妻にも父にも口止めをして、大阪の縫製工場へと旅立つ。仕事を早びけしてきた三郎は、その事実を知り、慌てて金沢駅に向かう。すんでのところで若枝を捕まえ、駅の喫茶店で向き合う三郎。若枝は、号泣しながら自分は弱い人間で、三郎に迷惑をかけてしまう。その自信がないので、一人大阪に行って自分を鍛えたいと言う。一緒に問題を解決しようという三郎に、若枝は泣きじゃくるばかり。喫茶店のテレビでは、おりしも美人コンテストを放送しており、北陸代表が優勝している。大阪行きのベルがなった。急に若枝の手を引いて、飛び乗る三郎。
隣の駅まで送ると言い、若枝の考えていることを分かった。二人それぞれ働きながら、立派に自分になるべく努力しよう。三年たって、もし二人の気持ちが変わっていなかったら、結婚しよう。もし、万が一、二人が別々の家庭を持ったとして、二人が町で会った時に、お互い恥ずかしくない人間になっていようと言う。次の駅で三郎は下車して見送る。
うーん。切ないのう。何度見ても思うが、浦山桐郎の1作目と2作目である「キューポラ~」と「不良少女」は、対になっているような気がする(続けて観たのは初めてだが・・)。キューポラと同じく、一つ一つ丁寧にきちんと整理され組み立てられた映像は、今村監督の熱病的なカオスとは対照的だが、この2本が最高傑作だ。
57年日活中平康監督『美徳のよろめき(304)』。男爵令嬢節子(月丘夢路)は、倉持一郎(三國連太郎)と結婚し、一子をもうけ、鎌倉の豪邸に住んでいる。彼女は、学生時代、避暑地でテニスの後、土屋(葉山良二)と口づけした秘めた思い出がある。何度か、町ですれ違うが、葉山の畏れているかのように慎み深い視線が気になっている。母の葬儀の際に、弔問に訪れた土屋は、鎌倉の寺での待ち合わせを一方的に告げてさる。その日、節子は胸をときめかせながらも、自ら出掛けることはなかった。土屋が自宅に押し掛けてくることを密かに期待しながら。
翌日、友人の牧田夫人の与志子(宮城千賀子)にその話をする。与志子は、奔放に不倫を楽しんでおり、現在はプロレスラーの飯田(安倍徹)を情夫にしている。とうとう土屋に連絡をし食事を共にする。紳士な土屋との交際を道徳的恋愛と呼び、次第に自宅近くの海岸で口づけを交わすようになるが、それ以上を強いない土屋に、節子は満足し、自分を正当化している。夫は仕事が忙しいのか、直ぐに就寝し、節子に無関心であるかのようだ。ある時、与志子は2人での旅行をけしかけ、夫へのアリバイ作りを協力する。節子から誘われ、天にも登る気持ちの土屋。ホテルに入り、結ばれるつもりの土屋に、節子は拒絶し号泣する。呆然としながらも、別に部屋を取り、悶々とする土屋。帰宅して寝ている夫に求める節子。夫婦は久方振りに関係を持つ。
しばらくして、節子は、土屋を誘う。食事のあと、銀座のバーに行く。土屋はかなり酔っていた。そこに、夫が現れる。土屋は、店を出て、泣きながら去っていく。夫婦は二人で鎌倉に帰り、新婚時代以来久し振りに海岸を歩きながら帰宅する。
節子は、自分の妊娠を知る。しかし、夫に同窓会で与志子の家に泊まると嘘をついて、彼女に教えてもらった産院で中絶手術を受ける。病室に与志子から教えてもらったといって土屋が現れる。そこに、与志子の夫から節子に、妻が飯田橋の病院で重体だとの電話があった。与志子にお手遊ばれたと思った飯田に刺されたのだ。与志子は、夫に詫びて亡くなった。与志子の事件はスキャンダルになる。父親と会食の際に、もし、自分の娘がこんな事件を起こしたらどうするかと聞く。父は、公にならなくとも、自分が知った時点で、全ての職を辞するだろうと言う。
節子は、土屋に別れを告げる。鎌倉まで送ってきた土屋が最後のキスをしようとすると拒む節子。
平穏な日常が戻ってきた筈だが、通勤する夫の表情は浮かない。また、節子は、大阪へ去った土屋に手紙を書きはじめる。土屋が別れたことが自分に与えた苦痛は想像以上のものだと。書き終えた後、破り捨てる節子。
庶民には窺い知れない上流階級の人妻のよろめきを、覗き見したい気持ちというのは誰にもあることだろう。そこを三島由紀夫は、卓越した筆力で、シズル感たっぷりに文学にしたということか。再び、格差社会が広がると、再びこういうハイソ覗き見趣味は復活するんだろうか。事実、昼ドラは、ここ数年ドロドロしたの多いもんな。好きか嫌いかに分けると嫌いなので、コメントはしたくない。まあ、正直な話、勿論面前に節子が現れてよろめかれたら、我を忘れて取り乱すようなつまらない男だが(苦笑)。
中平康のクールな映像美に救われているが、三島由紀夫の厭味なくらいのスノッブな小説と、新藤兼人の脚本には少しギャップがあるのではないか。殆どの映画サイトは、ストーリーを三島に基づいて、土屋と節子は伊豆の旅行で肉体関係をもったと記しているが、もし、自分が居眠りしていたのでなければ(まあ、しばしばあるので今回も可能性が高いが(苦笑))、土屋は、血の滴るステーキを舐めさせておいて、お預けをくらってしまった筈だ。
面倒なのでコピーペイストしてしまうが、
小説も映画も冒頭は
『いきなり慎みのない話題からはじめることはどうかと思われるが、倉越婦人はまだ二十八歳でありながら、、まことに官能の天賦にめぐまれていた。非常に躾のきびしい、門地の高い家に育って、節子は探究心や理論や洒脱な会話や文学や、そういう官能の代りになるものと一切無縁であったので、ゆくゆくはただ素直にきまじめに、官能の海に漂うように宿命づけられていた、と云ったほうがよい。こういう婦人に愛された男こそ仕合せである。』
から始るが、この映画では、全く逆な結論だと思うのだが・・・。
しかし、さすが、中平康監督。唇やのどの超アップなど、肉体の官能的な表現は素晴らしい。個人的には、三面鏡を使った映像が2度出てくるが、1度目は、3面とも化粧の違うステップを、2度目は、普通に、正面は反対に、右の鏡面は正対に写っているのが、何か違和感があって刺激的だった。
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