池袋新文芸坐で、鮮烈なる東映'50~'70。
69年東映京都小沢茂弘監督『緋牡丹博徒 二代目襲名(514)』
明治の中頃、阿蘇の高原を走る中九州乗合馬車に、矢野竜子(藤純子)と不死身の富士松(待田京介)の姿がある。川邊の叔父貴の怪我の見舞いに、久しぶりに故郷に帰って来たのだ。突然、富士松との間に、石川五右衛門の末裔だと自称する石川十吉、通称大風呂敷(長門裕之)が割り込んで座る。竜子に、この辺りの矢野竜子通称緋牡丹のお竜をよく知っていると言い出す。苦笑いする二人。外が賑やかになった。男(和崎俊哉)が馬に乗って逃げ、荒木田組と言う法被を着た三人が追い掛けながら、ライフルを撃つ。俺は勇気があるので、撃たれて馬から落ちた男を救うと言って馬車を止めさせる大風呂敷。しかし、追っ手のライフルが、被っていたシルクハットを吹き飛ばすと、慌てて逃げ出す。結局、荒木田組の賭場でいかさま働いたと言う男の言い分も聞いてみないとと、飯塚の荒木田組の連中から預かる竜子。
竜子は、富士松に先に川邊組に行って貰い、自分は男を病院に連れて行く。男は、懐から二百円入った財布を出し、天明村の上新田に住む矢代雪江と言う娘に、お祭りの半次からだと言って、急いで渡して欲しいと頼まれる。天明村に雪江(時美沙)を訪ねると、正に高利貸しに連れて行くところだった。金貸しは、金を返して貰えば何の文句もないたいと言って去る。雪江曰わく母親の長患いの薬代が積もり積もってどうしようも無くなったのだと言い、平次が命を賭けて金を届けたと聞いて涙する。監獄に入っている兄は極道だが、私の相手には堅気でないと許さないと言うし、何とか平次の足を洗わせたいと言う雪江に、自分の札入れを渡し、ボウチュウの若水医院に行けと言う竜子。
川邊組の親分の川邊要次郎(嵐貫寿郎)は、竜子の姿を見て、人形を背負った遊んでいたお竜が、こんなに大きくなって、俺が年寄りになる訳だと涙した。要次郎は、土建業を始め、球磨川の堤防工事で、事業に大失敗して、侠客らしく博打稼業に戻ろうとしたら、矢野組初代組長だった、竜子の父、矢野仙蔵に稼業を畳むなら、再び盛り返してからきっぱり辞めろと言われ、目が覚めたと言う。この筑豊本線の仕事を土産にあの世の兄貴分の仙蔵に会いたいと言うのだった。ここ熊本は、明治初めから、筑豊で急速に石炭産業が伸びたため、今迄の遠賀川の川筋者による石炭運搬では足りなくなり、岡蒸気による大量運送が、国家的に求められていた。しかし、川船頭は、死活問題だとして、鉄道建設を死に物狂いで妨害していた。川筋者の赤不動組に襲撃され、大怪我を負ったのだ。
そこに鉄道局課長の高井(中山昭二)がやってくる。何とか工期を守ってくれないかと頭を下げる高井に、俺を戸板に載せて現場に連れて行くと言って立ち上がり、再び倒れる要次郎。
シリーズ四作目
櫓の清吉(大前釣)飛車角(広瀬義宣)あんこう常(高宮敬二)大風呂敷(長門裕之)矢代雪江(時美沙)お祭りね半次(和崎俊也)荒木田伊之助(天津敏)吉岡(小松方正)矢代孝次(高倉健)銭丸金吉(遠藤辰雄)川邊要次郎(嵐貫寿郎)赤不動の勧蔵(石山健二郎)猪之吉(楠本健二)富士松(待田京介)鉄道局課長高井(中山昭二)
70年東映京都加藤泰監督『緋牡丹博徒 お竜参上(515)』
他の監督が悪いということでは決してなく、加藤泰監督の藤純子さん溜め息が出る程、美しい。
シネマート六本木で、生きてゐる中川信夫 没後25執念レトロスペクティブ。
54年新東宝中川信夫監督『若き日の啄木 雲は天才である(516)』
