2009年4月27日月曜日

昭和の原風景

   午前中は赤坂でメンクリ。独身美人OLに自宅居酒屋の残りの惣菜と、その時頂いた菓子を差し入れる。

   池袋新文芸坐で、芸能生活70年 淡島千景の歩み
   59年東宝豊田四郎監督『花のれん(271)』大正末、大阪船場の河島呉服店。ごりょんはんの河島多加(淡島千景)は、節季だが、主人の吉三郎(森繁久彌)が出たきり戻らないため、京都から売掛金を回収にきた織京の主人(山茶花究)を4時間待たせて恐縮している。せめて汽車賃をと差し出すと今回はどうしても払って貰うつもりで、出された茶も飲まなかったのだと断られた。織京の主人がやっと帰ると、新町の茶屋の座敷に上がっているので、迎えにこいと連絡が入る。慌てて茶屋に行くと、芸者だけでなく、寄席から連れてきた芸人たちも上げていて、祝儀を払ってやれと吉三郎は言う。手持ちの金など少ししか無い多加は、茶屋の座敷代だけ払って、花代と祝儀は立て替えて貰った。帰宅すると、更に吉三郎が株に手を出し大損を出していたことがわかる。
  幼い息子の久雄がありながら、商売を全く省みない吉三郎に、温和しい多加もさすがにキレた。
呉服店を畳んで、吉三郎が道楽三昧でご祝儀をバラまいてきた寄席を始めることを思いつく。店の身代を、高利貸しの石川きん(浪花千栄子)に買い手を探してもらい、身売り話が出ていた天満亭をまずは買った。場末の粗末な寄席で、吉三郎は嫌がったが、客が少なくともサクラで賑やかし芸人にはギャラをケチらず、夏場は店の前で冷やし飴を売って客を釣り、客席で売ったミカンの皮を集めて日に干して化粧品屋に売るなど、多加が知恵を絞っての経営が軌道に乗り始めた。また、番頭のガマ口(花菱アチャコ)も、よく支えた。
    しかし、そうなると吉三郎の浮気の虫が疼いて、おしの(環三千世)という妾を作る。吉三郎は妾宅で、心臓麻痺で亡くなってしまう。本家へ運んでの通夜の席、多加は、船場に嫁入りした際に持たされた船場のごりょんさんだけが着ることの出来る白い喪服を着る。これは、商人の未亡人が、終生商売一筋で、二夫にまみえないとい う決意を表すものだった。それからの多加は、寄席商い一途だった。格が落ちる天満亭には、看板落語家たちが上がってくれないのを、一人一人口説き落とし、法善寺の名席の金沢亭を買い取り花菱亭と名前を変え、十三の寄席を経営するに至る。しかし、一方で息子の久雄は、女中のお梅(乙羽信子)に任せきりだった。
   ある日、下足番の権やん(田村楽太)が履き物を紛失したと報告に来た。多加は、ガマ口に一番高い下駄を買いに走らせ、下足番の失策は自分の責任だと頭を下げ続けた。その客は、市会議員の伊藤友衛(佐分利信)だった。伊藤は、それ以来、多加のよき相談相手となる。関西で突然安来節の大ブームが起こる。多加は、ガマ口を連れ出雲に急ぎ、3日間連続で、安来節コンクールを開催する。そこに集まった若い娘たちをスカウトしまくり、美声のお種婆さん(飯田蝶子)を大阪に連れ帰り、安来節お種と銘打って寄席に上げたところ、大ヒット!!!
  また、ある日は、笑福亭松鶴(曽我廼家明蝶)が十八番の天王寺詣りを忘れたと言って大混乱になる。実は、十八番のネタを質入れしていたのだ。客席にいた伊藤が訳を知って、質札を出してくれたので、事なきを得る。
  更に26軒の寄席を持ち、通天閣まで手に入れた多加。通天閣に久雄を連れて行こうとお梅に言うと、久雄は大学受験に東京に行ったと言う。字もろくに読めない芸人相手の寄席商いに学はいらないと聞く耳を持たない多加に無断で東京に行ってしまったのだ。結局、ガマ口と二人で、通天閣の展望台に上り、紙吹雪を撒いて、新聞社の取材を受ける。そこに、桂春団治が、独占契約を破って他の寄席に出演しようとしているという情報が入る。ガマ口と、春団治(渋谷天外)の家に出かける。妾(酒井光子)と一緒にいる春団治の口に差し押さえの札を貼る多加。その姿は新聞にまで取り上げられた。今日の高座は、春団治が現れなければ客とはひと悶着あるだろうと、肩を落として戻ってきた多加とガマ口の二人に、花菱亭のお政(万代峰子)が、口に差し押さえ札を貼ったまま春団治が高座にあがり、何も話さないのを、訳を知っている客たちは大喜びだと告げる。

