2009年2月20日金曜日

ケーキを、街歩きしながら食べている美女を目撃する。

    神保町シアターで、東宝文芸映画の世界。59年東宝丸山誠治監督『女ごころ(99)』.
    小城伊曽子(原節子)は、翻訳家で大学の講師をしている夫の朝吉(森雅之)と息子の研一(春日井宏往)と郊外に建てたばかりの一戸建て住宅に暮らしている。少し前まで栄養士をしていた大正電機の社員食堂の調理師の木谷ふじ子(南美江)が訪ねてくる。栄養士をもう一度頼めないかと言う相談だったが、幸せそうな家庭を見て帰って行った。地主で隣家のよし子(賀原夏子)が、勝手口から入ってきて千円貸してくれと言う。夫と研一が帰って来る。コーヒーが飲みたいと言う夫に食事前は胃腸に悪いと答える伊曽子。しかめ面になりながら、研一に煙草を一緒に買いに行こうと言い、家を出る。
    再びよし子が現れる、空き巣が出たと言う。急に不安になり、家中戸締まりをする伊曽子。普段は入らない夫の書斎の窓を閉めようとした伊曽子は、机の上に、若い娘と夫が写った写真を見つけてしまう。更に見慣れぬ灰皿には、照江と言う送り主の手紙が付いている。ショックのあまり茫然自失の伊曽子。帰って来た夫と研一は家の鍵が閉められているのに気がつく。伊曽子に開けてもらうが、明かりも点けず、伊曽子の様子もおかしい。書斎の窓が閉められているので、入らないでくれと文句を言う朝吉に、こんなものを見られたくないからですねと写真を出す伊曽子。いつか学生と山に行くと言って外出した時のことですねと責める伊曽子。
   その時チャイムが鳴る。ドアを開けた伊曽子の前に立つのは、揃いの旅館の浴衣姿で夫と写っていた若い女(団玲子)だ。女は旭出版の三沢照江と名乗り、原稿料のお届けに来たので、領収書に判を押してくれと言い、伊曽子が対応するとすぐに帰って行った。あの写真の女の方がいらっしゃいましたわと伊曽子が言う。自分は正直なところ君には“幽寂”の気持ちさえ起きないんだと言ってしまう朝吉。翌朝、朝吉が目覚めると誰もいない。隣家のよし子は、朝早くに研一を連れて出掛けたと教えてくれる。
   その夜、朝吉は旭出版の辻本(中村伸郎)と、バーミモザに行く。照江は、昼間は、旭出版社で、夜はこの店で働いて、田舎の母親に仕送りをしている。妻と息子の家出で、意気消沈している朝吉。今日は一人になりたいんだと言う朝吉に、二人でいたいと散々言った挙句、では一緒に飲もうと言われると、タクシーを止め、朝吉を乗せ一人で帰す照江。
   しかし、照江は、翌朝コンビーフやチーズなどを買ってきて朝食を作るわと言う。その後、朝吉の家で生活するようになる。若く奔放な照江との生活は朝吉にとって新鮮だったが、隣家のよし子は、伊曽子が家を出た途端、若い娘を引っ張り込んだ朝吉を目の敵にする。大学に出ると、学生の一人斉藤(西条康彦)がささやかな結婚式をやるので出席してくれと言う。祝辞を求められ、結婚や夫婦について語りながら苦笑する朝吉。朝吉は義父山名庄三(三津田健)を訪ねる。伊曽子の妹の咲子(三井美奈)の縁談が決まったと聞く。亡妻の法事には、伊曽子と出席してくれと言われ、妻の形見の帯留めを預かる朝吉。
   伊曽子は、大正電機の社員食堂で栄養士として働いている。ふじ子と工場の門番をしている夫(瀬良明)との夫婦は、健一を自分の子供のように可愛がってくれている。ある日、健一は、仕事に忙しい伊曽子にかまってもらえないので、工場の外に出て、近所の子供たちが亀で遊んでいるのを見つける。自分も亀を持っていると言って、近所の子供と二人で、自宅まで電車で出かけるのだ、家には誰もいなかったが、外の水槽の亀で遊んでいる。そこに隣家のよし子が現れ、驚く。一方健一がいなくなり、伊曽子とふじ子夫婦は慌てる。近所の河で子供がおぼれたりした事件まで起き心配は増すばかりだ。よし子からの連絡で真相を知るが、伊曽子は深いため息をつく。
