2008年11月20日木曜日

300超えました。

テアトル新宿で、62年大映三隅研次監督『座頭市物語(298)』。
シネマート六本木の映画音楽家・林光の世界で62年松竹吉田喜重監督・脚本『秋津温泉(299)』。敗戦の色濃い太平洋戦争末期、胸を病んで東京の大学から周作(長門裕之)が郷里の岡山の叔母の所へ戻って来たが、空襲で丸焼けに。疎開先の鳥取に向かおうとするが、無蓋貸車で長旅をするには体力が限界だ。車内で知り合った親切な女は山あいにある秋津温泉の秋津荘の女中だった。秋津荘に連れて行ってもらうが、軍医たちの合宿所だった。布団部屋でうずくまっていると、宴会の軍人の機嫌を損ねた、若く美しい娘新子(岡田茉莉子)が逃げ込んで来た。彼女は横浜の女学校を出たが実父が死亡、母親の再婚先のこの旅館に疎開してきたのだ。継父も亡くなり、母親が女将になっている。新子は、閉塞した秋津を嫌っており、周作の出現に喜んだが、彼は死に場所としてここに来たのであり、当初、明るく健康的な新子を敬遠していたが、日本敗戦の日、泣き続ける姿に何か希望を見た。献身的な新子の看病もあり、周作は次第に体力を取り戻しつつあった。周作を愛する新子の気持ちに母親は、彼女に見合いをさせ、その不在の間に周作を岡山に向かわせた。
   数年のち周作は、岡山で文学の同人として活動しているが、未だ治らぬ肺病に再び厭世的になっており酒浸りの毎日である。新子が現れ止めようとするが、鬱々とした周作は新子を拒絶する。しかし、その後、再び秋津を訪れ、一緒に死んでくれと新子に告げる。お互いの体を縛りつけはじめたが、新子はくすぐったくなり笑いだす新子に釣られて、久し振りに大笑いする周作。
   元新聞記者の同人、松宮謙吉(宇野重吉 )の妹を抱き、結婚する。義兄は文学の新人賞を受賞、周作の屈折は更に酷くなっている。流行作家となった義兄の世話で東京の出版社で働くことになり、最後のつもりで秋津を訪ねる幸平。2人は一線を越えてしまうが、翌朝姿を消す幸平、新子は、タクシーを飛ばしてバスに追いつき、津山まで向かう。岡山行きの汽車を待っていると、急に新子は周作を連れて近くの旅館へ導く。翌日、周作は妻子の待つ岡山に帰っていく。
    東京で働きながら、売店の若い娘陽子(芳村真理)を執拗に口説いている幸平。社に戻ると、編集長(山村聰)と義兄がおり、作家が故郷を訪れる企画で義兄と岡山に行くよう命じられる。取材を終え、二度と来ないと思っていた秋津にやってくる幸平。新子は秋津荘を売却し、解体中だった。懐かしい離れも明日には取り壊される。一夜が明け、新子は、一緒に死んでくれという。周作は、東京に帰らなければならないとつれない。昨夜周作が使った剃刀を出して迫る。周作の拒絶に、手首を切り秋津の河原で倒れる新子。新子を抱きながら、涙を流す周作。
   岡田茉莉子100作品出演記念映画。藤原審璽原作。28歳で100本記念というのは凄いな。しかも、眩しいほど健康的な10代の娘から、すっかり生気を秋津荘に吸い取られてしまったかの30代後半の姿まで、演じきっている。周作を見つめる真っ直ぐな眼差し、本当に美しい。
   神保町シアターで、58年日活今村昌平監督『テント劇場より 盗まれた欲情300)』。今東光原作。千日前で芝居をはる山村民之助一座。ストリップダンスの時には入っていたお客も、肝心の芝居になった途端、客はぞろぞろ帰り始め、子供たちはチャンバラごっこを始め、双眼鏡で見る不思議な客(小沢昭一)を除くと誰も見てやしない。また給料もしばらく払われておらず、高田勘次(西村晃)たちは、芝居を止め舞台上は大混乱になる。座長民之助(滝沢修)と、業欲な後妻お仙(菅井きん)も手に負えない。製作の国田信吉(長門裕之)も止めに入る。
    小屋の前で殴り合っていると、一人の男に声を掛けられる。大学の同窓の立花(仲谷昇)だった。テレビ局に勤める彼は通天閣に誘い、同窓の連中はみな文学や演劇で活躍しているのに、信吉が乞食芝居に関わっているのは才能の無駄遣いだといい、テレビ局の演出部への推薦状を渡すのだ。泥酔して芝居小屋に戻ってきた信吉は、一座の座長の長女の山村千鳥(南田洋子)に、辞めるかもしれないという。実は信吉は千鳥に対して秘めた想いがあるが、千鳥は、一座の看板役者の山村栄三郎(柳沢真一)の妻なのだ。次女の千草(喜多道枝)は信吉に惚れている。翌朝、一座の惰眠を破ったのは、いきなり小屋を解体する作業によってだ。あまりの不入りに、興行主が興業を取りやめたのだ。解散しそうになった一座だが、給金が払われるまで辞めないと皆が言いだす。基本的に芝居が三度の飯よりもすきな連中なのだ。
