2009年11月20日金曜日

親は親同士、子は子同士・・・なのか・・・。

   昼から講義2コマ。
   ポレポレ東中野で、女優 岡田茉莉子
   65年中日映画社吉田喜重監督『水で書かれた物語(656)』
  某銀行上田支店のシャッターが降りる。中では伝票の整理と現金の計算で忙しい。行員の松谷静雄(入川保則)は、伝票の束の中に何も書かれていない封筒を見つける。中の便箋には「松谷静雄さま。橋本由美子は、果たしてバージンでしょうか?」と書かれている。銀行の通用口を出ると、クラクションが鳴らされる。乗用車が一台止まっている。運転席には婚約者の橋本ゆみ子(浅丘ルリ子)、後部座席には、由美子の父で地元デパートの社長伝蔵(山形勲)が乗っている。伝蔵は「今日は遠乗りをするんだろう。野暮なことはしないので、私は途中で降りるから。」と言う。
  事実、伝蔵は、途中「山崎の奴が、静香さんとの再婚の話を進めてくれないかと言っているんだ。」と、静雄の母靜香の話をひとしきりすると、橋本家の別邸で降りて行った。「あの家、今何になっているんだ?」「いいえ、留守番のお婆さんがいるだけよ。」
   伝蔵が中に入ると、女物の草履と日笠が玄関に置いてある。離れに歩いていく伝蔵。そこには、先ほど話に出た静雄の母、靜香(岡田茉莉子)の姿がある。「いや、お待たせしましたな。ところで、静雄くんは式は質素にと言っているが、一人娘の結婚はそういう訳にはいかん。」「静雄に話してみますわ。」婆や(田中筆子)がビールを運んでくる。「あんたという人は変わらないなあ。」「もう、10年以上にもなりますわ。」「あんたと、またここでわしが会おうとは思わなかった。」靜香の手を握ろうとする伝蔵。
    ドライブをしている静雄と由美子。由美子がハンドルをきり、旅館の方へ向かう。「まずいよ。」「父は、私が結婚する気になっただけで喜んでいるのよ。何も言わないわ。」
旅館の敷地を先に歩いて行く由美子。温泉に入っている静雄。洗い場で顔を洗っている。ふと振り向くと、湯船の中に幼い頃の静雄の姿がある。「静雄ちゃん」靜香が呼ぶ。母の周りをぐるぐると回る静雄。静雄が腰かけていた洗い場には、靜香の夫で、静雄の父、松谷高雄(岸田森)の姿がある。湯船の中の妻と子供を幸せそうに眺め、「静雄、身体を洗ってやろう。」と呼ぶ。静雄の身体に石鹸をつけ洗ってやる。突然苦しみ出す高雄。喀血する。「あなた!!」と靜香が叫び、夫を支え、「まだ、お風呂はいけなかったのかしら・・・。」
  現代、浴衣姿で部屋に戻る静雄。由美子に「この旅館、戦争中に来たことがあるよ。」由美子、静雄を誘う。「いいのよ・・・。」「いや。」「おかしいわ、私たち夫婦になるのよ。」「いいんだ、式を挙げるまではちゃんとしたいんだ。」「こんなことを気にしているの?」否定して、会社で受取りポケットに入れていた「橋本由美子は処女でしょうか。」という手紙を由美子は読んだようだ。手紙を取り上げ、灰皿の上で手紙を焼く静雄。
   日傘を差し、橋の上を歩く靜香。「静雄ちゃーん。」河原で10歳くらいであろうか同級生と遊んでいる静雄。静雄の友達たちが口ぐちに言う。「静雄のお母さんは本当にきれいだな。」「俺静雄のお母さんの夢を見たよ。」「えっ?」「お前知らないのか。」ガラス板に口から水を吹きかける友人。
   宴会の座敷から酔った静雄が出てくる。足がふらついている。芸者花絵(弓恵子)が声を掛ける。「静雄さん。大丈夫?」「接待酒だ。」「静雄さん、さあ行きましょう。」「何で僕の名前を知っている?」布団が敷かれた部屋に静雄を連れ込む花絵。座敷では、上座に座った伝蔵がご機嫌で手拍子を打っている。「由美子さんとは中学の同級生なの。社長が、女将さんに頼んだことなんで、いいのよ。」自ら帯を解き、静雄を誘う花絵。
   夜遅く、静雄帰宅する。門には静雄と靜香の表札が二つ掛けられている。静雄が洗面所で吐いていると靜香起きて来て、「ずいぶんと飲んだのね。結婚前なんだから少しは控えなさい。」「橋本の親父さんと少し飲みました。」「塩水を飲んで、全部吐いちゃいなさい。楽になるわよ。」
   もんぺ姿の靜香が、伝蔵の別邸に向かう。小学生の静雄は後をつけている。別邸の門をくぐる靜香。静雄も続いて中に入って行く。離れに入る靜香。目が覚める静雄。二日酔いなのか頭に手をやり顔を顰める静雄。「静雄さん」と靜香が呼ぶ声がする。「珍しい人が来ているのよ。」1階に階段を降りると客間に、靜香の花の弟子だった山谷みさ子(加代キミ子)が娘を連れて来ていた。「まあまあ、静雄ちゃん立派になって。この度の縁談、わたし自分のことのように嬉しくって。お師匠さまの生け花の後援者でもある橋本社長のお嬢さんでしょう。本当によかったわね。」「みさ子さん、子供は二人?」「もう一人、お腹の中に3か月。」
   中学生になった静雄が帰宅する。家の前で、靜香の弟子の娘たちが、静雄ちゃん、静夫ちゃんと取り囲み、からかう。家に入り、母とみさ子が話しているのを窺う。「みさ子さん、あなた、男の人、こんど旦那さまになる方が初めてじゃないわよね。でも男の人は、そういうことをとても気にされるから・・・。」「酒造り屋の若旦那で、東京の大学に行って、サッカーばかりしている人なんです。」「大事にしなさいね。」「お師匠さまと、お話が出来てすっきりしました。」帰ろうとするみさ子を呼び止め、「ちょっと買い物に行きたいので少し留守番をしてもらってもいいかしら。」と靜香。残ったみさ子は、「静雄ちゃん。静雄ちゃん」と2階に声を掛けるが、返事はない。2階の自分の部屋で机に向かっている静雄(中川いたる)。みさ子が上がってくる。「やっぱりいたのね。」静雄に体を寄せて、「静雄ちゃん、私はもうすぐ結婚するの・・・。」更に体を寄せて、「お師匠さんに内緒よ・・・。」と言って顔を近付けるみさ子。
   再び、白い封筒が届いた。すぐ近くの女子行員の下島京子(三村薫)の挙動がおかしいのに気が付いた静雄は、廊下の外に出て、「どうして、こんなことを」「わたし、あなたが好きでした。」「でも、これは君の文字じゃない。男の字だ。誰に頼まれた?誰に利用されたんだ?!」伝蔵が社長をするデパートに行き、ウィッグ売り場の男の店員村田(中村孝雄)に封筒を見せる静雄。デパートの屋上で、「社長には内緒にしてください。絶対クビになってしまう。」「先日の内容はともかく、今回の僕の母が社長と関係があったというのは本当か?」「噂ですよ、噂。お二人が歩いているところを見かけたのは事実です。」「結婚相手の親同士が会うことに不思議はないだろう!!」と言って、村田の頬を打ち、足早に帰って行く静雄。

山崎支店長(桑山正一)橋本光枝(益田愛子)

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