   伊曽子の母の法事の日、行こうかどうしようか迷っていた朝吉は、照江の一言で結局欠席する。照江に、銀座文化堂で会おうと言って外出する。しかし、そこに照江は来ず、帰りかける朝吉の前に、伊曽子が現れる。朝吉は、健一を連れて次の休みに山中湖にいかないかというが、伊曽子は、よそよそしく旧友から富浦に誘われていてその打合せの約束でここに来たのだと言う。伊曽子は、千葉の富浦で、美容院を営む上野月子(丹阿弥谷津子)と待ち合わせていたのだ。月子は、夫を亡くし一人で美容院を切り盛りしている。義弟の蓮見五郎(佐原健二)に荷物を持たせ現れる月子に、必ず健一を連れてくるように約束させられる伊曽子。
   健一と一緒に富浦にやってくる伊曽子。五郎が車で迎えに来てくれる。甲斐甲斐しく健一の面倒を見てくれる五郎のおかげで久しぶりに心の安らぎを覚える伊曽子。一方、朝吉は照江と学生たちと山中湖に来ている。テニスをし、照江は学生と麻雀をしている。富浦では健一が海風に当たりすぎて熱を出していた。月子は、山中湖の朝吉のもとに電話をしたが、代わりに照江が電話をとり健一が高熱を出したのですぐに富浦に来るよう伝言を聞く。しかし、その後照江は、朝吉に伝えることを忘れてしまう。若い学生と奔放に遊びまくる照江の姿を見ながら、朝吉は取り残されたような気がする。
   翌日、健一の熱は下がったが、月子から朝吉に脅かす電話をしたと聞き、いそいそと富浦駅に迎えに行く。しかし、東京からの汽車に朝吉の姿はない。息子のことさえ朝吉の気持ちは動かないのかと失望した伊曽子が月子の家に戻ってくると、月子と五郎が抱き合っている。二人は男女の関係だったのだ。いつまで伊曽子たちはいるのかなあと言う五郎をたしなめる月子。二人の会話を聞いてしまった伊曽子は動揺を隠せない。東京に戻った朝吉と照江の間には、健一の病気のことなど小さな諍いが続く。朝吉の姿を見て、朝吉に必要なのは自分ではないのだと理解する照江。照江は、田舎から昔の彼氏が訪ねて来たのをいいことに、朝吉に別れを宣告する。
   伊曽子が旭出版社を訪れる。照江に会いに来たのだが、辻本に会社を辞め、札幌の親類の家で働いていると言われる。試験別居をしてきたが、そろそろ終止符を打つことになりそうだと伊曽子が言うのを聞いて、自分にも責任を感じる辻本。
   ある日、テレビに健一が出ている。健一の通う幼稚園に取材が来ていたのだ。偶然見ていた朝吉は無性に健一に会いたくなる。朝吉が伊曽子に電話をし、健一と話をする。ふじ子は、私のような無学のものが意見をするのはおこがましいが、たまには素直になったほうがいいのではと、伊曽子に忠告をする。
  デパートの屋上に、山名の義父と朝吉が話している。そこに、咲子の結婚支度の買い物を終えた、伊曽子、健一、咲子がやってくる。銀座で一緒に食事をしようと言う朝吉。とてもいい天気だ。
   咲子役の三井美奈いいなあ。2年ほどの女優生活でいなくなってしまたようだ。もったいないなあ。原節子を見ていて、わかったことが一つだけある。重ね言葉のひとだと言うことだ。「はい、はい」「あら、あら」「まあ、まあ」というセリフと、「オロオロ」「モジモジ」「ヨロヨロ」という芝居。

   58年東宝丸山誠治監督『二人だけの橋(100)』   
   石田友二(久保明)は、兄の梅吉(千秋実)と兄嫁正子(中北千枝子)母きく(飯田蝶子)と4人暮らし。求職中だが、不景気で22になっても仕事が見つからない、今日も兄の小学校時代の恩師(左ト全)が印刷会社の総務課長をしているというので出かけるが、ただの小遣いをしているだけで、上司の課長にとりなしてくれるが、今年の採用は終わったと、にべもない。
     その夜、隅田川に架かる白髭橋で、兄夫婦の赤ん坊をおぶってあやしているが、泣き止まない。通り掛かった美しい少女(水野久美)が持っていた玩具の喇叭で、あやしてくれた。翌日、板橋区の職安で紹介された東京レストラン新聞編集部に出掛けるが駄目だった。次に向かった先は玩具問屋に行くが、欲しいのは15、6の小僧だと言われる。しかしそこで、昨夜の少女に再会する。彼女は母親の内職の材料を貰いに来ていたのだ。彼女の助勢も報わない。しかし番頭は、同情したのか、小伝馬町の薬問屋が販売の外交員を探していた筈だと教えてくれた。2人で行ってみるが、外交員は女性がいいのだと言われ、また1日徒労に終わった。