河島多加(淡島千景)吉三郎(森繁久彌)久雄(石浜朗)ガマ口(花菱アチャコ)お梅(乙羽信子)伊藤友衛(佐分利信)石川きん(浪花千栄子)安来節お種(飯田蝶子)京子(司葉子)お政(万代峰子)
下足番権やん(田村楽太)織京の主人(山茶花究)巳之助(頭師孝雄)おしの金沢亭席主(曽我廼家五郎八)桂春団治(渋谷天外)その妾(酒井光子)桂文次(芦の家雁玉)米助(福山博寿)おみつ(橘美津子)


   61年東宝豊田四郎監督『東京夜話(272)』
   渋谷の裏街のバー・ケルン、そこに帝都大学の大学生バイトのバーテン伸一(山崎努)が、洋酒の闇屋をしている健ちゃん(フランキー堺)の紹介でやってくる。今まで、銀座のオセロにいたと言う。マダムの近江仙子(淡島千景)と女給のマリイ(団令子)が尋ねると、こういう気楽な店の方がいいと言うのだ。地元を仕切る笹森組の二郎(丹波哲郎)が、情婦の蘭子(岸田今日子)が逃げ出したが、ここに来ていないかとやって来た。仙子は、うまく言って追い返した。


元華族の立石良作(芥川比呂志)伸一(山崎努)ケルンのマダム近江仙子(淡島千景)銀座のバー、オセロのマダムゆかり(乙羽信子)ケルン女給マリイ(団令子)らん子(岸田今日子)松子(富田恵子)笹森組のヤクザ二郎(丹波哲郎)畳屋の紙子恭助(中村伸郎)息子の久造(名古屋章)妻おこと(原知佐子)流しの芸人佐々木(中原成男)尾松(松村達雄)学生の加田(高橋昌也)井森(本郷淳)木田(笈田勝弘)タヌキ食堂の主人(織田政雄)パチンコ屋(松本染井)焼き鳥屋(都家かつ江)植木屋(若宮忠三郎)オセロの女給お京(馬渕晴子)闇洋酒屋健ちゃん(フランキー堺)三路重工の重役の春海(有島一郎)花菱銀行の重役宗田(森繁久彌)

