2009年3月25日水曜日

恋は、遠い日の花火ではない

   ヒューマントラストシネマ渋谷で、品川ヒロシ監督『ドロップ(183)』
   狛江市の信濃川ヒロシ(成宮寛貴)は、不良に憧れ、中学3年で、公立中学に転校する。そこで、森木(浪岡一喜)たちに呼び出され、多摩川の河原に行くと、同じ中学の井口達也(水嶋ヒロ)が、他の中学のスミダを絞めていた。達也は金属バットでスミダを殴ろうとする。死んじまうじゃないかと言うヒロシに、人は簡単に死にゃしないと言う達也。事実、スミダはあっという間に片付く、生きている。次に、ヒロシとタイマンだという達也。何で?と尋ねても喧嘩に理由なんかいらねぇと答える達也。殴られ蹴られ、ボロボロになりながらも、ここで引いたら不良の道を諦めることになると必死で向かう内に、気に入られ、彼らとラーメン屋に行くことに。話を聞くと、この中学には、一緒にラーメンを食う達也と森木とワン公(若月徹)、ルパン(綾部祐二)の4人しかヤンキーはおらず、ヒロシは5人のメンバーだと言う。他の中学には沢山いて、達也が無茶をするせいで、常に狙われている。達也の彼女のみゆき(本仮谷ユイカ)が来た。みゆきの可愛さにヒロシはかなりやられる・・・。

   中学生か・・・。自分たちの時代も、総じて不良たちは老けていたが、中学生に見えるのは本仮谷ユイカくらいだ。しかし、今も昔も、15,6の男子 は、本当に馬鹿。自分も馬鹿だった。水曜日は1000円だし、春休み中だから中高生から20代前半で、満員の客席は、終始笑いが上がる。自分も不覚にも、 笑えてしまう。小説、コミック、映画という展開の中で、コミックのコマを、映画のフレームに置き換えて、ビスタサイズの映画にストーリーを定着させること には成功している。ただ、ハルの事故のあたりのお涙ちょうだいなところは、いささか甘ったるい。普通のドラマになってしまっている。中学時代の次に、撮影 するシナリオを品川監督は、持っているだろうか。

    渋谷シアターNで、08年西村喜廣監督『東京残酷警察(184)』
    近未来の東京、警察は民営化され、東京警察株式会社となっている。かって、民営化反対運動をのリーダーだった警察官の父親(堀部圭亮)は運動の最中狙撃され死ぬが、父の友人だった西東京支部の署長(菅田俊)に育てられルカ(しいなえいひ)は立派に前線で働いている。ある日、ビルの屋上に立てこもり、人肉を食らい、チェーンソーを振り回す凶悪犯(坂口拓)を処刑することになったが、機動隊のメンバーは次々にやられていく。出動命令が出たルカは、バズーカ砲を逆噴射させ、屋上に飛び上り、兇悪犯の目の前に立つ。チェーンソーを持った腕を斬り落とすと、腕がチェーンソーに変化する。しかし、熾烈な戦いの末、両手にチェーンソーを持ち、兇悪犯を倒すルカ。凶悪犯の肉体に鍵の形をした腫瘍を発見する。この腫瘍と肉体の一部を凶器に変化させることが、エンジニアと呼ばれる無差別殺人ミュータントの特徴だ・・・。

    ユーロスペースで、市川準監督のこと
    07年市川準監督『あしたの私のつくり方(185)』。
    大島寿梨(鳴海璃子)は、小学6年。クラスには、かわいくて頭のいい、学級委員をしている花田日南子(前田敦子)もいれば、クラス中から苛められている久保田マナミもいる。寿梨は、ちょっと自分に自信がなくて、目立つのが不安な普通の子だ。両親(石原良純&真理子)は最近喧嘩ばかりをしている。何とかカスガイになろうとして、寿梨は中学受験を頑張ったが、結果は失敗だった。普段無口な兄(柄本時生)は、あの人たちは、親の役割を演じたがるから、落ちて良かったんじゃないかとへんな慰め方をする。しかし、寿梨が入試で1週間休んでいる間に、苛められっ子だった久保田マナミは、寿梨が落ちた中学に合格し、対照的に日南子は、学級会での発言がもとで、ハチ(村八分)になっている。
    2ヶ月後、卒業式を迎える。式の後、図書室に本を返しに行った寿梨は、独り座っている日南子に会う。大島さんも逃げて来たの?と日南子は声を掛ける。あんなに輝いていた日南子は、一人だと無視しないんだと話しかけ、学級委員をやった自分も、ハブされていた自分もいた、次第にどっちが本当の自分か分からなくなった、久保田の代わりにハブの役をやっていた、この2か月の自分は偽物だと言う。寿梨も、私立中学なんか行きたくないのに、親が行かせたいだけなのに、嘘をついていると告白する寿梨。太宰治の「お前は嘘がうまいから、行いだけでもよくなさい」って知っていると話す日南子。
   二人は同じ中学に進んだが、日南子は相変わらず仲間外れで、それきり話すことはなかった。寿梨の家庭は、相変わらず怒鳴り合う両親の声が響き、結局離婚し、兄妹も別々に。寿梨は、母と二人暮らしになり、大谷寿梨に苗字が変わった。
   それから2年が経ち、寿梨は高校生になった。月一回、父と兄との食事も話は弾まず、毎日の母との生活も、母親に彼氏の影が見えるようになり、屈託がある寿梨。ある日、教室で、他のクラスメイトが花田日南子が山梨に引っ越すという話が出る。彼女たちの会話は決して好意的なものではなかったが、気になった寿梨は、日南子のメイルアドレスを聞く。
   山梨に日南子が引っ越した日に、寿梨は、「明日の準備は出来た?」とメールを出す。長い間友達のいない日南子は身構え、「あなたは誰?」と返す。「あなたの友達だよ」「私には友達はいない」というやり取りの後、「間違えたようです。でも、あなたと間違えた私の友達ヒナと、私コトリの物語を聞いて」と寿梨はメールを出した。そして、ヒナが、自分のクラスに転校してきた時の挨拶の仕方、みんなと友達になっていく方法などを打ち始める。人との付き合いにすっかり苦手になっていた日南子は、ヒナの物語を演じていくことで救われ、友達が出来ていく。寿梨も、父親と兄との会食も、母親との二人の生活も、高校での友達との関係もうまく演じ分けることができて、順調に進み始めた・・・。