    しかし、明るく前向きな少女と1日話をすることで友二の気持ちは晴れ、働くことに前向きになった。また、ここ白髭橋で会おうと言い、初めてお互いに名乗った。少女の名は木村チエ、石鹸工場で女工をしているという。材料を持ってくれた礼だと言って、自宅に案内するチエ。彼女の母親(浦辺粂子)は胆石を患いながら内職仕事をしている。弟の浩一(伊藤隆)は、野球に夢中な小学生だ夕食を食べて行ってと炒飯を作るチエ。
    職工募集の貼り紙が有った中川鉄工所に行ってみると、見習いはもっと若い奴がいいと言われるが、何でもやりますと言い、日当200円で働くことになる。先輩の斎藤(加藤大介)に旋盤機の使い方を習うがなかなかうまくいかない。しかし、早く覚えようと必死になる友二。昼休み、同じ臨時雇いの河村(石井伊吉/毒蝮三太夫)と高橋(林剛彦)が声を掛けてくる。河村は日給150円、高橋は100円だ。みな残業をしないと食べていけないと言う。
   その日、仕事を終えた友二が、橋の上で待っていると遅れてチエがやって来る。残業があって、工場のトラックに乗せて貰って来たのだ。トラックの運転手と友二にリンゴを一つずつ渡すチエ。友二は一緒に食べようと言って二つに割る。チエの匂いがすると言う。不思議そうなチエに、石鹸の匂いだと言う友二。友二は一日鉄工所で働いていたので、機械油の臭いがする。その日工場であったことを話す友二。毎日ここで会おうという約束をする二人。
   しかし、なかなか仕事を覚えられずに苦労する友二。しかし斎藤は熱心に教えてくれる。しかし、弁当と怪我は自分もちだから、集中力を欠いて仕事をしているとこっぴどく叱られた。なかなか残業が続いて会うことはできない。週末、自転車で遠のりしようと約束をする。二人は隅田川の土手を上流まで走っていく。9日間会えなかったのだ。友二は、小学校の頃、貧乏で詰襟の下に着るものがなく、母親に女物のカーディガンを着せられ、体育の時間に詰襟を脱げと先生に言われ、大恥をかいたことを思い出し、貧乏は嫌だと言う。別れ際に、お互いどこにも行かないと約束しようと言う友二。
  雪のクリスマスの晩、河村はデートに行くと言う。若いものたちは、皆定時に上がっている。残業をすると言う友二に、斎藤は、自分が残りをやっておくので、痩せ我慢せずに上がれと言ってくれる。喜んで工場を出ようとすると、正門前にチエが待っている。プレゼントを交換する。チエは友二にマフラーを、友二はチエにネッカチーフを渡す。喜んですぐにつける二人。中華そばを食べる二人。自分のチャーシューを友二の丼に入れるチエ。映画でも見ようかという友二に、もっと話をしていたいというチエ。駅の誰もいない待合室で話し続ける二人。なかなかお互い忙しくて会えないので、橋の欄干に手紙を隠して交換しようと提案するチエ。
   年末無理をして働き過ぎた友二は、正月寝込んでしまう。やっと工場に出勤すると、河村が手を機械の挟んで大けがをする。結局、怪我は大したことはなかったが、河村は工場を首になる。高橋も、もっと給料も高く、汚れないですむ商店の丁稚になると言う。河村の怪我は、友二の気持ちを憂鬱にさせる。そんな友二を久しぶりにやってきた河村が浅草に誘う。友二にとても感謝しているという河村は、工場を辞めて、もともと好きだった材木関係の仕事に就こうと思っていると言う。また。一流の時計工場の工員の仕事を紹介してくれた。
   河村の事故以来、後ろ向きな気持ちになっていた友二は、転職の話に有頂天だ。橋の欄干の手紙がないので、チエの家を訪ねる。チエの母は寝込んでしまい、内職も出来なくなっていた。チエの気持ちよりも、自分の希望ばかりを喋ってしまう友二。就職試験で工場を休まなければならない。母親が病気と嘘をついて、筆記試験を受ける。筆記を通ったのは二人だけだ。しかし、身体検査のレントゲン撮影で肺に影があるので、ゆっくり静養しろと言われてしまう。
   友二がとぼとぼと歩いてチエがいる。合格を疑わないチエに無言の友二。僕は駄目なんだ。もう工場にも行きたくないと言う友二。チエは「友ちゃんの病気を、私が全部貰う」と言って、友二にキスをする。辞めるつもりで鉄工所に行く友二。斎藤に、河村の事故に冷たいこの会社が嫌になったと言う。しかし、考えなおして、本当は胸を悪くしたのだと正直に告白した。斎藤は、それならちゃんと養生して治ったらもう一度来いと言う。会社に掛け合ってやるからと請け合う斎藤。
