2009年11月16日月曜日

やなかあうん。

    シネマート新宿で、舩橋淳監督『谷中暮色(652)』
    谷中霊園に続く桜並木。咲き誇ったソメイヨシノの下、散歩をする老若男女、ジョギングする男。墓地の中、法事の団体、天正寺五重塔跡と言う石碑。鬼ごっこをする保育園児たち、住んでいるのか分からない古びた家屋、路地、緑のおばさん…。
   谷中とは、本来上野と本郷という2つの台地に挟まれた谷を言った…。
    常在寺、山門を開け、支度をする老婆。目が不自由なようだ。本堂の掃除を始める…。ハタキを掛け、畳を箒で掃き、雑巾モップで板の間を拭く。僧侶が朝のお務めで読経をしている。
   桜並木を自転車で走る娘、かおり(佐藤麻優)。谷中フィルム協会に入って行く。「吉田さんのところにはフィルムありませんでした。」山崎、「ひょっとして、フィルムありませんかとだけ聞いたんじゃないでしょうね。」「ええ。」「いきなり知らない若い人が来て、古いフィルムを下さいと言っても無理よ。お年寄りとは、時間を掛けてゆっくり話して信頼してもらって初めて相談が出来るの。私は、吉田さんと30分程電話で話した上で、谷中の古いフィルムを探していると言ったら、あるかもしれないので探しておくと言って下さったのよ…。まだ探していないかもしろないから、探すのをお手伝いしましょうかと言うところから始まるのよ」「そうだったんですか…。」

   久喜、十兵衛(野村勇貴)、79才の郷土史家加藤勝丕、かおり、お浪(佐藤麻優)80才になる谷中日蓮宗常在寺の盲目の墓守小川三代子、久喜の相棒・平八(藤田健吾)源太親分(友松タケホ)お吉・若宮さん(若柳禄扇)谷中フィルム協会の山崎さん(山野海)青野(阿部亮平)清吉(新井秀幸)ゲーセンの男(八重樫慎)

   かなり良かった。ドキュメンタリーを混ぜながら、谷中五重塔のフィルムを探すドラマの現在と、幸田露伴の「五重塔」を原作とする五重塔を作る宮大工の江戸時代の時代劇の交錯は、なかなか見応えがある。勿論、時代劇風ドラマは、京都撮影所のスタッフを使ったらなあとか、ドキュメンタリー部分もおいおい何でそこに三脚置きっぱなしなんだとか、目くじら立てたくなってしまうが、そんなものは関係なしに、伝わって来る。個人的に最後は少し長いと思うが・・・・。今年の邦画の中で、確実にもう一度見たいリスト入りが確定だ。
   今年の宮大工ものと言えば「火天の城」(笑)、完全に負けてますよ。