     河内の八尾に一座はやってきた。再びドサ廻りで稼ごうというのだ。一座来るの話に村中が盛り上がる。何と言っても河内は芸事の本場なのだ。テントを借りに行くと、藤四郎(小沢昭一)だった。彼は、吝薔な藤四郎はコツコツ小金を貯めていたのだ。いよいよ初日は満員御礼になる。歓声ばかりかお捻りも飛ぶ。久し振りの反応に一座はご満悦だ。その日暮らしの役者達は、飲んで馬鹿騒ぎ、辟易した信吉は、小屋の外に出て川を眺めていると、千草が追ってきた。彼女に迫られて、信吉は一夜を共にする。一方、富八郎(小笠原章二郎)は、雑貨屋の後家のもとに、さっそくしけ込む。
  二日目は、終日雨になった。テント小屋では、雨が降れば芝居をやれない。信吉は、自分の新しい解釈を入れた新作を掛けようと一座に掛け合うが、みな稽古などせずにも出来る、いつもの題目をやりたいと思って、新作の稽古の声をかけても誰も集まらない。信吉はいよいよ一座を抜けようと、最後に千鳥に思いを告げようと夜会って欲しいと頼む。一方勘治は、藤四郎の工場に住み込みで働くみさ子(香月美奈子)の藤四郎から迫られる生活から抜け出したいという相談にかこつけてテントに連れ込む。役者になるための試験と称して服を脱がす。しかし、それは村の若者の反発を買う。村一番の美人のみさ子を取るのだったら、自分たちも一座の女をということだ。いきなり千草を攫う。しかし、追ってきた信吉や勘治たちがなんとか助ける。その夜遅く、テントで不貞寝する信吉のもとに千鳥が現れる。強引に千鳥と関係を持つ信吉。翌朝、信吉のテントをふらふらと出てきた千鳥を千草は見てしまう。
  翌朝、勘治とみさ子のことがバレて、踊り子の一人とみさ子はつかみ合いの喧嘩になっているところに、座長の民之助が帰ってくる。誰も止められなかった争いを一喝、浮いた話もない役者はいらないが、自分の播いた種くらい自分で始末しろと勘治に怒った末、みさ子の根性に一座に入ることを認めるのだ。次の興行地も決まって最終日の三日目のステージは再び盛り上がった。
  翌朝、民之助に、信吉は千鳥と共に一座を抜けることを告げる。民之助は千鳥の夫の栄三郎に話したのかと聞く。信吉が舞台に行くと、栄三郎が舞を踊っている。あまりの見事さに息をのむ信吉。終わったところで、声をかける。
  片付けが始まっている一方で、民之助、栄三郎、千鳥、信吉が楽屋にいる。栄三郎は、自分が一座を抜ければいいと言う。しかし、千鳥は、泣き崩れながらこの一座を抜けることはできないというのだった。思いがけない話に呆然自失する信吉に、民之助は、大学出なのに、役者たちを見下げたりしない信吉が気に入っていたと言ってくれた。最後の撤収を横目にフラフラと去っていく信吉。民之助は、娘の千草に、信吉を追いかけろと金と彼女の荷物を渡すのだった。座り込んでいる信吉に追いついた千草は、信吉と一緒にどこでも行くと言うのだった。
   村中の人間が集まって手を振る中を、一座のトラックが出発した。次の巡業地に向かって。
   今村昌平、監督デビューとは思えない直球だ。主演は勿論信吉なのだが、群像劇というか、役者たち、観客たちそれぞれが本当に活き活きと動いている。低俗で、地ベタで這いずり回る人間の生命力や、力強さを観客にぶつけてくる、その後の今村監督の映画に共通するテーマがここにも存在している力作だ。
   しかし、長門裕之、というより長門裕之の演じる二人の人物は、必ずしもインテリの屈折と一括りでは言えないが、不本意だと思っている現状に対して、自ら何もせず、女と関係を持つことで、女の行動力で自分の道が変わることを期待しているようなところがある。卑怯だ!ずるい!と思いつつ、しかし、結局モテモテなことに激しい嫉妬を覚えてしまうのだ。彼らよりも、ずっとちっぽけで情けない自分・・・。
   阿佐ヶ谷ラピュタで69年東映京都山下耕作監督『昭和残侠伝 人斬り唐獅子(301)』。
   昭和の初め玉ノ井、元々シマとしていた香川組を、下川辺重蔵(須賀不二男)率いる東雲組が虎視眈々と狙っている。そんな玉ノ井、浅草に花田秀次郎(高倉健)が7年ぶりに出所して戻ってきた。兄弟分の風間重吉(池部良)は東雲一家の代貸しをしており、東雲組に草鞋を脱いだ。秀次郎のかっての情婦雅代(小山明子)は、香川組の香川巖(大木実)の後添えになっていた。下川辺は、右翼山村(内田朝雄)から、上海、ハルビンに娼婦を慰安婦として送り飛ばそうとして玉ノ井の女郎に目をつけていたのだ。