   神保町シアターで、昭和の原風景
   52年松竹大船川島雄三監督『とんかつ大将(273)』
隅田川沿いの道路を走っていた車が急停車する。リヤカーと接触し、積んであった達磨が転がっている。車に乗っていた娘(津島恵子)が、駄目じゃないのと言って運転手から金を渡させようとする。そこに、下駄履きの男(佐野周二)が通りかかり、謝罪の仕方くらいあるだろうといい、君は、こんな高いハイヒールを履いているから地面を歩けないのかと皮肉を言う。女は、車から降りてきて、リヤカーを牽いていた職人の大平(坂本武)に謝罪する。差し出した金をこれじゃ多すぎると言って半分を大平に渡し、残りを女に返す。大平は男に大将と呼びかけている。女は、自分に非があると思って男に従ったのだが、男が去るとゴロツキ!!と悔しそうだ。
   男の名は、荒木勇作。荒木が、歩いていると、演歌師の吟月(三井弘次)がバイオリンを弾きながら歌っている。稀代の音楽家松田吟月の楽譜1円と言いだすと、聞いていたのは子供ばかりなので、誰もいなくなる。荒木が吟月に声をかける。原稿料が入ったので、飯を食いに行こうと言う。大将そりゃいいね。やっぱりとんかつだろ。うまいところを知っているんだと、路地に連れていく。しかし、その目指すとんかつ屋一直は閉まっている。吟月が困っていると、女将の菊江(角梨枝子)が戻ってくる。どうしたんだいと聞くと、電熱器が壊れてしまっていてと答える。そういうのは、大将が直すよと吟月。店に入り、電熱器を直し始める荒木。
    すると、よろよろと、男が一直に入ってくる。菊江がいる二階に上がっていき倒れる。菊江の弟の周二(高橋貞二)だ。酔っているかと思った菊江が抱き起こすと、腕から大量に出血している。声を上げる菊江。吟月と荒木が来る。何だテメエはと周二が言うが、自分は医者だと言って吟月になるべくアルコール度数の高い酒を持ってこいと命じる荒木。傷口を見ると弾創だ。手術をしないと駄目だと言って、車を拾い近くの佐田病院に担ぎ込む。外科の先生がいないと言われ、自分は医師なのでと言い院長に許可をもらってくれと言って、手術室に連れていく。婦長は、院長先生がご自分で治療されるそうですと答える。
    やってきた院長先生は、今朝、車に乗っていた女の佐田真弓だった。執刀する真弓、しかし弾丸の摘出は馴れていないのか、苦戦している。途中から、荒木が変わって無事摘出に成功する。
真弓に、どこに勤務されているんですかと尋ねられ、勤務も、開業もしていないと答える荒木。であれば、この病院で働いていただけませんかと頭を下げるが、つれない返事をする荒木。
    荒木は、病院のすぐ裏手にある亀の子横丁に住んでいる。医学書の翻訳のアルバイトで生計を立てながら、医術だけではなく、ヨロズ相談を引き受け、とんかつに目がないので、とんかつ大将と亀の子横丁のみなから愛されているのだ。達磨職人の大平と、盲目の娘お艶(小園蓉子)親子の隣に吟月と暮している。食事の支度など家事は、お艶に頼りきりだ。お艶の目を再び直してやると約束している。荒木と吟月は、ハバロフスクでの抑留以来の縁だ。近所のひかり保育園の子供たちと一緒に散歩、体操をしている荒木を、真弓は車の中から見かけ、好意を持つ。
    夜、医学書の翻訳をしていると、眠っていた吟月が、大声で笑いだす。声を掛けると菊江の夢を見ていたらしい、40男の初恋だ。片思いは切ないなあと荒木がつぶやく。荒木には、多美という婚約者がいたのだが、どこにいるのか、生きているのかもわからないのだ。
    ある日、保育園の子供たちにクリスマスプレゼントを買おうとデパートの玩具売り場で、機関車の玩具が欲しいと駄々をこねる子供に目が停まる。その母親は、夢にまで見た多美(幾野道子)だ。声を掛ける。子供が自分の名前を丹羽利春(設楽幸嗣)と聞いて、丹羽と結婚していたのかと言葉を失う荒木。丹羽と荒木は親友だった。学徒出陣で出征する際に、内省勤務の海軍軍人だった丹羽に、婚約者の多美を託していたのだ。敗戦に拳銃自殺をしようとした丹羽を必死に止めた多美は、お互い希望を失ったもの同士、結ばれたのだ。しかし、丹羽は事業を失敗してから、酒に溺れ、多美に暴力を振るう荒んだ生活を送っているという。

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