  神保町シアターで、日本文芸散歩

  60年東京映画豊田四郎監督『珍品堂主人(653)』。
    加納夏磨(森繁久彌)は珍品堂と呼ばれている。骨董屋ではなく、元学校の教師だったが趣味が高じて、美術鑑定家となっていた。骨董屋の宇田川(有島一郎)が留守宅に来ていた。 茶室に飾られている足利時代の灯籠は珍品堂が惚れ込んで手に入れたものだったが、宇田川らは偽物だと決め付けた。結局本物だと分かり、珍品堂の鑑定眼は知れ渡ったのだ。宇田川は、資産家の九谷(柳永二郎)のもとに唐三彩の壺を持込もうと思って、珍品堂に同行を頼みに来たのだ。九谷は、珍品堂の保証がないと買ってくれないのだ。
  珍品堂から電話が入る。妻のお浜(乙羽信子)が出ると、新橋の喫茶店からだと言う。宇田川が要件を話すとどうしても抜けられない 用事があると言う。しかし、九谷の所に行くと言うと、その気になったようだ。珍品堂は新橋の小料理屋の三蔵にいた。三蔵の女主人佐登子(淡路恵子)といい 仲になっており、一緒に外出する予定だったのだ。拗ねる佐登子に、店の改装費をこの仕事で用立ててやるとの空手形を残し、九谷の屋敷に出かける珍品堂。唐三彩の壺は怪しいものだった。珍品堂が本物だと太鼓判を押せば、九谷は承諾し、九谷からの目利き料と宇田川のキックバックが入るのだが、同意することはできない。茶道教授だという和装の美人(淡島千景)も、その唐三彩はどうかと言う。珍品堂は、目利きもできるらしいその女に心惹かれるが、九谷の目黒の使われていない屋敷を改造して料理屋にするというアイディアを話すために、外出する九谷の車に同乗する。
  目黒の屋敷で、久谷は珍品堂の事業計画を聞く。金はあるのかと尋ねられ、直ぐに百万、開店前に百万と答える珍品堂。
   珍品堂は、宇田川の下に何点かの骨董を持ち込み金に変える。渋々百万の小切手を切っておきながら、珍品堂の後にやって来た外国人客に、皿一枚を125万だとふっかけている。
   久谷との待ち合わせで三蔵に行くと、佐登子が赤坂のお座敷に上がっていた時分に、久谷は随分贔屓にしていたと言う。珍品堂が百万の小切手を出すと、久谷は「悪いが色々と調べさせて貰ったが、君はかなり無理をしただろう。君のことを器用貧乏だと言う人もいる。」と口を開く。改装費はいくら掛かると尋ねられ、二千万だと答える珍品堂に、久谷は百万の小切手を返した上に、全額自分が出してやろうと言う。頭を下げる珍品堂。
  久谷の屋敷で、店で使う器などの説明を珍品堂が久谷にしていると、内装の設計図を持って、先日のお茶の師匠がやって来る。名を蘭々女と言い、空間プロデューサーのような仕事をしているようだ。美しい蘭々女に珍品堂は気もそぞろだ。久谷は、彼女は魅力的だが、非常に金銭欲の強い男のような女だから気をつけろと忠告する。
  珍品堂は、店の名前を途上園と付け、料理人も板前の勘さん(石田茂樹)を選ぶ。女中頭には以前から佐登子をと思っていたが、蘭々女は、自分の内弟子の於千代(千石規子)を指名し、押し切られてしまう。女中の面接の日、番頭の村木(東野英治郎)経理係の佐々(林寛)下足番の格さん(若宮忠三郎)らが出迎える。
   応募者の2号は阿井さくら(横山道代)だ。典型的なアプレガールのさくらに珍品堂は当惑するが、蘭々女は即座に不合格と決めた。次の応募者は年増の新山さく(都家かつ江)。いきなり、奴さんを踊り出し、珍品堂は不合格だと思うが、蘭々女は合格だと言う。珍品堂が支配人の筈だったが、ほとんど蘭々女に仕切られている。
   鼻の下を長くしている珍品堂に、蘭々女は出入りしている質屋が持ち込んだ白鳳仏を家まで見に来ないかと言う。一目見るなり、珍品堂は惚れ込み、途上園開店準備で久しく帰宅していない自宅に戻る。妻に見つからないように茶室に行き、灯籠を手にする。一番大事な灯籠を手放しても、白鳳仏を手に入れたくなったのだ。あいにく妻に見つかるが、勝手にさせろと捨て台詞を吐いて、家を後にする。
   開店後、途上園は大好評を博す。珍品堂が選んだ器と、馴染み客の好み、残した料理などを記録した顧客カードを作ってまで、心を配って提供する珍品堂の献立は評判を呼んだのだ。 
  蘭々女は、女中たちの行儀作法を教えながら、気に入った女中利根(峯京子)き、入浴中に足を洗わせ、着物を買い与えるなど、徐々に本性を表し始める。

三蔵の小女(河美智子)蘭々女史(淡島千景)途上園の女中於千代(千石規子)番頭村木(東野英治郎)阿井さくら(横山道代)途上園の女中新山さく(都家かつ江)女中利根(峯京子)喜代(小林千登勢)板前勘さん(石田茂樹)格さん(若宮忠三郎)島々徳久(山茶花究)アルバイト学生佐山(高島忠夫)明子(市原悦子)会計助手佐々(林寛)白鳳仏
 
  森繁久彌主演映画都内映画館で続々上映と日経の東京版に出ていたが、別に関係なく編成されていた筈だったが、満員札止めに。本当は社長シリーズでも上映したら、いいんだろうになあ。

  89年東宝降旗康男監督『あ・うん(654)』
  昭和14年春、一軒の貸家を掃除をする門倉修造(高倉健)の姿がある。米櫃に米を入れ、風呂を沸かす。東京に向かう汽車に、水田仙吉(板東英二)たみ(富司純子)さと子(富田靖子)の家族がいる。三年半振りの東京勤務と門倉の話しで弾んでいる。

  昔見た時はそんなにいいと思わなかったが、今見ると丁度よい。高倉健のように渋い大人になりたかったが、どうしても人はいいのだが、浅慮で軽はずみな板東英二の方にしかなれなかったなあ(苦笑)。

  夜は、外苑前の粥屋喜々で、元会社の後輩から就職相談。

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