2009年9月8日火曜日

この頃の京マチ子は凄い。

    神保町シアターで、男優・佐田啓二

    64年東京映画豊田四郎監督『甘い汗(517)』
    駅前に富士ショッピングセンターと言う大きな店が開店し、風船を配り、チンドンヤが出て賑わっている。しかし、一歩裏に入ると、狭い路地と、悪臭漂うドブが流れるゴチャゴチャした街だ。バーテンの藤井(小沢昭一)が、夕立を避けながら路地を入って来る。おけさと言う一杯呑み屋の女将(千石規子)に声を掛ける。この一角も立ち退きを求められている。しかし、高い保証金や家賃を払える当てはない。
   藤井が自分の働く店に飛び込みクーラーを点け一息つくと、奥から喘ぎ声のようなものが聞こえる。藤井が奥のカーテンを開けると、梅子(京マチ子)とすみ江(木村俊恵)と言うホステス二人が、梅子の客の岡部と言う会社の課長を、すみ江が取ったと争っていたのだ。藤井は間に割って入ろうとするが、烈しい喧嘩だ。やっと分けたが、36歳にもなって、垂れ下がった梅子のカラダには、もう飽きたと岡部は言っているとすみ江。胸パットを入れまくったインチキとは違うんだと服を脱いで下着姿になる梅子。藤井は、梅子に、普通の会社の課長で、あんなに金を使える訳がないので、そろそろ潮時じゃないのかと梅子をなだめ、俺がいい旦那を世話してやると言った。
    ホテルに、古美術商の権藤(小沢栄→栄太郎)がいると、着物を着た梅子がやってくる。「君は両親を亡くして叔母さんの所に住んでいるらしいな。」「ええ、天涯孤独で、親類の家を転々として、今は叔母の家で、6畳と3畳に8人が暮らしています」「わしは家族を一番大事にしている。2号も3号もいるが、妻は勿論息子も娘も知らん。女が裏切らなければ、わしは裏切ることはせん。2号にも3号にも、家を持たせ、月々払っておるが、最近はどちらの家にも行ってはおらん。ただ、ワシは嘘が最も嫌いだ。あんたが、もし嘘を一度でもついたら、それで全てがお終いだ。住まいを探しているなら、ワシの別荘が藤沢にある。良かったら、直ぐにでも、そこに入りなさい。」外では、夕立が降り、雷鳴が轟く、大袈裟に怯えて、権藤の布団に潜り込む梅子。
    梅子が、借りていた着物を返しにおけさのさと子(池内淳子)のところにやってきた。「一晩泊まって来たと言うことは首尾よく行った言うことかい?」「宮ノ下に行くことになっちゃって。夜中の露天風呂は誰も来やしない。おっぱいはお湯に浮いて大きく見えるし、お湯の中で、足はすらりとして、人魚みたいだなんて言われちゃって…」「銭湯が混む前に行っちゃいたいから、帰ってきてから、のろけ話は聞くよ」とさと子。さと子が出て行くと、入れ替わりに、バーテンの藤井がやって来た。藤井は、梅子に下心がある。更に、毎月の手当ては、俺が回収に行ってやると言い出す。梅子は、おけさでは店の人が戻って来るから嫌だと言って、夜待ち合わせて、どこかへ行くと約束をする。そこに、女将が戻って来て戸を開けておくれと言う。
   夜が更け、梅子が千鳥足で帰宅する。二間に八人が寝るのだから、誰かを踏みながら中に入るしかない。玄関前の3畳に、弟の治郎(名古屋章)と妻の貞代(川口敦子)と赤ん坊が、奥の6畳には、梅子の母松子(沢村貞子)と下の弟の三平(笹岡勝治)、治郎の上の息子、梅子の娘の竹子(桑野みゆき)が寝ているところに、梅子が潜り込むのだから大変だ。17歳の竹子は、梅子がめったに帰らないから今言うけど、授業料を半年貯めているのは私だけだし、寄付やら何やらお金がなくて、困っていると言う。梅子は酔っ払って、マトモに聞いてはいない。

