午前中赤坂メンクリに行き、元同僚とフィッシュでチキン&キーマカレー。
シネマート六本木で、69年創造社大島渚監督『少年(288)』。少年(阿部哲夫)は、父(渡辺文雄)と継母(小山明子)とチビちゃんという弟の4人で当たり屋をしている。父親は、戦争中に銃撃された傷を理由に定職にもつかず、前科四犯のどうしようもない男。一家は高知を振り出しに、尾道、松江、福井、富山と転々としている。基本的に車に当たるのは継母と少年の“仕事”である。詰め襟で学生帽姿の少年が車に当たると、幼子をおぶった母親が「坊や!坊や!」と半狂乱になり、父親が駆け付けて「お前がちゃんと見てないからや!」と言って母親を殴りかかり、びっくりしている運転手から示談金を貰うのだ。一カ所何件か“仕事”をすると別の場所に移動していく。あるとき継母は少年に読売巨人軍の黄色い野球帽を買ってくれる。継母は、自分が継母を恨んでいたので、少年もそうだと思っているが、暴力を振るって脅すことしかしない父親より“仕事”をすると百円小遣いをくれる継母を慕っている。
父親が、逃げても無駄だ、高知にお前の居場所はとうに無いと脅した時に、貯めたお金で、少年は高知にいる祖母の下に逃げようとする。高知までは切符を買えない。中学生は子供料金しゃないから駄目だと駅員に言われ天橋立まで行くが、独りきりで寝る段になって泣き出して、家族のもとに戻る。 福井で継母が中絶することになった時も、父親に済ませたと嘘をつく継母の味方をして、腕時計を買って貰った。少年は時々独り言を言う。異母弟のチビちゃんしか話し相手がいないからだ。高崎で当たった相手が車の整備工で警察を呼ばれた時には写真を撮られて、父親は直ぐに逃げ出す。
それ以降父親は、4人の家族連れでマークされるのを嫌い、自分だけ、ビジネスホテルに泊まり、継母と子ども達は、安い商人宿だ。父親抜きで、2人は“仕事”を始める。秋田では、継母は、父親と喧嘩をし妊娠4か月なことをバラす。そして秋田から北海道に飛行機で渡った。稚内や札幌を経て小樽に行った時に事件は起こった。父親は継母を殴り、血が雪を染める。少年は何故か継母に貰った腕時計で自分の腕に傷をつける。父親は怒り腕時計を取り上げて投げ捨てる。その腕時計を取りに車道に出たチビちゃんを避けようとしてジープが街路樹に激突。運転手と助手席の少女が亡くなった。その模様を少年は見続け、少女の赤い長靴を持って宿に帰ると、父親は少年と継母を殴った。少年は不思議な形の雪だるまを作り、チビちゃんにこれは宇宙人だと言う。
その後一家は大阪の文化住宅で暮らし始めた。しかし、警官がやってくる。継母が手錠をかけられたのち、父親が帰ってくると、少年は「父ちゃん、逃げろ!」と叫んだ。
ニュープリントなのか、画像がとてもきれいだ。このところ凄いプリントを見る機会が多く、改めて消耗するものなんだと実感する。
家族をテーマにした映画だが、一家の誰にも固有名詞はない。最後の逮捕のシーンで逮捕状の両親の姓名は読み上げられるが、大した意味も持たず、少年に至っては、少年と呼ぶしかない。
なによりも、少年の顔が、目が強烈だ。少年という総称で呼ぶことしかできない。特徴のない少年の顔は、次に会った時に思い出せないかもしれないが、彼の何も写していないかのような瞳は一生忘れることはできないだろう。
SPO/ジェリーロジャー山本清史監督『大奥百花繚乱(289)』。将軍家光(鈴木裕樹)と大奥の女たち(笑)。家光以外は、春日局(小林かおり)、側室お玉(滝沢乃南)、お春(弥香)、お鈴(南かおり)という4人が全キャストという冒険作というか野心作というか(苦笑)。百花繚乱どころか四花繚乱である。ノークレジットで出したくとも、現代劇と違って時代劇、衣装や鬘に金かかるもんな。でもストーリーは一作目の『男女逆転吉原遊郭』よりはまだましなのは、ドラマ『大奥』をよく研究したからなのか。しかし、根本的に日本語がヘン。敬語には、尊敬語、丁寧語、謙譲語などがあってと教えてあげたくなる。そういう意味では、前作が“江戸風俗間違い探し”だとすると“日本語間違い探し”ビデオだな。