明治40年、石川一《はじめ》啄木(岡田英次)は、第1歌集「あこがれ」を出版したが、成功を収めることは出来ず、東京から郷里の岩手県の澁民村に帰り、尋常小学校の代用教員となっていた。生徒たちからは大変慕われていたが、封建的な岩手県の田舎のことであり、啄木の教育への理想を、過激なものとして、村長、校長らから危険視され辞表を出すことになった。生徒たちは、石川先生を辞めさせるなら学校に行かないと言いだしたが、村人たちは、僧侶であった啄木の父親一禎(杉寛)は、啄木が東京で作った借金を返すために、寺の山林を処分したことへの反発もあり、啄木が、子供たちに危険思想を吹き込んでいると誤解し非難した。妻の節子(若山セツ子)は、学校を辞めたのなら、文学の道のために、東京に行ってくださいと言ったが、啄木は、一度は上京を考えたが、雑誌明星の与謝野、小山内に送っていた小説「おもかげ」が、既成文壇の作家たちを悪し様に罵倒していることで、どこの出版社も本にしようとせず、送り返されてきた。意気消沈しながらも、まずは、家族の生活を建て直すことが優先だと決意をした。
その夜、一禎は、家計の貧窮を考え、托鉢姿で家を出て、寺に入った。まだ赤ん坊の娘の京子を背負った妻の節子と母親のかつ子(本間文子)を、ここ澁民村に残し、啄木は親友宮川のいる函館に、妹の光子(田川恵子)は、姉を頼って小樽に行き、宣教師を養成する女学校の寄宿舎に入ることにする。汽車で北に向かう啄木を、いつまでも走って追いかけてくる生徒たち。
函館商業会議所での仕事は、日給60銭の封筒の宛名書きだ。安い金で、字が汚いと文句を言われる仕事は、啄木を鬱屈させた。同じ文学を志しながら、自分の才能に見切りをつけ、家業の味噌屋を継いでいた宮川緑雨(細川俊夫)は、啄木を励まし、小樽新報社での記者の仕事を紹介した。最初は校正係で月15円だが、君なら直ぐに記者になって給金も上がるだろうと言う宮川。とうとう三文記者かと自嘲しながらも、小樽に行く啄木。
しかし、小樽新報社は啄木にとって、満足出来る環境ではなかった。皮肉にも、岩手から母と妻子が小樽にやってきて、ようやく家族揃って小樽で暮らす日が来たと妹を含め女たちが喜んだその日に、江東主筆(丹波哲郎)を、腐敗分子として社主に上申したことで殴り合いになり、啄木は辞表を出して帰宅した。結局、雪の降る中、啄木は釧路の新聞社に単身で向かう。
釧路の駅に出迎えた記者の小松(天知茂)に人力車で、釧路新報に案内される啄木。釧路は、啄木の入った釧路新報社とライバルの北東日報が熾烈な争いをしていた。社主の白川義郎(佐々木孝丸)に、君は文学で成功したらどうするんだと尋ねられ、勿論辞めますと答え、「それでは、腰掛け記者と言うことか?」「そうです。腰掛けです。記者は生活のためです」「随分君は率直な言い方をするんだな、君が担当したいのは、2面か3面か」「2面です」白川は啄木を大いに評価し、主筆の高野に、ではその通り任せたまえと言ったことは禍根を残すことになった。西園寺内閣の軍事費を批判する記事を大いに書けと高野は言う。その時、編集部には、社長を殴って、北東日報を辞めてきたと言う菊地兼松(山形勲)が来ていた。菊池の服は蛮カラを気取っているのか、破れまくっている。下宿先となっていた三?屋に行ってみると、菊池がいる。菊池は、啄木が5年で中退した盛岡中学の先輩であることが分かる。バンカラを地で行くような豪放磊落な菊池と意気投合する啄木。
その夜、主筆の高野は、新聞各紙の月例会が行われている料亭鶤廣に、啄木を連れて行く。