   鳴海璃子やっぱりいいなあ。同じころに公開された「神童」での彼女を絶賛した記憶があるが、こっちの方がいい。NTTドコモの特別協賛は、携帯メール、TV電話などが、当時は微妙なビジネス臭に反発され、興行的には決して、成功とは言えなかったと思うが、コミュニケーションツールとしての携帯の違和感は、今では逆に少し古臭いぐらいだろう。自分にはちょうどいいくらいだ(苦笑)。そういう意味では、現代の2年という時間が気が遠くなるほど長いんだろうな。そして、当時たぶん14歳だった鳴海璃子にとっての2年という時間も残酷だ。「罪とか?罰とか?」では、成長してしまった思春期の彼女の姿がある。もう少し経って、大人のいい女になるのを、おじさんは待っているぞー(笑)。

    96年衛星劇場市川準監督『東京夜曲(186)』

    江戸川沿いの街上宿、そこの商店街の、浜中電気店の息子の康一(長塚京三)が数年振りに帰ってきた。顔に青痣を作り、片足を骨折し松葉杖を ついている。50近くになって戻ってきた康一の居場所は、年老いた両親と妻久子(倍賞美津子)と息子のいる家庭にも、父親と店員が2人いて閑古鳥がないて いる店にもない。浜中電気店の向かいにある、碁喫茶・大沢は、康一と曰くがあったタミ(桃井かおり)がやっている。かって大沢はタミが好きだった。ずっと 江戸川病院に入院し、日々やつれていく大沢からの求愛をタミは受け入れて結婚したのだ。しかし、大沢が死亡し、程なくして康一は、初めてこの街を出た。そ れ以来、この街を出たり入ったり、落ち着かない。

  久子に回覧板を持ってくる朝倉(上川隆也)は、物書き志望だが食べるために翻訳の仕事をしている。朝子に惚れている朝倉は、3人の微妙な関係を知りたくなってしまい、事情をよく知る商店街の人々に話を聞いて回るのだ。

   康一は、借金のある電気店を商売替えすることにする。当節流行りのテレビゲーム屋だ。開店当初は近在の子供たちで大盛況だ。しかし、康一の父親の行動は 徐々におかしくなって行った。朝倉の友人で、電気店に勤める野村は、大沢のバイトの松永(八反田勝就)とよく行く中古レコード屋の娘智美(安部聡子)と付 き合っていたが、大沢でバイトをし、朝倉に中国語を教えていた中国人のニンさん(前田昌代)に恋をし、結婚することになる。大沢で祝う会を開いてやるタ ミ。商店街の人々が集まっている。その式の最中、寂しそうな智美に声を掛けてやる康一。

    久子と帰る朝倉は、康一とタミの 話を尋ねる。久子は、自分と康一があまりに勝手に暮らし過ぎたから、こうなってしまったんじゃないかと言う。ずっと大沢を慕っていた女性というのは久子さ んではないんですかとぶつけた。動揺した久子は、怒って帰って行った。康一とタミは「あらかじめ失われた恋人たち」を観ている。帰ろうとしていた康一を、 タミはお茶漬けでも食べていかないかと引き留める。大沢の2階で、抱き合いながら、大沢のことを思い出している二人。「俺なんか、死んでもどうということ ないんだろうな」と言って大沢は死んでいった。しかし、あいつは、死んでからいろんな余計なことをやってくれると呟く康一。

    タエは、年老いた両親の暮す岡山へ行った。大沢のカウンターの中には、野村が入り、ニンさんと松永で店は続いている。朝倉も、川の向こう側に小さなアパートを借りて引っ越していった。

    康一が、昼ごはんを食べに家に戻ると、タミから宅急便で桃が届いている。入院している父親の見舞いに行く母親に2個桃を持たせる久子。久子の背中に、一度岡山に旅行をしようか、タミのいる岡山に、と声を掛ける康一。

    これも未見だった。よく考えると、本当に何本かしか観ていないんだなあ。でも、50歳になったから今だからこそ味わい深い映画だ。更に、この特集は市川準が演出したCFがオープニングに流れる。今日はサントリーのウィスキー。長塚京三のオールドと、小雪の角(石川さゆりの♪ウィスキーはお好きでしょう~♪)。いいなあ。特にオールドは、当時は少し甘ったるいと思ったが、「恋は、遠い日の花火ではない」小野田さんの名コピー、今は本当に来るなあ。部下のOLとの、課長の背中編‥、サラリーマンの時に言われたかったなあ。サントリーのウィスキーならこのシリーズも。

    桃まつりpresents kiss!
    竹本直美監督『地蔵ノ辻(187)』長島良江監督『それを何と呼ぶ?(188)』別府裕美子監督『クシコスポスト(189)』
    弐のkiss!よりも今回の方が少しだけ、安心して見られた気がする。技術と言うより役者が安定していたからだろう。こうなったら壱のkiss!見ておきたかったな。 彼女たちの次の映画に出会えることを期待して‥…。

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