   友二はチエに会い、身体を直して、再び鉄工所で働くと言う。

   新宿ジョイシネマで、マイケル・アリアス監督『ヘブンス・ドア(101)』
   饅頭を大事そうに重箱に並べ高級そうな風呂敷に包み慎重に運ぶ男の姿がある。工場街、自動車修理工場で働く青山勝人(長瀬智也)。社長(諏訪太郎)に声を掛けられ今日でもう来なくていいと言われている。女事務員(今宿麻美)に今月分の給料と健康診断の結果を渡される青山。ゆっくり歩いて行くと急に視界が歪み倒れる。病院で医師(北見敏之)から家族はいませんかと尋ねられ、いないと答える青山。脳幹に12cmの腫瘍があり、どうしようもないが直ぐに入院しろと告げる医師。もっと分かりやすく言ってくれと言う青山の言葉に、今亡くなってもおかしくない状態だと言う返事に言葉を失う青山。病院のロビーで呆然としている青山を見ている少女(福田麻由子)。病室に案内される青山。
   年配の入院患者と同室だ。ベッドで煙草に火を着けようとする青山に、おいおい禁煙だぞと注意し、そのベッドにいた男は酒の飲み過ぎで死んだと教えられる。風のように少女が煙草を奪って消える。春海ちゃんだ。あの娘は病院の主だからなと言う。夜更け、煙草とライターを返しに、少女がやってくる。少女の名は、白石春海、7歳から14歳の今まで病院で、ずっと過ごしてきた。彼女は先天性疾患と骨肉腫で余命一か月と言われている。お前も、天国のドアを叩いてんだなと言う勝人。
   勝人のベッドの下に前の患者が残した酒瓶がごろごろしており、テキーラを見つけたことで二人の終わろうとしていた時間が動き始める。病院の調理室でレモンと塩を探し、テキーラの飲み方を春海に教える勝人。海を見たことがないという春海に、海を見に行こうと言う勝人。
   その時、K3ホールディングスの社長の小久保(長塚圭史)に、車の陸送を頼まれていた駄目社員の安達(大倉孝二)と定年間近の辺見(田中泯)が乗っていた車が事故を起こし、けが人を病院に運んできたところだった。鍵がついたままで、病院正門前に停まっている車に乗り込み走り出す勝人と春海。
    ガソリンスタンドに寄ってお金を払おうとしても金は持っていない。何かないかと探すうちに、ダッシュボードに拳銃が入っている。ガソリンスタンドの主人(不破万作)に突き付け、4万弱の金を受け取り強盗となってしまう勝人。パジャマ姿を変えようと原宿に行き、洋服屋に入る二人。店員(吉村由美)にお金をはらう段になって、下ろしてきますと言って外に出る勝人。しかしコンビニのATMは残高不足だ。結局、コンビニと郵便局で拳銃強盗する勝人。札束を洋服屋の店員に渡して、春海の腕を引いて車に戻る勝人。強盗したの?今なら自首して謝ろうよという春海。しかし、突然、意識が無くなり全身を痙攣させ倒れる勝人。気が付いた時には日が暮れている。服を仕舞おうとトランクを開けると、風呂敷に包まれた重箱がある。饅頭の下には、かなりの金額の札束が隠されていた。これって神様の恵み?と呟く春海。
  いきなり二人は、高級ホテルの最上級スイートルームにチェックインだ。ルームサービスを頼みまくり、ご機嫌で過ごす。勝人は高い酒を飲みまくり。春海は買ってきた服を着替えまくって、自分で髪を切った。お互い、死ぬまでにしたいことを書いてみる。翌朝、テレビをつけると、勝人が、春海を病院から誘拐して逃走している誘拐強盗犯として指名手配されている。パトカーのサイレンの音に慌てて逃げ出す二人。非常階段を降りていくと、下から警官が上がってくる。勝人は春海に拳銃を突きつけて警官の服を奪う。警官の制服姿でロビーまで降りる。車の前に、安達と辺見がいる。パトカーに乗り込んで逃走する勝人と春海。パトカーを奪われた県警捜査1課の岸谷(黄川田将也)は、部長の長谷川(三浦友和)にどやしつけられる。一方、やっと車を取り返したと思った安達と辺見は、車のトランクの饅頭が無くなっていることを知った小久保に殴られている。