    60年松竹大船堀内真直監督『四萬人の目撃者(518)』
   空撮の後楽園球場、満員だ。ベテラン刑事の笛木時三郎(伊藤雄之助)がスタンドに現れる。後ろから肩を叩かれる。振り向くと、東京地検の検事の高山正士(佐田啓二)だ。「笛さん、仕事かい?」「あそこで、アイスクリームを買っているサングラスの男、例のタタキの事件です。ひょっとすると殺しの可能性たかいです。高山さんも仕事ですか?」「日曜くらい休ませてくれよ。」「今日は日曜日でしたか・・・。」東京セネターズの正捕手で、不動の四番打者の新海清(西沢道夫)がバッターボックスに立った。東京セネターズは、残り5試合で、ペナントレースの雌雄を決する試合だった。新海はヒットを打つ。二塁を回り、三塁にヘッドスライディングを試み、倒れたまま、動かなかった。
   翌日のスポーツ紙は、心不全による突然死と大きく扱っていた。高山が新聞を読んでいると、

    シネマート六本木で、没後25周年 中川信夫 レトロスペクティブ

    51年新東宝中川信夫監督『高原の駅よさようなら(519)』
    信州の高原を乗合馬車が行く。光が丘高原療養所の停留所で、野村俊雄(水島道太郎)が、受付にいた看護婦に、石島良寛先生いらっしゃいますか?と尋ねると、どちら様でしょう。野村です。タンクと言って貰う方がわかるかもしれませんと言ったところで、石島(柳永二郎)が現れる。「来るなら電報位くれれば良かったろう。驚かすなよ、採集旅行か。少し僕の部屋で待っていてくれたまえ」と言って、通りかかった看護婦の泉ユキ(香川京子)に案内してやってくれと頼む。由紀子の可憐さに目を奪われて、自分の植物採集道具や、置いてあった掃除用具をひっくり返して、大きな音を立てる野村。掃除婦のおたけ婆さん(岡村文子)は、慌て者の男とお喋りな女には困ったものだと言う。
    二階の実験室のような部屋に入る野村に女医の三神梢(風見章子)が後ろ向きのまま、「ドアは開けたら閉める!!人の研究の邪魔をしたら金百円を払うべし。」と言う。訳が解らず、野村が黙っていると「良寛先生、ご自分でお決めになったのですよ。」と言い、初めて野村が立っていたことに気がつく。「石島先生のお部屋じゃないんですか?」「ああ、良寛さんは院長室よ。」「院長なんですか?」「腕はヤブでも、院長代理位できるわよ。」と、容赦ない三神。
   石島の部屋で、酒を飲み交わす石島と野村。野村は孤児だったが、学者の伊福部に育てられ、大学まで出させて貰った。伊福部は、一人娘の恵子と野村を結婚させようと思っている。病気になってから、直ぐにでもと急かすが、伊福部への大恩と、恵子も申し分のない女性だと思っていたが、どうも結婚に積極的になれない。石島のところに、女医の三神が将棋盤を持って現れる。石島は、僕の恩師の家庭で育てられ、植物学者になり、シダ類の研究ではそれなりなんだと紹介する。君のところの泉くんを、彼の植物採集の案内に貸して貰えないかと石島は頼むが、あの子は、私の秘蔵っ子だから駄目よと三神。病院の白樺林で、野村がハモニカを吹いていると、リンドウを摘んでいるユキの姿がある。あっちに百合が咲いていましたよと言うと、患者さんには香りがきつすぎるんですとユキ。
   病院に戸田直吉(田崎潤)が馬を連れて遊びに来ている。看護婦の求めに応じて自慢の喉を披露していると、おたけ婆さんがやってくる。直吉に、女心と秋の空じゃ、お前は頑張らんとユキを都会の男に取られてしまうぞ。何が楽しいのか、今日は、草取りに、あの男の案内だ。
    三神は、ユキを、高原の植物採集の案内に出してくれた。東京の女性にはない素朴な美しさを持ったユキに、次第に惹かれて行く野村。ユキも、紳士的で、知的好奇心に溢れた野村に好意を持った。「この花は素朴で、君のように美しいよ」なんて、歯の浮くような台詞は普通言えないと思う。高原を追いかけっこしたり、ヨーイドンでかけっこをしたり、野村のハモニカに合わせてユキが歌ったり、植物採集もしてはいるが、殆どハイキングだ、野外デートだ。放牧場で働く直吉 は、ユキと幼馴染みで、村の誰もが二人は結婚するのだと思っていた。直吉は、 野村とユキの楽しそうな姿を見て、ショックを受ける。
  その夜、三神の研究室に行き、紙テープを借りる野村。三神は、「あつ、ちょっと待って。どう?あの子優秀でしょ。三日間貸して上げるわ。あなたの為にではなく、あなたの研究の為によ!この病院の約束事として恋愛の感情は持ち込んではいけないの。科学者のあなたには分かるでしょ。そうした感情は患者に動揺を与えるの。約束できるわね。」頷く野村(ホントかよー!!!と皆、心の中で叫ぶ。)
  翌日、療養所に、恵子から速達が来た。「あなたは卑怯です。そして意気地なし。信州に逃げるなんて、恵子は笑ってしまいましてよ・・・。」苦渋の表情の野村。良寛が、孤児だったお前を、育ててくれた伊福部先生が、今際の際に、娘の恵子の婿になってくれと願っているんだ。お前はそんなに恩知らずな人間だったのかと言う。
   光が丘塩壺放牧場、直吉の姿がある。空を眺めていて、雨が降るぞ!干し草を大急ぎで仕舞え!!と指示をする。案の定雨が降り始める。放牧場の後輩が「兄貴、いつおユキと結婚するんだい?」と声を掛ける。思い詰めたような表情の直吉は雨の中、牧舎の外へ出ていく。
   