   香川の実子、誠吾(長谷川明男)は、シマを荒らす東雲組に腹をたて、いきなり下川辺を襲って捕えられた。受取に向かった香川組代貸し梶五郎(葉山良二)を袋叩きにしようとしたところを、預からせてくれと客分秀次郎。渋々同意した下川辺だが、代貸しの重吉を呼んで、秀次郎に香川を斬らせろと言う。重吉は、秀次郎に草鞋を履けと言ったが、逆に昨晩二人の話を聞いてしまった自分は兄弟を不利な立場には出来ないという秀次郎。その晩、梶を伴った香川の前に秀次郎が現れる。相手をしようとする梶を制止し、花田秀次郎なら相手をしてみたいとドスを受け取る。そして秀次郎は斬る。香川は急所を外してことを指摘、秀次郎の思いは俺には分かっていると言って、梶を抑える。そこに菊の鉢植えを持った雅代が通りかかる。香川と秀次郎を見て菊を落とす雅代。人殺しと叫ぶ雅代を、香川は止めるのだ。
   旅に出る前に秀次郎は、近辺の大親分剣一家の、剣持光造(片岡千恵蔵)のもとを訪れ、香川組と東雲組の手打ちの仲立ちをして欲しいと頼む。剣持は、まず香川を見舞い、下川辺のもとを訪ねて、
手打ちを申し入れる。手打ち式は無事済むが、無理をした香川は命を落とす。今わの際に、くれぐれも実子の誠吾を頼むと、代貸しと雅代に言い残す。玉ノ井の入れあげた女郎に居続けをしていた誠吾は死に目にも会えなかった。下川辺を斬ると息巻くが、梶たちに止められる。
  しばらく草鞋を履いていた秀次郎が帰って来た。その頃、誠吾は、女郎を見受けしようと、後見をしてくれている剣一家の賭場に行き、イカサマをして捕まる。また秀次郎に助けられたが、面白くない。斬りかかって逆に殴られる誠吾。香川の墓参りした秀次郎は雅代と再会、そこに拳銃を持った誠吾が現れ秀次郎を撃つ。止める雅代。更に代貸しが現れ、誠吾を叱る。そもそも、香川が亡くなったのは、誠吾が下川辺を襲ったことの仕返しで、自分が親を殺したのだということが分からないのかと、涙を流しながら殴る代貸しに、目が覚める誠吾。
   跡目の話で、剣持が香川組を訪ね、誠吾にどうだと言う。しかし誠吾は、まだ自分がそんな器ではない、秀次郎に後見になってもらえないかと答える。一度は断るが、剣持からも頼まれ承諾する秀次郎。その頃、女郎たちの中国に送り込む計画が進まないことに、大山は、関東一円の親分衆に侠客の団体を作って協力させようと図った。しかし、剣持は、おんなを不幸にすることに侠客として賛成しかねると断った。いよいよ大山は、下川辺に武器を提供するので剣一家と皆川組をぶっ潰せと指示する。
   いきなり、ダイナマイトを皆川組系の遊郭に投げ込んで、主人、女郎、客を皆殺しにする東雲一家。誠吾と代貸しは、二人で東雲組に申し入れに行くが、袋叩き合い、誠吾は重傷、代貸しは命を落とす。剣持は二人を貰い下げに行く。組に戻り次第、仁義に則って、喧嘩状をしたため、若頭に持っていかせるが、それを読んだ下川辺は、鼻で笑って、若頭を斬り捨てろと宣言した。東雲一家代貸しの重吉は、そんな仁義に外れたことは止めてくれと言う。このところ自分に意見ばかりする重吉が目障りになっていた下川辺は破門にする。剣の若頭を守って、剣組に届ける重吉。喧嘩支度をしている剣組に、軽機関銃を持った東雲組の殴り込みが、ドスと機関銃では戦いにならず、倒れていく剣一家。最後に
剣持は絶命する。堂々たる博徒の最期である。
   その一報が皆川組に届く。殴り込みだと息巻く一家に、秀次郎は言う。悔しいだろうが、代貸しの通夜と、今重傷の誠吾を盛りたてて組の再興するのが、子分であるお前らの仕事だと。悔し涙で泣き崩れる子分たちを横目に、一人支度を始める秀次郎。雅代は、こうして送るのは2度目だと言って、止めるが、勿論止まられないことを知っている。東雲組に向かう秀次郎の前に、重吉が現れた。兄弟の杯を返すと言う秀次郎に、自分の破門になったので助太刀をするぜという重吉。かくて、二人は東雲組に切り込む。下川辺、大山も斬ったが、途中秀次郎を守ろうと重吉は手傷を負う。死なねえと言った筈だぜと言って、重傷の重吉に肩を貸し、雪の中を歩き続ける秀次郎。

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

先日はお伺いできず、残念でした。林さんの特集、通っていただき、ありがとうございます。この日の『秋津温泉』には林光夫妻もいたんですよ。結構、ご本人が来ています。では、また。