2009年4月28日火曜日

駄目な男と馬鹿な女

     阿佐ヶ谷ラピュタで、孤高のニッポン・モダニスト 映画監督中平康
     56年日活中平康監督『夏の嵐(274)』
     浅井家の次女、良子(北原三枝)は、骨董趣味で浅井家を没落させた父義孝(汐見洋)と、主婦友の会の理事をしていて口喧しい母親みつ(北林谷榮)と、母のコピーのような姉の妙子(小園蓉子)、浪人中の弟の明(津川雅彦)と洋館で暮らしている。気ままに勤め先の葵学園に遅刻して出勤だ。職員室には、教頭(清水将夫)と教師の城戸(金子信雄)しか残っていない。女性は朝の準備など大変ですからなあと教頭に言われ、悪びれもせず、今朝は寝坊しましたと答える良子。城戸は、浅井先生のクラスは私が大人しく自習をさせていますよと言うが、特殊教育を行っている葵学園の教室は大騒ぎだ。何とか落ち着かせて、教科書を開かせ、lesson5 Summer Stormと板書する。
   休み時間、教頭が、良子の母が理事をしている主婦友の会の会館建設に、弟の建設会社に発注して貰ったら、建設費の5%をキックバックするので、母に紹介して貰えないかと言う。何がしかの賄賂が貰えるのですねと言う良子に、教頭は、寄付金ですと訂正する。その時、小使いが浅井先生のお母様と仰有る方がいらしていますと言う。教頭は大喜びで、迎え入れると別人だ。良子は、こちらは養母ですと言う。がっかりして席を外す教頭。良子は、養母牧(藤代鮎子)に何の用があって突然訪ねて来たのですか?と冷たく言う。屋敷の方に電話をしても出てくれないじゃないのと言い訳する養母。かって良子は浅井家から金沢に養女に出されたのだ。財産目当ての養女が、財産が無くなった途端縁を切っておいて、今更何の頼み事ですかと言う良子に、養母は、再婚先相手の先妻の子供が知恵遅れで、葵学園の教育を受けさせたいのだと言う。冷たく断る良子。
   良子が帰宅する。母は学校に養母が来たことを知っていた。金沢の家の躾が悪すぎたので、良子は我が儘で乱暴な性格になってしまったのだと言う。更に姉の妙子の見合い相手がウチにやってくるので、夕食を一緒にしろと言う。良子は嫌がったが、何度も言われ仕方なしに、食堂に行くと、妙子の結婚相手の男秋元啓司(三橋達也)の顔を見て驚く、秋元も良子の顔を見続けていた。食前の祈りの最中であったため、この光景に気がついたのは明だけであった。
    昨年の夏女学校時代の友達と山に出掛けた際に、寝付かれない良子が、夜湖畔を散歩していると、口笛が聞こえてきた。口笛を吹いていたのは秋元だった。2人は、暫くの間見つめ合っていたが、良子が湖に足を取られ、助けた秋元と二人は抱き合い口づけを交わした。
    
  
   神保町シアターで、昭和の原風景
    34年松竹蒲田島津保次郎監督『隣の八重ちゃん(275)』
    新海家と服部家は隣同士、新海家の長男で帝大生の恵太郎(大日方伝)と次男で甲子園を目指す精二(磯野秋雄)が両家の間にある空き地でキャッチボールをしている。恵太郎の返球が逸れ、精二のグローブを弾いて、服部家の硝子を割ってしまう。中から八重子(逢初夢子)が、また割ったのねと笑いながら出てくる。精二はコントロール悪いからなと弟のせいにして、精二にガラス屋に走らせる。そこに、八重子の母浜子(飯田蝶子)が銭湯から帰ってくる。
    八重子と恵太郎は銭湯に行くことに、ガラス屋から戻ってきた精二が追いかけてきた。ガラス屋の小僧が、新海家に来る。壊れたのは隣だけど、支払いはうちにと、母の杉子(葛城文子)。しかし、修理が終わって声を掛けると、浜子がウチで払うからと、15銭を10銭に負けさせた。新海家の主人幾造(水島亮太郎)が帰宅する。銭湯に行きがてら、服部家に息子たちのことを謝罪する。浜子も主人の昌作(岩田祐吉)も、気にするなと言う。それよりも、今晩主人同士一杯やりましょうと言うことに、さすがに会社の愚痴やら下世話な話を息子たちの前でするのは差し障りがあるだろうと、服部家で飲むことに。
    数日後、恵太郎が早い時間に帰宅する。服部家を覗くと、浜子が「早かったのね、おかあさんでかけたわよ、うちで待っていなさい」と声を掛ける。お腹が空いているんだという恵太郎に、おひつと、おかずを出して、買い物に行ってくるので留守番をしていてと出かける。恵太郎が食事をしていると、八重子が同級生の真鍋悦子(高杉早苗)を連れて帰宅する。女学生二人にドキドキした恵太郎は、急須を蒲団の上にひっくり返してしまう。気軽に声を掛ける八重子に対し、悦子は恥ずかしがっていた。靴下に大きな穴が開いていて、繕ってやると八重子は脱がすと、足が汚い。洗ってから繕ってあげると言う。ようやく、母親が帰宅したので、家に戻る。悦子は恵太郎がフレデリック・マーチに似ているわねと言う。
   その夜、新海家で、杉子と精二を前に、靴下の繕い器を実演して見せる八重子の姿がある。服部家では、両主人がご機嫌で出来上がっている。職場のビジネスガールの話まで脱線しがちだ。