  春海の希望の一つ、遊園地に行く二人。ジェットコースター、観覧車など楽しむ二人。しかし、その帰り、降り出した雨の中で、遊んでいると勝人の発作が起きる。薬は無くなってしまっている。春海は近くの薬局に飛び込む。薬の袋を見て劇薬だから処方箋がないと駄目だという店主(徳井優)。必死に訴える春海を怪しみ始める店主。追い詰められた春海は、天井に向けて拳銃を撃つ。
  薬を飲まされ気が付いた勝人。二人は、近くのメキシコ料理屋にいる。既に県警によって包囲されている。しかし、長谷川と岸谷が踏み込むと勝人と春海はいない。料理屋のメキシコ人に借りた店の派手な軽バンで逃走している。しばらく暖かい日差しの中で、穏やかな瞬間だ。
   しかし、急に大型のダンプカーが現れ、二人の軽バンに襲いかかる。金を回収するために手段を選ばないK3ホールディングスの社長の小久保の命令だ。逃げ切れないまま走り続ける車。前方に検問が見えてくる。検問所に勝人が突っ込み、急カーブを切り、果樹園に突っ込む。ダンプは横転した。その代りに、パトカーに追跡される。果樹園の中をダンスをするように逃走し、最後には、断崖から飛び出す軽バン。
  長谷川と岸谷は、壊れた軽バンを発見するが、勝人と春海はいない。その頃二人は、タクシーで、ホストクラブに行っていた。春海のかっこいい男とキスをするという希望を叶えさせてやろうと思ったのだ。5人のホストの中で好きなのを選べという勝人。こいつなんか王子様っぽいだろうといって一人のホスト(二宮和也)とキスをしようとする瞬間、小久保と辺見、安達にピストルを突き付けられ、地下深いトンネルに連行されていた。小久保に金の残りを渡せと言われ、全部使っちまったと答える勝人。殺してやると引鉄を小久保が引こうとした瞬間、もう止めろと銃を小久保に向ける辺見。春海の腕を引いて逃げ出す勝人。トンネルから抜けると、警察のライトが二人を照らし出す・・・。
  かっこいい映像、かっこいい音楽、しかし、何だか物足りないんだなあ。
   
   シネマート新宿で、朝日放送/阪本順次、井筒和幸、大森一樹、李相日、崔陽一監督『みんな、はじめはコドモだった(102)』。
   5人の監督が、こどもというキーワードで切り取った短編集。通天閣の展望台で一晩一緒に過ごす、飛び降り自殺をしようとした男(佐藤浩市)と、母親に捨てられた男の子の話「展望台」の阪本順次監督、小学校の教室でエキセントリックな教師(光石研)と生徒たちの話「TO THE FUTURE」の井筒和幸監督、江戸時代、浦島駄郎(岸部一徳)の玉手箱で大人にされてしまった子供(佐藤隆太)が、貧しい飯屋の女将をしている母親(高岡早紀)のために悩む「イエスタデイワンスモア」の大森一樹監督、余命を宣告された父親(藤竜也)が、精神薄弱の30代の息子(川屋せっちん)の行く末を案じて無理心中をしようとするが、かなりいい加減な死神(宮藤官九郎)に付き纏われる「タガタメ」の李相日監督、息子をロンドンに遊学させているらしい中年の娘(小泉今日子)と老母(樹木希林)とのとりとめのないベタベタな母娘の会話と、そこに入れない寂しい父親(細野晴臣)という家族の話の「ダイコン~ダイニングテーブルのコンテンポラリー~」の崔陽一監督。
   朝日放送という放送局の製作の割には、マーケティング的な要素がなく(つまり、誰に向かって商売するのかわからない)、また、一社の製作で製作委員会という無責任システムでもないことで、最近めったにない、5人の監督が、好き勝手に撮った短編に、好感を持った。通天閣の展望台という密室という卓越なアイディアでありながら尻つぼみな感がある「展望台」を除けば、纏まっていようが破綻しいようが、楽しんで作っている監督の顔が見える。
   新宿三丁目から駅まで歩く途中、前を歩いている女性が、ケーキの箱を開け、丁寧に銀紙やビニールを剥がし、最後には手掴みで口に運ぶ過程に目を奪われる。凄いなあ。細身でモデルのような女性なので非常に映像的な光景。博華で餃子とビール。

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