    シネマート新宿で、友松直之/西村喜廣監督『吸血少女対少女フランケン(520)』
    海辺を走るトラックの荷台に、眼帯を付けマントを羽織ったセーラー服の有角まなみ(川村ゆきえ)と、詰め襟の水島樹権(斎藤工)の姿がある。消耗しきったもなみを支えながら歩いていると、フランケンシュタイン化したゴスシスターズ3人が待っている。簡単に叩き付けられる樹権。襲い掛かるゴスシスターズに、もなみは、次々に叩きのめし、血の雨を降らせる。血の雨を浴びながら復活するもなみ。
    敷地内に東京タワーが聳え立つ都立東京高校。今日はバレンタインデーだ。いきなり教師の内山春樹(貴山侑哉)が、黒板に、所持品検査と汚い字を書き、女生徒たちからチョコレートを没収し始める。女生徒は、リストカット部の細腕キリ子部長(星川桂)ミゾレ(光野亜希子)シグレ(田嶌友里香)ヒサメ(日向花蓮)、ガングロ部の部長亜風炉リカ(寺田奈美江)サンボ(泉カイ)マンボ(せんだるか)ダダンボ(石山知佳)、ゴスローズの富良野けい子(乙黒えり)サオリ(西崎彩)アケミ(Erina)ヨーコ(紗代)、みな今日と言う日のために用意してきたチョコレートを奪われ阿鼻叫喚の騒ぎになる。
   水島樹権は、三か月前に、ゴスロリーズに呼び出され、富良野けい子から彼氏にして上げると言い渡されていた。けい子の父親の富良野ケン(津田寛治)は、この学校の教頭兼化学教師だった。けい子の悲鳴に教室にやって来るが、内山の怖さの前には爪を噛むしかなかった。教室の窓際の席で、一人目立たない転校生のもなみ。
   樹権が帰ろうとすると、もなみが呼び止める。バレンタインのチョコをくれると言う。もなみが目立たないのと、チョコも小さかったので没収されなかったと言う。貰ったチョコは美味しかったが、料理の最中に包丁で指を切った時の味、つまり血の味がした。そのチョコを食べた後、樹権は、異様な感覚を覚えた。学校では、各部活が行われている。リスカ部は、2月23日に行われる第13回全国高校リストカット大会を目指し、厳しい練習をしていた。「張り切って!!腕切って!!塩分カット!!リストカット!!!」。
ガングロ部は、ガングロギャルというより、部長の亜風炉リカは、特殊メイクで黒人化し、元の顔など分からない。
   樹権は、気分が悪くなり、医務室に向かう。医務室の教諭ミドリ(亀谷さやか)は、エロフェロモン出しまくりだ。樹権がベッドに横になると、隣に寝ていたのは、もなみだ。


もなみの母(しいなえいひ)第12回王者工藤ひとみ対する挑戦者細腕キリ子リストカット部

  くだらない、本当にくだらない。くだらない映画を作るために、スタッフの叡智と努力が結集していて、爽快だ。10代の頃の香坂みゆきを思わせるような川村ゆきえ可愛い。ただ、その萌っぽい表情が、吸血鬼として振り切れた時のかっこよさに比べると、薄っぺらくて、ちょっと勿体ないんだな。
   

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