    52年大映東京成瀬巳喜男監督『稲妻(276)』
    はとバスのバスガイド小森清子(高峰秀子)が銀座通りをアナウンスしていると交差点に、姉の光子(三浦光子)の夫が女連れで歩いているのを見かける。清子は、光子たち姉夫婦が営む洋品店に間借りしている。清子の帰宅前に長姉の縫子(村田知栄子)が光子の店に来ている。縫子は、清子の縁談に両国のパン屋の後藤綱吉(小沢榮太郎)との話を持って来ている。35歳だが手広く商いをしているし、何よりも戦争のせいで、男一人に女23人と言う厳しい時代なのだ。縫子は、売り物のブラウスを原価で譲れと言う。光子は、姉さんからはお金を取れないと言う。
    その頃、清子は、母のおせい(浦辺粂子)のもとを訪ねていた。長男の嘉助(丸山修)は、南方から戻ってきたが、働きもせず、ぶらぶらしていて、最近はパチンコ屋に入り浸っていると言う。おせいには、女3人男1人の子があるが、全員父親が違う。おせいは、あんたが一番マトモな子だと言って、清子の父親から貰ったルビーの指輪を清子に渡す。硝子玉じゃないのと言う清子に、あんたのお父さんは嘘をつくような人じゃなかったとおせい。
    清子が帰宅すると、光子が夫が帰ってこないと言う。銀座で女連れを見かけたとも言い出せず、まだ早い時間じゃないのと言う清子。しかし、心配した光子は、店番を頼み、探しに出掛ける。そこに縫子の夫の龍三(植村謙二郎)がやってくる。縫子は来ていないかと尋ね、酒をコップ一杯くれと頼む・・・to be continued.

  駄目な男と馬鹿な女ばかりの、家族に嫌気がさして、清子は家を出る。下町から世田谷に、そこには、人形作りが趣味で、商売っ気が全くない貸し間の大家と、隣には、妹(香山美子)をピアニストにするために、仕事の他にアルバイトまでして、洗濯で手を荒してはいけないと自分で家事をやり、更に自分でも妹に教わって、時間があれば、ピアノの練習をしているイケメンの兄(根上淳)が住んでいて、恋の予感が。しかし、その下町のせこく、品のない男たちや、男なしでは生きていけない姉たちを決して軽蔑しきっていない成瀬巳喜男監督の視線。癒されるなあ。
  しかし、高峰秀子のバスガイドが多い気がするのは、当時の花形職業婦人がバスガイドだったんだろうか。少し前のCAのように・・。

    37年松竹大船島津保次郎監督『婚約三羽烏(277)』
   タバコ屋の二階に、加村週二(佐野周二)がいる。憂鬱そうに外を眺めていると、順子(三宅邦子)が戻ってくる。順子はダンサー、週二は失業中だが、気がつくとヒモのような生活に 甘んじている。このままでは週二のためにならないと、順子が別れを切り出したのだ。最後の朝食を用意する順子。ああでもないこうでもないと未練がましい週二。繊維会社の面接の案内状を取り出し、今日これが合格すれば、別れる必要はないと言うが、今まで何度もあったでしょうと順子に言われ渋々朝ご飯を食べ電車賃を順子から借りて面接に向かう。繊維会社は、人絹製品のアピールのために銀座にサービスステーションと言うアンテナショップをオープンさせるので、その立ち上げのための人員募集だった。面接では、店頭で女性客に接客した時の応対をさせられる。加村は入社候補者の部屋に通される。すると、18番と呼ばれて、俺にはちゃんと名前がある。番号で呼ばれるのは囚人だけだと怒鳴っている男がいる。おとこは面接室に入り、人絹について説明してくれと言われると、滔々と人絹の発明の歴史と製法について語り始める。圧倒された試験官たちは、その男も入社候補者の部屋に入れる。残ったのは、3人。週二と、大声を出していた三木信(佐分利信)と、奇術のうまいスマートな男谷山健(上原謙)だ。
     週二は、意気揚々と帰宅すると、順子は家を出てしまったと言う。タバコ屋のおばさんに、1ヶ月分の家賃と生活費を預け、ダンスホールも辞め、田舎に暫く帰ると言って去って行ったと言う。谷山は、帰宅し、ホルンを吹いている。妹の春子(大塚君代)が部屋に入ってきて、就職祝で、銀座に連れて行って食事を奢れと言う。ちょうど、健の婚約者の栄子(森川まさみ)が来ていることをいいことに押し切る春子。おでん屋で失意の加村が飲んでいると、偶然三木が現れる。金も持たないくせに、加村の酒を飲む三木。泥酔した三木と加村が、加村の部屋に帰ってくる。酔っ払ってどこにいるのか分からなくなっている加村をよそに、図々しく加村の布団に入って寝ようとしている三木。

    前の会社、同期の友人が社長になってしまう。やっと自分たちの世代がトップに立った。音楽業界はパラダイムシフトのタイミングで、舵取りは、本当に大変だと思うが、頑張って欲しいなあ。
もう一本レイトショーを見ようかと考えていたが、これから自分が経験したこともない荒海に漕ぎだす友人を思って一人乾杯したく、博華で餃子とビール。

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