68年松竹野村芳太郎監督『白昼堂々(290)』。筑豊の廃坑になった町に掏摸、万引きなど泥棒が集まる川又という集落がある。13家族40人の生活を支えるのは、渡勝親分こと渡辺勝次(渥美清)。そこに昔の掏摸仲間、桶銀こと富田銀三(藤岡琢也)がやってきた。彼は、2人が昔よく世話になった警視庁掏摸係の森沢の世話で、娘のために足を洗って丸急デパートの保安係をしている。捕まった人間の弁護士費用などで愚痴をこぼす渡勝に、つい昔のよしみでデパートで反物や高級婦人服などを万引きすればいいとアドバイスしてしまう。
東京に戻り保安係をしている桶銀の前に、教えた通りに万引きをしている川又の連中の姿が。文句を言う桶銀に、逆に盗品の処分など手伝ってくれと頼む渡勝。一度は断るものの、古い友人の頼みに、渡勝たちの旅館に行き宴会に参加してアドバイスをしてしまう桶銀。森沢が定年を前に退職すると聞いて、桶銀は渡勝を誘い森沢の自宅を訪ねる。2人とも更正していると思っている森沢は喜ぶ。しかし酔って盛り上がっているうちに、森沢はやはり警察官を続ける決意をする。困った顔の桶銀。
ある日和装の美人輿石よし子(倍賞千恵子)が万引きをしたのを捕らえたが、初犯というので放免すると、財布を掏られており、鮮やかな手並みに唸る。集団万引き団の切り札によし子をスカウトしようと桶銀は言い出す。渡勝は半信半疑だったが一目惚れ。
渡勝たちの商売は関西、名古屋などかなり上手く行った。しかし、ある時丸急デパートに、森沢がやってきて、関西で起きている集団万引き団を摘発するといい、若い刑事の寺井(新克利)の教育係を桶銀にやって欲しいと頼む。彼を連れ店内を見て回ると、間が悪く、渡勝の配下の八百橋ユキ(生田悦子)と野田(佐藤蛾次郎)が万引きをするところに出くわす。寺井がユキを捕まえると、盗品は出てこず、ユキにステーキを御馳走する羽目に。しかし、寺井が常磐炭鉱出身だと聞いて、ユキは寺井に親近感を覚える。森沢は、清水豊代(桜京美)を捕まえる。あまりに早く弁護士の坂下(フランキー堺)が接見を求めたので、不審に思う。豊代は、よし子と張り合って無理をしたのだ。豊代は保釈中に逃走する。よし子と川又の連中の板挟みに悩む渡勝。実は、渡勝は、よし子に惚れて仕事も手に付かなくなっていたのだ。渡勝を連れ、よし子の自宅を尋ねる桶銀。渡勝一人で家に入り告白する。藪から棒な話に怒りだすよし子。しかし結局1年後との契約ならば結婚してもいいと言うよし子。川又で結婚の宴会をしていると、森沢と寺井が現れる。渡勝が自分を裏切っていたことに激怒する森沢。その後マーチ(田中邦衛)など次々に逮捕され、よし子も名古屋で逮捕。弁護費用や、川又の人々の生活費に苦悩した渡勝は、丸急デパートの売上金を強奪することを考えた。協力しろと言われ娘のために断った桶銀だが、結局手伝うことに。途中まで計画通り進んだかに見えたが、渡勝の前に森沢が現れた・・・。
渥美清の切れのある動きが凄い。更に、その後寅さんシリーズで兄妹となる倍賞千恵子って、寅さんの前なのか・・・。何だか、寅さんシリーズって有史以来ずっと続いているような気がしてたからなあ(苦笑)。この作品の渥美清が、「忍者パパ」の主人公に見えてしょうがなかったことだけ付け加えておく。
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