そこには社主西山と、編集長の日下部(高原駿雄)や、記者の斎藤(川辺守)や三島(春日俊二)といった北東日報の面々たちが来ていた。酒は殆ど飲めない啄木ではあったが、末席に座る。半玉のポン太(左幸子)が、啄木の所に来て、「お客さん、耳の近くに、豆ランプみたいな禿がある」と言って笑う。豆ランプか・・と、酒を注ぎに来た日下部に、自分は酒が飲めないので遠慮するという啄木。その頑なな態度は宴席を白けさせた。更に啄木は、「僕もあなたに渾名を進呈しよう。オットセイだ。」ポン太は大笑いし、何故か、酔って乱入してきた菊池が、オットセイ、そりゃいいと騒いだので、日下部はとても気分を害し、「菊池くん、ここは辞めた君が来るようなところじゃない。」「来るようなところか、そうじゃないか、西山社長の額の傷に聞いてくれ!!」釧路一の人気芸者小奴(角梨枝子)が、宴席にやってくる。
浪淘沙(ろうとうさ) ながくも声をふるはせて うたうがごとき旅なりしかな
それから渋谷に出て、浅草の歌姫と会う。二人で、前の会社の上司に、東急本店の天一で、天丼の松を奢って貰う。そんなに多いとは思わず、久しぶりの天丼、一人一気食いすると、延々と膨満感に苦しむ。とはいえ、その後、立ちのみバー、15年振り位でBYGに流れ、更にもう一軒と終電近くまで、渋谷で浅草の歌姫と友人N氏と飲み続け。
うう、自分の胃袋に自制心はないのだろうか。恥ずかしい。今朝の「肝硬変になっていなからと言って今まで以上呑んでいいという訳では決してありませんよ(笑)。」「勿論です!!」という会話は、今思い出しました。
69年東映京都小沢茂弘監督『緋牡丹博徒 二代目襲名(514)』
明治の中頃、
竜子は、富士松に先に川邊組に行って貰い、
川邊組の親分の川邊要次郎(嵐貫寿郎)は、竜子の姿を見て、
そこに鉄道局課長の高井(中山昭二)がやってくる。
シリーズ四作目
櫓の清吉(大前釣)飛車角(広瀬義宣)あんこう常(高宮敬二)
70年東映京都加藤泰監督『緋牡丹博徒 お竜参上(515)』
他の監督が悪いということでは決してなく、加藤泰監督の藤純子さん溜め息が出る程、美しい。
シネマート六本木で、生きてゐる中川信夫 没後25執念レトロスペクティブ。
54年新東宝中川信夫監督『若き日の啄木 雲は天才である(516)』
明治40年、石川一《はじめ》啄木(岡田英次)は、
その夜、一禎は、家計の貧窮を考え、托鉢姿で家を出て、
函館商業会議所での仕事は、日給60銭の封筒の宛名書きだ。
しかし、小樽新報社は啄木にとって、
釧路の駅に出迎えた記者の小松(天知茂)に人力車で、釧路新報に案内される啄木。釧路は、啄木の入った釧路新報社とライバルの北東日報が熾烈な争いをしていた。社主の白川義郎(佐々木孝丸)に、
その夜、主筆の高野は、
そこには社主西山と、編集長の日下部(高原駿雄)や、記者の斎藤(川辺守)や三島(春日俊二)といった北東日報の面々たちが来ていた。酒は殆ど飲めない啄木ではあったが、末席に座る。半玉のポン太(左幸子)が、啄木の所に来て、「お客さん、耳の近くに、豆ランプみたいな禿がある」と言って笑う。豆ランプか・・と、酒を注ぎに来た日下部に、自分は酒が飲めないので遠慮するという啄木。その頑なな態度は宴席を白けさせた。更に啄木は、「僕もあなたに渾名を進呈しよう。オットセイだ。」ポン太は大笑いし、何故か、酔って乱入してきた菊池が、オットセイ、そりゃいいと騒いだので、日下部はとても気分を害し、「菊池くん、ここは辞めた君が来るようなところじゃない。」「来るようなところか、そうじゃないか、西山社長の額の傷に聞いてくれ!!」釧路一の人気芸者小奴(角梨枝子)が、宴席にやってくる。
浪淘沙(ろうとうさ) ながくも声をふるはせて うたうがごとき旅なりしかな
それから渋谷に出て、浅草の歌姫と会う。二人で、
うう、自分の胃袋に自制心はないのだろうか。恥ずかしい。今朝の「肝硬変になっていなからと言って今まで以上呑んでいいという訳では決してありませんよ(笑)。」「勿論です!!」という会話は、今思い出しました。
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